じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

岸田るり子「青い絹の人形」

2022-01-31 00:06:25 | Weblog
★ 京都の私立高校受験まであと11日。土・日特訓もいよいよラストスパート。

★ テレビでは昨日に引き続き、NHKスペシャル「未解決事件」から「JFK暗殺」(2020年)を観る。60年近い時を経て今なお謎の事件。オズワルド単独犯行説はさすがに無理があると考えられるようになってきた。

★ NHKでは当時のCIA関係者などの証言を集め、真相に迫っていた。結局は、CIAの一部のセクションが動いたのではという仮説に留まっていたが。某米軍基地に保管されているという宇宙人と同じく、いつの日か真相が明かされるのかも知れない。

★ 小説は、岸田るり子さんの「青い絹の人形」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 エスプリ」講談社文庫所収)を読んだ。土葬されたはずの遺体が消えていた。物語のセクションで視点が変わるので少々混乱する。最後まで読んでもう一度最初を読み返すと、「ああそういうことか」と納得する。

★ 物語の主な舞台がパリであること、女性同士の微妙な駆け引きが読みどころだった。

★ 沖縄県警沖縄署の問題(警察官が青年を警棒で殴り失明させたという事件)は早々に解決しないと、今後全国的に火種を残すことになるかも知れない。医師が射殺された埼玉県の事件も、容疑者は散弾銃を2丁も所持していたという。銃刀法の厳しいこの国で、なぜ彼が所持を許されたのか。まだ謎が多い事件だ。 
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藤田宣永「竹花と命の電話」

2022-01-29 21:33:46 | Weblog
★ 大阪の心のクリニックでの放火殺人といい、先日の散弾銃で医師たちを殺傷した事件といい、破滅的犯罪が続く。どうもコロナ禍は肉体だけではなく、人の心や社会を蝕んでいるようだ。

★ 東大試験会場での刺傷事件や共通テストでのカンニング事件など、背景には「成績の伸び悩み」に対するストレスがあったようだが、いずれも、事件の背景には孤独感、孤立感があるように感じる。

★ 今日読んだ藤田宣永さんの「竹花と命の電話」(日本推理作家協会編 「ミステリー傑作選 エスプリ」講談社文庫所収)でも、社会の中での孤独(あついは孤独感)について取り上げられていた。

★ 初老の探偵、竹花。依頼された中学生の家出捜索が無事に解決したのも束の間、非通知で奇妙な電話がかかってくるようになる。声の主は30代半ばの男。会社た倒産し、職探しにくたびれ、食うにも困っている様子。知らぬ人からのぶしつけな電話、無視すれば良いのだが、自殺をほのめかす雰囲気があるから、竹花は放ってはおけない。探偵の性で、その人物を捜すことに、という話。

★ 作品の中に出てきたスコーピオンズの「WIND OF CHANGE」。香港に、ミヤンマーに、ウクライナに「変革の風」は吹くのだろうか。

★ ウクライナ情勢は緊迫し、コロナ第6波は勢いを止めない。夜に、NHKスペシャル「未解決事件」から「オウム真理教 地下鉄サリン事件」(2015年)を観た。当時の警察庁、警視庁の幹部への取材を基に、事件が再現されていた。実に興味深かった。今さら思うと、宗教団体が武装し(毒ガスを使って)国家の転覆を図るなど、思いもしない事件だった。 
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ドラマ「新聞記者」

2022-01-27 14:41:10 | Weblog
★ 話題になっているので、ネットフリックスでドラマ「新聞記者」を観始めた。

★ 新しくできる私立校に国有地が払い下げられる。学校の経営者と首相夫人が懇意だということで、異例の値下げが行われた。首相は夫人の関与を野党に追及され、「もし事実なら総理大臣も国会議員もやめる」と言ってしまったから、さぁ大変。

