遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『零れた明日 刑事の挑戦・一之瀬拓真』  堂場瞬一   中公文庫

2021-06-07 14:46:06 | レビュー
 一之瀬拓真シリーズの第6弾! 2018年4月に出版された書き下ろし作品である。
 自宅で妊娠中の妻深雪を気遣い台所で洗い物の手伝いをする一之瀬拓真に、大城係長から電話が入る。隣の係が担当する小田彩殺人事件の任意聴取中の被疑者が逃げたという。大城の班全員が捜索に組み込まれたのだ。板橋中央署集合の指示をうける。それが始まりとなる。
 逃走中の被疑者は高澤。大城から写真を渡され、後輩の春山英太を相方に二人で都営三田線蓮根駅での張り込み指示を受ける。だが、空振りに終わり、板橋中央署に戻ったところで、深夜に小野沢管理官から事情説明を受けた。高澤は容疑を否認、直接犯行に結びつく証拠もない段階だと言う。
 翌朝、一之瀬は調書を確認のため特捜のある港南署に出向く許可を大城から得る。そして、見逃していた事実に気づいた。港南署の刑事課長は、一之瀬のもとの上司岩下係長だったと。
 六本木のコンビニでバイトをしていた高澤が小田彩を見かけて引きつけられストーカーになり、殺人を犯したという。小田彩は「オフィスP」という芸能事務所の社員だった。芸能事務所の社長は、90年代前半に馬鹿ほど売れたビジュアル系バンドのヴォーカルをしていた田原ミノルだった。一之瀬は調書にある被害者小田彩の友人関係の聞き込みから始める。一方、同僚の若杉は高澤のバイト先を聞き込み先とした。
 事務所の同僚である花田真咲の証言から、小田彩は夏のイベントの実質的な仕切り役だったこと。彩が殺されたことで、その企画を真咲が引き継ぎ大変な状況にあること。彩は沖縄出身で、恋人はいたかもしれないが、真咲は知らないという。一之瀬は訳ありの恋人かと想像した。春山も同様の感触だったという。
 高校時代から彩を知る根川麗華によると、やはり恋人は居るようだが、それまで開けっぴろげで彼氏のことを話してきたのに、つき合っている相手のことを話さず誤魔化したという。そして感じが派手になっていたと言う。誰かの愛人・・・という線を想像した。
 特捜本部に戻った一之瀬は、小野沢管理官に聞き込み結果を報告し、雷をおとされる。被疑者が特定できており、捜査の本筋と関係ないという叱責である。一之瀬は未だ確定的な証拠がないことから、特捜本部は被害者の人となりを完全に把握していないのではないかという感触をいだいたのだった。また、元上司の岩下と顔を合わせた折、高澤が犯人という前提で強引な捜査がこんな結果を招いたと聞かされる。
 被害者の交友関係を全て把握した上で、「ストーカー行為がエスカレートしての犯行」と絞り込まれた捜査ではなかったという点に一之瀬は危うさを感じ始める。

 宮下に誘われ、被疑者高澤の家の家宅捜索に一之瀬は同行した。ゴミ屋敷一歩手前のワンルームの部屋からは、ストーカー行為が確認出来る証拠-被害者を被写体にした数百枚の様々な写真、被害者のものと思われる服-は確認できた。

 本格的な捜査会議に参加した後、一之瀬は岩下から高澤という人間について情報を聞き出そうとした。高澤は大学時代のバイト先だったイベント運営会社に就職し、そこを辞めてつまずいた人生を送ってきた。辞めた理由はクライアントとのトラブル、それは高澤が詰め腹を切らされたみたいな事情だったという。一之瀬は高澤の転落していった過程を詳しく知りたいと思うようになる。

 この捜査ストーリーは、まず被疑者高澤を逃亡させたという失策の挽回に焦る小野沢管理官を筆頭にした特捜本部の焦燥感と捜査状況を描く。そこに助っ人として投げ込まれた一之瀬が捜査の進め方に対して抱いた違和感が原点となり、一之瀬は独自の捜査を行うようになる。さらに、その失策には元上司岩下の部下が直接関わっていたことから、特捜本部の中で岩下に一之瀬がどのように対応していくかにも焦点があたっていく。また、一之瀬は新たに上司となった大城の捜査に対する考え方や価値観にも気づいていく。特捜本部内で大城が特異な立場を取るようになる。
 このストーリーでは特捜本部内における捜査方針を巡る対立と葛藤のプロセス描写が一つの読ませどころである。その渦中で一之瀬が捜査員としてどう対処していくのか。

 捜査に加わった一之瀬はまず高澤のPASMOの履歴照会をした。その履歴を分析し高澤の犯行説を揺るがしかねない情報に気づくことになる。そんな矢先に、高澤の遺体が発見される。さらにそこに犯行を認める遺書らしきものもあったという連絡を受けた。だが、一之瀬が小田彩を殺していなければ、犯行を認める遺書を残すことは矛盾する。
 捜査はどういう展開になるのか。事件は大きく様相を変えていく。
 読者にとっては捜査が混迷する状態が生まれてきたことで俄然おもしろくなる。
 被害者小田彩と被疑者高澤はともに遺体となった。高澤のパソコンに残された画像には、彩を撮った写真以外にも川の写真が大量にあった。一之瀬は全てを時間軸で分析することから着手する。それが彼をどこに導くのか。
 彼等の過去を追跡捜査する一之瀬は、芸能イベント業界の複雑な人間関係と闇の側面に足を踏み入れることになっていく。

 すこしユーモラスでかつほっとするのは、要所要所で一之瀬が妊娠中の妻深雪のことを心にかける行為の描写が挿入されていくことである。そして、特捜本部の捜査が佳境に入る頃に、深雪が無事に出産を済ませ、一之瀬はパパとなる!

 ご一読ありがとうございます。

徒然に読んできた作品の読後印象記に以下のものがあります。
こちらもお読みいただけると、うれしいかぎりです。
『奪還の日 刑事の挑戦・一之瀬拓真』  中公文庫
『特捜本部 刑事の挑戦・一之瀬拓真』  中公文庫
『誘爆 刑事の挑戦・一之瀬拓真』  中公文庫
『見えざる貌 刑事の挑戦・一之瀬拓真』  中公文庫
『ルーキー 刑事の挑戦・一之瀬拓真』 中公文庫
『時限捜査』 集英社文庫
『共犯捜査』 集英社文庫
『解』    集英社文庫
『複合捜査』 集英社文庫
『検証捜査』 集英社文庫
『七つの証言 刑事・鳴沢了外伝』  中公文庫
『久遠 刑事・鳴沢了』 上・下 中公文庫
『疑装 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『被匿 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『血烙 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『讐雨 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『帰郷 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『孤狼 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『熱欲 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『破弾 刑事・鳴沢了』  中公文庫
『雪虫 刑事・鳴沢了』  中公文庫


