宮応かつゆきの日本改革ブログ

●日本共産党
総選挙で市民と野党の共闘で政権交代を、共産党の躍進をめざします。

日ロ領土問題と交渉における米国の決定的な影響(1)

2018年11月29日 | 千島返還問題と日本共産党

 安倍首相とプーチンロシア大統領との日ロ領土交渉に関わって、米国の姿がほとんど報道れてていません。 一部では、米国の「意向に逆らって」進められているとの見方も伝えられています。

 「読売」紙は、11月26日(月)で「北方領土」問題等に関する世論調査結果を報道しました。(23日~25日実施)

 同調査によると、安倍首相とプーチン大統領の「1956年の日ソ共同宣言を基礎として、平和条約交渉を加速させる」合意に対して、「『評価する』答えた人は64%に上がった」そうです。 以下、内容を紹介します。

 「その一方、今後、北方領土問題が解決に向かうと『思わない』は62%。 前回のプーチン氏来日後の2016年12月28~29日調査では、思わない人が73%だった。 今回、否定的な見方は、2年前より下がったものの、なを半数を超えている」

 ロシアとの交渉に臨む政府の姿勢については、次のような調査結果も伝えています。

 「2島の返還を先に実現し、残りの島の返還を続ける」58%。 「4島が一括して返還させるようする」25%。 「2島の返還で決着させる」11%でした。

 安倍首相が、「日ソ共同宣言を基礎」にした交渉で歯舞群島、色丹島が返還されるのか、その確かな見通しさえ明らかになっていません。 いま、報道されているロシア側の態度は、「引き渡し」の際も「島の主権は協議対象だ」(プーチン氏、15日)というものです。 これに対しても安倍首相はコメントを避けています。 

 日本共産党の志位和夫委員長は、15日の記者会見で「2島返還で平和条約を結ぶことは絶対やってはならない」と厳しく指摘しています。 「読売」紙の世論調査でも、「2島の返還で決着させる」ことを望んでいるいる人は、11%にとどまっていることは注目されることではないでしょうか。

 千島列島及び歯舞群島、色丹島がどうような根拠と経過に基づき旧ソ連に占領され、70年以上に渡り、こうした異常な状態がつづいているのか。 この背景に、日本を「事実上の従属国」としている米国が決定的役割を果たしていることについて、検討してみたいと思います。

 

 

 


対米従属国家、そのもとで千島列島放棄を強いられている主権なき異常な国ー日本

2018年11月25日 | 千島返還問題と日本共産党

 日本共産党の綱領は、第2章で「現在の日本社会の特質」について述べています。【第4節】 その第1として、次のことを明らかにしています。

 「日本が独立国としての地位を失い、アメリカへの事実上の従属国の立場になったことである。 敗戦後の日本は、反ファッショ連合国を代表するという名目で、アメリカ軍の占領下におかれた。 アメリカは、その占領支配をやがて自分の単独支配に変え、さらに1951年に締結したサンフランシスコ平和条約と日米安保条約では、沖縄の占領を継続するとともに、日本全土においても占領下に各地につくった米軍基地の主要部分を存続させ、アメリカの世界戦略の半永久的な前線基地という役割を日本に押しつけた」

 「日米安保条約は、1960年に改定されたが、それは、日本の従属的な地位を改善するどころか、基地貸与条約という性格にくわえ、有事のさいに米軍と共同して戦う日米共同作戦条項や日米経済協力の条項などを新しい柱として盛り込み、日本をアメリカの戦争にまきこむ対米従属的な軍事同盟条項に改悪・強化したものだった」

 【第5節】では、「わが国は高度に発達した資本主義国でありながら、国土や軍事などの重要な部分をアメリカにに握られた事実上の従属国となっている」

 「日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている」

 「日本とアメリカとの関係は対等・平等の同盟関係では決してない。 日本の現状は、発達した資本主義諸国のあいだではもちろん、植民地支配が過去のものとなった今日の世界の国際関係のなかで、きわめて異常な国家的な対米従属の状態にある。 アメリカの対日支配は、明らかに、アメリカの世界戦略とアメリカ独占資本主義の利益のために、日本の主権と独立を踏みにじる帝国主義的な性格のものである」

