じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

映画「スーパー・チューズデー」

2020-08-31 00:14:47 | Weblog
★ 映画「スーパー・チューズデー~正義を売った日~」(2011年)を観た。アメリカ大統領選挙、ドロドロとした裏舞台を描いていた。

★ オハイオ州では民主党、大統領候補の予備選が白熱していた。有力な候補の一人、マイク・モリス知事の陣営ではポール・ザラー、スティーヴン・マイヤーズといった選挙参謀(ブレーン)が、情勢分析や選挙戦術に奔走していた。特に若手のスティーブンは対立陣営からもその手腕が評価されていた。そんな彼にある誘惑が。そして次々と歯車が狂い始める。 

★ 2020年のアメリカ大統領選はすでに共和、民主両党の大統領候補が決まり、本選に走り出している。日本では突然の首相退陣で後継戦の火ぶたが切られた。敵の敵は味方、数は力なり。岸田vs石破、麻生vs菅、岸田vs二階など、政策論争ではなく、仁侠映画さながらの仁義なき戦い。総選挙が近いだけに、思惑もひとしおだ。
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2020-08-30 11:18:53 | Weblog
★ 小林秀雄は「モーツァルト」の題字の横に「母上の霊に捧ぐ」の文字を添えた。論文発表直前に世を去った母を思いやってのことらしい。

★ この当時の小林の心境を物語るエピソードがあるという。鎌倉の家の近くで見た大きな蛍。蛍などありきたりな風物だったが、小林はその時、「おっかさんは、今は蛍になっている」と思ったという。言葉にすればありきたりなものに堕してしまうその「直観」に小林はとらわれた。(東京新聞のコラム「大波小波」に詳しい)

★ このエピソードに触発されて「無常という事」(「無常という事」角川文庫、「モールァルト」集英社文庫所収)を改めて読んだ。一言芳談抄にある「なま女房」の話から筆をおこし、「生と死」や「歴史」そして「美」について論じている。

★ 本居宣長を回顧し、「解釈を拒絶して動じないものだけが美しい」と言い、また川端康成との対話を紹介し、「生きている人間とは人間になりつつある一種の動物」と語る。そして、「現代人には、鎌倉時代のどこかのなま女房ほどにも、無常という事がわかっていない。常なるものを見失ったからである」と締めくくっている。

★ 解釈ばかりがまかり通り、日々煩悩に右往左往する私には厳しい警句だ。それでいて味わい深い。

★ ところで、小林は「無常という事」の中で先の「なま女房」の一文を読んだ時の感動が果たして何だったのか、はっきりとは思い出せないと告白する。寝覚めの夢のようなものだろうか。自らのある心の状態が感じた「直観」なのかも知れない。それは蛍に母の霊を見たことと共通しているのかも知れない。

☆ 蛍と言えば、「伊勢物語」の「行く蛍」が忘れがたい。

☆ ある男に恋心を抱きつつ若くしてこの世を去った娘。駆け付けた男が晩夏の夕暮れ、床に横たわっていると蛍を見る。そして、詠んだ歌。

☆ 「行く蛍雲の上までいぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ」

☆ 「飛んでいく蛍よ、雲の上まで飛んでいくことができるならば、(地上は)秋風が吹いている(から早く帰っておいで)と、雁(娘の魂)に告げて欲しい」
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原田マハ「誕生日の夜」

2020-08-29 17:01:09 | Weblog
★ 学校が始まって初めての週末。塾業界は束の間の休息。9月になれば、模試、中間テスト、10月になれば、受験対策の日曜特訓、放課後ゼミと例年通りのスケジュールが始まる。 

★ 長編を何冊か読み進め、短編では乙一さんの「ZOO1」(集英社文庫)から「ZOO」、そして「1日10分のごほうび」(双葉文庫)から、原田マハさんの「誕生日の夜」を読んだ。

★ 「ZOO」は、彼女を殺してしまった男の独白。おぞましい描写が続くが、冒頭の「写真と映画の違い」「俳句と小説の関係」の解説は興味深かった。確かに小説を微分すれば俳句や詩になり、物語を微分すると描写になるのかも知れない。一方で写真を積分すれば映画になるのかも。

★ 私たちの生涯も一瞬一瞬の積み重ねに違いない。

★ かなりドギツイ「ZOO」の後は、原田マハさんのほっこりする物語。女友達の話。幼い頃から二人には差があった。一方は裕福なお嬢様、それにひきかえ主人公はごくごく平凡な娘。幼い頃から仲良しではあったが、お嬢様はお姫様役、主人公は従者の役回り。それはそれで、うまくいっていたのだが。

