じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

三島由紀夫「憂国」

2018-03-31 20:37:23 | Weblog
☆ 三島由紀夫の「憂国」(新潮文庫「花ざかりの森・憂国」所収)を読んだ。この作品には圧倒された。かつて映画「憂国」を観たが、それを遥かにしのぐ迫力を感じた。

☆ 三島作品の中でも日常茶話的なものはつまらなく感じたが、この作品は絶品だ。肉体、エロス、死。生臭い動物的な表出が「美」に昇華している。人智を越えた何物かが三島の筆を操って書かせたのではないかとさえ思える。

☆ もはや2・26事件とか、「皇軍相討つ」への苦悩とか、そんなことは主題ではない。人間の生きざま(死にざま)に肉薄している。これは軍人の話であるが、死は誰にでも訪れる。それは今日かも知れないし、明後日かも知れない。

☆ 私にそれへの覚悟はあるのだろうか。

 
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「裏切りのサーカス」

2018-03-31 16:04:46 | Weblog
☆ 再びスパイ映画。「裏切りのサーカス」(2011年)を観た。

☆ 東西冷戦時代、イギリスとソ連の諜報部員の活動を描く。イギリスの機密情報がもれている。諜報機関の幹部の中に二重スパイ「もぐら」がいるようだ。作戦に失敗し引退を余儀なくされた老諜報部員が、「もぐら」を探す活動を始める。

☆ 「サーカス」とはイギリス秘密情報部の通称。ソ連情報部は「モスクワセンター」と呼ばれていた。

☆ 話が少々複雑で1度観ただけではよくわからないところもあったが、老諜報部員スマイリー(ゲイリー・オールドマン)の重厚な演技と十分「間」をとったカメラワークが緊迫感を高めている。見ごたえのある映画だった。

☆ 007のような派手さはなく、じわじわっと響いてくるような作品だった。本当の諜報活動は結構地味なのだろう。
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「スプークス MI-5」

2018-03-30 03:45:30 | Weblog
☆ 映画「スプークス MI-5」(2016年)を観た。

☆ イギリスの諜報機関MI-5の話。MI-5がCIAにテロリストの身柄を引き渡す途中、何者かに襲撃され、テロリストが奪われた。情報がもれている。MI-5の局内に裏切り者がいるらしい。テロ対策の責任者ハリーは責任をとって姿を消し、単独で裏切り者を探し始める。そこにかつての部下が現れる。

☆ MI6では昔、高級スタッフがソ連の諜報機関の協力者ということがあったから、あり得ない話ではない。二重スパイ問題で、イギリスとロシアの関係がぎくしゃくしているときだけに、興味深く観た。

☆ 多数の犠牲を阻止するためには少数の犠牲はやむを得ない。「最大多数の最大幸福」を標榜するイギリスらしい価値観だと思った。
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芥川龍之介「煙草と悪魔」

2018-03-29 01:26:28 | Weblog
☆ 芥川龍之介の「煙草と悪魔」(新潮文庫「奉教人の死」所収)を読んだ。

☆ 煙草はフランシスコ・ザビエルに随伴した悪魔が日本に伝えたという奇説の物語。畑を耕し煙草を栽培する悪魔。そこを牛商人が通りかかる。当時日本には煙草がなかったから、何の植物かわからない。牛商人は悪魔に植物の名前を聞くが悪魔は教えない。そこで悪魔はカケをする。3日以内に名前を当てればこの畑をおまえにやる。でももし当てなければおまえの体と魂をもらうと。牛商人は夜も寝ず考え続け、ある作戦を実行する。結果はいかに。

☆ 誰が勝って、誰が負けたのか。心に残る一文がある。それはまるで、イエスをはりつけにした人々への警句だ。イエスは死ぬことによって救世主であることを証明したのだ、そんな暗示を思わせる文だった。
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「イエスマン」

2018-03-29 01:08:10 | Weblog
☆ 映画「イエスマン」(2008年)を観た。

☆ 言い訳と「ノー」の日々、引きこもりの中年男(ジム・キャリー)が、ある自己啓発セミナーに参加したことから人生が一変する話。そのセミナーでは何事にも「イエス」というように指導される。半信半疑ながらも彼は「イエス」を実践し、それが環境を変えていく。

☆ 引きこもっているときも彼の周りには彼を見守る人々がいる。友人も会社の上司も。彼には魅力があったのだ。ただ心を閉ざして、自分から幸運を拒絶していたのだ。自分を変え、何にでも前向きに取り組むことによって、本来の彼の魅力が引き出されたのだ。

☆ 自己啓発セミナー賛美に終わっていないところも良い。セミナーはきっかけではあったが、自分を変えるか否かは自分次第なのだ。

☆ なかなか勇気づけられる作品だった。
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「ハイスクール・ミュージカル」

