じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

羽田圭介「走ル」

2024-01-31 17:46:15 | Weblog

★ 羽田圭介さんの「走ル」(河出文庫)を読んだ。主人公の高校生が、物置から発掘した競技用自転車に乗って、自宅のある東京から青森まで旅をする話。

★ 野宿を重ねながらの1000㎞。自身の体験があるからか、リアルに描かれていた。

★ 昨日読んだ、諏訪哲史さんの「アサッテの人」が第137回(2007年)芥川賞の受賞作。今日読んだ羽田圭介さんの「走ル」は第139回(2008年)芥川賞の候補作。

★ この時代、他にどんな候補作品があったのか調べてみた。

★ 第137回 受賞作は諏訪哲史さん。

候補作は、円城塔さんの「オブ・ザ・ベースボール」、川上未映子さんの「わたくし率イン歯一、または世界」、柴崎友香さんの「主題歌」、前田司郎さんの「グレート生活アドベンチャー」、松井雪子さんの「アウラ アウラ」

★ 第138回 受賞作は川上未映子さんの「乳と卵」。

候補作は、田中慎弥さんの「切れた鎖」、津村記久子さんの「カソウスキの行方」、中山智幸さんの「空で歌う」、西村賢太さんの「小銭をかぞえる」、山崎ナオコーラさんの「カツラ美容室別室」、楊逸さんの「ワンちゃん」

★ 第139回 受賞作は楊逸さんの「時が滲む朝」

候補作は、磯崎憲一郎さんの「眼と太陽」、岡崎祥久さんの「ctの深い川の町」、小野正嗣さんんの「マイクロバス」、木村紅美さんの「月食の日」、津村記久子さんの「婚礼、葬礼、その他」、羽田圭介さんの「走ル」

★ 読んでいない作品も結構あるなぁ。

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諏訪哲史「アサッテの人」

2024-01-30 17:10:09 | Weblog

★ 29日、月曜日の朝日新聞「文化欄」で川﨑秋子さんの「直木賞 受賞エッセー」を読んだ。同居している猫の話を中心に、「受賞に伴う事務作業に戸惑う飼い主の事情など考慮せずに猫じゃらしを求めている」猫の姿が印象的だった。

★ 今読書中の、川村元気さんの「億男」(文春文庫)でも、3億円の宝くじが当たって動揺する主人公を横目にいつもと変わらぬ様子で眠っている飼い猫(名前をマーク・ザッカーバーグという)が印象的だった。

★ さて今日は、諏訪哲史さんの「アサッテの人」(講談社文庫)を読み終えた。斬新な作品だった。

★ 主人公は、失踪した叔父が残した日記を編集して小説家するのだが、まずこの叔父がちょっと風変わりな人で、意味不明の言葉(例えば「ポンパー」)を脈略なく発する。普通の会話をしていて突然大声でこの言葉が出るから、周りの人はびっくりする。

★ 叔父には吃音があり、それが起因しているようだが、物語はだんだん哲学的な深みに入っていき、いわゆる「正常」からの逸脱が感じられる。

★ 小説という「定型」からの離脱、作品でいう「アサッテ」を目指しているが、芥川賞の選評にもある通り、読者によって評価が分かれる作品だ。物語を重視する選者には先鋭過ぎたのかも知れない。

★ 「定型」を解体すれば意図が通じず、小説として成立するかどうかは際どい。とはいえ、「定型」である限り、そこには限界があるのかも知れない。「定型」「アサッテ」の衝突をスリリングだと感じられれば面白いのだろう。

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佐伯一麦「ア・ルース・ボーイ」

2024-01-29 19:30:32 | Weblog

★ 青春時代はその最中にいるときは毎日必死で生きている。年をとって振り返ると後悔の山だが、それはそれでかけがえのない季節である。

★ 佐伯一麦さんの「ア・ルース・ボーイ」(新潮文庫)を読んだ。17歳の主人公が18歳になるまでの日々を描いた作品。

★ 主人公・鮮(あきら)は母親とうまくいかず、また年上の男性から幼い頃に受けた性的虐待をトラウマとして抱えている。県内有数の進学校に入学するが、その校風に馴染めず、教師から「ア・ルース・ボーイ(だらしのないやつ)」とレッテルをはられる。遂にキレた彼は高校を中退し、自活の生活を始める。

