不破氏は、「本題の社会主義理論の研究の問題ですけれども、大きくいって、社会主義への過渡期の問題と、それから、目標である社会主義社会をどうとらえるかという、『二つの大きな問題』ついて報告したい」述べ、「『過渡期をめぐる諸問題』について」、「5つの問題を提起」しました。
ここで問題とされている「過渡期の定義」について、不破氏は、「社会主義社会という目標についていえば、これは一口でいえば、人間による人間の搾取のない社会、それから、社会のすべての構成員が自由で平等な社会、これが大きな特徴だと思います。 マルクスは、社会主義の政権ができても一挙にこういう社会主義社会への移行ができるとは考えませんでした」
「その過程を『過渡期』と呼び、それを”資本主義社会から社会主義社会への、あるいは共産主義社会への革命的転化の時期”と定義しています」
その上で、「過渡期についてマルクスがなぜそれが長期の過程になると見たのか。 マルクスは、それを1世紀を超える期間になるだろうと推定していました」
不破氏の提起した「5つの問題」は、次のような内容です。
1、「生産者が主役」という原則 2、過渡期における市場経済ー資本主義部門との共存とその克服 3、過渡期における世界経済秩序の問題 4、革命の世代的継承の問題 5、過渡期の政治形態
「1、生産者が主役という原則」について、不破氏は次のように説明しています。
「ではなぜマルクスはその過渡期として、発達した資本主義国でも長期の時間が必要になると考えたのか。 マルクスは、社会主義的変革は、生産手段を社会の手に移しただけでは完了しないとし、生産現場で社会主義にふさわしい人間関係を確立する問題をなによりも重視したのです」
「資本主義のもとでは、多数の労働者が資本家あるいはその代理人の指揮・命令のもとで作業をしています。 政権が変わって、今度は、資本家に代わって国家の官僚が命令し監督する体制ができた、これが社会主義だといえるかというと、マルクスはそうではないというのです」
「彼(マルクス)は、その状態を『奴隷制の枷(かせ)』が残ったままだと、強い言葉で批判しました。 資本主義の社会で資本家がやっているのと同じことを社会あるいは国家の代表がやったのでは、生産現場が本当に社会主義の現場にならない、ということです」
「社会主義というのは自由で平等な人間が共同するところに特質がある。 時間がかかっても、生産現場に社会主義にふさわしい新しい人間関係、自由で平等な生産者の共同という新しい関係をつくる努力がどうしても必要になる。 ここにマルクスが過渡期の研究でもっとも重視した問題がありました」
”社会主義をめざす国々”をどうみるか。という、党大会議案では、「いやおうなしに資本主義国との対比が試される」という問題提起をし、その第一に、「『人民が主人公』という精神が現実の社会生活、政治生活にどれだけ生きているか」を挙げています。
こうした、徹底して、人間が人間として、その能力が最大限生かされ、尊重し合える社会。 その客観的可能性が日本にも存在していることを確信にしていきたいと思います。