 ここで指摘されている、1951年のサンフランシスコ平和条約と日米安保条約(1960年の改定)が、日本の憲法体制と相容れない日本の主権を奪い、対米従属国家という異常な事態の根源になっていることは明らかです。

 この条約は、アメリカ主導で、日本国内の全面講和をもとめる声も封殺して締結されたことも歴史的事実です。その条約には、知られているように、第2条(C)項が規定されています。 その内容は次のようなものです。

 「日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」

 アメリカはなぜこの規定を書き込んだのでしょうか。 

 それが、1945年のヤルタ会談でソ連のスターリンが、対日参戦の条件として、「千島列島の引き渡し」を要求し、その要求に米英側が応じ、そのことが、「根拠」となって、「サ条約」に盛り込まれたとみることは無理のないことではないでしょうか。

 日本政府は、「ヤルタ協定」について、「法律的効果をもつものではない」と否定していますが、「領土不拡大」という戦後処理の大原則に反する不公正なものであることについて正面から批判、堂々と是正を求めるべきではないでしょうか。 この立場が今、強く問われていると思います。

 日本の事実上の対米従属状態と一体に、千島列島の放棄、ロシアの占領状態が続けられています。 このことは、21世紀の今日の世界に例のない日本の異常な「主権なき国家」の実態が浮かび上がらせています。

 


「日本共産党の領土交渉の経過」ー不破哲三氏の「千島問題と平和条約」から

2018年11月24日 | 千島返還問題と日本共産党

 日本共産党は綱領(2004年1月採択)で千島問題について、次のように記述しています。

 「日本の歴史的領土である千島列島と歯舞諸島・色丹島の返還をめざす」

 この立場、方針に到達するまでには、歴史的経過があります。 1959年、党が50年問題を克服し、自主独立の立場を確立し、新綱領(61年綱領)を確立する過程でソ連共産党との最初の領土交渉が行われました。 不破氏の著書から紹介します。

 「1959年の日ソ両党会談―これは日本共産党とソ連共産党との最初の公式会談でしたーでまず、宮本書記長(当時)が領土問題を提起しました。 安保条約の改定とともに、日米軍事同盟の強化の道をすすむか、この道をたちきって真の独立・平和・中立の道にすすむかが、大問題になっていたときでしたが、日本がそういう軍事同盟の道をはなれ平和的・民主的な発展の道にすすんだ場合には、南千島の問題に新しい接近の可能性が生まれるということを、両党でたがいに確認しあいました」(「千島問題と平和条約」(103~104頁)

「これは、日ソの政府間交渉の3年後のことでした。 こちらが、道理ある立場を明確にして交渉した場合には、ソ連側も、『解決ずみ』論とか、歯舞、色丹以外は一切不動だという立場はとれなかったということを、しめしています」(同104頁)

「つぎに、71年の両党会談があります。 このときは、日ソ両党の間では、フルシチョフ時代以来のソ連からの干渉問題が未解決で、両党の関係がまだ不正常な時期でした。 その時期におこなわれた首脳会談でも宮本委員長(当時)が領土問題を提起し、とくに、日米安保条約改定のときにソ連が日ソ共同宣言の歯舞、色丹返還を約束した部分について棄却するという通告をしてきた問題をとりあげて、これを『考え直す』よう主張しました。 これにたいして、ソ連側も、会談のなかで、『外務省で検討させる』ことを言明せざるをえませんでした」(同104頁)

1979年の両党首脳会談です。 この会談は、フルシチョフ以来の15年間にわたる干渉にソ連側が反省を表明したことで、一応。党と党との間の関係が正常化した会談だったのですが、このときの宮本・ブレジネフ会談では、最大の問題の一つとして領土問題を取り上げて、非常に立ち入った交渉をやりました」(同)

「もちろんソ連側はわが党の主張にたいして、『解決ずみ』論をとなえる。 それにたいして宮本委員長(当時)の方から、ソ連側の一つひいとつについて全部反論する。 こういうやりとりが長時間にわたっておこなわれたのです。 宮本委員長が、ソ連側の『解決ずみ』論の根拠を世界の民主主義と国際法の道理ある立場から全部論破したら、結局、相手はそれについて一言も反論できないで、日本側の主張への弁明として、もっぱら軍事情勢だけを語るようになったのが、特徴でした」(同、104~105頁)

