じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

映画「友罪」

2021-03-31 02:51:27 | Weblog
★ 映画「友罪」(2018年)を観た。原作は薬丸岳さん。

★ 二人の青年が町工場で働くことになった。一人は元ジャーナリストで益田という。。記事を巡り上司を殴り、今では日雇いのような仕事を転々としている。もう一人は、過去が不明の男。鈴木と名のっている。陰気な雰囲気で、対人関係に問題があるようだ。二人は徐々に気持ちを通じ合わせるのだが、益田は、鈴木がかつて連続児童殺傷事件の犯人、少年Aであることを知る。

★ 何ともスカッとしない映画だった。スカッとしないことが主題なのかも知れない。

★ 益田、鈴木のドラマに、もうひと家族、息子が自動車事故で幼児の命を奪ったため、家族を解散した男(今はタクシードライバーをしている)が絡んでくる。罪は、被害者家族はもちろんのこと、加害者家族にも大きな苦しみを与える。

★ かつての少年Aを演じた瑛太さんが印象的だった。少年院の教官役を富田靖子さんが演じていた。「アイコ16歳」や「さびしんんぼう」のヒロインは、いいお母さんになったなぁ。

★ 主要な登場人物はみんな心に重荷を背負っている。どうすれば救われるのか、いや何としても救われないのか。解決策が見えないのがスカッとしない理由なのだろう。気持ちが重くなる映画だった。



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半﨑美子「サクラ~卒業できなかった君へ~」

2021-03-29 23:54:08 | Weblog
★ 春期講座4日目。3月もあとわずか、まもなく新学期。今年は足早に咲いた桜。満開の桜を見ると、今年も1年無事に終えたと思う。そして来年もこの満開を見られたらいいなぁと思う。

★ こんな折、半﨑美子さんの「サクラ~卒業できなかった君へ~」が心に沁みる。2017年リリースと言うから結構日がたっている。今まであまり耳にしなかったのが不思議だ。

★ 何かどこかで聞いてようなフレーズ。それでいて、それが何かわからない。浜崎あゆみさんの「TORAUMA」か、レミオロメンの「粉雪」か。でもなんか違う。何はともあれ、いい歌だ。悲しい歌だ。

★ 今日は忙しくて読書は進まず、江藤淳さんの「昭和の文人」(新潮文庫)からプロローグ的な「一身にして二生を経るが如く 一人にして両身あるが如し」を読んだ程度。江藤さんが「夏目漱石」発刊にあたって、寄稿を依頼するために平野謙氏を訪問したことからはじまり、戦前、戦後に生きた文人のありようを描いている。

★ 少し前に桐野夏生さんの「日没」で、政府(国家)が小説家のような表現者を収容し、転向、洗脳、あるいは抹殺する恐ろしい物語を読んだが、戦前は実際に、情報局という組織があって、検閲等が行われていたという。

★ 平野謙氏とその上司だった井上司朗氏との諍いが興味深かった。彼らを通して昭和という時代を描こうとしているのが面白かった。
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伊岡瞬「悪寒」

2021-03-28 20:36:07 | Weblog
★ 2週連続で日曜日は雨。家から出ることもなく、確定申告を仕上げた。

★ ドラマ「不発弾」(2018年)を観始めたら面白かったので、全部見てしまった。日本を代表する大手電機メーカーの粉飾決算事件から物語は始まる。アメリカの原子力発電所も手掛ける会社と言えばモデルは想像がつく。それに続いて、乳酸菌飲料メーカーや光学機器メーカーなども察しがつく。政界に至っては、官房副長官から内閣総理大臣になり、父親が元外相と言えば、あの人だ。政財界の裏で働く金融コンサルタントを椎名桔平さんが演じていた。感想は原作(相場英雄「不発弾」新潮文庫)を読んでからにしよう。

★ さて、今日は伊岡瞬さんの「悪寒」(集英社文庫)を読み終えた。大手薬品メーカーで働く一人の男が主人公。大手薬品メーカーと言っても同族経営で、腹違いの兄弟が専務、常務として勢力争いをするというのはよくある話。兄弟喧嘩はともかく、それに巻き込まれる従業員はたまったものじゃない。