★ 官邸は今までの関与を否定。そのために不都合な書類の改ざんを官僚に下令する。あとは上意下達。理財局長から地方の財務局、そして現場のスタッフに指示が渡る。

★ 政治家や高級官僚たちは我が身大事で関与を否定。そのしわ寄せは末端のスタッフに。ジレンマの中で遂に・・・。この事件を、米倉涼子さん演じる記者が追うというもの。

★ どこかで見聞きしたような出来事だが、あくまで「フィクション」とのこと。それにしても官僚は大変だ。最近話題の統計改ざん事件にも通底するものがあるような。

★ 「ミステリと言う勿れ」の中で、主人公の大学生が真実は人それぞれだと言ってたけれど、なるほどなぁと思った。白いものを黒と言い、何事もごもっともと追従、忖度しなければ政治家も官僚も(あるいは民間企業でも)出世はできないのか。そんな出世など糞喰らえと思うのだが、組織の中にいると身動きが取れなくなってしまうのか。

★ それにしても、豪華なキャスト陣。ネットフリックスはカネをもっているなぁと思った。
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井上荒野「キャベツ炒め」

2022-01-26 21:57:46 | Weblog
★ 以前、センター試験に出題されたというので井上荒野さんの「キュウリいろいろ」というのを読んだ。抜粋なので、描かれている場面の背景がイマイチよくわからなかった。そこで、その作品が収められている「キャベツ炒めに捧ぐ」(角川春樹事務所)を読むことにした。

★ 60代の女性3人が営む総菜屋さん。オーナーの江子(こうこ)さん、開業時からの従業員・麻津子(まつこ)さん、後から加わった郁子さん。60年の年月を経て、それぞれが何らかの荷を背負いつつ、楽しく美味しい惣菜づくりに励んでいる。店の名は江子さんのニックネームから「ここ家」。各駅停車しか止まらない小さな町のささやかな商店街にあるが、なかなか繁盛している様子。

★ 今日のメニューは人気の茸のまぜご飯に、茄子の揚げ煮、茸入り肉じゃが、秋鮭の南蛮漬け、蒸し鶏と小松菜の梅ソース、豚モモとじゃがいもの唐揚げパセリソース、白菜とリンゴとチーズと胡桃のサラダ、さつまいもとソーセージのカレーサラダ、それに、ひじき煮とコロッケと浅漬けなど。

★ 想像しただけでおいしそうだ。

★ 連作短編のスタイルで、「キャベツ炒め」は後半にある。50代のとき夫と別れた江子さん(離婚のいきさつは、いろいろあったようだ)。今ははるか年下の米屋の進君と恋仲か。別れたとはいえ、元夫のことが心残り。今でも時々は電話したり会ったりはできるのだが。大人の心の微妙なリズムが切なくも気持ちよい。

★ 新婚初夜、元夫が江子さんに作ってくれたキャベツ炒め。バターでニンニクを炒め香りをたて、それにちぎったキャベツを入れ強火で炒める。味付けは塩と黒胡椒だけ。思わず香りを感じる。おいしそうだ。たかがキャベツ炒め、されどキャベツ炒めって感じだ。

★ ソース派の麻津子さんも、醤油派の郁子さんも、江子さんの塩味に納得。まったく関係ないが「男女七人夏物語」で、明石家さんまさんと大竹しのぶさんが、カレーに醤油をかけるか、ソースをかけれるかでもめていた場面を思い出した。

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横山秀夫「モノクロームの反転」

2022-01-25 17:03:40 | Weblog
★ ふとテレビで古いドラマを観た。2005年に放映されたTBS版の「モノクロームの反転」。

★ 山梨県の田舎町の民家で親子3人の刺殺遺体が発見される。県警捜査一課長は直ちに課内の2つの班を出動させた。ところが2つの班を率いる班長(段田安則さんと、伊武雅刀さんが演じる)は犬猿の仲。捜査一課長は、水と油のような2班の相乗作用を期待するのだが・・・。

★ 見始めたら面白くてつい見入ってしまった。本棚に横山秀夫さんの「第三の時効」(集英社文庫)があったので、収録されている「モノクロームの反転」を読んだ。ドラマと大筋は同じ。ドラマの方が肉付けされているように感じた。

