じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

横山秀夫「鞄」

2024-08-31 19:55:29 | Weblog

★ 迷走台風は人々をからかうように方向を変え、今なお各地に雨を降らせている。台風に意思などなかろうが、稀に見る陰湿な台風だ。

★ さて、今日読んだ横山秀夫さんの「鞄」(「陰の季節」文春文庫所収)にも似たような陰湿さを感じた。

★ 警察官と言っても事件を担当する刑事もいれば警察事務を担当する管理部門の人々もいる。「鞄」の主人公は秘書課に籍を置き、議会答弁を担当している。

★ ある県議が「爆弾発言」をするとの噂が走った。県議は何を取り上げるのか。議場で本部長が立ち往生するような事態だけは避けねばならない。そうした事態は秘書課員である主人公の失脚を意味する。

★ 役人(官僚)の世界は、警察畑であろうと他の部門であろうとさほど変わらない。民間企業のように飛躍的に地位が変動したり収入が増えることがので、関心は人事、とりわけ同期との競争や出世に寄せられる。そしてそのためには、どのような人脈に与するかが重要事だ。そこには陰湿な策謀も起こる。

★ 「爆弾発言」の中身を探るため、主人公は走り回る。しかしその中身がつかめない。そして遂に議会での一般質問。この期に及んで、主人公はある策謀に気づく。

★ 外から見れば滑稽にも思えるが、組織の中にいるとその滑稽さがわからないようだ。いや、わかっていても、どうすることもできないのが組織の中の個人なのかも知れない。

コメント

佐々木譲「復帰する朝」

2024-08-29 16:21:19 | Weblog

★ 南海トラフ、台風と天災続き。人々の不安が高まる中、コメ不足の報道。報道の段階では、それほど心配ではなかったが、実際にスーパーからコメ(レトルトのご飯も)が姿を消すとさすがに心配になってくる。

★ 不安心理がパニック買いを誘発し、人々が備蓄に走れば、モノ不足に拍車がかかる。コロナ禍のマスクのように。

★ 以前に堤未果さんの「ショック・ドクトリン」(幻冬舎新書)を読んだが、人々が不安心理に陥った時、何か良からぬ方向に世の中が動くかも知れない。

★ さて、異例のスロー台風を横目に、佐々木譲さんの「廃墟に乞う」(文春文庫)から「復帰する朝」を読んだ。短篇集の最後に据えられた作品。北海道警に籍を置く仙道刑事がなぜ心を病んで休職したのかも明かされる。

★ 「復帰する朝」は、数年のブランクを経て仕事に復帰しよとする仙道刑事が描かれる。

★ 若い女性の焼死体が発見された。仙道はかつての事件で知り合った女性から電話を受ける。彼女の妹に容疑がかかっているようなので、マスコミから妹を守ってほしいという。仙道は休職中を理由に断ろうとしたが・・・。ドロドロとした痴情のもつれを感じさせながら、読みやすい作品だった。

コメント

柚月裕子「チョウセンアサガオの咲く夏」

2024-08-27 18:43:16 | Weblog

★ 2学期が始まった。新学期は子どもたちの心にも波風が立つ時期。今朝の「京都新聞」に「不登校 心の叫び」という記事が載っていた。

★ かつて不登校で苦しんでいた19歳の女性の作品が、「TikTok 不登校生動画甲子園2024」で佳作を受賞したという。23面の岡本早苗記者の記事がなかなか良かった。

★ 最近、うちの塾にも現在不登校の生徒やかつて不登校だったという生徒が増えてきた。通信制の高校に通う生徒も増えてきた。令和4年度の文科省の調査によると不登校の小中学生はおよそ30万人。在籍児童数の3%を超えるという。およそ各クラスに1人の割合かな。

★ 学びの多様化ともいえるが、学校教育や子どもたちの心身に何か異変が起こっている兆候かも知れない。

 

★ さて、週末は、映画「沈黙のパレード」と「砂の器」を観た。どちらも、何度見ても「面白い」。

★ 読書は、柚月裕子さんの短篇集「チョウセンアサガオの咲く夏」(角川文庫)から表題作を読んだ。母親の介護で孤独を抱える女性が、代理ミュンヒハウゼン症候群になる話。