『警視庁情報官 サイバージハード』  濱 嘉之  講談社文庫

2021-06-06 11:02:36 | レビュー
 警視庁情報官シリーズの第5弾。これも文庫書き下ろし。2014年1月に出版された。
 「プロローグ」は警視庁万世橋署長に異動した黒田純一が休日の早朝に新聞に目を通しながらテレビの情報番組をかけている場面から始まる。そこに緊急ニュースが割り込んできた。ニューヨークからの生中継。欧米20ヵ国の銀行でATMが誤作動し、日本円で45億円が不正に引き下ろされた報じた。コメンテーターはサイバーテロの可能性を示唆したのだ。黒田はクロスバイクで秋葉原に出る。あるきっかけで知り合った、本業はフリーのシステムエンジニアだと言う祐也から、ハッカーとして有名な”ビッグ・アルマジロ”が行方不明だという噂を聞いた。さらに、彼は雲隠れした後、バチカンのセキュリティシステムを突破する方法をネット上に隠したと言う。
 その足で黒田は万世橋署に出向いた。秋葉原駅ガード下の四井銀行のATM4台が異常作動を起こしているという報告を受ける。黒田は、公安部のサイバー攻撃特別捜査隊への緊急連絡を指示し、一方、自ら情報室の村越に現下の状況を伝え、四井銀行のサイバーテロ対策部への確認を依頼した。一方、休日中の警備課公安第二係、落合一真巡査にも直接連絡をとる。落合は警視庁のハッキング講習をトップの成績で卒業していたのだ。
 黒田は署長の立場で次々と手を打っていく。これがストーリーの始まりとなる。

 欧米でのATM誤作動問題が発生した直後、秋葉原で四井銀行のATMの異常作動が発生した。緊急の調査で、四井銀行のメインコンピュータ・システムに侵入された痕跡が確認された。システムのセキュリティ管理はロックカンパニーが受託していた。ニューヨークでは、クラッカーがロックカンパニーのセキュリティシステムを突破し複数の銀行システムに侵入していたのだ。日本でのこの事態もまた欧米で発生した問題にリンクしている事象なのか? 現代の世界経済社会の最前線におけるリスクマ課題、サイバー攻撃問題がリアルに描き出されて行く。読者を惹きつけるテーマと言える。

 さて、この緊急事態にどう対処できるのか? 
 黒田は総監室に呼び出され辞令を受ける。「万世橋署長黒田純一警視、兼ねて警察庁長官特命捜査主任官」を命じられた。黒田は意見を求められ、今回の事件に対処するために、元立ちは公安部に担当してもらい、情報室を中心にサイバー捜査隊、所轄の優秀な者を選抜する形でチームを作り臨むことを提言した。情報室長には黒田が仁義を切ることにした。
 黒田が兼務の辞令を受ける背景として、著者は警察庁警備局長の敷島に、警備担当審議官竹岡との会話の中で、竹岡の甘さをたしなめる口調で次のように語らせている。「それは違う。いくらハイテク技術やネットの知識があっても、情報と人脈がなければ捜査はできないよ。ましてや指揮は無理だ。しかも相手は国際的なサイバー犯罪組織かもしれないんだ」(p44)と。
 黒田は所轄の秋葉原での事件とともに、さらに広がりを見せそうなこの事件に対して、特命捜査主任官という立場で捜査のリーダーになっていく。各組織から選抜されたオールスターチームの特捜メンバーに対して、黒田がどのような指示を出し、また自らどのような行動をとっていくのか? このシリーズを読み継いでいる読者にとってた大きな楽しみになる。
 この事件をグローバルな視点でとらえれば、黒田の人脈、クロアッハがやはり登場してくるのか・・・・。
 
 四井銀行のシステムへの侵入は海外からのアクセスとわかり、そこからネット上での捜査が迅速にスタートしていく。読者にとっては、特捜メンバーによる電子捜査がどのように進められるかが興味深いところ。
 黒田は、ハッキング技術に精通し、かつ英語に堪能なキャリア3人を伴い、フィリピンのダバオに出張する許可をチヨダの理事官から得る。黒田は、川奈典子と二人のキャリア警視、それに落合一真を同行させる。黒田は「ダモサITパーク」に対象を定めていた。黒田はここでどのような情報をキャッチできるのか? これは同行メンバーのOJTにもなっていく。一方、今回の出張において、国会議員大須賀の紹介でダバオの日系人会理事ケネス・ヨシオカの世話になった黒田は御礼訪問をする。その折、ヨシオカのもらしたある苦情が、黒田には重要な情報となるのだった。
 ATMが犯行現場だったことから、現金を奪った犯人の特定と追跡のために、防犯カメラ、監視カメラの記録画像の解析が重要な捜査活動になるのは当然である。Nシステムも画像解析に連動していく。そして、身元のわれた犯人は公安部データに載る会社の社員だと判明し、その会社には宗教団体の資本が入っていることが分かってくる。どういう宗教団体なのか。ここでも黒田の人脈が情報入手に役だつことに・・・・。このプロセスは、読者にとって、フィクションとはいえ、防犯・監視カメラによる監視社会化の現状を知るという副産物を得る機会でもある。
 黒田の手許に集まる情報の一つずつが繋がって行く様相を見せ始める。
 
 特捜メンバーが電子捜査を主体にそれぞれのもつハッキング技術力や捜査力を発揮する。そして現金奪取の実行犯とサイバー攻撃の方法、事件の背景に存在する組織や人物など事件に関わる事実情報を特定していく。そこには宗教組織が浮かび上がってくる。
 だが重要なのはそれらの集積される事実情報を関係づける解釈力および判断に役立つ情報を得られる人脈という属人的な能力が大きな決め手になることである。そのあたりの展開がおもしろい。黒田の真骨頂が発揮されることに・・・・。デジタル側面がアナログ側面により補強、補完されることで全体像が見えてくるのだ。

 黒田の危惧が現実化していく。ATMを誤作動させ現金を引き出した事件は、更なる事件への予行演習に過ぎなかったのだ。共同ライン銀行でシステムトラブルが起こり、指示のない送金データにより12億円の金が消える事件が発生する。この攻撃はドイツ南部のシュツッガルトからと判明した。そして、攻撃のための経由サーバーの一つに、バチカンのサーバーが使われていたのだ。サイバー攻撃による現金奪取という形を利用し、宗教団体が他の宗教団体を狙うという様相が濃厚になってきた。黒田は「サイバー・ジハード」だなとつぶやく。

 この事件、どこまで事態が大きく深刻になるのか。黒田は特捜チームとともにどのように立ち向かい、犯人逮捕にいたるのか。
 黒田は「しかし捕まらないとでも思っているとしたら、僕らも舐められたもんだ。僕たちは深く静かに潜行して、敵の本丸を一気に叩いてやろうじゃないか」(p136)と特捜チーム第1班の管理官杉浦に決意を語る。
 顔に疲れが見えると指摘され、黒田は一息入れるために小料理屋「しゅもん」に出向いた。そのお陰で、黒田は思わぬ情報を得る。共同ライン銀行のサイバー攻撃の侵入経路チェックをしているという桐生から、複合型ウィルスの話が出て、”ビッグ・アルマジロ”の名前が出たのだ。併せて上海という地名が出る。黒田は上海に乗り込む許可を得る。
グローバルに行動を広げ捜査を加速させるストーリーの展開がおもしろい。

