じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

乗代雄介「それは誠」

2023-05-30 23:43:14 | Weblog

★ 京都新聞、渡邉英理さんの「いま、文学の場所へ」で紹介されていたので、乗代雄介さんの「それは誠」(「文学界」6月号)を読んでみた。

★ 現代日本版「スタンド・バイ・ミー」という印象を感じた。高校の修学旅行。1人の少年は自由時間を利用してある冒険を試みる。最初一人で行動するつもりだったが、彼には数人の仲間が伴った。

★ 作品のほとんどは高校生たちのたわいもない(ある意味ナチュラルな)会話で進められる。

★ 私には作品そのものより、渡邉英理さんの解説の方が魅力的だった。

★ 「いま、文学の場所へ」では、他に永井みみさんの「ジョニ黒」(「すばる」6月号)、滝口悠生さんの「反対向き」(「新潮」6月号)、九段理江さんの「しをかくうま」(「文学界」6月号)が紹介されている。

★ 紹介文はともかく、渡邉さんの中上健次論が興味深かった。

コメント

堀内孜「公教育経営概説」

2023-05-29 16:02:39 | Weblog

★ 京都教育大学で指導して頂いた堀内孜先生が亡くなられてまもなく2年になる。先生との思い出は尽きない。先生との出会いがなければ今の私はなかったであろう。

★ それは、同じ研究室で学んだ教え子に共通する思いではなかろうか。この度、その教え子たちで論文集を刊行することになったという。私も寄稿させていただくことになった。

★ とはいえ、果たして何を書こうかと思案中。とりあえず今月中にタイトル案を提出しなければいけない。

★ 私が先生の論文でまず感銘を受けたのは「近代公教育分析に関する方法論的諸問題」(京都教育大学紀要No.57 1980年)だ。マルクスの「資本論」並みに難解な論文で、当時学生の私など全く理解できなかった。およそ40年近い時を経て、先生が追究されていたのは、「解釈の教育学」ではなくて「変革の教育学」なのだということがぼんやりわかった。

★ そう思うようになると、マルクスの「フォイエルバッハに関するテーゼ」11、「哲学者たちは世界をさまざまに解釈したにすぎない。大切なことはしかしそれを変えることである」(エンゲルス「フォイエルバッハ論」松村一人訳 岩波文庫所収)という言葉が明確に伝わってくる。

★ 1985年刊行の「学校経営の機能と構造」(明治図書)は画期的な著書だ。本書は国家と教育の緊張関係と言うマクロな視点に立って、個々の学校における教育過程の組織化、管理化を問うこと、「つまり、国民社会における公教育の経営、組織化にとって、個々の学校経営管理は、いかなる機能と構造をもっているかについての分析を課題としている」という。

★ 教育行財政学と学校経営が一体化し、「公教育経営学」へと発展していく。2000年には「地方分権と教育委員会」シリーズ全3巻を刊行され、1996年「公教育経営学」、2002年「現代公教育経営学」、2011年「公教育経営の展開」そして2014年「公教育経営概説」を刊行された。それらで教え子たちに発表の場を与えていただき、また大学のテキストとして活用された。

★ 私も「学校教育病理」について、あるいは「学校と教育産業」について書かせていただいた。研究室の紀要「現代学校研究論集」第12巻に書かせていただいた「昭和初期における学校経営改善と年次計画」は自作ながら今読んでも面白い。

★ さて、ここまで振り返り、果たして私は何を書くべきかを思案。先生から学んだことを、私塾経営にどう生かしているのかを書こうと思えてきた。

コメント

東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

2023-05-28 17:19:14 | Weblog

★ 日曜日はどっぷりと本が読める。年を重ねるごとに目の方が辛くなってきたので、読めるうちにしっかり読みたい。

★ さて、今日は東野圭吾さんの「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(角川文庫)を読んだ。オムニバスを綴り合わせたような作品。それぞれの出来事が時間軸を超えてつながり合っているのが面白かった。

★ 時代は昭和。まだ小さな商店が軒を連ねる街並みに「ナミヤ雑貨店」という商店があった。文具や駄菓子などいわゆる「よろずや」だ。ここの店主、あるときから奇妙なことを始めた。顧客の中心である少年少女の相談に応えるというもの。

