じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

北方謙三「爪」

2019-03-21 23:50:38 | Weblog
★ 北方謙三さんの「コースアゲイン」(集英社文庫)から「爪」を読んだ。粋だねぇ。

★ 前半は別れのシーン、男は50代。女は20代。年の離れた関係だった。2年のつきあい。女は別れを告げ、男が女の部屋の鍵を返す。オープンカフェで。

★ 「いい恋をしろよ」「できればね」

★ こんなセリフそう簡単に言えないね。

★ 後半は、女と別れた後の男の足取り。最後にたどり着いたのは銀座の店。ボトルが入っているので常連のようだ。馴染みの女性が横につく。男は女の爪を見る。そしてアフターを誘うが断られる。この辺りの女性の臭覚も鋭い。

★ 男も女も粋だ。

★ 50男、心は泣いているのか。
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川端康成「燕の童女」

2019-03-21 23:27:20 | Weblog
★ 時代は大きくさかのぼって1930年代。大阪から東京を特急燕が8時間余りで走っていた時代だ。

★ 川端康成「愛する人達」(新潮文庫)から「燕の童女」を読んだ。

★ 新婚夫婦。新婚旅行の行きは横浜から船に乗り京阪神を1週間ほど遊んだ後、列車で東に帰るところ。特急燕は近江路を過ぎ、東海地方へと走っている。

★ 列車の中で見かけたハーフの童女。彼女を描いた水彩画のような作品だが、さすがに余裕の筆のタッチか、読み進めてしまう。

★ 川端が書くような人種雑婚の時代は到来したようだが、果たして平和かどうかはわからない。

★ 燕から「ひかり」へ、「ひかり」から「のぞみ」へと列車のスピードだけは確実に速くなった。速すぎて今ではこんな作品は書けないだろう。
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片岡義男「私の風がそこに吹く」

2019-03-21 22:57:02 | Weblog
★ 角田作品の主人公が片岡義男を読んでいたので、それにつられて片岡義男さんの「ラストシーンの出来ばえ」(角川文庫)から「私の風がそこに吹く」を読んだ。

★ この作品を読んだからと言って人生が変わると言った類のものではない。バブル前の「できるOL」のライフスタイルと言った感じだ。この時代のOLが読めば、感じるものがあったのだろう。

★ 都会のど真ん中で女性が自立して気ままに暮らしている(自宅に帰りたくなければホテルに泊ったり)というのが、カッコ良い。

★ 10年後、20年後を考えれば暗い気持ちになるけれど、そんなことは置いておいて今を楽しむ。1980年代前半だと思うが、この時代にはそんなムードがあった。

★ ある意味、現代版美文。自然主義的なドロドロとしたものがない。
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角田光代「だれか」

2019-03-21 20:33:55 | Weblog
★ 角田光代さんの「さがしもの」(新潮文庫)から「だれか」を読んだ。

★ 恋人とタイを旅する主人公がマラリアに感染した。高熱で外出もできず、しかたなくバンガローの食堂に「だれか」が置いていった片岡義男の文庫本を読む。

★ 本を読みながら、「だれか」が気になってきた。いったいこの南の島にだれがこの本を置いていったのだろう。

★ 想像たくましい。このあたりはFBI心理分析官のようだ。

★ 自販機のジュースの値段が時代を刻んでいる。
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恩田陸「春よ、こい」

2019-03-21 18:19:10 | Weblog
★ 急に温かくなって、桜の開花宣言が出た地域もあるとか。春ということで、恩田陸さんの「図書室の海」(新潮文庫)から「春よ、こい」を読んだ。

★ 卒業式の風景。校長先生は古今和歌集からの歌を贈り、仲良しの二人はこのあと写真館で記念撮影をするという。これだけなら何てことはないのだが、時間軸が微妙にズレていく。何度も繰り返される「現実」、夢なのか、デジャ・ヴなのか。

★ ズレの面白さはやがて「ドミノ」にも受け継がれていったようだ。

★ ユーミンの「春よ、こい」を聴きながら、淡き春に色を楽しむ。
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小川洋子「飛行機で眠るのは難しい」

