遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『ブラタモリ 2 富士山 東京駅 真田丸スペシャル 上田・沼田』 角川書店

2021-06-14 11:50:19 | レビュー
 富士山は2004年11月に山仲間に誘われて登った。あの頃はまだ体力があったなとふと思う。富士山という山自体に対する深い知識も無いまま、登山意識が優先していた。東京駅は関西からの出張の折、新幹線で到着し都内の目的地に向かう通過点という意識しかなかった。上田・沼田は未訪地。徳川秀忠が上田城を攻めあぐね、関ヶ原の戦いに遅参したくらいしか知らない。そんなところから、本書を読んでみることにした。
 
 「富士山」は2015年10月10・24日の2回でテーマ1を放送。10月31日にテーマ2を放送。「東京駅」は2015年7月20日に放送。「上田・沼田」は上田城を2016年1月2日に、沼田城を2016年2月13日に放送されている。
 本書の監修はNHK「ブラタモリ」制作班で、2016年7月に出版された。

 本書の基本構成コンセプトは繰り返しになるがまずご紹介しておこう。
  *ブラタモリの番組放映のテーマについて、番組の流れに沿って論点を説明。
  *番組では語り尽くせなかった部分の補足説明(番組出演した研究者等のVOICE)
  *番組で採り上げた地域の観光スポットのガイド
  *同行アナウンサーの番組裏話 本書は桑子真帆さんのトーク
である。

 例によって、本書から私が学んだ要点を覚書としてまとめてみたい。それが本書を開いてみようという誘いになれば幸いである。

<富士山> 
テーマ1「富士山はなぜ美しい?」
*富士山を祀る「富士山本宮浅間(ほんぐうせんげん)大社」(総本宮)は富士山とともに世界文化遺産に登録された。狩野元信印「絹本着色富士曼荼羅図」(同社蔵)がある。
*紀元前27年頃「浅間大神(木花之佐久夜毘売命)」を富士山麓に祀ったのが起源という
*現在の本殿は屋根が檜皮葺きの二重楼閣構造。1階は5間4面の宝殿(寄棟)造り、2階が間口3間奥行2間の流れ造り。1階の屋根は富士山を表し、2階は浅間大神の天上界をイメージ
*古来の富士山登山は信仰のため。麓の大社に詣で出発。山頂の聖なる場所に登山参詣
 現在の富士登山は富士宮口5合目(標高2400m)の登山口から登るのが一般的。
*浅間大社のシンボルは「湧玉池」。富士山を水源とする湧水。かつては登山前の禊の場所
 湧玉池は山裾末端のキワに立地。水は透水性の高い溶岩に沿って流れ溶岩のキワから涌出
*富士山は有史以降10回噴火。大規模なのが宝永噴火(宝永4年/1707年)で大地震が引き金に。
 富士山のマグマは粘り気の少ない玄武岩質。マグマ中の火山ガスが抜けやすい。
*富士山ではスパターが見られ、山腹には大小100ヵ所以上の割れ目火口が存在する。
*現在の富士山(新富士)は、先小御岳(せんこみたけ)、小御岳(こみたけ)、古富士(こふじ)という火山の活動結果を順次累積したのち、1万数千年前からの火山活動により形成された。新富士は4階建ての火山になる。
 新富士が噴火を繰り返し、古富士の大崩落のキズ跡を修復し、およそ2200年前に現在の富士山の形になった。宝永噴火で古富士の溶岩層が再び突き出ている。
*富士山の北西麓には側火山群が広がる。:奥庭、幸助丸、弓射塚、長尾山、片蓋山。
 富士山の周囲には100以上の側火山(山頂火口以外の小火山)があるという。

