じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

芥川龍之介「歯車」

2024-03-29 18:21:16 | Weblog

★ 春期講座前半戦終了。春期講座はまだ受講者が少ないので負担は小さい。

★ 朝日新聞の「文芸時評」で古川日出夫さんが芥川龍之介の「歯車」を紹介していたので読んでみた。35歳でこの世を去った芥川の遺作だという。

★ 古典にテーマを求めた作品とは違って、私小説、心境小説といったところか。主人公は神経が過敏になり、十分に睡眠がとれず、底なし沼に落ちたようにもがけばもがくほどに苦しみが増幅される。

★ 彼は時々目に歯車を見るという。その後頭痛を発症するというから、今でいう片頭痛か。

★ 私も高校3年生から予備校生時代にかけて、ストレスからか片頭痛を発症した。最初は目の病気かと思い、町医者の眼科医の紹介で日赤で検査をするも原因がわからず、次いで府立医大で問診の結果、片頭痛ということになった。私の片頭痛の特徴は閃光暗点というもので、まぶしいような盲点が現れる。それに合わせて煙草の煙など匂いに敏感になり、その後激しい頭痛が襲った。鎮痛剤を飲み、横になっていれば嘘のように治るのだが、いつ発作が起こるかも知れないという不安感が強かった。

★ この片頭痛も、大学に合格し1年もたてば嘘みたいに起こらなくなった。やはりストレスだったようだ。

★ 芥川もまたストレスからの精神的な不調だったのだろうか。当時は強い睡眠薬が手に入ったから、それに頼ってしまったのか。

★ 「歯車」の物語は、知り合いの結婚披露宴に招待された話、義理の兄が鉄道事故で亡くなった話などが綴られていく。目に浮かぶ歯車とレインコートうぃ着た人物が不気味だ。それは死を間近にして見えた幻影だったのだろうか。

★ さて、古川さんの「文芸時評」では角田光代さんの「方舟を燃やす」(新潮社)、滝口悠生さんの「煙」(「文学界」2024年4月号)も紹介されていた。どちらも興味深い。

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三浦しをん「天国旅行」から

2024-03-27 18:13:58 | Weblog

★ 昨日から一転して今日は麗らかな晴天。日照りは気持ち良いが花粉が飛んでいるのか、顔面が腫れぼったい気がする。

★ huluで「十角館の殺人」を観始めた。NETFLIXで「三体」を観たせいか見劣りがする。キャストの演技もいまいちだ。資本の差だろうか。改めて原作、綾辻行人さんの「十角館の殺人」(講談社文庫)を読み始めた。

★ 三浦しをんさんの「天国旅行」(新潮文庫)から「星くずドライブ」を読んだ。バイト帰りの彼女がやって来た。半分同棲しているから、帰ってきたというべきか。ところがどうも様子がおかしい。食欲もないようだし、以前、バイト先の店長に言い寄られたと言っていたから、何かあったのか。

★ そんな不信感を抱きながらも数日が経過した。彼女と連れ立って大学に通学したとき、あることが判明する。どうやら横にいる彼女はもはやかつての彼女ではなく、彼女の魂だけがゼリーのように存在しているようだ。

★ とはいえ、彼女からは離れられないし、彼女も今まで通りの対応をする。果たして生死の境界を超えた二人の関係はどうなるや、というところで物語が終わる。

★ 死を経ても愛する人と共に暮らせるのは一見幸せそうだが、四六時中一緒にいるとなるとちょっときつそうだ。

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青山七恵「欅の部屋」

2024-03-26 14:47:32 | Weblog

★ 朝からの本降りがやっと上がった。近所のおいしいパン屋さんで卵サンドを買い、おいしいコーヒーと共に頂く。束の間の至福だ。

★ NETFLIX版「三体」を観終わった。先端科学者たちの連続自殺。科学者たちの目から離れないカウントダウン。それらは何を意味しているのか。物語は文化大革命期の中国に飛び、その秘密基地で行われた異星人とのコンタクト計画が描かれる。地球からのメッセージを受け取った高度に発達した異星人は400年後に地球を襲撃するという。彼らにとっては虫同前の人類。果たして人類は駆逐されてしまうのか。それとも生き残れるのか。

★ 400年の猶予というのが面白い。このまま環境破壊が進めば。異星人の来襲を待たずとも人類は滅んでしまうかも知れない。

★ 宇宙を舞台とした広大な物語があるかと思えば、どうでもよいような(本人たちにとってはすごく深刻なことだが)恋愛を描いた作品もある。それはそれで人間らしくて面白い。

