じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

吉村昭「闇にひらめく」

2023-07-31 21:10:31 | Weblog

★ 昨日は土用の丑で、スーパーには多くの鰻惣菜が並んでいた。よくここまで薄く切れるものだと感心させられる蒲焼をトッピングした鰻めし。鰻の海苔巻き等。

★ 廉価なものはそれなりの理由があるのだろうが、縁起物と思い鰻巻きを1つ買った。(午後2時を過ぎてまだ大量の商品が残っていた。他人事ながら多くの売れ残りができてしまうのではと心配になった)

★ 近くの川魚専門店では、物価高にもかかわらず商売繁盛。年に1度の贅沢を楽しむ人々は多そうだ。

★ さて、「うなぎ」つながりで、吉村昭さんの短篇集「海馬」(新潮文庫)から「闇にひらめく」を読んだ。今村昌平監督の映画「うなぎ」の原作だという。

★ 小説では、かつて妻の不倫を許せず、妻とその愛人にけがをさせて、服役をした男が主人公。出所後、ウナギ漁を修行し、その後捕獲したウナギを自ら料理する店を開いている。

★ 今、彼の身近に一人の女性がいる。彼女は男に好意を寄せているし、男も彼女のことを気にしている。しかし、過去の出来事が彼を躊躇させている。ある日、彼は漁の途中で心中を図っている男女を見つける、というもの。

★ 映画は原作の設定を生かしつつも、大きく脚色されたいた。

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山本一力「あかね空」

2023-07-30 20:26:32 | Weblog

★ ゆったりとした2日間はあっという間に終わった。明日からはまた慌ただしい日々が待っている。

★ 映画「人間の証明」と「夜の大捜査線」を観た。「人間の証明」は数十年前に観て以来。ストーリーも松田優作さんもいいなぁ。ニューヨーク・ロケもふんだんに盛り込み、制作者の息吹を感じた。

★ 「夜の大捜査線」はアカデミー賞作品賞受賞作。1960年代、まだ根強く人種差別が残る南部に、たまたま立ち寄った北部の黒人刑事。偏見の眼にさらされながら、白人の警察署長と殺人事件を解決するというもの。面白かった。

★ 山本一力さんの「あかね空」(文春文庫)を読み終えた。京で修業を積み、江戸に下った豆腐職人・永吉。深川の長屋に落ち着き、周りの人々に助けられながら店を構える。

★ 最初、京風の柔らかい食感が下町の人々に受け入れなかったが、世話になった桶屋の娘と所帯を持ち、その内助の功もあって、少しづつ商いを根付かせていく。

★ 新しい家族との出会い、親しい人との別れ、夫婦、親子、兄弟姉妹、それぞれの確執、葛藤を経ながら家族としてまとまっていく姿に感動する。

★ 豆腐屋2代に渡る、ファミリー・ヒストリーだ。

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横関大「再会」

2023-07-29 13:32:47 | Weblog

★ 夏期講座5週間の内の第1週が終わった。中学校は夏季大会で小学生が中心だったが、この暑さのせいで、さすがにバテた。土日の2日間で回復しなければ。

★ 高校野球も地域大会は大詰め。京都府大会は、京都翔英VS立命館宇治の宇治対決。9回の興亡までどっちに転ぶかわからない熱戦の末、立命館宇治が勝った。塾生のお父さんが立命館宇治の関係者だということで、これから忙しくなりそうだとのこと。選手はもちろんのこと、彼らを応援する家族、教職員、在校生も大変だ。

★ さて、横関大さんの「再会」(講談社文庫)を読み終えた。ことの発端は小学生の万引き事件。それを発見したのが素行の良くないスーパーの店長ということで、万引きをネタに強請りを始める。