★ そんな彼女たちも成長した。お嬢様は外資系企業の役員になり年収は3000万円。一方の主人公は年収300万円の派遣社員。主人公は30歳の誕生日を迎えるが、特に祝福してくれる人もなく、1週間後のお嬢様の誕生パーティには毎年招待されていたが、今年は音沙汰がない。心配する主人公。そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

★ 女性の友人関係って、男にはわからない何かがある気がする。
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伊坂幸太郎「終末のフール」

2020-08-27 21:49:54 | Weblog
★ 死を受け入れるプロセスに5段階あると聞いたことがある。①否認と孤立、②怒り、③取り引き、④抑うつ、⑤受容と言ったものだったか。(E・キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」中公文庫)

★ 伊坂幸太郎さんの「終末のフール」(集英社文庫)から表題作を読んだ。小惑星が8年後に地球と衝突するという。人類は絶滅するであろう。すでに3年が経過した。最初は、略奪、暴動、犯罪と混乱していた社会も、もう落ち着いたようだ。死の受容の5段階の最終段階に到達したのかも知れない。

★ 表題作ではある家族の日常の風景が描かれている。終焉までのタイムリミットがなければ、よくある家族の物語だ。しかし、何をしようと、どうあがこうと、残された時間は3年しかない。

★ 隕石であれ、疫病であれ、自然災害であれ、有限の時間を前にして人はどう生きればよいのか、考えさせられた。

★ 何はともあれ、隕石が地球にぶつかろうとぶつかろまいと、人の一生は有限なのだ。
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森浩美「最後のお便り」

2020-08-26 17:00:34 | Weblog
★ NHK国際放送が選んだ日本の名作「1日10分のごほうび」(双葉文庫)から、森浩美さんの「最後のお便り」を読んだ。

★ ベテランの局アナ。報道番組のメインキャスターも2年ほど務めたが、今は若手にその座を譲り、肩書は副部長だが閑職に追いやられている。大手企業の経営陣となった旧友の計らいでラジオ番組をやらせてもらったが、それもいよいよ打ち切りとなった。

★ 彼の一つの楽しみは自らの番組を母に聴かせること。いよいよ最終回というとき、母が急変したという連絡が。

★ 最後は予想通り泣かされる。

★ 森浩美さんという方についてよく知らなかったが、著名な作詞家だという。家族をテーマとした小説を何本か書かれているそうだ。そちらも読んでみたくなった。
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映画「1917 命をかけた伝令」

2020-08-26 13:26:19 | Weblog
★ 映画「1917 命をかけた伝令」(2019年)を観た。

★ 第一次世界大戦、ドイツ軍の戦術的撤退を知った将軍は前線に攻撃の中止を伝えようとする。しかし電話線が切断されたために、将軍は2人の下士官に伝令を命じる。

★ (こんな大切な命令をたった二人の兵士に委ねるというのはどうかとも思うのだが・・・。終盤、現場指揮官が朝礼暮改的な指揮命令を批判しているから、現場ではよくあることだったのであろう)

★ とにかくカメラワークがすごい。1人の兵士をとことん追いかける。まるで1カットのように見せるのもワザだ。戦場の風景にも驚く。どれだけカネがかかっているのかと他人事ながら心配になってくる。

★ 自然の描写、特に青々とした草原が美しく、それだけに戦争という行為が愚かしく見える。

★ 難しい論及は敢えて行わないでおこう。「カメラをとめるな」的な映像へのこだわりを楽しみたい。こういう描き方もあるのだと。 
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映画「インターステラー」

2020-08-23 20:57:55 | Weblog
★ 映画「インターステラー」(2014年)を観た。SF映画では「2001年宇宙の旅」(1968年)以来の衝撃だった。(「ET」にも感動したけれど)

★ 異常気象のためか食物が枯渇しつつある地球。NASAは人類の「種」を残すために他の恒星圏の惑星への移住を計画する。調査隊が土星近辺のワームホールを利用して、候補となる惑星へと探査に向かうのだが、彼らの前途は多難であった。

★ 物理学バリバリの理論とパイロットの家族のドラマをリンクさせて、ストーリーに飽きさせない。何よりCG技術を駆使した映像とドキドキさせる音響だ。視覚、聴覚両面から迫ってくる。

★ ロボット(「TARS」と「CASE」)がなかなかいい味を出している。マット・デイモン演じる博士の名前がヒュー・マンというのも意味深だ。

★ 2時間49分と長い映画だったが、面白かった。
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連城三紀彦「小さな異邦人」

2020-08-23 17:56:30 | Weblog
★ 安倍総理の連続在職日数が最長になるという。佐藤栄作氏、吉田茂氏を抜くというが、どうも実感がわかない。要は、人材難。弱い野党と人気のない派閥の領袖。

★ 京都新聞「天眼」というコラム。アベノミクスを「アホノミクス」と言い放つ浜矩子氏。今日のお題は「くたばれアルゴリズム」。コロナ禍で混乱するイギリスの大学入試制度を紹介する。