 このストーリーの最終段階での楽しみを幾つか予告しておこう。
*勿論、事件は解決する。だが、その過程で黒田が推論できなかった事項が1つあった。
*この事件が解決すると、再び黒田に異動の辞令が出ることに・・・・・。
*エピローグでは、黒田は己の人生での一つの決断をする。その状況描写で終わる。
 これから先は本書でお楽しみいただきたい。

 最後に、黒田の会話に出てくる含蓄のある言葉を黒田語録としてご紹介しよう。
 今回はストーリーを楽しみながら、読者にとって学びの糧を得られるという魅力が濃厚にある。所轄署長の立場になった黒田が、部下に語る信念であり助言指導である。
*情報が真実ならその理由を、虚偽ならばその背景に興味を持てば、おのずと先が見えてくる。 p68
*最初はたった一人でいい。信頼できる人を見つけたら、相手にも心を開いてもらう。
 そこまでできれば道は開けるよ。ある人を信用したら、とことん信用することだね。p68
*その土地の市民が何を必要としているのか分かる人間になれ。 p88
*人事で大切なのは適材適所であるかどうか。それを見極めるのが、上に立つ者の重要な仕事だと思うよ。  p97
*長く滞在する場合は、市場と学校をみておくといい。 p99
*まずは、海外に行く前に世界史をきちんと学んでおかないとな。  p99
*情報は使った段階で再びゼロに戻る。常に新たな、誰も知らない情報を得ようとしていると、不思議と人脈は切れるどころか太くなっていく。 p175
*トップなんかに会う必要はない。トップを目指す者を見つけて協力者にするんだ。・・・・熾烈な競争があるところに情報は集まってくるからだ。・・・・そしてトップに上り詰めた者は、情報を持っている者を大事にする。それがトップから可愛がられる秘訣だ。可愛がられれば、新たな情報提供者を紹介してもらえるかも知れない。そうやって世界を広げていくんだ。 p176
*価値ある情報が、どういう形でトップに伝わっているのか。それを確認することは組織の実態を知ることに繋がる。情報の最短距離はどのルートなのかが分かれば、その次はもっと早く情報をキャッチできるかもしれないからね。 p176
*休みは大切にしろ。休めない休めないと言うやつは、仕事が遅くて計画性がないからだ。適度に休むと仕事の効率が上がる。  p220
*宗教団体の捜査をすることがあったら、財務を徹底的に調べ上げることだな。それが解明できたら、その教団は一生、こちらの言うことを聞くようになるぜ。
 そいつらを協力者に仕立てればいい。捜査の出だしで手を抜くと、うっかりこちらが向こうのタマに仕立て上げられてしまうから気をつけろ。何事も初動が肝心なんだ。 p333

 ご一読ありがとうございます。

本書を読んだ波紋として関心事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
サイバーテロ  :ウィキペディア
サイバー攻撃の目的とは?どんな種類があるの?  :「HITACHI」
高度化するサイバー攻撃の手口とその対策     :「HITACHI」
サイバー攻撃対策   :「警察庁」
サイバーセキュリティ対策本部  :「警視庁」
ダバオ市初のIT経済区、PEZA認定 :「NNA ASIA アジア経済ニュース」
キーロガー   :「サイバーセキュリティー情報局」
お使いのデバイスからキーロガーを検出・駆除する方法と6つの予防策  :「Norton」
宗教事業協会  :ウィキペディア
バチカン銀行元総裁、公金横領と資金洗浄で禁錮8年11月 :「AFP BB News」
中国製スパイチップ疑惑、グーグルは以前から警戒 2018.10.10 :「日経XTEC」
「米粒スパイチップ」だけじゃない 中国に“情報を盗まれる”恐怖:「ITmediaビジネス」
内閣官房のデータ流出 サイバー攻撃対応の訓練情報も流出判明 2021.6.2 :「NHK」
ロシア系ハッカー集団 24か国サイバー攻撃 マイクロソフト発表 2021.5.29 :「NHK」

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こちらの本も読後印象を書いています。お読みいただけるとうれしいです。
『警視庁情報官 ブラックドナー』   講談社文庫
『警視庁情報官 トリックスター』   講談社文庫
『警視庁情報官 ハニートラップ』  講談社文庫
『警視庁情報官 シークレット・オフィサー』   講談社文庫
『電光石火 内閣官房長官・小山内和博』  文春文庫
『警視庁公安部・青山望 最恐組織』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 爆裂通貨』 文春文庫
『一網打尽 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 国家簒奪』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 聖域侵犯』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 頂上決戦』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 巨悪利権』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 濁流資金』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 機密漏洩』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 報復連鎖』 文春文庫
『政界汚染 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『完全黙秘 警視庁公安部・青山望』 文春文庫


『警視庁情報官 ブラックドナー』   濱 嘉之   講談社文庫

2021-06-04 20:13:58 | レビュー
 警視庁情報官シリーズの第4弾! 文庫書き下ろしとして2012年10月に出版された。
 かなり前に読了していたのだが、読後印象記を書くのが遅くなった。改めて斜め読みをしつつ、感想をご紹介したい。
 タイトルをみれば、警察小説というジャンルを前提にまずなにがしかの連想が湧き起こる。ブラックといえば当然「闇の世界」「闇社会」となる。「ドナー」といえば第一羲は寄付をする人を意味する。第二義は、献血、腎臓や心臓などの臓器提供という医療絡みの提供者という意味が続く。まず後者の意味を結びつける。二語のつながりでの連想は臓器売買か・・・。連想はほぼ的を射ることに。実にストレートなタイトルと言える。

 「プロローグ」は黒田純一が十連休を取り、遙香を誘ってハワイ旅行に行く。あるホテルのテラスでの場面から始まる。遙香が楽しみにしていたスパで150分のボディトリートメントを受ける間、黒田はそのホテルで時間つぶしに読書に浸っている。マッサージを受けて戻ってきた遙香がテラス前のプールに意外な人物を見つけて驚いたのである。名前を聞き、黒田も即座にフルネームが出た。遙香の説明と総合すると・・・・。その人物は宝田宗則。警視庁指定広域暴力団二次団体の組長。宝田は病気を理由に隠居生活の立場だが経済ヤクザとして組内での勢力を保つ。遙香の勤めるキリスト教系の聖十字病院に肝硬変で入院。治療法は肝臓移植のみ。半年ほど前にVIP待遇で入院しドナー待ち状態だった。だが2ヵ月ほど後にカリフォルニアの病院に転院したと遙香はいう。黒田は勿論持参のデジカメで写真と動画を撮った。そして、警視庁本部にデジタル画像をメールで送信した。
 宝田宗則がアメリカで臓器移植手術を受けていた。その宝田がカリフォルニアでなくハワイに居る。これがこのストーリーのトリガーとなる。