★ 子どもの将来を考えた母親は一旦は店長の要求に応じたのだが、悪い人間がつかんだ獲物をそう簡単に逃がすはずもなく、再び無理な要求を突き付けてきた。そんな折、その店長が銃殺される。犯行に使われたのが、23年前、銀行強盗と銃撃の末に殉職した警察官の奪われた拳銃だということで、警察の威信をかけた捜査が始まる。

★ この事件に、23年前に事件を目撃した4人の少年少女たちが関わっていく。

★ 県警本部から派遣された南良(なら)刑事がなかなかカッコ良い。最後に彼の素性も明らかになる。

★ 第56回(2010年)江戸川乱歩賞受賞作。解説を読むと、苦節の末の受賞だったらしい。

 

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映画「野性の証明」

2023-07-27 23:19:37 | Weblog

★ 夏期講座4日目。朝7時起きの生活にも慣れてきた。

★ さて、映画「野性の証明」を久々に観た。自衛隊・特殊工作隊に属する自衛官が決死の訓練中に、一家惨殺の場面に遭遇し、少女の命を救うために犯人(錯乱した少女の父親)を殺害してしまう。これは訓練中に民間人との接触を固く禁じた規則の大きく違反するものであった。

★ まして、理由はどうあれ民間人の殺害ということで、自衛隊の幹部は隠蔽を画策する。民間人を殺害した自衛官は除隊し、その後も自衛隊の監視下に置かれていた。

★ 男は生き残った娘を引き取り親子のような生活を送る。彼女は衝撃のために記憶を失っていた。そして平穏な生活を送れるかに見えたのだが・・・。

★ 国民を守るはずの自衛隊が反体制の人間を暗殺する組織をもっているというショッキングな設定。政界、財界、それに警察組織までの癒着。彼らのおこぼれにあずかる暴力団。

★ 負けるとわかっていても、巨大な力に挑む男(高倉健)が格好良かった。

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森村誠一「悪魔の飽食」

2023-07-25 14:35:13 | Weblog

★ 日曜劇場「VIVANT」の第2話を観た。制作費のわりに視聴率が稼げていないとの見方もあるが、低予算の内向きのドラマが多い中では異色の力作だと思う。

★ 第2話で、早くも「VIVANT」の謎が一応明かされる。日本に存在する極秘の集団、他国やテロ組織から国を守っている「別班」と呼ばれる精鋭集団が存在するという。

★ 昔の忍者集団のような感じだが、そう言えば映画「野性の証明」には、自衛隊に極秘に設置されているという「特殊工作隊」が登場している。

★ この映画は、高倉健さんと薬師丸ひろ子さんが印象的だった。「人間の証明」と合わせて、角川映画が元気な時代だったなぁ。両作品の原作は先日お亡くなりになった森村誠一さん。

★ 森村作品で忘れられないのが、日本陸軍第731部隊を取り上げた「悪魔の飽食」だ。昭和56年発行で、手元には昭和57年3月の第19刷がある。多分、学生時代に読んだのだろう。

★ 細菌兵器をつくるために集められた精鋭たち。捕虜を「丸太」という隠語で呼び、人体実験を繰り返したという。終戦に当たって、研究データと引き換えに研究者たちは免責を受けたとも言われる。

★ この作品は小説(フィクション)ではなく「実録」とされている。

★ 終章では「七三一の意味するもの」と題し、戦争という「集団発狂」の現実を述べ、過去の過ちを繰り返さないために、過去の正確な記録の必要性を説いている。

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前川裕「クリーピー」

2023-07-23 18:51:38 | Weblog

★ 日曜日。TBSの「日曜劇場」は「VIVANT」の第2話が放映される。第1話、砂漠のシーンから始まるドラマ。モンゴルでのロケにどれだけ費用が掛かっているのかと、それが気になった。制作サイドはかなりの気合が入っている様子。そもそも「VIVANT」という言葉の秘密は。

★ 映画「レッド・ファミリー」(2013年)を再び観た。北朝鮮の工作員が偽装家族を装って韓国で主に脱北者の粛清を行うといったもの。シリアスなストーリーにコミカルな一面もあって面白かった。