★ 2人の班長はそれぞれに重荷を背負っている。1人はかつて公安で潜入捜査をしていた時の逆恨みを受け婚約者(身ごもっていた)を失い、もう1人は、病に冒されていた。お互いに張り合いながら、心の底では認め合っている。

★ ところで犯人逮捕の決め手となったのはタイトルにある「モノクロームの反転」。人間の認知機能の落とし穴を衝いたトリックだった。

★ TBS版のシリーズは他にもあるようで、また2020年にはテレビ東京版も制作されたという。機会があれば観てみたいと思った。
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田村由美「ミステリと言う勿れ」

2022-01-24 21:44:18 | Weblog
★ ドラマ「FBI 特別捜査班」の第2シーズンまで観終わった。視聴率が好調で第3シーズンも始まっているようだが、日本ではまだ配信されていないようなので、ドラマ「ミステリと言う勿れ」を観始めた。

★ 第1話。カレー日和だった。高校時代の同級生(あまり親しくはない)が殺されたということで、大学生の久能整が任意で取り調べられる。ちょっと風変わりな久能。取り調べの警察官の心にズバズバっと入り込み、事件を解決してしまう。派手なアクションがあるわけでなく、ほとんどが久能の語りで進む。その中にいくつもの名言がある。

★ 「ミステリと言う勿れ」というタイトル通り、ミステリーの既成概念を破る新感覚の作品だ。見方によっては退屈だが、久能を演じる菅田将暉さんに導かれて最後まで観てしまった。

★ この作品、原作をどれほど脚色しているのかと思い、田村由美さんの原作(第1話)を読んだ。登場人物は若干変えられているが、セリフはドラマとほとんど同じだった。コミックだと岡田将生さんのイメージだが、さすが菅田さんは芸達者だ。

★ さて、これからどう進展していきますやら。
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小田雅久仁「残月記」

2022-01-23 19:20:12 | Weblog
★ オミクロン株の感染者数が爆発的に増え、近隣の小中高校でも陽性者が急増している。大規模自然災害と同じように、数が大きくなるにつれて感覚がマヒ。もはや新型コロナは特別な感染症ではなく、日常的な風邪やあるいはインフルエンザのような感覚になってきた。「人流制限ではなく人数制限」「ステイホームはいらない」と、専門家会議は、隔離路線から集団免疫路線に軌道修正をしているのではと感じる。

★ そんなご時世の中、小田雅久仁さんの「残月記」(双葉社)から表題作を読んだ。売り文句にあるように、近未来のディストピア小説だった。

★ その世界では「月昂(げっこう)」と呼ばれる感染症が蔓延していた。月の満ち欠けに合わせて、躁鬱を繰り返す、極度の気分障害のようなもの。昏冥期にはそのまま死に至る人が出る一方、明月期には高まる感情、研ぎ澄まされる感覚をもてあまして犯罪に走ったり、人智の及ばない芸術的境地に達したりするという。

★ その世界は、一党独裁政権が支配していた。少子高齢化や財政破綻、それに多大な犠牲者を出した「西日本大震災」から国を救うという公約を掲げた救国党、とりわけ下條拓総理大臣が言葉巧みに国民の支持を得て独裁体制を確立していた。全権を握るや反体制の人々を弾圧。「月昂」の感染者もまた、社会の忌むべきものとして強制的に隔離・収容されていた。

★ 「月昂」に感染し、隔離・収容された宇野冬芽という青年が政府の方針で闘剣士となり、そこで出会った女性との愛を貫くというストーリー。(闘技場の様子は「ベン・ハー」や「グラディエーター」という感じ)

★ 随所に面白い場面はあるのだが、何しろ盛りだくさんの内容で、どこを焦点を当てて読めばよいのか少々戸惑った。ともあれ、この物語がパラレルワールドのファンタジーであることを祈りたいものだ。

★ 昨夜は、NHKドラマ「忠臣蔵狂詩曲No.5 中村仲蔵出世階段(後編)」を観た。中村勘九郎さんの熱演。上白石萌音さんも良かった。歌舞伎役者に歌舞伎役者を演じさせるんだから、そりゃすごいわね。
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翔田寛「墓石の呼ぶ声」

