じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

小林秀雄「西行」

2018-04-30 20:58:06 | Weblog
☆ ラジオでパーソナリティが西行を語っている。

☆ 「願はくは花の下にて春死なむそのきさらぎの望月のころ」

☆ その想い通り、西行は2月16日(如月の望月のころ)にこの世を去ったという。

☆ ふと「西行」が読みたくなって、小林秀雄の「無常という事」(角川文庫)を開けた。

☆ 碩学の筆は次のように西行を評する。(西行の歌を指して)「これらはけっして世に追い詰められたり、世をはかなんだりした人の歌ではない。出家とか厭世とかいうあいまいな概念に惑わされなければ、いっさいがはっきりしているのである。みずから進んで世に反いた二十三歳の異常な青年武士の、世俗に対する嘲笑と内に湧き上がる希望の飾り気のない鮮やかな表現だ。彼の眼は新しい未来に向かって開かれ、来るべきものに挑んでいるのであって、歌のすがたなぞにかまっている余裕はないのである。確かに彼は生得の歌人であった」(昭和54年版73頁)

☆ これ以上の言葉は不要かと思われる。

☆ 西行は何を求めて歩き続けたのだろう。捨てようとして捨てきれない「わが心」。捨てようと思えば思うほどそれは際立ったに違いない。死期に際し、如月の望月を観て、西行は何を思っただろう。月と一体になることができたのだろうか。花と一体になることができたのだろうか。
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桜庭一樹「五月雨」

2018-04-30 19:28:34 | Weblog
☆ 桜庭一樹さんの短編集(奇譚集)「このたびはとんだことで」(文春文庫)から「五月雨」を読んだ。

☆ 鉄砲薔薇の鮮やかな色彩と地面に突き刺さるような五月雨の情景から物語は始まる。舞台は山の上ホテル。文人に愛された(あるい編集者に缶詰めにされた怨念のこもる)ホテルだ。そこに二人の小説家が滞在している。一人はもはや大御所とでもいうような風格を備えている。もう一人はパンク調の若者。この対照的な二人がコーヒーを飲みながら、話を回していく。

☆ 後半の急展開には驚く。短編には収まり切れない物語は後に長編として完成されたと聞く。

☆ 本作は現代版吸血鬼のような物語である。
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太宰治「葉桜と魔笛」

2018-04-30 18:01:36 | Weblog
☆ 現代日本文学館「太宰治」(文春文庫)から「葉桜と魔笛」を読んだ。

☆ もう50代半ばだろうか、婦人の回想という形で書かれていた。母が亡くなり、父と自分と2歳年下の妹の家族。妹は佳人薄命の運命を背負ってしまったのか18歳で余命100日の宣告を受けてしまう。そのとき姉は20歳。

☆ 姉は妹のタンスの中から手紙の束をみつける。姉はそれをこっそり読んでしまい衝撃を受ける。どうやら男性からの恋文らしい。

☆ 姉は余命わずかの妹のためにある偽装を試みる。しかし、妹もまたある企みをしていたのだ。

☆ 芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のような語り口調。それは回想だからだろうか。

☆ 葉桜の季節、塀越しに聞こえた軍艦マーチの口笛は、果たして誰の仕業なのでしょう。
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「ゲゲゲの鬼太郎」

2018-04-30 14:43:59 | Weblog
☆ 「ゲゲゲの鬼太郎」の第6シリーズを観た。第1話は人間を木に変える妖怪の話。スマートフォンやネットが出てくるあたり、さすがに時代を感じる。

☆ ちょっと興味がわいたので、第1シリーズ(1968年)の第1話を観た。「おばけナイター」と題されていた。水木さん似の少年が墓場でバットを拾う。そのバットを使うと自由に打球が打てるというもの。この時代、男のあこがれは野球選手だったから、なるほどなぁと思った。モノクロだけれどそれほど違和感はなかった。