★ 偽装家族ということで、前川裕さんの「クリーピー」(光文社文庫)を読んだ。大学教授の身近で起こる不可解な事件。どうやら未解決の失踪家族、そして偽装家族が関わっているという話。

★ この小説は2016年、西島秀俊さん、竹内結子さん、香川照之さん出演で映画化されている。原作は結構複雑な構成だが、映画版ではわかりやすいように要領よく脚色されている。脚本家の苦労が感じられる。

★ そのため原作とは少々違った場面も多いが、映画はそれとして楽しめた。

★ 自分が本当の自分であるかということの証明は案外難しい。ましてや隣人となると。人の入れ替わりの激しい地域では尚更だろう。「隣人は静かに笑う」なんて映画もあったなぁ。

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横溝正史「犬神家の一族」

2023-07-22 16:26:42 | Weblog

★ 来週から夏期講座というのに、暑すぎて何もやる気が起こらない。グタッとしながら、映画「犬神家の一族」を観る。

★ 横溝正史原作「犬神家の一族」は何度も映像化されている。中でも著名な市川崑監督の1976年版と同じく市川監督のセルフリメイク2006年版を比較しながら観た。

★ ほとんど同じ脚本らしく、大筋の設定、セリフは同じだった。役者は金田一耕助役の石坂浩二さん、神主役の大滝秀治さん、警察署長役の加藤武さんが同じだった。それぞれに重厚さを増したが、さすがに30年の歳月は感じた。

★ マドンナ役は、76年版は島田陽子さん、06年版は松嶋菜々子さん。どちらも美しい。コミカルな筋回しのホテル(旅館)の女中さん役、76年版は坂口良子さん、06年版は深田恭子さんだった。時代に合わせたキャスティングだと思った。

★ 今さらながら、ストーリーを概観すると、一代で財を成した信州の大富豪が亡くなり、その遺産をめぐる姉妹の骨肉の争い。そして起こる連続殺人。手の込んだトリックを金田一探偵が解いていくというもの。

★ 最大の謎は、なぜ市川崑監督はセルフリメイクをしようとしたのかという点。両作品の大きな違いはエンディング。76年版では見送られるのを嫌い、駅のホームを駆け抜ける若い金田一を描いて終わっている。06年版は、同じく見送りを嫌う点は同じ。今回は一人田舎道を歩く金田一。最後は視聴者への感謝を表すかのようなまなざしが印象的だった。

★ 公開時90歳の市川監督のお別れのメッセージであるかのようにも感じた。

★ NHKは吉岡秀隆版の金田一シリーズを継続するという。76年版、06年版、そして23年のNHKドラマ。戦争の面影がだんだん遠くなっていく気がする。

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宮部みゆき「理由」

2023-07-20 15:12:15 | Weblog

★ 今期の芥川賞、直木賞が発表された。芥川賞を受賞された市川沙央さん、受賞インタビューの中で「どうして2023年にもなってこうした作品が芥川賞で初めてなのか、みんなに考えてもらいたい」という言葉が印象的だった。

★ 芥川受賞作品を概観すると、昨今は時代性を反映している作品が受賞しているような気がする。

★ さて、これも直木賞受賞作。宮部みゆきさんの「理由」(新潮文庫)を読んだ。都心のタワーマンションの高層階で起こった一家惨殺事件。捜査が進むうちに、彼らが本当のマンション所有者ではなく、偽装家族であることがわかる。

★ なぜそんな不可解な出来事が起こったのか、そしてなぜ彼らは殺されたのか。多くの証言を通して真相が描かれていく。

★ 本作は2004年、大林宣彦監督でドラマ化されている。映像化が難しい作品だけあって、証言を重ねる手法で2時間25分はさすがにきつかった。大林監督の特徴か、シリアスな人間ドラマにファンタジーが加味された感じだった。登場人物のあまりの多さ(女優さんたちはほとんどスッピン)はドキュメンタリータッチのゆえだろうか。