「このときの会談では、未解決の領土問題をふくめ、『日ソ平和条約の締結』問題について、今後とも意見交換をつづけてゆくことを、共同声明で確認しあいました」(同105頁)

 こうした、実際のソ連側との交渉、さらに千島問題の調査、研究をふまえて、1990年9月に、「日ソ領土交渉にあたっての提言(4つの提言)」が発表されました。


”日露領土交渉の行き詰まりをどう打開するか”ー「日ソ共同宣言」60周年にあたって(2)

2018年11月22日 | 千島返還問題と日本共産党

 日本共産党は、2016年10月18日に志位和夫委員長の見解・提案を発表しました。 1956年10月の「日ソ共同宣言」から60年に安倍首相とプーチンロシア大統領の「長門・東京会談」が同年12月開催されました。

 こうした節目の年にあたっての志位委員長の見解・提案となりました。 この両首脳「会談」の合意内容が次のようなものであったことを、東郷和彦氏(元外務省欧亜局長、京都産業大学教授)解説しています。

 「大きな転機(日露領土交渉のこと)になったのは、2016年の長門・東京会談です。 ここで安倍首相は『新しいアプローチ』を打ち出した。 これは、問題を前段と後段に分けて考えるということです。 前段として、北方四島での共同経済活動を進め、その成果を盛り込むかたちで、後段の平和条約交渉をやる」(「朝日」16日付「耕論」欄」

 東郷氏は「ところが、この2年間、共同経済活動がほとんどすすんでいない」(同紙)と指摘しています。 こうした状況のなかで、日ロ領土交渉が新たな事態を迎えています。

 そこで、2年前の日本共産党の見解・提案を紹介し、”日露領土交渉の打開”の展望を考えて見たいと思います。

 1、歯舞、色丹の「2島先行返還」はありうることだが、その場合、中間的な条約と結びつけて処理することとし、平和条約は、領土問題が最終的な解決にいたった段階で締結すべきである。(説明文ー省略)

 2、この60年間にわたって、日露領土問題が前進してこなかったのは、「国後、択捉は千島列島にあらず。 だから返還せよ」という日本政府の主張が、歴史的事実にてらしても、国際法的にも、通用しない主張だったことにある。 このことを正面から認め、領土交渉の方針の抜本的な再検討を行うことが必要である。

 「1951年に締結されたサンフランシスコ平和条約は、2条C項で『日本国は、千島列島・・・に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する』と宣言している。 日本政府は、この宣言を不動の前提として領土交渉を進めるために、『国後、択捉は千島列島にあらず、だから返還せよ』という主張をしている」

 「この主張は、得撫以北の北千島を最初から領土交渉の対象にしないという根本問題にくわえて、国後、択捉の南千島についての返還の主張としても、国際法的にまったく根拠のないものである」―以下、略

 3、日露領土交渉の根本は、「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を踏みにじって、「ヤルタ協定」で「千島列島の引き渡し」を決め、それに拘束されてサンフランシスコ平和条約で「千島列島の放棄」を宣言したことにある。 この戦後処理の不公正にいまこそ正面からメスを入れるべきである。(説明文―省略)

 この方向での日露領土交渉の打開の展望をあるのか、次に日本共産党の旧ソ連共産党との交渉経過・内容について、紹介したいと思います。

 


千島全島返還後の平和条約締結、歯舞群島・色丹島は即時、無条件返還を(1)

2018年11月21日 | 千島返還問題と日本共産党

 今月14日安倍首相が訪問先のシンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、1956年の日ソ共同宣言を基礎として、平和条約締結交渉を加速せることで合意した、とメディアが大きく報道しました。

 15日、志位委員長はこの報道を受けて記者会見を行い次のような見解を明らかにしました。以下、「16日付「しんぶん赤旗」より紹介します。

 「第1に、『歯舞群島と色丹島は北海道の一部なので2島先行返還はありうることだが、その場合は、中間的な条約と結びつけて処理することとし、平和条約は領土問題が最終的な解決に至った段階で締結すべきだ』ということです」