★ 主人公の男は自らの職責を全うしただけなのに、贈収賄事件に巻き込まれて、地方の系列会社に左遷された。ほとぼりが冷めたら呼び戻すという役員の言葉を信じ単身赴任するも、本社に戻れる兆しはなく、そんな折、東京に残した妻が人を殺したとの連絡が入る。殺した相手は自分を左遷した本社の役員だという。いったい何があったのか、男はわけがわからず、東京行きのバスに飛び乗った。

★ 終盤、目まぐるしく物語が展開する。妻は本当に人を殺したのか。妻がやっていないとすれば真犯人は誰なのか。どんでん返しの連続。

★ 人を99%信じることはできても100%信じきることは難しい。この1%の不信が話をややこしくする。しかし、物語としては、そこが醍醐味だ。

★ サラリーマンは気楽な稼業と言うけれど、封建時代の「お家」構造は根強く、中途半端に出世すると気苦労が多そうだ。経営一族(特に跡取りのお坊ちゃま達)が愚かならなおさらだ。

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長嶋有「サイドカーに犬」

2021-03-27 19:15:11 | Weblog
★ コロナの感染者がまた増えている。早くも第4波の到来。緊急事態宣言は効果が薄まり、ワクチンはまだ効果を発揮せず、目下のところ打つ手なしってところ。春の陽気で人の出が増え、桜も満開と来れば、感染拡大は当然の理だね。

★ そんな世相とは全く関係ないが、長嶋有さんの「猛スピードで母は」(文藝春秋)から「サイドカーに犬」を読んだ。主人公の女性が小学4年生だった夏の出来事を回想している物語。

★ 両親は喧嘩が絶えず、ある日、母は家を出ていった。それと入れ替わりにある女性がやってきた。洋子と言った。母に代わって子どもや父の面倒をみてくれた。後から考えれば、父の愛人だったのだろう。

★ 洋子はドロップハンドルの自転車を乗りこなす豪快な女性。彼女は「わたし」に、コカ・コーラの味やRCサクセションの曲を教えてくれた。大人と子どもではあるが、友情が芽生えたようだ。

★ そんなある日、出ていった時と同じように、何の前触れもなく母親は帰り、洋子は出ていった。子どもながらに別れというものを感じた。洋子は「わたし」にとって、一つの通過儀礼だったのかも知れない。

★ 麦チョコやソーダアイス、それにパックマンのゲーム機が時代を感じさせる。 
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ドラマ「監察医 朝顔」完結

2021-03-25 23:17:20 | Weblog
★ FODで「監察医 朝顔」完結編を観た。感動するなぁ。結婚式での万木平さん(時任三郎さん)のスピーチには思わず拍手を送ってしまった。

★ 第1シーズンから第2シーズンへ。いろいろあったなぁ。東日本大震災からちょうど10年。一区切りですかね。逝く人あり、来る人あり。出会いあり、別れあり。人生を感じる。

★ つぐみちゃん、かわいかったなぁ。

★ さて、春期講座が始まった。朝8時30分から午後2時半まで。今日は引き続き授業があったから夜の9時45分まで。途中で、体験授業あり、初めての受講あり。それに合格のお礼が2件。結局家を1度も出ることができなかった。食事も冷凍チャーハンとインスタント焼きそばで済ませたけれど、それはそれで充実した1日だった。

★ 今年度もいよいよ始まるようだ。塾経営43年目。頑張ろう!
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吉村昭「法師蟬」

2021-03-24 00:53:46 | Weblog
★ 還暦を過ぎたあたりから、急に老いを感じるようになった。プロとしての技術はようやく充実期を迎え、塾生も安定して在籍するようになった。気力は充実しているのだが、眠りは浅くなるし、脚力の衰えを感じる。

★ 知的な面では、この歳になってなぜ球の体積が4/3πr3乗なのか、積分を使って理解できたことに感動する一方、人の名前がなかなか出てこなくなった。最近はマスク着用を良いことに、「わからなかった」と誤魔化しているが。

★ こんな折、吉村昭さんの「法師蟬」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

★ 語り手は、ほんのひと月前同窓会で顔を合わせた知人の訃報を聞く。改めて同窓会の写真を見ると、彼が透明になってきているように感じる。このことから、語り手はは、幼い日に見たセミの羽化を思い出す。さなぎの殻を破り、羽化するセミ。透明で体の内部が透けるようだ。セミにとって羽化は死のカウントダウンの始まり。