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東野圭吾「さまよう刃」

2023-07-19 18:00:16 | Weblog

★ 近隣の小中学校は明日が終業式。一足早く、明日から旅行に出かける生徒も。コロナ禍が一段落し、ハワイや沖縄など遠距離の旅行を計画している家族が目につくようになった。

★ 塾の方は月曜から夏期講座。今年は卒塾生の助けも借りて、少々ゆとりをもって運営したい。

★ さて、東野圭吾さんの「さまよう刃」(角川文庫)を読んだ。ベストセラー作品だけあって、さすがに面白い。

★ 女子中学生が不良少年たちに拉致され、性的暴行を加えられた上、薬物で死に追いやられ、遺体が無残に遺棄される。

★ 虫唾が走るような事件。少年事案ということで逮捕されても極刑はない。想像以上に軽い刑が科される可能性もある。女子中学生の父親は自らの手で復讐に向かう。

★ 終盤、刑事たちは自らの職について問う。「警察は市民を守っているわけじゃない。警察が守ろうとするのは法律のほうだ」(497頁)。果たして正義とは何なのだろうかと。

★ この作品は2009年に映画化されている。復讐する父親役は寺尾聰さん。そのせいか、時代劇を翻案したような錯覚に襲われる。

★ それにしても少年犯罪というやつは厄介だ。成人年齢が18歳に引き下げられ、20歳に満たなくとも極刑に処せられる可能性は出てきた。しかし、死刑になりたくて犯罪を犯したり、心神耗弱を理由に減刑を求めたり、法律が十分に機能しない事案も出てきた。

★ 犯罪少年の成育歴までさかのぼれば、親や社会の在り方まで問われることになる。「今さえ良ければよい」「自分の欲求さえ満たされればよい」、こうした心境を昇華する名案はないものだろうか。

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三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」

2023-07-16 14:37:56 | Weblog

★ 梅雨末期の豪雨が各地を襲っているらしい。京都は祇園祭の宵々山に26万人の人出とか。そして宵山の今日は梅雨明けを思わせる快晴だ。暑すぎて酷暑の名にふさわしい。冷房の効いた部屋と暑い廊下の出入りが自律神経を乱しそうだ。

★ さて、夏期講座前の静けさか。のんびりとした週末を過ごしている。テレビで「名探偵ポワロ」を楽しむ。初期の作品(1989年放送開始)も良いが、最終シーズン(第13シーズン、2013年)では、ヘイスティング大尉、ジャップ警部(警視監)、ミス・レモンが再び顔を揃える。20余年の歳月を経たが、皆さん元気そうで良かった。

★ 三浦しをんさんの「まほろ駅前多田便利軒」(文春文庫)を読んだ。表題の通り、まほろ駅前で便利屋を営む多田啓介という男。年末に犬の世話を頼まれる場面から物語は始まる。

★ 1時間2000円。できることならなんでもをモットーに、年始から得意先の庭そうじ兼バスの運行調査(雇い主はバス会社が間引き運転をしていると疑っている)を引き受ける。

★ 仕事を終えた夕刻、多田は終バスを終えたバス停で男と出会う。高校時代の同級生、行天春彦だ。多田は一夜の宿を頼まれる行天の願いを断るが、過去のある事件が気にかかり、結局彼の要望を受け入れる。そして、男二人の奇妙な同棲生活が始まる。

★ 友人でもないし、相性が合うわけでもない。しかし、それぞれに心に傷をもつ二人は、それなりに仲良く便利屋を営んでいく。その1年間の様子が描かれていた。

★ 映画では多田役を瑛太さん、行天役を松田龍平さんが演じていた。映画は映画で面白かったが、小説は三浦さんの文章に味わいがあり、一層良かった。

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