★ 社会は豊かになり、個人が自由に生きられる時代になった。一方で、人と関わりにくい世の中でもある。どこまで関わればよいのか、孤独は人と人の間に横たわっているのかも知れない。

コメント

角田光代「方舟を燃やす」

2024-08-24 18:13:41 | Weblog

★ 夏期講座が終わった。年齢を重ねるごとに体力的にきつくなってきた。今年は何とか乗り切れた。来年は「働き方改革」をしよう。

★ さて久々に読書をした。角田光代さんの「方舟を燃やす」(新潮社)を読み終えた。1960年代に生まれた男性と1950年代に生まれた女性の二人が主人公。

★ それぞれの人生を追いながら、「時代」が描かれていく。

★ 昭和生まれの私にとっては、自らの歩みを辿るような気がした。「ノストラダムスの大予言」が流行ったのは私が中学生の時だった。電波の状態が悪く雑音交じりで、ラジオ大阪、浜村淳さんの「ヒットでヒット バチョンといこう」に熱中していた時代だった。当時としては20年後の1999年の「滅亡」を半信半疑で待っていたが、結局世界が滅ぶことはなかった。

★ 口裂け女やコックリさんは高校生時代に流行った気がする。一度試してみて、コインが勝手に動いた気がして背筋が寒くなった。

★ 1995年は、時代の分岐点だったのかも知れない。1月の阪神淡路大震災。3月には地下鉄サリン事件が起こった。

★ 1990年代後半から2000年代に入り、デジタル化が急速に進む。私が携帯電話を購入したのも、インターネットを始めたのもこの時期だ。30代から40代。今から思えば若かったなぁ。

★ アメリカの同時多発テロや東日本大震災、そしてコロナ禍。振り返ってみれば想像をはるかに超える惨事が連発したなぁ。

★ この「時代」の中で1日1日、いろんなことに思い悩み、時には喜び、時には苦悩し生きてきた。この作品を読みながら、歩んだ道のりをいろいろと考えさせられた。さて、これからの晩年をいかに過ごそうかな。

コメント (2)

ドラマ「バビロン・ベルリン」

2024-08-18 20:27:09 | Weblog

★ この週末は体を休めることに専念した。時間を利用して、ドイツのドラマ「バビロン・ベルリン」第1シーズンから第3シーズンまで一気見した。

★ 舞台は1929年のワイマール共和国。第一次世界大戦で敗れ成立した「民主」国家だが、その内部では極左と極右が対立。社会民主党政権は政治的・経済的危機に有効な対策がとれず、時代は1929年の世界恐慌を経てナチスの時代へと移り変わっていく。

★ 物語は時代の分岐点のベルリンにやってきた一人の刑事を中心に展開していく。彼はある使命を帯びてケルンからベルリンへやって来た。第1シーズンでは、ソ連のスターリン派とトロツキー派の対立。ソ連から持ち出されトロツキーの亡命先に向かう列車をめぐる争奪戦。それにドイツの非合法の軍事組織「黒い国防軍」が絡んでいく。

★ 第2シーズンは、前シーズンの列車争奪戦から引き継ぎ、行政組織や警察内部に影響を広めつつある「黒い国防軍」が描かれていた。

★ 第3シーズンでは、ナチスの台頭が鮮明になる。共産主義者やユダヤ人、反体制の人々が暴力的に排除されていく。そして10月、ニューヨークのウォール街で株価が大暴落。暗黒の時代の到来を予想させながら物語は終わる。

★ 大きな歴史の流れを踏まえつつ、警察官それぞれの葛藤やエピソード、いくつもの小さな山場が用意されており、途中でやめられない。

★ 主人公で大活躍するラート警部ではあるが、第一次世界大戦のPTSDを抱え、また戦場で兄を救えなかったトラウマや兄嫁との恋など心の傷を持っている。

★ 最初は娼婦として家族を養いながら、後に刑事助手となるシャルロッテ・リッター刑事はとてもチャーミングだ。聡明さと度胸を兼ね備え、警察という男社会の中で活躍していく。

