じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

角田光代「ツリーハウス」

2023-01-31 03:47:24 | Weblog

★ 中学3年生の学年末テストが終わり、高校受験まであと10日になった。バタバタと時が流れじっくり読書もできなかったが、ようやく角田光代さんの「ツリーハウス」(文春文庫)を読み終えた。

★ 新宿西口に店を構える「翡翠飯店」。その店を経営する3世代の人々の物語だった。

★ 初代の祖父の死から物語は始まる。残された祖母を伴って、息子と孫はかつて祖父母が暮らした満州(中国東北部)を訪れる。時代は一気に戦前へ。

★ ふたりはどうして満州に渡ったのか。そして、いかに祖父母が出会い、いかに戦火を切り抜け、生き延びて日本に帰ってきたのか。終戦直後、高度成長、やがてバブルもはじけて、店は祖父から息子へと受け継がれる。

★ 本書の主人公は「ある家族」であるが、同時に「時代」であると感じた。時代の変遷の中で、人はどう生きたか、そしてどう死んでいったか。学園紛争、オウム事件など、戦後の大きな事件とも家族は遭遇する。(この家族の物語は、同じ時代を生きた日本中のどの家族にも大なり小なり当てはまるように感じた)

★ 角田さんの作品はあまり読まなかったけれど、この大河小説には感動した。

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吹雪

2023-01-24 18:02:32 | Weblog

☆ 60年あまり生きてきて、経験したことのないような猛吹雪です。わずか1時間で雪景色。

☆ 明日から中学3年生の学年末テストですが、予定通りあるのやら。

☆ 塾も今日は開店休業です。

 

☆ 塾生から連絡。何かとよく止まるJR奈良線は、雪のため運休で振り替え輸送とのアナウンス。しかし、近鉄京都線も列車遅延とか。明朝にかけて、あちこちで事故が起こりそうだ。凍死者などでなければ良いが。

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有栖川有栖「蝶々がはばたく」

2023-01-23 20:14:12 | Weblog

★ 寒さが身に沁みる。連日、鍋で束の間の暖をとる。昨日は寄せ鍋、今日はごま豆乳鍋。最近は出汁を売っているので手軽に鍋がつくれる。

★ さて、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選35 どたん場で大逆転」(講談社文庫)から、有栖川有栖さんの「蝶々がはばたく」を読んだ。

★ お馴染みの火村助教授と作家のアリス、今回は冬の醍醐味、越前ガニを食べに北陸に行くという。

★ アリスがたまたま出会った中年男性。車窓からビックリしたように向かい側のホームを見ていた。小説のネタにでもできればと興味を持ったアリスは、その事情を聴くと、35年前に蒸発したカップルを見かけたという。

★ なぜ二人は足跡も残さずに姿を消したのか。火村たちは謎解きに挑む。

★ 相場英雄さんの「ガラパゴス」(小学館文庫)が織田裕二さん主演でドラマ化されるという。楽しみだ。

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小杉健治「絆」

2023-01-22 18:50:05 | Weblog

★ 京都の私立高校入試まであと19日。いよいよ迫ってきた。こんな折、猛烈な寒波が来るという。何とか無事に試験までたどり着いて欲しいものだ。

★ さて、今日は小杉健治さんの「絆」(集英社文庫)を読み終えた。法廷小説の最高峰の1つかな。

★ ある女性が夫殺しで起訴された。本人も自供しているので、誰もが簡単にケリがつく事案だと考えていた。ところがただ一人、法曹の表舞台から引退していた原島弁護士だけが、彼女の無罪を主張し続ける。

★ なぜ彼女は自ら罪を被ろうとしているのか。事件の背後には、複雑に入り組んだ人間模様と障がい者のいる家族の葛藤が見え隠れする。

★ 最初は検察官、弁護人が交互に証人に証言を求める裁判の形式になじめなかった。しかし読み進めるうちに、原島弁護士の謎解きに興味がそそられる。真相を早く知りたい読者、もったいぶるような弁護。そうして作品に引き入れられる。

★ 法廷という閉ざされた空間ながら、事件の様子がビジュアルに感じられるから不思議だ。

★ 1988年の直木賞候補作。ドラマ化もされているという。

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福永武彦「廃市」

2023-01-21 20:01:18 | Weblog

★ 新聞で小谷野敦さんの「直木賞をとれなかった名作たち」(筑摩書房)の広告を見て、心ひかれた。先日、今期の芥川賞、直木賞の発表があったが、受賞作の影には候補作があり、中には何らかの理由で候補にも上がらない名作がある。