2022-01-22 17:39:36 | Weblog
★ 土曜日は各紙、書誌のページを掲載している。小田雅久仁さんの「残月記」(双葉社)、染井為人さんの「悪い夏」(角川)、逢坂冬馬さんの「同士少女よ、敵を撃て」(早川書房)が面白そうだ。直木賞受賞作の米澤穂信さんの「黒牢城」(角川)、今村省吾さんの「塞王の盾」(集英社)も読んでみたい。

★ そんなことを思いながら、今日は翔田寛さんの「墓石が呼ぶ声」(日本推理作家協会編「ミステリー傑作選 ライフ」講談社文庫所収)を読んだ。

★ 日本を代表する格式あるホテルで常連の老人が倒れた。老人は毎年9月1日から1週間ほど、このホテルに滞在する。病院に付き添ったホテルのスタッフが老人から聞いた話として物語は進む。

★ 老人がまだ幼い頃、石工の父と故郷を離れるときに訪れた墓。そこには失踪した母の名前が朱書きされていた。関東大震災、東京大空襲を経て、姿を変えた街。老人は墓を捜し歩くのだが、たどり着いたのは母の失踪の真相だった。


★ 物語はさておき、少子化の中で檀家が減り、寺院の経営は大変らしい。「寺の周辺も子どもがめっきり減りまして」とは、菩提寺の住職の嘆息。 

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清少納言「雪のいと高う降りたるを」

2022-01-21 10:31:04 | Weblog


★ 宇治では珍しい雪景色。雪見障子があるのを思い出し、何年かぶりに開けて庭を望む。

★ そう言えばと清少納言の「枕草子」から「雪のいと高う降りたるを」を読んだ。

★ 「雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、炭櫃に火おこして、物語などして集まりさぶらふに、
『少納言よ、香炉峰の雪いかならん』と仰せられるれば、御格子上げさせて、御簾を高く上げたれば、笑わせたまふ。
人々も、「さることは知り、歌などさへうたへど、思ひこそよらざれつれ。なほ、この宮の人には、さべきなめり」と言ふ。

★ 平安時代の京は寒かったであろう。重ね着をしているとはいえ、すけすけの住宅に炭櫃ぐらいしか暖房器具がない。炭櫃の周りに寄り集まって談話して寒さをしのいだのであろう。

★ そんな京に雪が降った。中宮は清少納言になぞかけをする。「香炉峰」とは白楽天(白居易)の詩に詠まれたもので、その詩に倣って清少納言は御簾を高く巻き上げた。この機転に中宮はたいそう満足された様子で、他の女官たちも賞賛の声を上げたというもの。

★ まぁ、ひねくれて見れば自画自賛のエピソードだが、情景が目に浮かぶようでいとをかし。
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砂川文次「ブラックボックス」

2022-01-20 21:03:40 | Weblog
★ 芥川賞を受賞されたというので、砂川文次さんの「ブラックボックス」(講談社)を読んだ。

★ 滑走する自転車の描写で始まる。肉体とマシンが一体化している様子が凄まじい。そして主人公のサクマの物語に入っていく。

★ 彼はキレやすい、また集中が苦手だ。映画など最後まで見終えたことがないという。その衝動的な性格ゆえか、学校からドロップアウトし、自衛官に任官したものの長続きせず、あとは職を転々。今はメッセンジャーの仕事をしている。しかし、年をとってできる仕事ではなく、コロナ禍で仕事の量も不安定だ。将来への不安を抱えている。そんな折、同居している女性から妊娠を告げられる。サクマは彼なりに生活を改めようとするのだが・・・。

★ 後半は「これでもか」というほどに刑務所での生活が描かれている。彼はここで自分自身を見つめ直すことに。

★ 「自分の中の自分が邪魔だった」という文が印象的だった。切れやすくどうしようもない自分とそれを何とかしたいと思う自分。心の葛藤が随所で見られた。一度社会のレールから外れてしまえば、なかなか元には戻れない。舗装された道が一気に砂利道に変わり、行く当てがわからなくなる。そんな心境が良く描かれていた。 
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