テーマ2「人はなぜ富士山の山頂を目指す?」
*山頂には富士山本宮浅間大社奥宮が鎮座。「大日本富士山絶頂之図」「蓮嶽真形図」
 江戸時代、登山者は火口を賽銭箱、山頂の8つの峰を仏に見立てて来迎を祈った。
 一岳・地蔵菩薩、二岳・阿弥陀如来、三岳・大悲観音菩薩、四岳・釈迦如来、五岳・弥勒菩薩、六岳・薬師如来、七岳・文珠菩薩、八岳・寶羯如来、中央・大日如来。八葉九尊。
 「ご来迎」は「ブロッケン現象」を頂上で見る体験。現在の登山者は「ご来光」目的。
*気象庁の有人観測が平成16年で終了。旧富士山測候所は学術・研究目的で今も有効活用

<東京駅> テーマ「東京駅の巨大地下空間は歴史の生き証人!?」
*1908年に駅舎建設命令が出され、1914(大正3)年12月20日に東京駅開業。辰野金吾の作品
*平成15年に国の重文指定を受け、2012(平成24)年10月1日に丸の内駅舎竣工(復原)
 新旧織り交ざった意匠:丸屋根、3階手すり壁、3階柱頭部、南北ドーム床面、同レリーフ
*東京ステーションギャラリー(駅中の美術館):100年前の構造レンガ壁の展示
 駅舎外壁に貼られた化粧レンガ(タイル)は「覆輪目地」施工技術を一から習得、再現
*東京駅丸の内側には総延長18kmの地下街空間が広がる。オフィス街と駅を地下通路で連結
 一方、丸の内には、江戸時代の「大名小路」の土地割りが現在も痕跡を残す。
*歩行者専用の丸ビル地下道には明かり取りの穴とアーチ状はりのデザインをそのまま保存
*丸ビルから始まり、ビルとビル、ビルと東京駅をつなぐ地下道は迷宮化するとともに、既存の地下鉄線や下水道管を避ける工夫が地下道に多くの「謎の勾配」を生み出している
*丸ノ内線と東西線の交差する箇所に2路線共存の工夫 ⇒ ”行ってこい階段”
*東京駅北側に走る永代通りの地下には幻の地下自動車道計画廃止で一部区間だけ残る
*丸の内のオフィス街地下25mの深さのトンネルに張り巡らされた配管は、「丸の内熱供給地域冷暖房プラント」システムとして地域一帯のビルにつながっている。冷水と蒸気という熱源が供給されている。本線のトンネルに支線トンネルが掘られ配管が枝分かれしていく。
*八重洲地下街は公共道路の地下にあり、地下街の通路自体も公共歩道。昭和40(1965)年代に八重地下街が誕生した。店舗数約180の巨大商店街。東京駅付近の地下駐車場開発を前提にできた地下街。車の出入りのスロープとの関係で斜めの天井の店舗もある。
*八重洲の地下街からの避難階段は、八重洲通りの中央分離帯に通じている。
*江戸城の外堀だった外堀通り沿いの敷地に建てられた鉄鋼ビルディングは建物もゆるやかに曲がった形で建築された。江戸時代の土地の痕跡を残す。
*江戸時代の北町奉行所の東側に築かれた江戸城外堀の石垣の一部は、八重洲北口付近に移築され軽量化し、ほぼ江戸時代の姿のまま積み直され、モニュメントになっている。
*常盤橋御門の木橋は明治期に石橋になった。その常盤橋がそのままの位置で公園に残る*歌舞伎座の建て替えに伴い、地下通路ができ、「木挽町広場」(木挽町御助蔵前広小路)と称し移動式店舗が並ぶ地下空間と繋がる。災害時を想定し人々を一時収容できる都市空間を兼ねる。東京駅の地下とリンクしている。