★ 早速、小谷野さんがどのような作品を選択されているのか、目次を見る。既に読んだ本もあるし、聞いたこともないような本もある。そのリストの中から、今日は福永武彦さんの「廃市」を読んだ。

★ ある田舎町が大火で焼けたと聞いて、主人公は10年以上前、その町に滞在したひと夏の出来事を思い出す。

★ 当時、主人公は大学生で卒業論文を仕上げるためその町に滞在していた。そこで出会った姉妹。姉は結婚していたが夫とは別居中だという。夫は外に愛人がいるとも。妹は決して美人ではなく、どちらかといえばお転婆だが、主人公は仲良くなる。

★ そして、姉の夫は同棲している女性と心中。30歳にして人生に疲れたという。

★ 姉、姉の夫(義兄)、妹、夫の同棲相手、それぞれがお互いを思いやっているのだが、どこかで歯車が狂ってしまった。

★ いわば通りすがりの主人公もこの家族の転落、そして死にかけている町に巻き込まれていく。

★ 毎日が同じ繰り返し、よく言えば安定しているが、悪く言えば変化のない町。よどんな水が腐るように、時代から取り残され、やがては忘れ去られるかのような町。

★ 「・・・要するに 一日 一日 が 耐えがたい ほど 退屈 なので、 何かしら 憂さ晴らし を 求め て、 或いは 運河 に 凝り、 或いは 音曲 に 凝る という わけ です。 人間 も 町 も 滅び て 行く ん です ね。 廃市 という 言葉 が ある じゃ あり ませ ん か、 つまり それ です。」(新潮文庫) 

★ 私にとって決して読み易い文章ではなかったが、叙情豊かな表現は魅力的だった。

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佐伯一麦「還れぬ家」

2023-01-19 19:58:50 | Weblog

★ 少しずつ読み進めていた佐伯一麦さんの「還れぬ家」(新潮文庫)を読み終えた。

★ 作家の「私」に実家から電話があった。父親が認知症になったという。父親の面倒は母親が見ていたが、父親の病状の進行と共に母親も高齢となり、手に負えなくなったらしい。

★ それから1年間。父親が誤嚥性肺炎で亡くなるまで、認知症の家族を抱える苦労が語られていく。

 

☆ 家族では手に負えなくなったとき、最近は施設などが充実しつつあるが、それでもタイムリーに利用できるかはどうかは運しだいだ。

☆ 自らの病気にしても、家族の介護にしても、その苦労は結局は経験したものでないとわからない。誰もが直面する課題ではあるが、最初はみんな初体験で、右往左往しながら、何とか手立てを模索していく。

☆ 私も20年間父親を介護し(私の父は認知症ではなかったが脳出血にともなう半身不随で10年。その後脳梗塞を発症して寝たきりで10年)、その困難を嫌というほど経験してきた。私の40歳から60歳は介護の歴史といえる。

☆ それはそれで多くのことを学ばせてもらったが、失われた20年は取り返しがつかない。(とはいえ、これも人生。両親を無事に見送れたことで、役割を果たせたという安堵感もある。)

 

★ 作品では、父親が亡くなった後日談も語られていく。それは2011年の東日本大震災との遭遇だ。仙台に住んでいた作者。当事者ならではの苦労が語られる。

★ 私小説は作家の実体験に基づくフィクションだ。ノンフィクションは作家の眼を通しながらも、事実に重きを置くのに対して、私小説は作家の心情を重視する。一人の人間に関することという限界はあるが、それゆえに文章の巧さが勝負だと思う。

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柴田哲孝「鯨のたれ」

2023-01-17 19:19:00 | Weblog

★ 淀川河口に迷い込んだクジラの「淀ちゃん」は結局死んでしまった。そもそも弱っていたのかも知れない。死んだら死んだで、「怪獣」ではないが「海獣のあとしまつ」が大変なようだ。

★ 鯨といえば、私が小学生の頃は給食の定番だった。その後捕鯨が制限されたのですっかり高級品となり、おでんのコロや鯨ベーコンなどなかなか口にできなくなった。

★ ハリハリ鍋など懐かしいが、今食べると独特の生臭さがあって、あまり積極的に食べようとは思わない。

★ さて、今日は柴田哲孝さんの「狸汁」(光文社文庫)から「鯨のたれ」を読んだ。麻布十番に店を構える「味六屋」の物語。「鯨のたれ」は、アパレルで一世を風靡したものの競合との競争に敗れ会社をつぶした男がネタを振る。この男、生計を立てるために食い物商売を始めようというのだ。

