「毎日」紙6日付の「オピニオン」欄で、ICAN事務局長 ベアトリス・フィンさんの核兵器禁止条約に関するインタビュー記事が掲載されました。日本政府や核保有国への批判を厳しく語っています。そして、核兵器禁止条約が発効した後の新しい世界「核なき世界」を力強く訴えています。
「ーー核兵器禁止条約が発効しても核保有国は参加しそうにありません。打開策はありますか」
「(フィンさん)最初のステップは、日本のような、核保有国を支持している国が条約に加わることだ。日本は(事実上)核兵器を容認し、支持している。重要なのは、米国の(「核の傘」の下にある日本や、核兵器が配備されているドイツやイタリアのような)同盟国が、これらの兵器は非常にまずい兵器で使ってはならないし、廃棄しなければならないと考え始めることだ」
「日本などの国々が核兵器の力を認めているから、核兵器は力を持っているだけなのだ。彼らが条約に参加すれば、それが引き金となって核保有国は孤立する。日本などへの働きかけを強めていくつもりだ」
「--日本は唯一の被爆国として核保有国と非核保有国の『橋渡し役』になると言っています」
「(フィンさん)橋を懸けたいと真剣に思っているなら、何をしたいのか立場をはっきりさせるべきだ。それは本当に核軍縮なのか? 国際社会は、日本変わってしまったと思っている。毎年、国連総会に『核廃絶決議案』を出しているが、過去5年で見比べると、核廃絶を訴える表現がどんどん後退している」
「核拡散防止条約(NPT)の履行を求める文言も弱まり、核実験全面禁止条約(CTBT)の批准呼びかけも辛うじてあるだけだ。核軍縮の橋を懸けると言いながら、核兵器を支持する方向に進んでいる。日本は実際には核兵器を廃絶したいとは思っていない」
「--来年は延期されたNPT再検討会議があります。核保有国などは、『核兵器禁止条約が核軍縮・核不拡散条約の基礎であるNPT体制を損なう』と主張しています」
「(フィンさん)その主張は間違っている。例えば気候変動の問題では、温室効果ガス排出量の削減スピードが速い国もあれば、遅い国もある。問題になるのは、削減スピードが速い国ではなく遅い国。核軍縮でも同じだ。NPT締約国は核軍縮交渉を行う法的義務を負っているが、核兵器禁止条約は核軍縮義務の履行そのもだから、NPTを危険にさらすことではない」
「にもかかわらず、核保有国はNPTを履行していない自らの責任から逃れるため、他国を非難している。国際的な枠組みを駄目にしている核保有5大国と、状況を後退させている日本のような国こそが問題だ」
「ーー条約が発効すれば世界にどんな影響を与えますか」
「(フィンさん)法的に縛られるのは締約国だけだが、発効すれば(核軍縮を進めなければならないという)強い規範が生まれる。それが重要だ。核保有国は、強い規範の圧力にさらされる。民間でも既に金融機関や年金基金などが、核兵器の製造企業から資金を引き揚げ初めている」
「対人地雷禁止条約(オバマ前米政権は条約には不参加だったが、朝鮮半島を除き対人地雷を使わないと決定した)や、生物兵器禁止条約のように、不参加国に大きな政治的影響を与えることになる」
「--今後の課題は」
「(フィンさん)条約への支持を集め続けなければならない。批准は50カ国・地域で終わらない。193の国連加盟国全てに広げていかなければならない。(国レベルでは動きが鈍くても)市や町の議会など地方からの条約を支持する意見も出てくる。圧力を強めるために、核兵器に対する市民の反対の声を高めることが大事だ。そのためにも、核兵器を禁止する条約ができ、核兵器を保有したり使用したりする行為は国際法の下では違法なのだと認識してもらうことが大切になる」
「城臺美彌子さん(81)2014年長崎市主催の平和式典被爆者代表」が次のように語っています。
「トランプ大統領が、新型コロナウイルスに感染したということですが、彼は核のボタンを持っている。もしボタンを押してしまったら、人類は核汚染され生きていく場所を奪われてしまいます。市民連合の政策要望に核兵器禁止条約の批准が盛り込まれたことは、願ってもないことで力強い。野党各党のリーダーの方々が力を合わせて政権交代し、核兵器廃絶を進めていってほしい。応援します」(「しんぶん赤旗」5日付)