じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

宮部みゆき「火車」

2023-06-29 15:24:01 | Weblog

★ 6月もあとわずか。高校は期末テストが始まり、塾は夏期講座の準備が始まる。

★ ドラマ「臨場」を観終わり、エンディングで歌われている平原綾香さんの「威風堂堂」が耳鳴りのように繰り返し聞こえる。良いドラマだった。

★ さて、宮部みゆきさんの「火車」(新潮文庫)を読み終えた。足を負傷し休職中の刑事が親類から相談を持ち掛けられる。婚約中の女性が突然姿を消したので、捜してほしいというのだ。

★ 休職中で警察手帳はない。今のところ事件性はないので、警察が表立って動いてはくれない。彼は探偵のように地道な探索を始めた。そこで浮かんできたのは、婚約者という女性の隠された素顔。

★ 彼女が語った名前は別人のもの。では彼女はいったい誰なのか。名前を奪われた女性はどうなったのか。

★ 彼は大阪、名古屋、宇都宮と飛び回り真相に迫っていく。そして物語は余韻を残して終わる。

★ 多重債務と暴力的な取り立て。カネが人生を狂わす仕組みに警鐘を鳴らす。中盤以降面白くなった。心のひだに浸みこむような表現がいくつもあった。

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横山秀夫「声」

2023-06-25 18:40:06 | Weblog

★ ドラマ「臨場」の第2シーズン(続章)で「声」を観たので、改めて原作の「臨場」(光文社文庫)から「声」を読んだ。

★ 過去に性的虐待(被害)を経験した女性が、男を裁くために法曹界を目指していた。しかし、法曹界でも男たちは彼女を「女」としか見ず、隙あらばと狙っている。

★ 男に対する彼女の憎しみは、そうした男を引き付ける自分の「女」の部分への攻撃に変わってしまった。そして彼女は自ら命を絶つことに。

★ 原作では法曹界が舞台だったが、ドラマではジャーナリズムの世界に舞台を移していた。原作では彼女に色目を使う哀しき男たちに視点を当てているが、ドラマでは検視官、特に検視官心得の小坂留美に焦点を当てていた。

★ 「臨場」は原作も良いが、ドラマの脚色が面白い。

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横山秀夫「十七年蝉」

2023-06-23 18:52:21 | Weblog

★ 中学校の期末テストが終わってホッと一息。明日からは高校生の期末試験対策だ。

★ さて、今日は横山秀夫さんの「臨場」(光文社文庫)から「十七年蝉」を読んだ。種を保存するため17年に一度大量発生するセミになぞらえている。

★ 連続殺人をしたかと思えば16年間姿を隠す殺人犯。どうやら新たな犯行が、というもの。

★ ドラマ「臨場」では第1シーズンの最終話が「十七年蝉」というタイトル。しかし内容は原作とは全く違う。17年前の倉石検視官の妻が殺害された事件の真相が明かされるのかというもの。

★ オリジナル脚本のようだ。ドラマ「臨場」シリーズを観ていて思うのは、脚本と演出の巧さだ。原作が尽きたので、第2シーズンではオリジナル脚本が多く登場する。

★ 倉石検視官がわずか2シーズンしか見れないのは残念だ。

★ 東野圭吾さんの原作ドラマ「赤い指」でも「臨場」シリーズの「餞」でも佐々木すみ江さんが良い感じだ。

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ドラマ「臨場」再び

2023-06-21 15:39:20 | Weblog

★ 大阪府(維新)が進めようとしている私立高校の無償化に近畿圏の私立学校が反発している。「無償化」といえば聞こえは良いが、いろいろと裏事情があるようだ。

★ 次の総選挙では野党第1党を狙う勢いの「維新」。ただ彼らはどのような国を目指すのだろうか。どのような教育を目指しているのだろうか。

★ 政府の「異次元の少子化対策」にしても、どうも中途半端だ。受けを狙って「追加負担なし」をうたっているが、果たしてどうか。真剣に取り組むなら消費税を2%(約5兆円)上げて、それを財源にすれば良いと思うのだが。選挙に役立たない(負ける)政策は打たないよね。