★ 中には悪戯半分のものもあったが、将来の進路を決める真剣な悩みも多くあった。店主はそのそれぞれに頭を悩ませ心を込めて、時にユーモアを交えて回答していた。

★ やがて店主は病に倒れるが、彼は息子に遺言を残し、その息子(つまり店主の孫)が一夜限りの復活祭を企画する。そしてその夜、ある奇蹟が起こる。

★ この作品は映画化され2017年に公開されている。何といってもロケ地が素敵だ。昭和を懐かしく感じた。

コメント

芥川龍之介「玄鶴山房」

2023-05-27 22:42:29 | Weblog

★ 今日は朝から英検。無事終了。

★ 芥川龍之介「歯車」(岩波文庫)から「玄鶴山房」を読んだ。芥川と言うと理知的なイメージがあるが、この作品はドロドロとした感じが漂う。

★ ゴム判の特許で一財産を築いた玄鶴は、家の外に愛人を囲い子までできていた。ところが玄鶴は結核に倒れ、正妻と愛人が同居するという気まずい環境になった。

★ 表面は大人を装いながらも、嫉妬に燃える内面が印象的だ。

★ 芥川の晩年の作で、死の影が見え隠れする。

コメント

伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」

2023-05-26 15:42:24 | Weblog

★ 高校の中間テストが終盤。近隣の中学校は日曜日から研修(修学)旅行だ。明治村、信州、ナガシマスパーランドの行程。最終日が雨予報で心配だ。

★ 伊坂幸太郎さんの「陽気なギャングが地球を回す」(祥伝社文庫)を読んだ。偶然出会った4人がそれぞれの能力を生かして銀行強盗をする話。

★ 強盗団とは不謹慎は面々だが、フィクションであるから楽しめる。計画通りに強奪に成功した一団だが、逃走中に思わぬ出来事に出くわし、戦利品を奪われてしまう。裏にはカラクリがあるようで。

★ 伊坂さんの初期の作品。人間関係が複雑で、登場人物の個性がイマイチ伝わってこなかった。しかし、軽快なセリフ回しは絶品だ。

★ この世の出来事は偶然なのか、必然なのか。

★ 最近、ネットフリックスのドラマが面白い。まずは「クイーンズ・ギャンビット」。

★ 事故で両親を亡くし孤児となった少女がチェスの才能を発揮して成長していく物語。かつてのライバルたちが彼女を応援していくところは感動する。彼女は孤児院の用務員をしていたシャイベルからチェスを習う。映画「ニューシネマパラダイス」のトト少年と映写技師のアルバトーレを思い起こした。

★ 実話を基にしたという「時の面影」も面白かった。

★ U-NEXTで今日まで配信ということなので、韓国映画「ベルリンファイル」を再び観た。北朝鮮の諜報員役ハ・ジョンウと韓国の諜報員役ハン・ソッキュが良い。ヒロインは誰かと思えば「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョンだ。

コメント

ドラマ「サンクチュアリー聖域ー」

2023-05-23 00:17:35 | Weblog

★ 昨夜から今日までネットフリックスでドラマ「サンクチュアリー聖域ー」を全8エピソードを観た。

★ 主人公は九州で荒れた時代を過ごした少年。父親の借金で家業の寿司屋は廃業し、一家は離散。彼はカネのために角界に入る。確かに強かったが、「勝てばいいんだろう」という破天荒な振る舞いは、やがて品格を問われることに。

★ 彼自身は品格などは糞喰らえという格闘技感覚で臨んでいたが、自己流では力の限界を感じ始める。

★ 彼のライバルは北海道出身の力士。体に恵まれ快進撃演じる。しかし彼には辛い過去があった。借金まみれの生活。遂に母親は弟を道づれに無理心中。彼は一人残された。

★ この2人が土俵で相まみえる。

★ 2人を取り巻く人々も魅力的だ。対戦場面ではスローモーションを使った演出が効果的だ。

★ 相撲道と「道」がつく意味が分かる気がする。相撲が人をつくってゆく。

コメント (1)

水野敬也「夢をかなえるゾウ」

2023-05-22 01:08:35 | Weblog

★ 高校が中間テスト前なので、今日(日曜日)は1日中、テスト対策。

★ 合間を縫って、水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」(文響社)を読んだ。世に自己啓発本はあふれている。しかし、小説仕立てと言うのが面白かった。それも説教を垂れるのが、関西弁バリバリで反面教師を自負するゾウ(一応神様だというが)なのだ。

★ 変わりたくても変われない男の元に突如現れたガネーシャと名のるこのゾウ、男に1日1つの課題を与えていく。果たして男は自らの夢を実現していけるのか。

★ ガネーシャの課題、「なるほどなぁ」と思えるのがいくつもあった。早速実践してみたいと思った。

★ 夜、ネットフリックスで「サンクチュアリー聖域ー」というドラマを観始めた。大相撲が舞台のドラマだ。想像以上に面白い。九州出身の問題児。家庭の問題から道を反れたようだ。そんな自分でも一獲千金が狙えると角界に入門したものの、現実は厳しいものだった。