 宝田は極盛会宝田組組長である。極盛会自体は兵庫に本拠地を置く警視庁指定広域暴力団。宝田の地元は名古屋だが、10年ほど前に宝田宗則は東京・八王子に事務所を構えていた。極盛会の東京進出への拠点となる。宝田は「企業舎弟」という新語を生んだ立役者、経済ヤクザなのだ。

 黒田の送信した画像情報が、警察庁・警視庁内にまず大きな波紋を広げていく。この時点で、警察庁の組対部暴力団対策課長ですら、宝田の所在を把握していなかったのだ。黒田の送信したメールを警視庁公安部長が入手する。そもそも宝田は司法取引にでも応じない限り、アメリカに入国できない背景があると、警視庁の中村公安部長は認識していた。

 ストーリーは7章構成で進行していく。「第1章 容態」「第2章 現地」「第3章 潜入」「第4章 危機」「第5章 深部」「第6章 告白」「第7章 捜査」である。

 当然ながらストーリーは宝田の容態から始まる。宝田が地元・名古屋の個人病院で担当医の室井から寿命は半年から長くて1年、治療手段は肝移植だけと診断される。室井が東京の聖十字病院の医師五十嵐を紹介する。室井の友人で、優秀な外科医であり、アメリカでの経験を積んでいるという。
 ストーリーの進展を箇条書きの疑問文でなぞってみよう。それがどのような展開になるのかが読ませどころとなる。
1. ヤクザの宝田がなぜアメリカに入国できたのか? その方法は?
2. 臓器移植手術の大前提となる臓器提供、言い換えれば臓器流通のしくみはどうなっているのか?
3. 黒田は西葛西の小料理屋で、知り合いの不動産会社社長伊東にPパブへ誘われる。
  黒田はこの経験から、どういう情報を知り、どんなヒントを得るか?
4. 黒田は警察庁と警視庁、警備警察と刑事警察の関係をどのようにとらえ、宝田の事案に対してどのような立場をとっていくのか? 上司にどう対応していくか?
5. 黒田は飯田公総課長から情報室捜査員のハワイへの派遣依頼を受ける。
  黒田は捜査員の内田仁と栗原正紀を筆頭に2班計10名をアメリカ本土に出張させる構想を立てる。一方、事前に黒田自身はマニラに行くと上司に進言する。
  それはなぜか? そして、黒田は何をつかむのか?
6. 黒田は身辺に異変を感じ始める。黒田はどのように対処していくか? 
  宝田の事案との関連性は?
7. 内田と栗原を各チームのリーダーとする捜査班がアメリカで何を突き止めるか?
8. 異変を感じた黒田の対処により、炙り出されてきた警察官の果たした役割は何か?
  それは宝田の事案に関連する? 黒田に関わる別の問題が絡んで来ているのか?
9. 捜査情報が集約されるにつれ、宝田の事案がそれにとどまらない様相をみせる。
  黒田が拉致されるという緊急事態が発生する。黒田は窮地にどう対処できるのか?
10. 黒田の指示で中国捜査チームが派遣される。これは一連の経緯にどう関係するのか?
  危地を脱した後で、黒田が部下の山添に言った言葉を一つ取り上げておこう。
 「大切なのは複眼的な思考だよ」(p274)

 このストーリー、宝田の肝臓移植手術という事案はまさにトリガーでしかなかった。そこから派生する諸事象が「臓器移植」という根元を巡り複雑に絡まり合って行く。捜査の急激な拡大と進展、そして大団円的な逮捕のXデーが決まる。

 「エピローグ」に2つの事実が加わる。
 遙香が黒田に告げる決意。そして、黒田に出された異動の辞令。

 このシリーズはインテリジェンス小説としてのおもしろさで読み継いでいる。
 今回はその観点からみると、まず第1の魅力は、臓器移植という医学領域の一端を垣間見させる情報をフィクションの形で読者に提示していることである。
 本書で著者は次のように記す。
「日本における臓器移植の症例はアメリカの数百分の一にも満たないのが現実だ。近年、ようやく国内でも肝移植手術のガイドラインが整ってきてはいたが、相応の技術をもった医師の数が圧倒的に不足していた。」(p70)
 これがこの小説が構想された根底にまずあるのだろう。そこにグローバル視点での臓器提供・臓器流通のしくみ・実態が重ねられていく。臓器があって移植手術が成立する。
 臓器移植技術の動向はたぶんこの10年間ではるかに発展拡大しているかもしれない。臓器提供者の実態はどうなっているのだろう・・・・・。
 私にとって、第2の魅力は、やはり要所要所で挟まれる黒田とクロアッハの核心にせまる会話である。この情報交換がストーリー展開の要になり、捜査を方向づけていくヒントにもなっている。
 第3に、捜査員の公式なアメリカ派遣にはどのようなしくみ、手続きがかかわるのかということ。位置情報の使われ方、さらに黒田が部下指導で語る要諦など、そんな副次的情報が学べるのも興味深い。
 
 ご一読ありがとうございます。

 本書からの関心の波紋としてネット検索してみた。一覧にしておきたい。
臓器移植の基礎知識  :「Green Ribbon Campaign」
ガイドライン  :「日本移植学会」
法令集&マニュアル  :「日本臓器移植ネットワーク」
現行法における小児脳死臓器移植に関する見解  :「日本小児科学会」
臓器移植医療と倫理  看護実践情報  :「日本看護協会」
日本の臓器移植の歴史  :「日本心臓移植研究会」
10.腎移植     :「日本腎臓学会」
世界の移植市場は大幅な成長を記録し、2026年までに240億9000万米ドルに達する準備ができています   :「PRTIMES」
臓器保存市場ー分析2019-2027年-サイズ、傾向、シェア、成長機会、トップキープレーヤーおよび業界の見通し :「PRTIMES」
Organ Preservation Market Analysis 2019-2027 - By Global Industry Outlook by Size, Trends, Shares, Growth Opportunity, Top Key Players and Forecast :「KENNETH RESEARCH」
臓器売買  :ウィキペディア

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こちらの本も読後印象を書いています。お読みいただけるとうれしいです。
『警視庁情報官 トリックスター』   講談社文庫
『警視庁情報官 ハニートラップ』  講談社文庫
『警視庁情報官 シークレット・オフィサー』   講談社文庫
『電光石火 内閣官房長官・小山内和博』  文春文庫
『警視庁公安部・青山望 最恐組織』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 爆裂通貨』 文春文庫
『一網打尽 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 国家簒奪』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 聖域侵犯』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 頂上決戦』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 巨悪利権』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 濁流資金』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 機密漏洩』 文春文庫
『警視庁公安部・青山望 報復連鎖』 文春文庫
『政界汚染 警視庁公安部・青山望』 文春文庫
『完全黙秘 警視庁公安部・青山望』 文春文庫