<真田丸スペシャル 上田(長野県)&沼田(群馬県)>
テーマ1「真田の城造りのスゴさを知る!」
*上田城は千曲川の河岸段丘上に築かれた。徳川勢を2度撤退させた。関ヶ原の戦い後破却
 仙石氏により再建され、明治に廃城となる。現在遺構の幾つかは復原。真田の痕跡残る
*城造りに残る真田の痕跡:東虎口櫓門そばのから堀。その石垣に排水の穴。安山岩で石垣隅を算木積み。そのまま使い仙石氏は凝灰岩で石垣を再建。台形状の石垣は真田の船着き場かも。城の西側の堀跡はすっぽりそのまま運動場になったほどの規模。上田の地質は上田泥流層。柔らかいが水を通しにくい。城造りに適した地質・地形だった。城の北、北国街道の外側に人工的に川(矢出沢川)を造り外堀にした。街道の両側に隙間なく町家を並べ、防御機能を高めた。街道を横切る川を暗渠にして上を道にし非常時は暗渠を破壊し川とする防御策。

テーマ2「河岸段丘の上に造られた天空の城下町」
*沼田城と城下町は利根川、薄根川、片品川に囲まれた河岸段丘の上に築かれた。
 JR沼田駅前(標高約330m)にそびえる「段丘崖」の高さは約80m。沼田は交通の要衝地
*あえて道を斜めに通し、家に角度をつけて武者隠しの空間を設けた。
 攻めてくる敵の勢いを長い坂道で止め、建ち並ぶ寺を武士や武装民で防衛ラインに。
*真田は10km以上も離れた山奥から町まで用水路を開削した。
 白沢用水と川場用水が合流し、城堀川という用水路が町中を流れる。
 川中に石で用水調節地点を設け、水の流れを変え、水を分配する仕掛けを設ける。
*近世にはこの段丘が発展の障壁に⇒市街地南側にゆるやかな土手を造り利根軌道を敷設
 テーマをもとにした探索内容から私が理解したのはこんなところ。
 今回は周辺情報がかなり詳しく盛り込まれているが、要点にはとりあげていない。古地図や現地図、現地景色の写真など、本書を手にすることで、ブラタモリのおもしろさは幾倍にもなると思う。観光ガイド情報もけっこう盛り込まれている。

 ご一読ありがとうございます。

本書に関連して関心事項をネット検索してみた。一覧にしておきたい。
富士山本宮浅間大社  ホームページ
火山景観-溶岩末端崖   :「地質研究所」
パホイホイ溶岩   :ウィキペディア
アア溶岩      :ウィキペディア
大日本富士山絶頂之図  :「東京大学学術資産等アーカイブズポータル」
富士山真景全図   :「神奈川県立歴史博物館」
八神峰       :ウィキペディア
富士山頂富士「八葉」の歴史  :「富士山豆知識コーナー」
東京駅周辺地下通路  :「旅をおもしろくする観光地図 今八」
東京駅一番街  ホームページ
東京駅構内図・周辺案内図   :「TOKYO STATION CITY」
木挽町広場  :「歌舞伎座」
丸の内熱供給とは   :「丸の内熱供給株式会社」
上田城 上田城跡公園  ホームページ
上田城跡公園   :「上田市」
沼田城跡   :「沼田市観光協会」
沼田城へ   :「さなだんごの旅」

  インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。

(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)


こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『ブラタモリ 1 長崎 金沢 鎌倉』 角川書店
『ブラタモリ 3 函館 川越 奈良 仙台』 角川書店
『ブラタモリ 4 松江 出雲 軽井沢 博多・福岡』 角川書店
『ブラタモリ 6 松山・道後温泉 沖縄 熊本』 角川書店
『ブラタモリ 7 京都(嵐山・伏見)志摩 伊勢(伊勢神宮・お伊勢参り)』 角川書店
『ブラタモリ 8 横浜 横須賀 会津 会津磐梯山 高尾山』  角川書店
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『ブラタモリ 13 京都(清水寺・祇園) 黒部ダム 立山』  角川書店
『ブラタモリ 14 箱根 箱根関所 鹿児島 弘前 十和田湖・奥入瀬』 角川書店
『ブラタモリ 15 名古屋 岐阜 彦根』  角川書店
『ブラタモリ 16 富士山・三保松原 高野山 宝塚 有馬温泉』  角川書店