 「志位氏は、『2島返還で平和条約を結ぶことは絶対にやってはならない。 ここが肝心なとこるだ。 平和条約は結んだら国境線の画定となる。 それ以上の領土返還交渉の道は閉ざされる。 歴代日本政府の立場の自己否定となり、ロシア側の主張への全面屈服になる』と強調しました」

 「第2は、志位氏は、60年以上にわたる日ロ領土問題が前進しなかったのは、『国後島・択捉島は千島にあらず。 だから返還せよ』という日本政府の主張が、『歴史的事実に照らしても国際法的にも通用しない主張だったことにある』と指摘し、『このことを正面から認め、領土交渉の方針の抜本的な再検討をすべきだ』と強調しました」

 そして、「日ロ領土問題の根本は、『領土不拡大』という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を踏みにじって、『ヤルタ協定』で千島列島の引き渡しを決め、それに拘束されてサンフランシスコ平和条約で『千島列島の放棄』を宣言したことにある。 この戦後処理の不公正をただし、全千島列島の返還を正面から求める交渉を行ってこそ、解決の道が開かれる」と語りました。

 現在の政界、主な政党で全千島列島と返還、歯舞群島及び色丹島の即時・無条件返還を求め活動している政党は、日本共産党しま見当たりません。 早く、市民と野党共通の要求になってほしいと願っています。

 いま、なぜ、日ロ領土問題が急浮上してきたのか。 安倍政権は、日ロ問題を大義にして来年夏に衆参同時選挙に打ってでるのではないか、という報道も出始めています。 岩下 明裕九州大学・北海道大学教授が、次のように指摘していることに注目させられました。

 「平和条約がなくとても日ロ関係は基本的に安定してきました。 また、日本にとってロシアの存在は、言われるほど大きな意味を持っていません。 安倍首相がこだわるのは自身の実績にしたいからではないかと私は疑っています。 憲法改正と同じ『悲願』です」(「朝日」11月16日付「耕論」欄}

 

 


河野外相ー韓国徴用工個人請求権「消滅していない」、共産党・穀田恵二議員に答弁

2018年11月15日 | 日本の情勢論

 昨日の衆議院外務委員会で、日本共産党の穀田恵二議員の質問に、河野太郎外相は、1965年の日韓請求権協定によって、個人の請求権は、「消滅していない」と答弁しました。 以下、「しんぶん赤旗」15日付記事を紹介します。

 「大法院(韓国の最高裁)判決について、『日韓請求権協定に明らかに反する』としてきた安倍政権の姿勢が根本から揺らぎました。 穀田氏は外務省が日韓請求権協定第2条について『個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない』(柳井j俊二条約局長1991年8月27日、参院予算委員会)と答弁したことを示し、河野氏の認識をただしました」

 「河野氏は『個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではありません』と明言しました」「また穀田氏は、大法院判決で原告が求めているのは、未払い賃金の性急ではなく、朝鮮半島への日本植民地支配と侵略戦争に直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制労働への慰謝料だとしていると指摘」

 「これに関し柳井条約局長が92年3月9日の衆院予算委員会で日韓請求権協定により『消滅』した韓国人の『財産、権利、及び利益』の中に『いわゆる慰謝料請求というものが入っていたとは記憶していない』としたことをあげ、『慰謝料請求権は消滅していないということではないか」とただしました」

 「外務省の三上正祐国際法局長は『柳井局長の答弁を否定するつもりはない』、『権利自体は消滅していない』と答弁しました」

 「穀田氏は、『個人の請求権は消滅していない』と強調。 日韓双方が被害者の尊厳と名誉を回復するという立場で冷静で真剣な話し合いをすることがきわめて大切だ、と求めました」

 「しんぶん赤旗」は同日付2面で、「ソウル=時事」の記事も掲載しています。

 「韓国の李洛淵首相は13日、日韓関係の専門家ら12人をソウル市内の首相官邸に招き、最高裁が日本企業に元徴用工への賠償を命じた判決などに関し、意見を聴取し、対応を検討するため委員会を設置する方針を決めました」

 「李首相は、席上、『政府は当面、水面下で静かに動く』と表明しました」

 安倍政権は、10月30日の韓国大法院判決に関して、判決直後から冷静さを欠いた、発言を繰り返してきましたが、穀田議員の国会質問でようやく、幾分冷静さを取り戻した感があります。 しかし、両国の話し合いが始まったわけではありません。

