「ぼくたちの家族」
前作の「舟を編む」が数々の映画賞を受賞した石井裕也監督の新作で、早見和
真の同名小説の映画化です。
東京の郊外に住む一家が、母親の病気をきっかけに、さまざまな問題に直面す
る姿を描いた内容です。
ごく平凡な一家の母・玲子(原田美枝子)は物忘れがひどくなり、病院で検査を受
けると末期の脳腫瘍で余命1週間と宣告されます。
玲子は家族がバラバラになることを恐れるあまり認知症のようになり、家族に隠
してきた本音を吐露するのでした。
突然訪れた事態に父・克明(長塚京三)は取り乱し、社会人の長男・浩介(妻夫木
聡)は言葉をなくし、大学生の次男・俊平(池松壮亮)は平静を装おうとします。
残された男3人は、さまざまな問題と向き合いながら、最後の「悪あがき」を決意
して・・・。
私の周囲は絶賛の声が高く、私が異論を唱えると天邪鬼視されそうですが、家
族の絆をひもどいて、ひとまずの作品と思うものの若干期待外れです。
脚色が手薄で不都合な挿話が目立ち、いかにもご都合主義的な展開と終末で、
監督の狙ったようにはなっていないと思います。
この監督はデビュー作「川の底からこんにちは」からずーっと見ていますが、やや
出来不出来の波があり、前作「舟を編む」はよく纏まっていて「ほくたちの家族」を
上回っています。
次回作を期待する由縁でもありますが、彼には原作ものよりオリジナル作品の方
が似合っているのではないでしょうか。いいセンスを持っている監督なので、次回
作を楽しみにしています。
「レイルウエイ 運命の旅路」
原作は1995年「エスクワイア」誌ノンフィクション賞を受賞した、エリック・ローマク
スの自叙伝「泰緬鉄道 癒される時を求めて」で、第2次世界大戦時、日本軍の
捕虜となり、鉄道建設に狩り出された英国兵士と日本人通訳らの実話を基に書
かれたものです。
鉄道好きで平凡な人生を送る筈だった英国軍兵士のエリック(コリン・ファース)は、
シンガポール陥落時に日本軍の捕虜となり、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道の建設
現場で過酷な労働を強いられたのでした。
それから約50年後、当時の記憶に苦しめられながらも、愛する妻(二コール・キッド
マン)と平穏な日々を送っていたエリックは、鉄道の建設現場にいた日本人通訳の
永瀬(前半・石田淡朗、後半・真田広之)が、戦争体験を伝えるため現場見学案内
人として暮らしていることを知ります。
永瀬の存在が心の奥の傷をよみがえらせ、動揺するエリックは意を決して永瀬と
対決するためタイへと向かうのでした・・・。
少しばかり隣国の半日映画を連想させる内容ですが、さすが英国でラストは非常
に上手く解決していて好感さえ持ちます。
前半の主人公夫妻の出会いにかなり時間を取り過ぎていること、後半とあまり結
びつかない展開など、ジョナサン・テプリツキーの演出に切れ味がないし、コリン・
ファースの演技も今回は平板で物足りません。
但しニコール・キッドマンが上品で綺麗で、それでほぼ満足して見終わった私では
ありました。
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