★ 大学入試の上級レベル試験の実施が見送りとなったという。その代替として採用された教員評価とコンピューターによる再評価。コンピュータによる評価は教員評価より厳しく、その背景にはアルゴリズム(計算手法)に所属学校のランキングが加味されたことがあるという。イングランドの「くそくらえ、アルゴリズム!」運動から不用意な機械依存を批判する。

★ AIといっても結局、計算式を設計するのは人間だね。

★ コラム「凡語」では「黒い雨」を取り上げ、その中で興味をひかれたのは「白雨」という言葉だ。昨日の夕立はまさに「白雨」だった。「暮らしの歳時記」で今日が「処暑」だと知る。少しづつ季節が移ろっているようだ。地方紙が面白い。

★ さて、連城三紀彦さんの「小さな異邦人」(文春文庫)から表題作を読んだ。母親と8人の子どもたち(この子どもたちにも複雑な事情がある)。6畳一間で暮らすこの母子家庭に脅迫電話がかかってくる。子どもを誘拐したから、3000万円用意しろというのだ。8人の子どもを確認するが、誰も誘拐などされていない。イタズラか、ということだが、話は複雑に絡まっていく。

★ 子どもの1人、14歳の少女の語りで物語が進む。実はそこにヒントが隠されている。
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重松清「バスに乗って」

2020-08-22 20:52:51 | Weblog
★ 本屋に立ち寄った。NHK国際放送が選んだ日本の名作「1日10分のごほうび」(双葉文庫)という短編集を買った。赤川次郎、江國香織、角田光代、田丸雅智、中島京子、原田マハ、森浩美、吉本ばなな、なかなかの顔ぶれの短編が集められている。

★ 吉本ばななさんの「みどりのゆび」を読んだ。妹が植えたアロエ。大きく成長し、真っ赤な花を咲かせている。このまま大きくなれば行き交う人の妨げになりそうだ。いっそ切ってしまえばなんて話になっていた。そんな時、主人公の祖母が病に倒れる。それも重い病だ。病が進み、意識ももうろうとした祖母が、アロエの気持ちを語り出す。それは不思議な体験だったが、主人公はその後植物と心を通わすことができるようになったようだ。

★ 動くことも、ましてや気持ちを出すこともできない植物。しかし、かれらにも何らかの意識があるのかも知れない。深いところでは人も植物も同じ「いのち」としてつながっているのではと考えさせられた。

★ NHK国際放送が選んだ日本の名作には前作があり、それには朝井リョウ、小川洋子、坂木司、東直子、石田衣良、角田光代、重松清、宮下奈都といった人気作家の作品が収められているという。

★ 重松清さんの作品は「バスに乗って」。「小学五年生」(文春文庫)に収められているので、こちらを読んでみた。

★ 小学五年生になった男の子が一人でバスに乗る話。まるで初めてのお使いのようにドキドキしながらの体験。運転手の怖い表情に怯えながらも目的地の「大学病院前」に無事着いた。どうやら母親が入院しているようだ。少年は回数券を買ってお見舞いに通うようになるが、母親の長引く入院に不安が募る。

★ 少年の心の動きが実に繊細に描かれている。
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筒井康隆「ブルドッグ」

2020-08-22 13:17:32 | Weblog
★ 夏期講座が終わった。例年は5週間のスケジュールを3週間に縮めたせいか、それとも寄る年波のせいか、疲れた。

★ 来週からは学校が始まる(高校はもう20日から始まっている)。主婦の安堵がわかる今日この頃だ。

★ 久しぶりに時間ができたので本棚の整理。整理しながらちょっと読み。安倍公房さんの「R62号の発明・鉛の卵」(新潮文庫)から「犬」を読んだ。

★ 犬が嫌いな主人公。モデルをやっていた女性と結婚するのだが、犬ともども同居することに。ただでさせ嫌いなのに、ヤツの言葉がわかるようになったために更に険悪な雰囲気に。犬の本音は知らぬが仏かも。

★ 犬つながりで、筒井康隆さんの「笑うな」(新潮文庫)から「ブルドッグ」を読んだ。那智という名の犬。主人公は彼と意思を通じるようになってしまった。テレパシーのように。ペットとヒトが仲が良いのは、言葉が通じないからで、言葉が介在すれば嫌気がさす、と主人公は言う。那智の要求はどんどんエスカレートしていく。その言葉が大阪弁というのが面白い。

★ 世にペットを飼う人は多い。もはやパートナーとして文字通り猫かわいがりしている人もいる。ペットを飼っているつもりが、案外ヒトの方が、彼らに飼われているのかも。

★ 彼らにしても、もし言葉が話せたら、さぞ愚痴も多かろう。
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