★ 青山七恵さんの「かけら」(新潮文庫)から「欅の部屋」を読んだ。主人公の男性は「小麦」という名の女性と2年間付き合い、別れた。女性からの申し出でだった。それから4年。男性はまもなく別の女性と結婚する。ここに及んで、小麦との2年間の生活、そして今の彼女のことが気になり始めた。

★ こうして見てみると、男というのは女性よりも過去を引きずるのかも知れない。未練なのか、振られて傷ついたプライドなのか。今のご時世ではコンプライアンスに触れるかも知れないが、男というのは案外女々しい。

★ huluで綾辻行人さんの「十角館の殺人」がドラマ化されている。観てみよう。

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篠田節子「秋の花火」

2024-03-25 15:26:31 | Weblog

★ 指揮者を取り巻く人間模様は、しばしば映画やドラマで取り上げられる。

★ 篠田節子さんの「秋の花火」(文春文庫)から表題作を読んだ。著名な指揮者。彼が指揮棒を振ると演奏家一人一人の個性が光り、それが合わさりあって美しいハーモニーを奏でる。彼は天才的な指揮者であり、音楽の神は彼に微笑んだに違いない。

★ しかし、そんな彼も指揮台をおりると、酒癖、女癖の悪さが周囲の者を困らせた。指揮台のキリっとした姿とは全く対照的なだらしなさ。そんな彼が病に倒れた。

★ 彼は家族を離れ愛人と暮らしていた。その愛人に先立たれた後は酒浸りの日々。当然のように病が襲ったのだ。

★ 病んだと言って今さら彼の妻子は30年の空白を埋められない。本宅の傍で彼は一人暮らすことになった。そして、彼の教え子たちが母屋の顔色をうかがいながら彼の世話をしていた。しかし、老いてなお、彼の女癖は直らなかった。

★ 本作は老いた指揮者と彼の教え子の物語であると同時に、教え子として同じ時間を過ごし、今や壮年期に入った男女の心の揺れを描いている。

★ とにかく、篠田さんの文章に酔う。

 

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コヴィー「(まんがでわかる)7つの習慣」

2024-03-24 16:00:25 | Weblog

★ 久しぶりに、フランクリン・コヴィー・ジャパン監修「(まんがでわかる)7つの習慣」(宝島社)を読み返した。心に響き、とても感動した。

★ この作品は、スティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」をわかりやすいようにマンガで解説している。主人公は亡くなった父親のバーを引き継ぐため、バーテンダーの修業を始めた女性。彼女は見習いをしながら、バーテンダーとしての技術、経営の心構え、そして何よりもより良く生きるための指針のようなものを学んでいく。

★ 7つの習慣とは、「主体的であること」「終わりを思い描くこと」「最優先事項を優先すること」「win-winを考えること」「まず理解に徹し、そして理解されること」「シナジーを創り出すこと」そして「刃を研ぐこと」

★ 要するに、困難に出会ったとき環境のせいにするのではなく、見方を変えて、自分を変えていく努力をすること。長期的視点に立つこと。聞き上手になること。自分の目標を明確にし、一歩ずつ進んでいくこと。

★ どれもこれも納得できた。日常生活はどうしても保守的になってしまう。それはそれで無難ではあるが、あまり創造的ではない。より良く生きるためには「気づき」が大切だ。この本は良い刺激を与えてくれた。

 

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宇山佳佑「桜のような僕の恋人」

2024-03-23 18:39:11 | Weblog

★ 今日は1日中雨。訪れる人もなく静かな1日だった。新聞折込用のチラシが届く。新学期の新しいテキストも届きだした。

★ NETFLIXで「三体」を観始めた。事の起こりが中国というのが興味深い。まだエピソード1を観終わっただけだが、それにしても「文化大革命」はひどい。共産主義(全体主義)は道を踏み外すと恐ろしい。唯物論を唱えながら、宗教的なドグマと官僚制が幅を利かす体制だ。

★ 宇山佳祐さんの「桜のような僕の恋人」(集英社文庫)を読んだ。この作品は泣ける。

★ 写真家を志すも途中で挫折した青年。そんな彼が美容師の女性に一目惚れする。笑顔の美しい桜のような女性だという。不器用ながらも交際を始める二人。幸せな前途があるかに思えたが、彼女がある病に冒されていることがわかる。