 外交問題には、大きな歴史的かつ国際的視点、冷厳な事実の検証に向き合う真剣な姿勢が強く求められます。 そうした点から考えてみて、私は、穀田質問は大変重要だったと感じています。

 


政府は憲法前文、13条、97条を生かし交渉を=韓国最高裁判決を考える(4)

2018年11月10日 | 日本の情勢論

 河野太郎外相は6日の記者会見で、「『1965年の(日韓)請求権協定で完全かつ最終的に終わった話』としたうえで、『暴挙』『国際法に基づく国際秩序への挑戦だ』と批判した」(「朝日」7日付)

 菅義偉官房長官は8日の記者会見で「韓国の李洛淵(イナギョン)首相が日本側の対応を批判したことに反論した」(「産経デジタル」8日付)「菅氏は『判決は日韓請求権協定に明らかに反しており極めて遺憾だ。 韓国政府がどのような対応を講じるか見極めていきたい」(同前)

 韓国の李洛淵首相は「判決は、1965年の韓日基本条約を否定したものではなく、条約を認定しながら、運用範囲がどこまでかを判断したものだ」「私はこの問題に関する言及をできるだけ自制し、政府関連部署と民間専門家らの知恵を集めて対応策を用意しようと努力している」(「ソウル=時事」 「しんぶん赤旗」8日付)と表明しています。

 こうした、日韓両政府の応酬が続いていますが、私は、次の報道にも注目しています。(以下、「朝日」7日付)

 「日本政府が6日、企業に内容を説明した。 説明会は日韓経済協会の主催で、企業や経済団体から30人が参加。~外務省の説明に対し、企業側から、『経済、文化交流を進めていきたい。 政府も支援を』『(日韓関係に悪影響が出ないか)心配だ』といった声が出たという」

 「日韓経済協会の是永和夫専務理事は会合の終了後、『日韓は民間ベースでいろいろな困難を乗り越えてきた。 これまで築いたものを壊したくない』と語った」

 「朝日」10日付は、次のような記事を掲載しました。

 「河野太郎外相は9日の記者会見で、韓国大法院(最高裁)判決について、『日韓両国の国民の間の交流に影響がでるべきではない。 交流はこうしたことにかかわらず、しっかり続けてほしい』と語った。~ 河野氏は判決について『暴挙』などと批判してきた。 これに対し、韓国側では反発が広がっている。 この点に河野氏は『コメントしない』と述べた」

 徴用工問題に関する韓国最高裁の判決を受け、日韓両政府が、どう対応すべきか。 日本共産党は志位氏の見解でその解決方向を提起しました。 

 私は、この問題をもっと国民レベルで議論すべきではないかと考えています。 その基本に憲法を据えることが重要ではないかと思います。

 第1に、憲法前文です。 「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立とうとする各国の責務であると信ずる」

 第2に、第13条です。 「すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に関する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

 第3に、第97条です。 「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」

 日本共産党は戦前、朝鮮や台湾等の植民地の解放をかかげ、支持してたたかった政党です。

 「党は、日本帝国主義の植民地であった朝鮮、台湾の解放と、アジアの植民地・半植民地諸民族の完全独立を支持してたたかった」(「日本共産党綱領―第1章第2節」)

 こうした、先人のたたかいの歴史も憲法には刻みこまれていると思っています。

 


人間個人が発展の主体、徴用工=韓国最高裁判決を考える(3)

2018年11月07日 | 日本の情勢論

 (その3) 1986年の国連総会で、「発展の権利に関する宣言」が採択されました。 その宣言は次のような内容です。 以下、「綱領教室―第2巻 144頁より)

 【発展の権利に関する宣言】(1986・12・4、国連総会採択)

 「第1条 (人権としての発展の権利)1 発展の権利は、譲ることのできない人権である。 この権利に基づき、それぞれの人間およびすべての人民は、あらゆる人権および基本的自由が完全に実現されるような経済的、社会的、文化的及び政治的発展に参加し、貢献し、これを享受する権利を有する」

 「第2条(発展の主体としての人間) 1 人間個人が、発展の中心的主体であり、発展の権利の積極的参加者及び受益者であるべきである」

 志位氏は、この「発展の権利」について次のように語っています。 (同書 144~145頁)