臓器移植に関連する本を以前に読んでいます。こちらもご一読いただけるとうれしいです。
『レッド・マーケット 人体部品産業の真実』 スコット・カーニー  講談社


『疾風ロンド』  東野圭吾  実業之日本社文庫

2021-06-03 13:53:37 | レビュー
 スキー場を舞台とし、その一隅に人々を恐怖に陥れる物質を埋設する。それをもとに脅迫し大金を得ようとする犯罪行為にまつわるストーリー。この発想の原点は第1作と同じである。ならば、おもしろみがない・・・のでは、とならないところがやはりストーリー・テラーというべきか。

 葛原克也は、己が熟知するスキー場のコース外で、大きなブナの木の根元の雪を掘り、深さが30cmほどの穴を作った。そこにある「品物」を埋設する。そして、デジカメで証拠写真を撮る。その木に、顔の高さあたりに釘を打ち、小さなテディベァを吊した。そのテディベアが発信器の役割を担うのだ。埋設した品物とは、彼自身が密かに開発した強力な生物兵器だった。勿論、その開発は禁止行為である。
 コース外との境界になるロープの辺りに戻ったところで、葛原はパトロール隊員につかまり注意を受ける。そのあと綿密に練り上げ計画し、作成していた脅迫メールに証拠写真を添付し、葛原はメールを送信した。天候が悪化してきたので、葛原は直接東京に戻る予定を変更し、温泉でゆっくり一泊して戻ることにした。その時点では「才能ある人間は犯罪を実行する場合でも非凡なのだ」(p12)とうぬぼれていた。ゲームの始まりだ。
 
 場面は、東京の泰鵬大学医科学研究所に転じる。大学院を出て23年になる最古参研究員の栗林和幸が、研究所で月曜日の定例実験室内チェックをしていて異変に気づく。バイオセフティレベル4に相当する部屋の冷凍庫に保管されているはずのケース5つのうち、2つが消えていたのだ。現在ここに保管されている病原体は1種類だけ。栗林はあわてて生物学部長の東郷雅臣のもとに報告に行った。
 その時、東郷は既に葛原からの脅迫メールを受け取っていた。栗林の報告は、この脅迫メールが悪ふざけではないことを裏付ける結果となる。
 脅迫メールの差出人は「K-55」。これは盗まれたケースの中身の名称でもあった。その研究を主に担当してきたのが葛原だった。彼は、ワクチン開発に取り組む一方で、生物テロについての研究もしていた。勿論、後者の開発研究は重大な法律違反である。事情を知った東郷は、即座に葛原を解雇していた。だが、東郷は葛原が開発するまで彼の研究を黙認していたことになる。東郷にとり、警察への盗難の通報は論外だった。

 そんな矢先に、埼玉県警から東郷に連絡が入る。関越自動車道上りの本庄児玉インターを過ぎたあたりで交通事故が発生。葛原が死亡したという報せである。
 生物兵器となる病原体を入れた容器を雪の下に埋設し、脅迫メールを送付してきた葛原が死んだ。綿密に練り上げた計画とはかかわりなく・・・・偶発的にあっさりと。
 さて、どうなる!?

 脅迫メールには、写真の場所の確定と方向探知受信機の入手というクリアすべき2つの条件が記されていた。その条件のもとに、葛原は3億円での取引をメールで伝えてきていた。
 犯人が死んだ。死人に口なし。このまま無かったことにして、知らぬふり・・・・。
 残念ながらそれはできない。雪解け時期が来て、土中の気温が摂氏10度以上になると、エボナイト製の栓が膨張し、ガラスケースが破損するのだ。破損すれば、生物兵器となる!
 葛原は、メールに発信器のバッテリーは1週間しか保たないと明記していた。

 まったく違うストーリー展開になっていくことが、これでおわかりだろう。
 俄然、おもしろくなる。読者の惹きつけ方がうまいなと思う。

 ここで、読者を惹きつける要素が既に仕組まれている。葛原が一泊して東京に戻ることを決めた。その続きに、スキー場に近い居酒屋で根津昇平と瀬利千晶が1年ぶりに再会する場面が描かれる。根津は2年前に知り合いに誘われて、別のスキー場に移り、こちらでもパトロール隊員をしているのだ。葛原のコース外行動に警告を発したのは根津だった。千晶とは大会に出場するためにこのスキー場に昨年来たとき以来の再会だった。
 この時点で、根津と千晶がこの事件に関わっていくのだろう・・・読者はそう予測し、やはり期待することになる。

 そこで。東郷は栗林に内密でスキー場を特定し、生物兵器の埋設された場所の発見と回収を厳命する。警察に連絡すれば失職、うまく回収できれば副所長のポストを用意しようと持ちかける。息子秀人が来年高校受験を迎える栗林は、東郷の指示に屈してしまう。
 そこからこのストーリーが進行していく。栗林秀人はスノーボードに熱中していて、機会をつくっては友人たちとスキー場に出歩いていた。栗林は理由を明かさず、スノーボードなどを新たに買ってやるという甘い餌で秀人に協力させる手を思いつく。

 このストーリー、設定が巧みだ。まず交通事故という状況の設定である。葛原の遺体が安置されている病院に、東郷と栗林が要請をうけ出向き本人確認をする。その折、大学の備品持ち出しという理由で、手際よくタブレットや方向探知受信機を回収したのである。これで、条件の一つはクリア。
 脅迫メールに添付の写真から、スキー場をどのように特定できるか? もちろん、葛原は簡単に特定できるような景色の撮り方はしていない。東郷は栗林に丸投げする。
 このスキー場の特定はどのように? これがなかなかおもしろい。その進展が最初の読ませどころとなる。
 
 葛原は解雇された後に、セキュリティ管理の厳しい実験室内に侵入して盗み出していることになる。研究所内にそれと知らずに協力する立場になった人間がいるはず。その密かな調査を東郷がする。この協力者が実はくせ者だという設定がストーリーにおもしろさを加える。

 スキー場が特定できれば、勿論栗林はスキー場に乗り込み、添付されていた写真と方向探知受信機を使って、密かに埋設地点を探そうとする行動に移る。学校を休ませて、秀人を伴いスキー場に赴くのだ。
 スキー場では様々なハプニングが連続していく。そもそも、栗林は若い頃にスキーの板をはいた経験だけであり、やっとボーゲンで滑れる程度なのだ。栗林の生物兵器埋設場所の探索は、最初から困難を極めるドタバタと言える。そこへ、それとなく近づいてくる男が現れる。また、栗林はピンクのウエアを着た小学生の女の子とその両親にゲレンデで知り合うことにもなる。女の子が栗林の前に突然現れ、栗林は尻餅をつき滑り落ちたのがそのきっかけだった。このスキー一家が事件に巻き込まれていくことにもなる。また、栗林の雪中でのドタバタ行動にパトロール隊員根津が救助という形で関わって行くことになる。
 一方、栗林父子がスキー場に赴いた時、地元の板山中学の2年生、総勢60人あまりがスキー授業に来ていた。父親のスキー技術を心配しながらも、秀人はスノーボードに熱中していく。そして、スキー授業に着ていた山崎育美という中学生と知り合うことに。秀人にちょっとした恋心が芽ばえる。秀人が育美と知り合うことがきっかけで、育美の同級生でスキーの上手な男子生徒たちとの接触も始まって行く。
 