★ さて、明日からいよいよ中学校の期末テスト。

★ 授業の準備を終えて、ドラマ「臨場」「モース オックスフォードの事件簿」「名探偵ポアロ」を適宜楽しんでいる。

★ ドラマ「臨場」の視聴は2回目だが、繰り返し見ても面白い。繰り返して観て面白いのは「古畑任三郎」以来だ。

★ 中学3年生と話をしていて、自民党、とりわけ亡き安倍氏を評価している生徒が多いのに驚く。私が若い頃は反自民、革新がトレンドだったがなぁ。

★ 日本は平和で豊かだということなのか。

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東野圭吾「赤い指」

2023-06-20 23:30:47 | Weblog

★ 中学生の期末テスト対策。今年は塾生が多いので、生命力が吸い取られるようだ。

★ さて、東野圭吾さんの「赤い指」(講談社文庫)を読んだ。加賀恭一郎シリーズ、ドラマ化されている作品はどれも面白いが、この作品は中でも絶品だと思う。

★ ある家族の庭に少女の変死体が置かれていた。どうやら引きこもり気味の息子の仕業らしい。最初、警察に通報しようとした父親、しかし母親の執拗な抵抗を受け、自ら遺体を遺棄することに。

★ 隠そうとすると必ずぼろが出る。このぼろを独特の感性で感じた加賀は、犯行を犯し、隠蔽しようとする家族に執拗に迫る。

★ この家族にも、いろいろと事情があるようだ。加賀恭一郎の父子関係をリンクさせながら、家族とはという問いに迫っていく。

☆ 事情はともあれ、殺害された少女の親はたまらんなぁ。

☆ ドラマでは阿部寛さんがいつもながらの名演。刑事モノでは阿部寛さん、「臨場」の内野聖陽さんが好きだなぁ。

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ChatGPT「○○風」短編小説

2023-06-18 18:33:23 | Weblog

★ 少し前に菊池良さんの「もしも文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら」という本があった。同じ文面でも作家の手によればこんな文体になるであろうという作品で、作家の個性が出てなかなか面白かった。

★ ChatGPTを始めたので、「〇〇風の短編小説を書いてください」と尋ねてみた。

★ 基本はステレオタイプで奥深さや味わいはないが、それなりに個性が出て面白かった。

★ まずは「紫式部風」。平安時代を舞台に貴族の藤原明子と武家の源義経が身分の違いという壁を乗り越えて恋に陥る物語になっていた。

★ 続いて「清少納言風」。春の宮中行事、桜咲き誇る庭園で主人公(清少納言)と貴公子・藤原実方が詩歌を通じて絆を深める物語になっていた。風景描写が美しい。

★ 清少納言と来れば、次は「兼好法師風」。ある村に旅人がやってきて人々に生き方を説く話。兼好法師というよりかは、「法師」に重点が置かれているように感じた。

★ 時代は明治に入り、「夏目漱石風」。「すすふる夜の静けさの中」で始まる物語。寒村に住む青年に基に見知らぬ男が訪ね来て、一夜の宿を求める話。セミの声や雨粒が窓を叩く音が印象的だった。

★ 「森鷗外風」。夕暮れの庭園に立つ老人。彼は深い憂いを胸に抱えていた。沈痛な老人と自由自在に空を舞う小鳥の対比。老人は自らの運命を受け入れることを決意する。「舞姫」の影響か。

★ 「芥川龍之介風」。「或る晩、薄暗い書斎に1人の作家が座っていた」で始まる。彼は芥川龍之介の孫で、祖父が残した一冊の手帳に書かれているある事件をもとに作品を書こうとしている。これはこれで面白そうだ。