★ 身近に死を感じるようになった話者は、最近自らも透明化しているように感じたという。

★ 若い人には辛気臭い話だが、高齢になると(といってもまだ60代だが)、気になる話だ。入浴時、そっと腕や手を見るようになった。
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ドラマ「刑事モース」

2021-03-21 19:24:46 | Weblog
★ 雨の日曜日。ザ・タイガースの昔の歌が浮かんでくる。1日中どこにも行けないのを良いことに、やっと確定申告の準備が整った。締め切りが1か月延びて本当に助かる。それにしても1年間の領収証の山には食傷気味だ。

★ その領収証整理の合間を縫って、ドラマ「刑事モース~オックスフォードの事件簿~」を観始めた。1話90分の長尺だがこれが面白い。1960年代後半のイギリス、ある事件のために田舎からオックスフォードに駆り出された新米刑事が活躍するシリーズ。

★ ブリティッシュイングリッシュなので聞き取りやすく、古都オックスフォードは日本で言えば奈良か京都と言うところ。警官の階級はあまり良くわからないが、警視正が署長と言ったところか。実際の捜査は警部補が指揮をとるようだ。主人公のモースは、貧しい家庭出身ながら奨学生としてオックスフォードで学んだ経験がある。とはいえ学者の道には進まず、軍隊の通信部隊(暗号担当)を経験したのち、警察官になったという変わり者だ。

★ 変人だが、謎を解く才能は秀でている。俗世に染まっていないのも良い感じだ。古畑任三郎の若かりし頃もこんな風だったのだろうか。

★ さて、あとひと月分の領収証を整理して、申告書を仕上げよう。
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三並夏「平成マシンガンズ」

2021-03-19 19:20:26 | Weblog
★ 17日に公立高校の合格発表も終わり、塾の1年が無事に終わった。

★ さて、三並夏さんの「平成マシンガンズ」(河出書房新社)を読んだ。2005年、第42回文藝賞受賞作。なんと15歳での受賞は最年少記録とか。

★ リズミカルな文章ながら前半はイマイチ作品に入っていけなかったが、中盤以降グーンと面白くなった。

★ 主人公の女性(中学1年生か)が語る家族のこと、友人のこと。2年前に母親が家を出て、最近父親の愛人が自宅を占拠しつつある。どうやら父親と結婚をするようだ。学校では、いじめやスクールカーストなど、いつもながらの風景で、友人関係も難しい。どうにもこうにも行き詰まって不登校を決めた。

★ 相談と称して学校に呼び出され、担任教師やスクールカウンセラーに取り囲まれて、彼らは彼らなりに対処しようとするが、タテマエばかりで、何の役にも立たない。形式的に学級討論会でも開き、キレイごとで済まそうとしている。納得した顔をしながら、心の冷え切った同級生たちの顔が浮かぶ。

★ 彼女は家庭にも、学校にも居場所がなくなった。唯一の救いは夢の中に出てくる「死神」。彼女は彼から与えられたマシンガンで、憎き人々を撃ちまくる。夢の中ではあるが。

★ 後半、どうしようもなくなって、家を出た母親を訪ねる(この母親もちょっとわけありそう)。そこで出くわしたのが、憎き父の愛人の弟。姉に言われて、母親に「離婚届」をもらいに来たという。世俗から超越したような彼がなかなか面白い。

★ 何やかんやがあって、彼女は悟る。「結局あたしの好き嫌いなんて関係なく最後には一番安全でお金のあるところに落ち着いてしまうんだ」(104頁)と。それで、彼女は前へと進みだす。

★ 大きな物語のプロローグのような作品だった。その年代でしか書けない純粋な気持ち。世間体や我欲でまみれた大人が浮き彫りにされていた。
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伊坂幸太郎「重力ピエロ」

2021-03-15 17:06:14 | Weblog
★ 「春が二階から落ちてきた。」この冒頭には山椒魚やメロスもびっくりしたことだろう。最初と最後、このフレーズできれいにつながっている。「春」というのは、語り部である主人公の弟の名前だ。兄の名は「泉水(いずみ)」。英語にすればどちらも「スプリング」だ。