★ 「美丘」や「四月は君の嘘」を思い起こした。最後の手紙は「四月は君の嘘」と同じく泣ける。

★ 老いてすれ違うのは「ベンジャミン・バトン」を思い起こした。出会いがあれば別れがある。仕方のないことだが。

★ 映画「桜のような僕の恋人」では、写真家を目指す青年を中島健人さん、美容師の女性を松本穂香さんが演じていた。映画も泣ける。

★ 桜の季節がもうそこまで来ている。

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吉本ばなな「体は全部知っている」から

2024-03-21 14:38:52 | Weblog

★ 高校の合格発表が終わった。大学及び専門学校を受験した塾生10名、高校を受験した塾生18名。みんな決まるべきところに決まった。彼らの前途を祈りたい。

★ 中学3年生のほとんどが卒塾したので、今週の授業はゆとりがある。ただ新年度に向けての雑用は後を絶たない。そして来週からは春期講座が始まる。

★ 映画「海と毒薬」を観た。1986年に制作された白黒映画。人体実験、医療者の倫理、倫理観と自らの立場に葛藤する若い医師、能天気な軍人たちが印象的に残った。同じく遠藤周作さんの作品「沈黙」にも通じるテーマを感じた。

★ 吉本ばななさんの「体が全部知っている」(文藝春秋)から「小さな魚」を読んだ。主人公の女性の胸には脂肪腫があり、時々痛んで彼女を悩ませた。思い切って切ることにしたのだが、切ってしまえばそれはそれで喪失感を感じたという。

★ 芥川龍之介の「鼻」を思い起こした。

★ さて、来週は天気が悪そうだ。「なたね梅雨」か。季節が動いていく。

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遠藤周作「海と毒薬」より

2024-03-16 22:04:12 | Weblog

★ 小説には時代を超えて読み継がれる作品がある。遠藤周作の「海と毒薬」もその1つであろう。

★ 遠藤周作さんの「海と毒薬」(角川文庫)から第1章を読んだ。時代は戦時中。街では空襲で人が死に、病院では肺を病んで死を待つ人が大勢いた。命が軽視されていた時代。

★ 物語は戦後、郊外に越してきた男性が、ある無口な医師と出会うことから始まる。この医師、腕は確かなのだが不愛想。そして男性は偶然、医師の過去を知る。

★ そのあと医師の物語が始まる。医師は九州の大学病院で外科に所属していた。彼はそこで人体実験に加担してしまい、戦後裁かれる。

★ 戦場で敵を殺せば英雄と呼ばれる時代。捕虜を人体実験に利用することに医者の倫理観は対抗できなかったのか。

★ 手術の生々しさは泉鏡花の「外科室」。外科部長の選挙をめぐる派閥争いは山崎豊子さんの「白い巨塔」を思い起こした。

★ 「海と毒薬」は1957年発表。大江健三郎さんの「飼育」の発表が1958年。この時代の純文学は面白い。面白作品は普遍性がある。

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絲山秋子「ニート」から

2024-03-15 23:14:46 | Weblog

★ 中学校の卒業式。晴天に恵まれて良かった。小学校は短縮授業とかで、午後早くから小学生たちがやってくる。彼らは元気だね。日本の未来は明るい。

★ さて今日は、絲山秋子さんの「ニート」(角川文庫)から「愛なんかいらねー」を読んだ。スカトロ満載で、食事時には読めない。

★ 登場人物が自ら「変態」と言っているから、ノーマルではないのだろう。しかし、何でもオッケーのご時世だ。ある意味先祖返りということか。

★ フロイトさんも想像できないような時代になってきた。

★ 金曜日と言えば「不適切にもほどがある」。今日はミュージカル抑え目だったような。最後はキョンキョン登場で驚いた。さてこのドラマ、どのようなエンディングを迎えるのやら。

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吉田修一「犯罪小説集」から

2024-03-14 14:22:24 | Weblog

★ 受験が終わって急に暇になったせいか、ちょっぴり燃え尽き症候群だ。25日からは春期講座が始まる。それまでにまた英気を養わねば。

★ 吉田修一さんの「犯罪小説集」(角川文庫)から「青田Y字路」を読んだ。この小説集、実際の事件がモチーフになっているようで、「青田Y字路」は2005年の栃木小1女児の事件が土台になっているのか。

★ 犯行現場や犯人像で実際の事件が脚色されている。

☆ 外は良い天気。何もする気が起こらないが、部屋のかたずけでもしましょうか。

 

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