★ 「太宰治風」。窓辺に座り、雨の音に耳を傾ける男。彼絵は人生に疲れ果て、孤独と悲しみに包まれていた。そんな彼が偶然旧友と再会する。そして物語は始まる。「人間失格」を裏返して「人間再生」のような感じだ。

★ 「川端康成風」。小さな港町に住む青年、彼は風景画家の才能を持ちながら、心が満たされない日々を送っていた。そんな彼がある少女と出会い、生の喜びを謳歌するというもの。

★ 「中島敦風」。漢文調ではないが短文で歯切れの良い文が続く。主人公は古書店でかつての友人が書いた本を見つけ、その本に手紙を添えて送る。「山月記」のモチーフがうっすら感じられる。

★ 「三島由紀夫風」。都会に生きる主人公が登山を経験し「内に秘めた欲望と社会の制約という葛藤を抱えつつ、自らの心に従って新たな人生を切り開いていく決意をする」という物語。

★ 「大江健三郎風」。冒頭の「闇の中に浮かぶ微かな光」という一文が光る。内なる真実を求めて旅をする人の話。

★ 「村上龍風」。喫茶店で片隅で新聞を読む男。彼には二面性があった。そんな彼がある事件に興味をもつというもの。

★ 「村上春樹風」。「雨が降り続けるある日、僕は突然、古いレコード店を訪れた」で始まる。「風の歌を聴け」など初期の作品の雰囲気を感じた。

★ 「東野圭吾風」。深夜の雨の中、胸の奥に寂寥感を潜める男は、公園のベンチで発見されたある遺体に思いを馳せる、というもの。

★ ちなみに「宮本輝風」と打つと、宮本輝風という老人が主人公の「雨の夜」という物語が書かれた。「浅田次郎風」と打つと、今度は「疾風の掟」と題する時代物が書かれた。こちらも主人公が浅田次郎という剣術の達人だ。

★ 期末試験対策をしながら、休日の午後を楽しんだ。遠からず、AIがベストセラー作品を生み出す日が来そうだ。

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宮本輝「バケツの底」

2023-06-17 19:48:34 | Weblog

★ 今日は朝から中学校の期末テスト対策。合間を縫って、ChatGPTにチャレンジ。AIと遊んでいると楽しい。

★ 塾名を打ち込むとなかなか的確な説明。「では自分の名前は」と打ち込むと、おおよそはあっているが、専門が「数学」となっているのには驚いた。

★ ついでに、書く予定の論文のテーマについて聞いてみると、なかなかよくまとまった回答。論文の章立てがほぼできてしまう。得したような気分だけれど、私が意図している論文はそんな程度なのかと落胆。

★ ちなみにお勧めの小説を聞いてみると、作品名と作者名がかなり不一致で笑えた。

★ さて、今日は宮本輝さんの「五千回の生死」(新潮文庫)から「復讐」と「バケツの底」を読んだ。

★ 「復讐」は主人公が高校生時代、学校の方針で不良生徒を退学させるため採用された体育教師の異常な体罰の話。3人仲間のうち、2人は退学させられ、主人公はその教師の「不道徳な要求」を受け入れて何とか卒業。大学に進学し、今は優良企業に就職をしている。退学した二人はどうやら極道に。