 いろいろな要素が織り込まれながら、生物兵器埋設地点の探索が進展していく。
 読者をハラハラさせる繰り返しがなかなか巧みに展開されていく。

 「ロンド」を辞書で引くと、「同じ主題の旋律が何度も繰り返される間に異なる旋律がいろいろはさまれるもの」(『新明解国語辞典』三省堂)とある。
 このストーリーでは、栗林が悪戦苦闘しながらスキー場で埋設地点を特定しようとする行動が「同じ主題の旋律」になる。その旋律はさまざまにバリエーションを加え繰り返されて行く。そのバリエーションに根津と千晶が深く関わって行く羽目になる。
 その間にスキー場に居る人々が「異なる旋律」をさまざまにはさんでくることになる。栗林にそれとなく近づく男、小学生の女の子とその両親、板山中学のスキー上手な男子生徒たち、東郷のプレッシャー、スキー場の『カッコウ』という店の人々・・・・。それらの異なる旋律が、主題の旋律に収斂していく。
 このストーリー、まさにロンド風である。スキー場が舞台だから、勿論様々な形でスキー場内を滑走していく場面が描写される。それは「疾風」場面でもある。また、この事件を解決するために、根津は最終ステージでまさに疾風の如くに行動せざるをえない立場に追い込まれていく。おもしろい。
 ストーリーの最後はあるニュースの報道で終わる。それが実に滑稽なのだ。
 楽しめるストーリーである。

 ご一読ありがとうございます。

ふと手に取った作品から私の読書領域の対象、愛読作家の一人に加わりました。
次の本を読み継いできています。こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『白銀ジャック』  実業之日本社文庫
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』  角川文庫
『禁断の魔術』  文春文庫
『虚像の道化師』  文春文庫
『真夏の方程式』  文春文庫
『聖女の救済』  文春文庫
『ガリレオの苦悩』  文春文庫
『容疑者Xの献身』  文春文庫
『予知夢』  文春文庫
『探偵ガリレオ』  文春文庫
『マスカレード・イブ』  集英社文庫
『夢幻花』  PHP文芸文庫
『祈りの幕が下りる時』  講談社文庫
『赤い指』 講談社文庫
『嘘をもうひとつだけ』 講談社文庫
『私が彼を殺した』  講談社文庫
『悪意』  講談社文庫
『どちらかが彼女を殺した』  講談社文庫
『眠りの森』  講談社文庫
『卒業』 講談社文庫
『新参者』  講談社
『麒麟の翼』 講談社
『プラチナデータ』  幻冬舎
『マスカレード・ホテル』 集英社

『利休とその一族』  村井康彦  平凡社ライブラリー

2021-06-02 21:45:10 | レビュー
 本書のタイトルを最初に見た時は、利休とそれに続く系譜の千家一族と茶道の変遷に触れている本かと想像した。これまた長らく書架に眠っていた本。ステイ・ホームの機会に引っ張り出してきて遅まきながら読んだ。本書で考察される展開は、当初の想像とはかなり違っていた。
 利休の茶の湯と彼の生涯を考察するのは定石として、その次に「利休の周辺」にいた利休の弟子たちと彼等の後についてピンポイントで考察していく。その後に利休一族のうち特定の3人に的をしぼって考察が展開されるだけである。利休の切腹後に、同時代を生きた「道安と少庵」の二人。次にその後継者となる宗旦が加わる。勿論利休及び彼等3人の周辺の人々も取り上げられていく。利休の一族としてはその範囲に留まる。
 とは言いながら、今までに道安・少庵・宗旦を取り上げ考察する本を読んだことがないので利休の茶の湯のその後の系譜に一歩踏み込むことができた。
 
 「一 利休の生涯」については、「与四郎登場」「天文茶会記」「茶頭の時代」「城と山里」「北野大茶湯」「大茶湯余話」「秀吉と利休」「利休の墓」という形で、利休の生涯の特定の局面に焦点をあて、現存の史資料を分析し考察を積み上げ、推論されている。印象深い論究が数多くある。
*利休の祖父は足利義政の同朋衆千阿弥ではなく、時宗信者で千阿弥を名乗った人物が居たのではないかという推論。千家は田中一族の分家筋で、千家家譜は江戸時代に作られたものと推論している点。
*「城館と山里、天守閣と草庵-それは黄金趣味と侘数寄の共存であり、その対立的共存のなかに、かえってこの時代の美意識が存在したと考えられる。」(p35)とし、著者は利休の中に秀吉的なものがなかったとはいえないと論じている。この点がおもしろい。
*北野大茶湯は高札での報せとは別に、一日限りの実施という考えがあったと論究されている点。またその後日譚である吉田兼見の日記の記事紹介がおもしろい。
*利休切腹の背景について諸説があるが、ここでもそれについて一石が投じられていて参考になる。
*著者は、茶会のもつ寄合性・密室性、つまりその政治的機能に着目し、秀吉の茶頭となった利休において、側近・利休としての個人的な才能を重視する。
 そして、「利休の芸術上の飛躍と、側近としての政治的活動、かりにこれを利休における芸術性と俗物性というなら、この二つは、利休という一個の歴史的な個体においては、一つであって二つではなかったといわねばならない」(p75)と論じ、「利休は秀吉あっての利休であり、治者との関わりにおいて茶の湯を大成した」(p75)と結論づけているところが印象的。「秀吉あっての利休」がキーワードになっている。その上で利休の美意識論が展開されていて興味深い。

 「二 利休の周辺」では、利休七哲についてはさらりと触れるだけで、焦点は古田織部、細川三斎の二人に絞りこまれ、その先で小堀遠州と上田宗箇が考察されている。
 私には、織部のヒズミ茶碗より前に、牧村兵部のユガミ茶碗があったという事例を初めて知った。このことと、「上田宗箇の人と茶」という題の考察で上田宗箇について多少知り得たことが収穫である。