★ そんな時、かつて憧れていた女性が他の男の子を身ごもり、出産する。鮮は、その子の父親になることを決意して、仕事にも精を出すのだが。

★ 不満を言いつつも、レールに乗って生きていけば楽ができるのに、それを良しとしない少年。それはそれで、覚悟を決めて生きていこうとする姿に感動する。

★ 若さゆえの浅はかさはあるものの、彼は真剣に生きている。

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金原ひとみ「蛇にピアス」

2024-01-28 16:13:39 | Weblog

★ 今日も中学3年生の日曜特訓。昨日は公立高校前期の過去問をやったので、今日は公立高校中期の過去問。できる子、できない子の差が歴然としてきた。勝利の女神が微笑んでくれることを祈るばかりだ。

★ さて今日は、金原ひとみさんの「蛇にピアス」(集英社文庫)を読んだ。なかなか刺激的な作品だった。村上龍さんの「限りなく透明に近いブルー」も衝撃的だったが、同様に「性」が赤裸々に描かれている。

★ 主人公の女性がどういう容姿なのか捉えにくい。映画を見ているから吉高由里子さんをイメージしながら読んでしまうが、ちょっと違和感がある。

★ 主人公の女性・ルイは、アマという男性と同棲している。彼は赤髪でピアスをあけ、刺青を施し、何よりも特徴的な「舌」をもっている。その舌に感動したルイは、自らも肉体改造を始める。ルイはアマに連れられてシバという彫師を紹介されるのだが。

★ 本名を知らずまた勤め先も知らないで一緒に暮らせる若者たち。こういう世界がるんだなぁと思った。

★ 生への執着が希薄であるようにも感じるし、生への執着を肉体の痛みで辛うじて保っているようにも感じた。刹那的、絶望的なのか。何か辛い作品だった。

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高野和明「ジェノサイド(下)」

2024-01-27 15:35:24 | Weblog

★ 中学3年生の学年末テストが終わり、京都の私立高校入試まであと2週間。ラストスパートに入った。

★ 高野和明さんの「ジェノサイド」(角川文庫)下巻を読み終えた。壮大な舞台、緻密な考証。スケールの大きな作品だった。

★ アメリカ大統領はある極秘作戦を命じていた。アフリカで発生した感染症を封じ込めるという表の目的の裏で新たに生まれた新人類を滅ぼすという計画だった。この新人類はやがてホモ・サピエンスの脅威になるかも知れない。かつてホモ・サピエンスが他のホモ属を駆逐したように。

★ アフリカでは軍事会社に所属する部隊が実行に当たる。軍事もアウトソーシングの時代か。たとえ作戦が失敗しても国家の首脳が責任を回避するためか。

★ 一方、日本ではある大学生が父親から託された新薬開発に挑む。アフリカと日本、遠く離れた彼らが不思議な縁でつながっていく。

★ NETFLIXあたりが映画化しても面白いかも。

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絲山秋子「勤労感謝の日」

2024-01-25 10:44:50 | Weblog

★ 猛烈な寒波。京都南部でも粉雪が舞う。中学3年生の学年末テストは2日目。寒い中、みんな頑張っている。

★ さて今日は、絲山秋子さんの「沖で待つ」(文春文庫)から「勤労感謝の日」を読んだ。予想以上に面白かった。

★ 主人公は36歳の独身女性。大手企業に総合職で採用されるが、そこはまだまだ女性が軽視される世界。上司のセクハラに及んで大暴れし、退職を余儀なくされる。目下失業中。失業保険もまもなく切れる。

★ そんな折、ご近所さんから紹介のあった見合い話。結婚願望はないが、義理堅いのと、万が一イケメンだったらと期待しながら受けたものの、全くの期待外れで途中退席。憂さ晴らしに後輩を誘って飲み歩くという話。

★ 何しろ文章が面白い。アウシュビッツや松岡洋右の国連脱退など高尚な話題が出るかと思えば、犬の糞を踏んだ話、生理の話など。ヤサグレ感満載だ。ヤケクソ感が好きだ。

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牧田真有子「桟橋」から

2024-01-24 15:28:16 | Weblog

★ 共通テストの自己採点が終わり、2次試験の申し込みが始まった。

★ 今年の国語、小説は牧田真有子さんの「桟橋」から出題。2017年発表の作品だから非常に新しい。例年は昭和初期頃の私小説がよく出るように感じるので、意表をつかれた。

★ 牧田さんは京都府出身の方のようだが、よく知らなかった。出題された「桟橋」も初めて聞く題名だった。

★ 出題部分は、主人公のイチナの家に8歳年上の「おば」が居候するところ。イチナが幼い頃(おばが中学生だった頃で、彼女は奇想天外な発想と芸達者ゆえ、児童公園で子どもたちの人気を集めていた)の思い出を語り、劇団に籍を置きながら居候を転々とするおばの不思議な存在を考えるというもの。