★ 伊坂幸太郎さんの「重力ピエロ」(新潮文庫)を読んだ。新人作家の合間にベストセラー作家を読むと、内容の濃さに驚く。コクや旨味、それに作者の個性(癖)。

★ 「重力ピエロ」は巻末の北川次郎氏の解説によると「放火と落書きと遺伝子の物語」だ。街中にあふれる落書きを消すのが「春」の仕事。そして「泉水」は遺伝子を扱う会社に勤めている。弟の出生にはある事件が絡んでいて、それがこの家族が背負っている業のようなものだ。

★ 優しく美しい母親と理解のある父親に守られて、兄弟は仲良く育っていく。最強の家族として。

★ 高校理科でこの数十年間、最も大きく変わったのは「生物」だろう。私が高校生だった1970年代、DNAやRNAという言葉はあったが、ゲノムはまだ扱われていなかった(私の不勉強ゆえかもしれないが)。DNAは二重のらせん構造で、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4つの塩基で構成されている。そしてそれぞれのペアが決まっていて、さらにアミノ酸配列に翻訳されるときのアミノ酸に対応する塩基配列をコドンというらしい。

★ この物語の一つの謎解きはこのゲノム配列がカギを握っている。この点は生物学の知識がなくても読めるからありがたい。まして、現代の生物学、分子生物学などに興味を持ってしまうから、副産物も大きい。

★ 短い章立てを積み重ねていく構成は最初馴染めなかったが、ある程度進むとジグソーパズルを完成していくような楽しみを覚える。それに「一風変わったキャラクター像、軽快このうえない語り口、きらめく機知、洗練されたユーモア感覚、そして的確で洒落た引用と比喩が効いている」(池上冬樹)、「シュールな物語」や「エレガントな前衛」(吉野仁)という解釈を引用した北川氏の紹介が的を射ており、感心する。

★ 合わせて、映画「重力ピエロ」(2009年)を観た。原作を要約していて前後を変更したりしているが、内容をおおよそ理解するには映画の方がわかりやすかった。でも味わいは、伊坂さんの文章には及ばない。
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丹下健太「青色讃歌」

2021-03-14 16:19:42 | Weblog
★ ちょっとマイナーな小説シリーズ。今日は今村友紀さんの「クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰」(河出書房新社)と丹下健太さんの「青色讃歌」(河出書房新社)にチャレンジ。

★ 「クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰」は第48回(2011年)文藝賞受賞作。ある日突然、何の前触れもなく災禍が襲う。その時、教室にいた生徒たちは空襲と怪物の襲来に見舞われる、と言う話(らしい)。「漂流教室」のようで設定は面白そうだが、擬声語の多用についていけず、前半でリタイア。

★ 次の読んだのは、丹下健太さんの「青色讃歌」。こちらは第44回(2007年)文藝賞受賞作。大学は卒業したものの定職に就かず、いわゆるフリーターの男、高橋。就活はしているものの、うまく自分を表現できず(そもそも自分自身で自分が分かっていない)不採用の連続。彼女(?)と同棲しているが、昼夜バイトで稼ぐ彼女とは経済的にも対等な関係。男女関係と言うよりか、友人関係に近いのか。でも、男同士の関係とも違う。ちなみに彼女の趣味は石集め。

★ 男はバンド仲間やフリータ仲間と「フローの会(不労とも浮浪とも言われはあるようだ)」を結成し(そんなたいそうなものではないが)、折に触れて飲み会を重ね、コミュニケーションをとっている(これも、ウダウダとダベッているともいえる)。

★ 彼女がかわいがっていた猫がどこかに行ってしまった。チラシを貼ったり、暇な時間を活用して捜しまわったりしているのだが見つからない。懸賞金を付けると、情報提供はあったのだが、そこで出会った人々が面白い。

★ 結論を言ってしまえば、「猫探し=自分探し」なのだが。果たして高橋君は、「こちら側」(フリーターの世界)に残るのか、それとも「あちら側」(正職の世界)に行ってしまうか。

★ 前半はイマイチに感じたけれど、後半から盛り上がってきた。2000年代の青春小説だね。
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