★ 久しぶりに再会した3人が教師に復讐する。

★ 「バケツの底」は、ある病気のために一流企業を退職した主人公が小さな金物店に勤め、工事現場を駆けまわりながら人と交わり仕事を覚えていく話。

★ 主人公の病気は今で言う「パニック障害」。その苦しみが他人に伝わらないだけに一層辛そうだ。金物屋のおやじの機知に感心する。

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浅田次郎「歩兵の本領」

2023-06-15 15:49:29 | Weblog

★ 朝日新聞「天声人語」で取り上げられていたので、浅田次郎さんの「歩兵の本領」(講談社刊所収)を読んだ。

★ 満期を迎える若い自衛官。彼は除隊を決意している。一方、自衛官不足に悩む幹部たちは彼が翻意し、任官を継続するように説得する。

★ 元自衛官として「娑婆」で生計を立てることの厳しさを説かれ、不安がないわけではないが、彼の決意は固かった。

★ 幹部を前にしての最終確認。そして除隊式までの数日が描かれている。隊を去る者、残る者、それぞれの思いが交錯していく。

☆ 自衛隊は民間人にはあまり馴染みのない社会だ。そもそも私は「満期除隊」の意味さえ知らなかった。自衛官は階級に応じて除隊の年齢が決まっているそうだ。

☆ 企業社会と類似した雰囲気もあるし、自衛隊(軍隊)ならではの特殊性も感じた。主人公が隊を去るにあたり最も後ろ髪をひかれたのが配給された小銃であったというのが印象に残る。

☆ 彼は同期の中では射撃に傑出していたという。彼は青春の日々をこの鉄の塊と切磋琢磨したのであろう。彼にとって銃もまた戦友であったのだろう。

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町田康「口訳 古事記」より

2023-06-14 18:09:32 | Weblog

★ 永田町界隈は解散風が吹いているとか。7月総選挙になるのかなぁ。

★ 中学校の期末テストまで1週間。いつものことながら、忙しくなってきた。期末テストが終われば夏期講座の準備だ。

★ さて今日は、評判になっている町田康さんの「口訳 古事記」(講談社)から「神xyの物語」を読んだ。「古事記」といえば、日本最初の歴史書と呼ばれ、稗田阿礼が暗記していたものを太安万侶が筆録したものだったっかな。

★ 「古事記」は書き下し文になっていれば、現代人でも読み易い。手元にある次田真幸さん訳注の「古事記」(講談社文庫)の訳文を読めば、神々の名前は別として、内容は分かりやすい。

★ 町田さんの「口訳 古事記」は更なる超訳だ。古事記をオマージュした新たな物語としても面白そうだ。町田作品の魅力は何といっても会話文だ。神々の言葉を庶民レベルの感覚で味わうことができる。

★ 「神xyの物語」は原典でいうと「天地の初め」「イサナキノミコトとイサナミノミコト」の章。国つくりの様子、黄泉の国の話が描かれていた。

★ 「古事記」の成立は確か712年だったか。歴史書が記されるにはそれなりの理由があろう。民族の生い立ち、支配階級の正当性を裏付ける目的があったのか。

★ 読み進めたい。

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浅田次郎「うたかた」

2023-06-12 20:40:48 | Weblog

★ 私も間もなく高齢者の仲間入り。今の時代、65歳などはまだまだ現役世代だが、リスクは着々と高まっている気がする。少しずつ家財を整理しなければ。終活を始めなければいけない。

★ ということで、今日は浅田次郎さんの「見知らぬ妻へ」(光文社文庫)から「うたかた」を読んだ。

★ 今や限界集落となった団地。最後の一人となった女性の高齢者の遺体が発見された。餓死だった。部屋はきれいに片づけられ、冷蔵庫も空っぽ。ベランダから満開の桜を見下ろすような姿勢だった。まるで眠るような幸福そうな表情だったという。覚悟の最期だったのだろう。

★ 物語は彼女が若い頃、昭和の高度成長期、抽選に当選して、夫と二人の子どもとともに団地に入った時代にさかのぼる。6畳一間のアパートから近代的な団地へ。夫婦は幸福の極致にいた。

★ 周りには同じような家族が一斉に住み始めた。月日は流れ、子どもは成長し巣立つ。ある家族は団地を離れ子どもとの同居を選択し、ある家族は、夫婦のどちらかが亡くなり独居となった。

★ そして、団地から一人二人と去っていった。建物は老朽化し、近々取り壊されるらしい。

★ まるで戦後の日本を俯瞰するような物語だった。「うたかた」の人生だけれど、その生に感謝して旅立つ姿が印象的だった。

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