2018-03-28 19:39:12 | Weblog
☆ テレビ映画「ハイスクール・ミュージカル」(2006年)を観た。

☆ 最初は子どもの見る映画だなと思っていたが、見ているうちにじわっと来たり、リズムに乗ったりで、なかなか良かった。

☆ ある高校が舞台。バスケットボール部のトロイ。ルックスはいいし、スポーツができるとあって、モテモテの人気者だ。その高校に成績優秀なガブリエルという女生徒が転校してくる。この二人が音楽を通じて心を通わす物語。

☆ 全くタイプ違うトロイ、ガブリエル。二人はだんだんひかれていくが、自分の気持ちを素直に伝えられない。ライバルの存在、それぞれのグループの対立。このあたりは少女コミックのパターンだ。そして最後はハッピーエンド。めでたしめでたし。



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「砂上の法廷」

2018-03-27 23:45:10 | Weblog
☆ 映画「砂上の法廷」(2016年)を観た。

☆ 弁護士が殺された。犯人として逮捕されたのは弁護士の息子。殺された弁護士の友人弁護士(キアヌ・リーブス)が息子の弁護を担当する。黙り続ける息子。状況は不利なことばかり。果たして裁判の行方は。

☆ 物語は法廷シーンを中心に進む。最後はネタばらし。「あぁ、そういうことかぁ」と納得させられる。

☆ 証言者というものがいかにいい加減なものか。裁判という舞台で繰り広げられるさまざまな戦術。果たして裁判は公正なものなのか。そうしたことを考えさせられる映画だった。
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浅田次郎「ラブ・レター」

2018-03-27 20:54:27 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの短編集「鉄道員」(集英社文庫)から「ラブ・レター」を読んだ。

☆ 偽装結婚した「妻」が死んだ。外国人労働者だった。ヤクザに食い物にされ、それでも彼らに感謝して死んでいった。会ったこともない「夫」にも感謝のラブレターを残していた。

☆ なんか切ない話だった。
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証人喚問

2018-03-27 10:39:59 | Weblog
☆ 佐川元財務省理財局長への証人喚問が始まった。ロッキード事件のときは「記憶にございません」が決まり言葉だったが、最近は「訴追の恐れがあるので・・・」。国政調査権に基づく証人喚問はそんなものだと言ってしまえばそれまでだけれど。

☆ 裏を返せば、証言を拒否するところに真相があるということ。元局長は理財局内で処理をし、他からの影響はなかったというが、果たしてどうだろうか。法に触れるリスクを冒して「何」を守ろうとしていたのか、まったくわからない。

☆ 野党としても証言拒否は想定内だろうから、「ちゃんと追究してますよ」というアピールというところか。結局真相は藪の中。司法判断ということになるのだろう。起訴されるか、起訴されても軽微な罪で終わりそう。

☆ 「上」の指示で改ざんに手を貸した職員は配置換えされ、「何か」を守り通した御仁はどこかに天下りかな。


☆ 政治主導という理念と現実のギャップ。内閣人事局の問題。課題を残したまま幕引きかな。
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森鷗外「鶏」

2018-03-26 19:54:47 | Weblog
☆ 森鷗外の「鶏」(新潮文庫「阿部一族・舞姫」所収)を読んだ。小倉に転任した陸軍少佐の着任から数か月間の生活を綴っている。(モデルは鷗外本人のようだ)

☆ 都会から来た将校にとって九州・小倉は異文化の地であったようだ。明治期とはいえまだ身分制度も色濃く残っている。

☆ 彼は独身で、日々の生活のために下女と馬の世話役を雇う。軍人それも中央でそこそこ高い地位にあったためか彼の口調は結構横柄である。それに対して、彼の世話をする人々は主に農村出身で身なりから慮ると貧しそうだ。体臭からもそれが感じられる。彼らはへりくだってはいるが、なかなか狡猾でもある。

☆ 下女のばあさんの観察の結果として、彼のことを「ケチ」で「バカ」と言わせているところは面白い。

☆ ところで表題の「鶏」。かつての部下が近くに住んでいるということで挨拶に来た。そのときの手土産が立派な雄鶏だった。彼はそれを食う気がなかったから飼うことにした。つがいをつくろうとしたのか、牝鶏を1羽買ってきて一緒に育てることにした。すると馬の世話係が更に牝鶏を2羽連れてきて、一緒に育てることになった。それにはある魂胆があった。

☆ モーパッサンの作品のような自嘲があり、魯迅の作品のような揶揄も感じられる。

☆ 情景描写は少々煩雑な気がした。文体は短文で歯切れがよく読みやすかった。ところどころの外来語(スペル表記)はどういう意図なのだろうか。最近でも学者がよくやるインテリぶりか。

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