2019-03-21 15:45:53 | Weblog
★ 小川洋子さんの「まぶた」(新潮文庫)から「飛行機で眠るのは難しい」を読んだ。

★ 仕事を徹夜でこなし、次の取材のために「わたし」は飛行機に乗った。たまたま隣り合わせた男が一人語りのように話を始める。彼がある老女と飛行機に乗り合わせた話。疲労で相手をするのも億劫だった「わたし」だが、その話にだんだん引き込まれていく。

★ 「わたし」同様、読者も引き込まれていく。これは文章のうまさだろう。老女の質素で、気高い人生が見えた気がした。
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江國香織「弟」

2019-03-21 14:57:36 | Weblog
★ 江國香織さんの「すいかの匂い」(新潮文庫)から「弟」を読んだ。

★ お葬式の風景。弟が死んだのだ。煙になった弟を見送り、家に帰った「私」は喪服を脱いで畳に寝転がった。葬式の思い出、弟との葬式ごっこの思い出が浮かんでくる。

★ 「夏のお葬式はいやねえ」という母の言葉。葬式は夏に限ってあるようだ。

★ 夏の情景が豊かに描かれ、散文詩のような作品だった。
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井上ひさし「太郎と花子」

2019-03-21 11:47:04 | Weblog
★ 井上ひさしさんの「ナイン」(講談社文庫)から「太郎と花子」を読んだ。

★ 井上さんらしき主人公のもとに届いたDM。ディスカウントショップの開店の案内だった。開店したのはかつて住んでいたアパートのオーナー(の息子)ということで、行ってみることにした。

★ 本題は店でもらった半額券を持って喫茶店に寄ってから。そこで見た一組の男女。二人の会話にそば耳を立てながら、作家の好奇心は高まる。話題は、「太郎と花子」。

★ 太郎と花子の風貌を想像しながら読み進めると、最後はとんなオチに。いろいろと想像した自分が情けなくなる。

★ 下町の一風景。 
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五木寛之「赤い広場の女」

2019-03-21 10:53:12 | Weblog
★ 五木寛之さんの「蒼ざめた馬を見よ」(文春文庫)から「赤い広場の女」を読んだ。

★ 武者小路実篤は「惜しみなく愛は奪う」の中で、過去に愛着を抱く者をセンティメンタリスト、未来を憧憬する者をロマンティスト、現在に最上の価値を置く者をリアリストと言っている。人は大まかに分けてこの3つに分かれるという。

★ 「赤い広場の女」にはこの3種の人物が登場する。テレビのディレクターとして活躍するも多忙の中で消耗し、癒しを求めてモスクワを訪れた主人公はリアリスト。モスクワ駐在の商社マンで主人公の親友・朝見はロマンティスト。朝見の「婚約者」で超美形の女性はセンティメンタリストと言えよう。

★ この3人が6月のモスクワで出会う。といっても3人が同時に顔を合わせることはない。主人公と朝見、主人公と女性。それは何かの掟のようだ。

★ 戦後20年。昭和40年代のモスクワは大きく変わろうとしていた。まるで過去を忘れ去ったように。しかし街の深層心理には過去がこびりついている。女性は故郷のウクライナに帰るという。かつて戦時期のトラウマから逃れるために去った故郷に。

★ 「婚約者」との別離にもあっけらかんと応じるロマンティストにも主人公は翳を読み取る。そして主人公は2週間の休暇を終え、再び喧騒の東京、時計に追われる日々に戻る。

★ 現在にも、過去にも、未来にも安住の地はない。そのどれかにこだわりながら流れていくのが生きるということなのかも知れない。

★ モスクワの街の様子が美しく描かれていた。現在、過去、未来。この街にはこの3つが備わっていたのかも知れない。
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伊集院静「夕空晴れて」

2019-03-21 06:30:40 | Weblog
★ 伊集院静さんの「受け月」(文春文庫)から「夕空晴れて」を読んだ。

★ 小学4年生の子をもつ母親。夫は癌で急逝した。夫はプロには行かなかったが野球選手。その血を引き継いだのか、息子も今野球チームに所属している。隠れて子どもの試合を見に行った母親。試合にでるどころか、雑用ばかりしている様子に立腹。監督に抗議をするのだが・・・。

★ 野球を愛し、野球によって成長していく人々が描かれていた。

★ 伊集院さんの文章は読みやすい。
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