 「『発展の権利に関する宣言』では、一人ひとりの人間が、発展に参加し、発展による成果を享受する、一人ひとりの人間が、経済的にも社会的にも文化的にも発展に参加し、その成果を受け取る権利をもっていることがうたわれています。 『人間個人が、発展の中心的主体』であり、『発展の権利の積極的参加者及び受益者になるべきである』ということを高らかに宣言しています。

 「この宣言からは、新しく独立した諸国の人々の切実な願いが込められたものとして、きわめて新鮮な息吹を感じるではありませんか」

 (その4) 1993年に、国連総回の決議に基づいて、世界人権会議がウィーンで開催され、171カ国が参加し、全会一致で「ウィーン宣言」が採択されました。

 「この宣言は、今日の世界における国際的な人権保障の到達点といってよいものだと思います」(同書 145頁)

 【ウィーン宣言及び行動計画】(1993・6・25 世界人権会議) 第5項を紹介します

 「五(人権の相互依存性及び普遍性)すべての人権は普遍的であり、不可分かつ相互依存的であって、相互に連関している。 国際社会は、公平かつ平等な方法で、同じ基礎に基づき、同一の協調をもって、人権を総体的に扱わなければならない」

 「国家的及び地域的独自性の意義、並びに多様な歴史的、文化的及び宗教的背景を考慮にいれなければならないが、全ての人権及び基本的自由を助長し保護することは、政治的、経済的及び文化的体制のいかんを問わず、国家の義務である」

 志位は、この「宣言」について、次のように意義を語っています。

 「第1は、人権と自由の発展というのは、それぞれの国によってさまざまなプロセスをとるものであって、それを尊重すべきであるということです。 『国家的及び地域的独自性の意義、並びに多様な歴史的、文化的及び宗教的背景を考慮』すべきであって、特定のモデルを、絶対のものとして、外から性急に押しつける態度をとるべきではないということが、第1の原則としてのべられています」

 「第2は、同時に、人権と自由というのは、普遍的性格をもっており、すべての人権と基本的自由を『助長し保護する』ことは、政治的、経済的、文化的体制のいかんを問わず、『国家の義務である』ということが強調されています。 どんな体制をとっていようと、人権と自由を『助長し保護する』ことは『国家の義務』だとされているのです。 これがいわば第2の原則としてのべられています」

 志位はこの「宣言」を踏まえて、2010年の「第40回赤旗まつり」の記念講演で、中国の劉曉波氏がノーベル平和賞を受賞したことにかかわってでの講演内容を紹介しています。

 中国自身も賛成した「ウィーン宣言」を引用して、「中国が、これらの国際的到達点に立ち、人権と自由の問題に対して、国際社会の理解と信頼を高める対応をとることを強く望む」と訴えました。(以上、同書 146~148頁)

 戦後の国際社会は、人権問題をめぐって、大きな発展をしていることを振り返って見ました。 


民族自決権が人権の前提条件、徴用工問題=韓国最高裁判決を考える(2)

2018年11月05日 | 日本の情勢論

 戦後の国連を中心とした国際社会の人権問題について考えてみたいと思います。 この点で大変分かり易い文献として志位和夫氏の「綱領教室 第2巻」が参考になると思います。

 (その1)「世界人権宣言」(1948年12月10日 国連総会採択)-日本では、憲法が公布(1946年11月3日)され、施行(1947年5月3日)された時期です。 同宣言は、次のように謳っています。

 「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利において平等である」(第1条)

 「すべて人は、 いかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」(第2条)

 志位氏は、「『すべての国が達成すべき共通の基準』を定めたものとして、国際的に保護されるべき人権の内容を初めて包括的に示した国際文書として、画期的な意義をもっている」と述べています。(同書 140頁)

(その2)「国際人権規約」(1966年12月16日 国連総会採択)-この前年に日韓基本条約、日韓請求権協定が締結されました。

 同規約第1条 1は「すべての人民は、自決の権利を有する。 この権利に基づき、すべての人民は、その政治的地位を自由に決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」と述べています。 この規約は、法的拘束力をもつ多国間条約です。