★ 彼は成功を収めることができるのだろうか。

コメント

湊かなえ「Nのために」

2023-05-20 16:30:00 | Weblog

★ 後味の悪いミステリーを「イヤミス」と言うらしい。そして「イヤミスの女王」と言えば湊かなえさんだ。

★ 湊かなえさんの「Nのために」(双葉文庫)を読んだ。

★ セレブが暮らすタワーマンションの高層階で、夫婦が殺された。妻と不倫関係にあった男が犯行を自供したのだが、彼には共犯者がいた。

★ Nというのは登場人物の氏名から来ている。本筋はDV夫に監禁されている女性を救出するために、夫婦と関係がある4人がある計画を実行するというもの。高い塔に閉じ込められたお姫様を助けるというメルヘンのようなものだ。

★ しかし、物語は実にドロドロとしている。登場人物はそれぞれにトラウマを負っている。特に幼少期に父親や母親の歪んだ愛に直面している。

★ 登場人物の一人、杉下希美の母親はお嬢さん育ちで、夫が愛人をつくり、子どもと共に家から追い出された後も浪費癖が続き、彼女がその尻ぬぐいに追われている。

★ また、成瀬慎司は母親から愛の名のもとに虐待を受けている。

★ そして事件場面。救い出されるべき妻の思いもかけない発言、どんでん返しには驚く。それでも自ら罪を被ろうとする男性。歪んだ愛がこれでもかと繰り返される。「究極の愛は罪を共有すること」というのだが。

★ この作品は2014年にドラマ化されているので、そちらも観た。榮倉奈々さん、小出恵介さん、窪田正孝さん、賀来賢人さんが4人のNを演じている。

コメント

川端康成「笑わぬ男」

2023-05-19 19:42:13 | Weblog

★ 雨降りなので今日は1日中ひきこもり。

★ 川端康成の「掌の小説」(新潮文庫)から「笑わぬ男」を読んだ。小説というかエッセイのような作品だった。

★ 川端は原作の小説が映画化されるとあって京都に来ていた。映画製作の現場にも参加していた。この映画、「狂った一頁」(1926年)といい、精神病院が舞台。今から見ればかなり劣悪な環境にある病院の様子、そこの収容されている患者の様子が前衛的な映像で描かれている。サイレント映画。今はYouTubeで観ることができる。

★ 「笑わぬ男」では撮影の裏話が語られている。特に終盤、患者が微笑する面をかぶるところ。穏やかな能面をつけ、病んだ彼らも、ひと時の平穏を得たような感じだ。(私たちがそう感じているだけなのだが)

★ 大学入試のとき、和辻哲郎さんの「ペルソナと面」を読んだことを思いだした。人は社会生活を営むとき、大なり小なり仮面をかぶって生きているのかも知れない。

★ 「青磁色が色濃くなって来て空は美しい瀬戸物の肌のようだった。私は寝床の中から鴨川の水が朝の色に染まっていくのを眺めていた」。この辺りの表現はさすがに美しい。

コメント

宮本輝「力」

2023-05-18 18:36:19 | Weblog

★ 最近、近隣の中学校では1学期の中間テストが行われない。単元テストあるいは小テストが教科ごとに行われる。期末のテスト範囲が広くなるのは苦痛だが、塾としてはテスト対策期間が1回減るのでありがたい。

★ 一方、高校はいよいよ今週から中間テストだ。

★ さて、今日は宮本輝さんの「五千回の生死」(新潮文庫)から「力」を読んだ。夕暮れの公園のベンチで時間をつぶす男性。仕事にも家庭にも小さいながらも問題を抱え、茜色に彩られながら黄昏気分に浸っている。

★ そして、ふと、小学1年生の頃を思い出す。小学校へはバスで通学した。どうにも頼りない少年を心配した両親。最初の2日間は一緒に登下校し、そして3日目。ついに一人で登校することに。果たして無事に小学校にたどり着けるのか。

★ 当時、彼の父親は商売に失敗し、困窮した生活を送っていた。鬱憤を時として母親に爆発させる父親。そんな父親が紆余曲折を経て校門をくぐった息子の顛末を手放しで喜んでいるのが印象的だった。

★ 宮本輝さんの作品は短いものにも味がある。

コメント