★ 当時の街並みなどが再現されているところも見事だった。

☆ さて夏期講座も最後の1週間。あと一頑張り。甲子園の熱戦もあと3日間だ。昨日の「早稲田実業対大社」の試合は久々に感動した。お互いにミスもあり見事な采配もありで、目が離せなかった。高校球児たちの気迫が伝わってきた。

コメント

江國香織「影」

2024-08-16 14:52:58 | Weblog

★ 夏期講座第4週目が終わる。あと1週間。あっという間の夏休み。今年はいろんな意味で一つの節目になりそうだ。

★ 連日の猛暑。今年は暑すぎるのか、例年の蝉しぐれも聞こえない。地球全体が転換期にあるのか。夏が終わるとアメリカは大統領選が過熱。日本もリーダーが変わるが、どう転んでも刷新感がない。どこかの国のルーレットで決めても大差ないかも。

★ そんな愚痴はさておき、今日は江國香織さんの「すいかの匂い」(新潮文庫)から「影」を読んだ。装丁や題名からもわかるように、夏の日常生活にそっと潜むちょっとしたホラー短篇集。

★ 「影」の舞台はある喫茶店。主人公の女性は小学校の同級生「M」とアイスコーヒーを飲んでいる。同級生とはいえ、そんな親しい間柄ではない。何年かに一度電話がかかってくる程度。ただそのタイミングが絶妙だ。

★ 今日、女性は「離婚をした」と「M」に話し、「M」はそっけなくそれを受け止める。

★ 話は現在と過去を何度か行き来する。女性が困ったとき、どうしたわけが「M」がそっと現れ、窮地を救ってくれる。タイトルの「影」はそんなことに由来するのであろうが、「M」の正体は結局明かされない。

★ 女性に内在するもう一つの人格かも知れないし、あるいは本当にこんなにタイミング良い守護神がいるのかも知れない。

★ 普段私たちは気づかないが、身近に「影」は存在するのかも知れない。

★ 関東地方は台風で大荒れの様子だが、京都では今夜、五山の送り火だ。お盆に帰ってきたご先祖の精霊が再び冥府に帰る行事だという。ご先祖の精霊と言っても目に見える実体はないが、来年、また元気に働いている姿を見てもらえたら良いなぁと思った。

コメント

取材商法

2024-08-07 14:52:26 | Weblog

★ 朝の授業が終わり、丸つけをしながら少々ウトウトしていると、携帯が鳴りました。

★ 出てみると、何とかいうボクサーと取材に伺いたいとのこと。何のことかさっぱりわからなかったので丁重にお断りしました。

★ あとからネットで調べてみると、どうやら「取材商法」というものらしい。

★ 取材は無料を謳いつつ、著名人の肖像権や掲載料、あるいは交通費などを名目に費用が請求されるというもの。

★ かつて、大手新聞社が母校を取り上げる企画で、名刺広告を出してくれと頼まれることはあったが、「取材商法」というのは初めてでした。

★ 昨今、インタビューを主体にしたテレビ番組や雑誌の企画があるから、つい騙されてしまうのでしょうね。

★ そもそも、うちのような個人塾、取材などする価値もなかろうに。ちょっとした規模の塾なら引っかかるかもご注意あれ。

コメント

夏期講座半分終わる

2024-08-06 08:55:34 | Weblog

★ 連日の株価大暴落。最近の株価はバブルだったから、その反動ともとれるが、急落は社会への影響が大きい。

★ 私は株式を持っていないので直接の損はないが、回りまわって、しわ寄せは弱者に降りかかる。株価下落→会社が倒産あるいはリストラ→失業者の増加、賃金の抑制→デフレ。負のスパイラルが始まったのか。

★ 親の収入が減る。中には授業料を支払えない親が増える→塾生が減る→経営の悪化。塾業界にも嵐が吹くかも。

★ そんな世相を横目に見ながら、夏期講座は12日目。全25日の前半戦が終わる。猛暑の中、何とか戦えている。最後まで無事に走り切りたい。

★ 1929年の世界恐慌。その行き先は戦争だった。今回はその教訓を生かせるだろうか。新聞によると、米不足も深刻だという。一喜一憂、変動の大きい時代に入ってきた。

★ まずは近況まで。

コメント