 志位氏は、同書のなかで、次のようにその意義を語っています。

 「自決権というのは、いわば集団的な人権です。 集団的な人権である自決権を、個人による人権の享受の前提条件に位置づけたのが、国際人権規約でした。 考えてみますと、植民地であれば人権も何もないわけです。 あらゆる人権の土台が奪われている状態にあるのが、植民地です」

 「奴隷貿易もやられた、強制連行もやられた、好き勝手に、また無制限に、人権が蹂躙されたのが、植民地支配でした。 自決権がなければあらゆる人権は空語となってしまう。 そういう立場から、自決権があらゆる人権保障の前提条件に位置づけられて人権という概念が大きく飛躍的に豊かになったのが国際人権規約だということをいいたいと思います」(同書 142~143頁)

 

 


国の主権と国民の権利を、徴用工問題=韓国最高裁判決を考える(1)

2018年11月04日 | 日本の情勢論

 志位委員長の見解=「徴用工問題の公正な解決を求めるー韓国の最高裁判決について」が2日付「しんぶん赤旗」に掲載されました。 10月30日の同判決以降判決をめぐって、国会での質問、安倍首相の記者会見、メディア報道が連日のように行われています。 そ うした中での「志位見解」は、徴用工問題の本質と解決の展望を明らかにしたののとして注目されています。

 「徴用工訴訟の韓国最高裁判決」は、どのような判決なのでしょうか。(10月31日付「読売」紙の「判決要旨」から)

 「原告は、未払い賃金や補償金をもとめているのではない。 この訴訟で問題になる原告の損害賠償請求権は、朝鮮半島に対する日本政府の不法な植民地支配と侵略戦争の遂行に直結した日本企業の反人道的は不法行為を前提とする慰謝料請求権だ。 いわゆる強制動員の慰謝料請求権が、請求権協定の適用対象に含まれると見なすことはできない」

 「その理由として、請求権協定は、日本の不法な植民地支配に対する賠償を請求するための交渉ではなく、基本的にサンフランシスコ(講和)条約を根拠に韓日両国間の財政的、民事的な債権・債務関係を政治的合意によって解決するrためのものだった」

 「請求権協定第1条によって、日本政府が韓国政府に無償3億㌦、有償2億㌦の経済協力資金と、2条の定める(日韓両国民の)権利に関する問題解決とが、法的な対価関係にあると見なすことができるかどうかも、はっきりしない」

 「請求権協定の交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性を認めないまま、強制動員の被害に対する法的な賠償を根本的に否定した。 このため韓日両政府は、日帝(日本)が行った朝鮮半島支配の性格について合意に至らなかった。 このような状況で、強制動員の慰謝料請求権が請求権協定に含まれていると見るのは難しい」

 「志位見解」は、こうした韓国最高裁の判決もふまえて、「『被害者個人の請求権は消滅していない』ということでは一致しています。 日本政府、日本の最高裁、韓国政府、韓国の大法院、すべてが一致している。 ここが大切なところです」(「志位委員長の一問一答」)

 そして、同氏は次のように述べています・

 「この一致点でまず解決方法を見だす。 そのうえで日本が植民地支配を反省してこなかったという問題が根本的な問題としてあります。 植民地支配の真摯な反省のうえに立って、より根本的な解決の道を見いだすべきだという、二段構えでの論理」を強調しました。(同前) 

 安倍首相は、「1965年の日韓請求権・経済協力によって、完全かつ最終的に解決している」「判決は国際法に照らしてあり得ない判断だ」と全面的に拒否し、韓国を非難しています。

 安倍首相の発言からは、戦後の国際社会・政治の大きな進歩、発展を理解し活かそうという立場や考えが全く感じられません。

 2001年8月31日~9月8日、国連主催の「人種主義、、人種差別、外国人排斥および関連する不寛容に反対する世界会議」が開かれ、「ダーバン宣言」が採択されました。

 同宣言の第14項では、「植民地主義が起きたところはどこであれ、いつであれ、非難され、その再発は防止されなければならないことを確認する。 この制度と慣行の影響と存続が、今日の世界各地における社会的経済的不平等を続けさせる要因であることは遺憾である」

 ここに、21世紀を迎えた国際政治の到達点があるのではないでしょうか。