 「三 道安と少庵」では、利休の嫡男である道安と妻・宗恩の連れ子である少庵との関係、彼等が利休切腹後にどのような立場に立たされたのかについて理解を深めることができた。勿論、それでもなぜ、利休が実子の道安ではなく、継子の少庵に茶統をつがせたのか。その肝心な点は謎のままである。このあたり、小説世界において、利休のアフターという状況下で、史実の間の空隙を補い茶の湯展開の道筋を描くというテーマとして好材料になりそうな気がする。
 史実と資料に基づいて、著者は同年齢だった道安と少庵を考察していく。興味深いのは「道安囲の虚実」の考察である。道安「蹇病」説の存在を述べる一方、「少庵は足が不自由という身体的な悪条件を背負っていた」(p149)と著者は言う。足の不自由さについて道安と少庵の入れ替わりの可能性を論じている。そして、「いわゆる道安囲についても別個の理解が必要であろう」(p153)と著者は言う。
 この第三のセクションの考察を読み、道安、少庵の人物像をイメージしやすくなるとともに、逆に謎も深まった気がする。

 「四 宗旦の世界」で、少庵の嫡男・宗旦は、11歳で天正16年中に大徳寺に入り喝食になったと著者は考察する。その宗旦が大徳寺を出て、家に戻り父とともに千家の再興にあたる。だが、仕官の道を選ばず、相続した資産を基盤とするだけの清貧に甘んじる生き方をしたという。「乞食宗旦」と称されるようになる。
 ここを読んでおもしろかったのは、己の子供たちや弟子たちの仕官には極めて積極的だったということ。「乞食宗旦」というイメージしかなかったので、宗旦の心の二面性を知る機会となった。
 昭和46年(1971)に表千家伝承の宗旦文書が『元伯宗旦文書』として公刊されたそうである。宗旦と子息宗左との間の手紙などを例示し、著者は考察を進めている。宗旦の心情が表出されていて興味深い。
 このセクションの最後に、著者は宗旦四天王と称されたの弟子も考察している。『茶道便蒙抄』や『茶道要録』を記した山田宗徧、「勢州(伊勢)茶楽人」「日本茶楽人」と称した杉木普斎、「茶伯子」とも言われたという藤村庸軒、『茶月指月集』を記した久須見疎安である。

 やはり「三 道安と少庵」「四 宗旦の世界」の二つのセクションは、まとまった考察が行われているという観点で、一般読者にとっては一つの読ませどころになっていると思う。
 
 「五 利休の実像と虚像」が最後のセクションである。立花実山が記した『梵字草』と彼が所持していた『南方録』を素材にし、立花実山を介して著者は利休に迫ろうとしている。そして最後に、薮内家の五代竹心(紹智改め)著『源流茶話』を考察する。この書が鮮明に展開した持論は「茶の源流、すなわち利休に戻れと主張した」(p286)という点にあると説く。一方で『源流茶話』の持つ別の主張の側面にも触れている。

 茶の湯の歴史を知る上では、有益な一書である。

 本書は1987年2月に平凡社より刊行された後、誤記誤植の訂正や表現上の改訂を施し、1995年5月に平凡社ライブラリーの一冊として、初版発行された。
 些末なことだが、それでも気づいた箇所がある。p81で「武蔵紹鴎」となっている。明らかに「武野紹鴎」のはず。もう1箇所、p43に「松原通りを五条通りとするなど道路の整備を行なったのも、」という一節がある。思い違いか、校正ミスだろう。現在の松原通りがもとは五条通りである。豊臣秀吉が、南に五条通りを付け替えるという工事を行い、もとの五条通りを松原通りと称するようにした。現在の松原通りを西へ歩めば、西洞院通りに至り、五条天神宮が所在することでおわかりいただけると思う。

 ご一読ありがとうございます。

本書を読むことで関心を抱いた事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
茶の湯 こころと美  ホームページ
   武野紹鴎  
   利休の後継と千家の再興 
   千宗旦 「元伯宗旦文書」より  15の文が掲載されています。
裏千家今日庵  ホームページ
   裏千家歴代
   裏千家系図 
武者小路家官休庵  ホームページ
   三千家系譜
茶の湯の歴史 ホームページ
   千家の再興
   宗旦とその息子たち 
古田重然  :ウィキペディア
遠州流茶道  公式サイト
茶道 上田宗箇流  ホームページ
杉木普斎   :「コトバンク」
鳥羽城主も一服請う-「世に名高き茶人」杉木普斎  :「歴史の情報蔵」
山田宗徧   :「コトバンク」
藤村庸軒   :ウィキペディア
藤村庸軒と茶席の菓子  :「虎屋」
久須見疎安  :「コトバンク」
【16:00~16:30 山田宗徧】Online Art Salon Spin off  YouTube
宗徧流四方庵  ホームページ
薮内家の茶  オフィシャルホームページ

   インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


これまでに、茶の世界に関連した本を断続的に読み継いできています。
こちらもお読みいただけるとうれしいです。

=== 小説 ===
『利休の闇』 加藤 廣  文藝春秋
『利休にたずねよ』 山本兼一 PHP文芸文庫
『天下人の茶』  伊東 潤  文藝春秋
『宗旦狐 茶湯にかかわる十二の短編』 澤田ふじ子  徳間書店
『古田織部』 土岐信吉 河出書房新社 
『幻にて候 古田織部』 黒部 享  講談社
『小堀遠州』 中尾實信  鳥影社
『孤蓬のひと』  葉室 麟  角川書店
『山月庵茶会記』  葉室 麟  講談社
『橘花抄』 葉室 麟  新潮社

=== エッセイなど ===
『利休 破調の悲劇』  杉本苑子  講談社文庫
『茶人たちの日本文化史』  谷 晃   講談社現代新書
『利休の功罪』 木村宗慎[監修] ペン編集部[編] pen BOOKS 阪急コミュニケーションズ
『千利休101の謎』  川口素生  PHP文庫
『千利休 無言の前衛』  赤瀬川原平  岩波新書
『藤森照信の茶室学 日本の極小空間の謎』 藤森照信 六耀社
『利休の風景』  山本兼一  淡交社
『いちばんおいしい日本茶のいれかた』  柳本あかね  朝日新聞出版
『名碗を観る』 林屋晴三 小堀宗実 千宗屋  世界文化社
『売茶翁の生涯 The Life of Baisao』 ノーマン・ワデル 思文閣出版

『図説 古代出雲と風土記世界』 瀧音能之 編  河出書房新社

2021-06-01 18:40:59 | レビュー
 「出雲」という地名を印象深く記憶したのは学生時代、古文の授業の時だった。旧暦で10月を「神無月」と言う。それに対して「神在月」と呼ぶ地方がある。それが島根県の「出雲」である。「神無月」には日本全国の神々が出雲の地に集合される。だから、出雲では「神在月」と称されると。その学びが記憶に残る。それ以来、「出雲」に関心を抱いているが残念ながら未だ訪れたことはない。
 いつだったか「出雲」を意識したときにたまたま入手したのがこの本である。コロナ禍のステイ・ホームで、やっと書棚に眠っていた本を目覚めさせて遅ればせながら読んでみた。
 111ページのボリュームで古代出雲についての知識を広げる入門書としては読みやすい。1998年9月の出版なので、はや古書の部類になるかもしれないが、歴史の視点では決して古くはない。各ページに写真、地図、図表などが掲載されていて、それぞれの研究分野毎に、各執筆者が分担して解説されている。史実、文献資料、考古学的資料などを基盤に、一般読者向けであり「図説」に重点を置いた教養書と言える。