★ 結構地味な作品だが、前後を読んでみたくなった。残念ながら単行本化されていないし、掲載誌(「文藝 2017年秋季号」及び「文学2018」)ももはや品切れである。

★ これを機会に再版されるのか。

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立松和平「金魚買い」

2024-01-23 17:54:10 | Weblog

★ 自民党・宏池会(岸田派)は解散するようだ。一方で麻生派は存続するとか。解散する派閥は「旧岸田派」などと呼ばれるようになるだろうが、リクルート後の30年前の繰り返しで、世論の当面の批判をかわすための煙幕か。時がたてばまた再結成されるのは目に見えている。内向きのゴタゴタより、他にすることがあろうに。

★ さて今日は、立松和平さんの「卵洗い」(講談社文芸文庫)から「卵買い」と「金魚買い」を読んだ。

★ 戦後まだ日が浅い、昭和20年代のある家族の風景のようだ。主人公はまだ幼く、彼の目を通した父母や近隣の人が描かれている。

★ コンビニなど全くなかった時代。少年の家は小さな食料品店を営んでいた。父親は生産者から卵を仕入れて来てはきれいに藁くずの上に置き店で売っていた。接客など店を切り盛りするのは母親の仕事。食パンの切り売りや自家製のジャムなどを売っていた。

★ 1円、2円を必死で稼ぐ稼業。そんな母親の小言を聞いてか聞かずか、父親は通りかかった金魚売りから金魚を買って、どこからかもらってきた石臼に放す。

★ のんびりとした中にも、山あり谷ありの生活が垣間見える。

 

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高山羽根子「居た場所」

2024-01-22 21:15:07 | Weblog

★ 朝から月に1度の診察。といっても血圧と血糖値を測り、ひと月分の薬をもらうだけ。ドクターが80歳を超えた高齢の方なので、自分の方が元気だなぁと思った。

★ 新規入塾の問い合わせが2件。1月だけで4件目だ。何も宣伝をしていないのに口コミで広がってくれる。ありがたいことだ。

★ さて今日は、高山羽根子さんの「居た場所」(河出書房新社)を読んだ。比較的短い作品なので読みやすかった。ただ内容はわかったような、わからないような、読者のイマジネーションに委ねられる作品だった。

★ 中国南部かベトナム辺りから介護研修で日本に来た女性。縁あってか日本人の男性と結婚する。入籍の挨拶を兼ね二人は故郷の離島に赴き、それから彼女が初めて一人暮らしをしたという町を訪れる。しかし、町の姿はすっかり変わっていた。

★ 冒頭から出てくるタッタと言われるイタチのような生き物や、二人に苦痛を与えた奇妙な透明な水の正体が何だったのか、説明されないまま物語は進む。

★ 作品の根底に「微生物」が何らかの働きをしているようだが、腸内で働く乳酸菌と同じように、自覚できるわけでもなく、不思議な雰囲気を残して物語が終わる。

★ 高山さんの芥川賞受賞作「首里の馬」も読んでみたい。

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山田詠美「風葬の教室」

2024-01-21 17:26:38 | Weblog

★ 塾生を見ていて、小学5年生の女子の人間関係の複雑さを思う。年齢的に不安定な時期なのだろうが、仲良しグループかと思いきや翌日には絶交していたり、絶交したのかと思ったらまた仲良くなっていたり。

★ よく言えば人付き合いの距離感を学んでいるということだろうが、異性(同学年の男の子はまだ幼い)や教師(好き嫌いの差が激しい)との関係も絡んで揺れ動いている。親同士の人間関係が絡んでいる時もある。

★ 今日は山田詠美さんの「蝶々の纏足 風葬の教室」(新潮文庫)から「風葬の教室」を読んだ。

★ 主人公は小学5年生の女子。彼女が転校した日から物語が始まる。初日から値踏みが始まり、いわばお局たちに気に入られなければ、排斥、集団いじめへと発展する。きっかけはごく些細なことでも。

★ 教師は彼女たちを子ども扱いしているが、現実は意外と深刻だ。

★ 女の子同士のいがみ合いに、男の子たちは面白おかしくはやし立て、担任までもが女子たちの人気を得るためか彼女に辛くあたる始末。

★ 遂に彼女は「私さえいなければ」と死を覚悟する。そんなとき、ふと姉の言葉を聞く。自分もいじめられた経験がある。そんなときいじめる人々やその取り巻き達を一人ずつ(心の中で)殺していったという。

★ その言葉が救いになったのか、彼女は生きることを決意する。

★ 教師や親など大人が思うほど子どもの世界はきれいごとではない。子どもというのは実に動物的で、ある意味、実に人間的な存在だ。

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