★ このエピソードに出てくるのが「鯨のたれ」。「焼肉のたれ」のようなものかと思いきや、鯨肉を干したジャーキーのようなもの。冷蔵設備がなかった時代の保存食かな。これをあぶって食べると懐かしい味がするという。

☆ 最近、料理に興味をもって(たぶん三日坊主で終わるが)、今日はほうれん草の胡麻和えと里芋の煮物をつくった。胡麻和えは我ながらびっくりするほどのうまさだった。里芋の方は少々味が濃かったかな。

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梅崎春生「飢ゑの季節」より

2023-01-15 20:47:48 | Weblog

★ 今日も高校受験に向けての日曜特訓。入試まで4週間を切った。

★ 朝日新聞「日曜に想う」の曽我豪さんの「分断社会 小林秀雄はこう想う」が興味深かったので、小林秀雄の「無私の精神」を読む。「ごもっとも」「ご覧の通り」が口癖の有能な実業家を例に挙げ、物の動きを尊重し、それに応じて自己を日に新たにする「無私」を説く。

★ 曽我さんの文章は虚しい対立を続ける政治状況を批判し、古い解釈や知識を捨て、課題に挑戦できる新世代のリーダーの登場を期待する。政治のみならずジャーナリズムにも警鐘を鳴らしている。

★ 今年の共通テスト、梅崎春生さんの「飢ゑの季節」から出題されていたので、問題文を読む。太平洋戦争後、食糧難の時代に広告会社に職を得た主人公。生活もままならない薄給に嫌気がさして会社を辞める。

★ それにしても1日1食の食事にありつくことさえ困難な時代。主人公はすきっ腹を抱え町を歩き、そこでも存在する格差を見る。

☆ なかなか面白い作品だった。私は申し訳ないほどの飽食の時代に生きながら、読んでいると空腹感を覚えた。カレー屋から漂うスパイスの香りが忘れられなくて、カレーのデリバリーを頼んだ。

☆ とにかく食うには困らない。こんな当たり前の日常をありがたく感じた。

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柚月裕子「朽ちないサクラ」

2023-01-14 21:44:52 | Weblog

★ 今日は今年度第3回目の英検。無事に終了した。共通テスト第1日目はどうだっただろうか。

★ さて、今日は柚月裕子さんの「朽ちないサクラ」(徳間文庫)を読んだ。「孤狼の血」のような凄味や「盤上の向日葵」のようなスリリングな展開には欠けるが、それなりに面白かった。

★ 本作の主人公は警察官ではなく警察で事務を執る職員。友人の新聞記者との会話で不用意な発言をしたばかりに、それがスクープになり、所轄署は窮地に陥る。

★ 新聞記者は自分のせいではないと弁解し、真相を解明するといった矢先、殺される。

★ どうやら事件の背後にはカルト教団の影が。しかし、その背後に更に黒幕が。底の浅い話だと思わせておいて「実は」とどんでん返しをするところが面白かった。刑事警察と公安警察の駆け引きも面白かった。

★ この作品、どうやらまだまだ続きそうだ。

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連城三紀彦「裁かれる女」

2023-01-13 23:15:48 | Weblog

★ 明日は大学入試の共通テスト。塾生の高校3年生は高校を休み、朝から塾で自習。中学入試の前、学校を休む小学生の話はよく聞くが、高校にもこの風潮が浸透しているようだ。とにもかくにも彼らの健闘を祈りたい。

★ そして明日は英検の今年度第3回目テスト。朝から受験生がやって来る。何かとバタバタした日が続く。

★ さて、そんな時間の合間を縫って、今日は日本推理作家協会編「ミステリー傑作選36 殺ったのは誰だ?!」(講談社文庫)から連城三紀彦さんの「裁かれる女」を読んだ。

★ ある女性弁護士のところに依頼人らしき男がいやってきた。自分は「妻」殺しの容疑者としてまもなく警察に逮捕されるから弁護してほしいという。突然の依頼にとまどいながら、話だけは聞くことにした弁護士。彼女に記憶はなかったが、男は弁護士の同じ大学で同じく法曹界を目指していたという。

★ 疑い半分に男の話を聞きながら、話は思いがけない展開に。

★ 「妻」殺しという言葉に仕掛けられたトリック。仕掛けも見事ながら、なかなか達者な筆さばきだと思った。

 

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