 冒頭に、「出雲の原像」として各種景観の写真が7ページに亘って載っている。写真に付された地名等の名称を列挙してみよう。稲佐浜、加賀の瀬戸、八岐大蛇退治神話(祭事の一コマ)、神庭荒神谷遺跡、加茂岩倉遺跡、諸手船神事、青柴垣神事、美保神社、出雲大社、熊野大社火殿、熊野大社。これらの諸景観が古代出雲にリンクしていく。
 これら原像の提示につづき、本書は5章構成で編集されている。
 「第1章 古代の出雲的世界」「第2章 出雲と記紀神話」「第3章 弥生時代の出雲」
 「第4章 出雲國風土記を歩く」「第5章 絵図にみる出雲大社と熊野大社」

 第1、2、4章の繋がりの中で、神話の世界でのテーマが語られ、第1、3章の繋がりの中で、出雲を中心にした青銅器文化圏というテーマが解説されていく。そしてもう2つのテーマに移る。『出雲風土記』の世界と現在の場所を対比しつつ語るというものと、祭事の世界-出雲大社と熊野大社-の古き時代の様相に触れている。

 まず、神話の世界に関して、興味深い論点を本書で学んだ。
 古代出雲を考える上で、『日本書紀』『古事記』には神話世界の一部として出雲神話が描かれている。伊弉諾尊が伊弉冉尊を慕って黄泉国に赴き、伊弉冉尊の正体を見て逃げ出し、黄泉平坂から現世に戻った神話。須佐之男命(素戔嗚尊)による八岐大蛇退治神話。そして、タケミカヅチ神とアメノトリフネ神がオオクニヌシ神に国譲りを迫るという国譲りの神話。これは記紀視点、つまり大和朝廷側の視点から描かれた出雲神話である。
 一方、本書のタイトルにある風土記世界の視点がある。それが『出雲国風土記』の記述。773(天平5)年2月に、出雲国造出雲臣廣嶋を監修者として編纂されたという。『続日本紀』によれば、元明天皇の和銅6年(713)年5月2日に畿内と七道諸国の地誌の編纂が命じられているので、相当の年月を経てこの出雲の風土記がまとめられたことになる。現存する風土記は5ヵ国だけで、その一つが『出雲国風土記』である。
 本書を読み、興味深いのは、第1章で2つの出雲神話が並存すると論じていることである。記紀に描かれた出雲神話に多少馴染んでいたので、「別な地域的な体系を持った神話」(p12)、「古代出雲人によって伝承されていた正真正銘の出雲人による出雲神話」(p13)という説明はすごく新鮮な印象を抱いた。単にこちらが無知だったということなのだが・・・・。
 一例として、記紀神話に載る八岐大蛇退治神話は有名であるが、『出雲国風土記』にはこの神話のことはまったく記されていないという。知らなかった!

 もう一つ、本書を読み一歩踏み込んで知識を広げられたのは青銅器文化圏のことである。
1973(昭和48)年 八束郡鹿島町志谷奥遺跡 銅鐸2個、銅鉾16本の共伴出土
1984(昭和59)年 簸川郡斐川町神庭荒神谷遺跡 神庭西谷の斜面 中細形銅剣358本出土
1985(昭和60)年 同上遺跡の出土地点から7mの地点 銅鐸6個、銅鉾16本出土
1996(平成8)年10月 大原郡加茂町大字岩倉字南ケ廻 銅鐸39個の一括埋納 出土
という発掘発見が相次いだ。それ以外にも島根県内には単発的な出土がみられる。

 本書の出版は、1998年なので、これら発掘出土の状況と資料がホットな時点において、一般読者向けに状況解説を兼ねていることになる。第3章では出雲独自の青銅器文化圏が存在したことが分布図も併せて詳しく論じられていておもしろい。本書の出版から二十有余年、出雲の青銅器文化研究は深まっていることだろう。本書は最新研究への導入書にもなりそうである。
 第3章で少し触れられている中に「弥生時代後期になると出雲をはじめとする山陰地域では四隅突出型墓という得意な墳墓が造られる」(p37)という説明がある。
 古墳文化も併せて、古代の勢力圏の様相、古代出雲に関心が出て来た。

 もう一つの柱は、『出雲国風土記』に記された地名など風土記世界を現在の景観とリンクさせて説明する第4章である。『出雲国風土記』を傍に置き参照しながら読むと一層理解が深まるのかもしれない。手許にないのでまずは本書の解説を読むに留まった。読後にインターネットで調べてみると、現代語訳を読めるサイトがあるのを見つけた。
 第4章は「『国引き神話』の景観」「カンナビの山々」「寺と新造院」「出雲の市」「出雲の神事」というテーマで考察されている。

 第5章は、古き時代の絵図に描かれた出雲大社と熊野大社について論じている。
 ところで、出雲大社について。「出雲大社」という名を知らない人は少ないだろう。だが、この名称は1871(明治4)年に改称されて以来の大社名称であるということを知る人は少ないかもしれない。近世以前は、「杵築大社(きづきのおおやしろ)」と称されてきたという。
 熊野神社は松江市の南郊外、八雲村熊野下宮内に鎮座し、出雲国一の宮だという。

 本書の出版後のことだが、2000(平成12)に出雲大社の境内地から巨大な宇豆柱が発掘されている。古代社殿の柱には直結しないようだが、中世の遺構であるのはまちがいない。本書には触れられていないが、島根県立古代出雲歴史博物館には「10世紀に、『雲太』ともよばれる高さ16丈(約48m)という日本一高大な本殿があったという学説に基づく縮尺1/10の模型」(ホームページより)として、「出雲大社本殿模型(平安)」が展示されている。これは本来なら杵築大社本殿模型という名称になるのだろう。

 古代出雲へのビジュアルな誘いの書として有益である。

 ご一読ありがとうございます。


本書に関連して、関心事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
稲佐浜  :「出雲観光ガイド」
荒神谷博物館  ホームページ
出雲神庭荒神谷遺跡  :「全国遺跡報告総覧」
荒神谷遺跡   :ウィキペディア
加茂岩倉遺跡  :「雲南市」
加茂岩倉遺跡ガイダンス ホームページ
加茂岩倉遺跡  :ウィキペディア
出雲神話とゆかりの地  :「縁結びパワースポットと出雲神話」
出雲国風土記現代語訳 ホームページ
【日本書紀】オオクニヌシの国譲り(本文)
【先代旧事本紀】スサノオのヤマタノオロチ退治

出雲大社  ホームページ
出雲大社  :ウィキペディア
大社造   :ウィキペディア
出雲大社本殿模型(平安) :「島根県立古代出雲歴史博物館」

   インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)