☆ 第6シーズンはさすがに画像がきれいだ。登場人物もきれいになっている。豊かになって日本人の顔が変わってきたのだろうか。声優陣もすっかり変わったようだけれど、鬼太郎は何かしか元気がない。これも日本社会を象徴しているのだろうか。アニメの世界ぐらい元気であって欲しいと思うのだが。

☆ さて、時代は変わっても人の心はあまり変わらないようだ。貪、瞋、痴(むさぼり、いかり、おろか)の三毒から離れることはできないようだ。それこそ妖怪たちにとってはたまらない御馳走なのだろうね。
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映画「パシフィック・リム」

2018-04-29 20:04:42 | Weblog
☆ ちょっと疲れたので映画を観た。「パシフィック・リム」(2013年)。

☆ 基本はただ怪獣とロボットが戦うというもの。何も考えずにボーっと見れる。ロボットはガンダムのようでもありエヴァンゲリオンのようでもあり。怪獣はエイリアンを大きくしたような感じかな。

☆ ウルトラマンと怪獣のように都市を破壊しながら戦う。人のいない荒野か砂漠で戦えばよいものを。まぁそこはお決まりということで。

☆ 予想通りの終わり方で、めでたしめでたし。
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桜木紫乃「起終点駅」

2018-04-29 17:14:22 | Weblog
☆ 桜木紫乃さんの短編集「起終点駅 ターミナル」から表題作を読む。

☆ 佐藤浩市さん主演で映画化(2015年)もされていた。かつて裁判官を務めていた鷲田完治は釧路で法律事務所を開いている。国選弁護しか引き受けないので「変わり者」と呼ばれている。独り者で生活もギリギリに切り詰め、趣味と言えば料理を作ること。彼が自らをそんな境遇に置いているにはある訳があった。

☆ 鷲田完治をどう見るか。それは立場によって分かれそうだ。捨てられた妻子から見れば身勝手な男で自業自得というところか。養育費は支払っていたようだから情状酌量の余地があるのか。ただ金銭で済むことだろうか。

☆ 不器用で不運な男だとはいえる。不運は自らに課している罰ともとれる。もはや65歳。人生の終点も見えてきた。あらたな起点を見つけることができるのか。それは本人の気持ち次第だろうか。
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映画「SING」

2018-04-29 13:40:35 | Weblog
☆ 映画「SING」(2016年)を観た。美しいアニメーションと次から次へと歌われる名曲に聴きほれて、あっという間に見終わった。

☆ 登場人物(?)はすべて動物で擬人化されている。子ども向けとも言えるが、大人も十分楽しめる。

☆ コアラのバスター・ムーンは幼いころ見たショーに魅了され、劇場主になった。しかし最近は経営が振るわず銀行からは返済の催促。そこで賞金をかけた歌のオーデションをすることにしたのだが、1000ドルとすべき賞金額を10万ドルと刷ってしまう。賞金を見て多くの出演者が集まってくるのだが・・・。

☆ ブタのグンター&ロジータのダンスに体が揺れ、ゴリラのジョニーのピアノに心が震え、ヤマアラシのアッシュのロックンロールにノリノリ、ネズミのマイクの「マイウェイ」に人生を考え、最後はシャイなゾウのミーナの歌声に心奪われる。
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梨木香歩「西の魔女が死んだ」

2018-04-29 10:10:18 | Weblog
☆ 梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」(新潮文庫)を読んだ。

☆ 最後の2ページは号泣してしまった。予想はしていたけれどやっぱり涙腺が切れてしまった。

☆ まいは中学1年生。入学してまだ1か月もたっていないが不登校になってしまう。クラスメイトとの人間関係に疲れてしまったのだ。ママはまいを祖母の家に預けることにした。祖母は外国人。ママはハーフだ。パパは単身赴任中。

☆ 自然に囲まれた祖母の家。まいはそこで祖母からベッドメイキングや草木の名前や「自分の意志で生きること」などいろいろなことを学ぶ。「まいは、魔女って知ってますか」と祖母。「もしかして、うちは、だから、そういう家系なの?」とまい。それから始まる魔女修行。

☆ あるとき、まいは尋ねた。「人は死んだらどうなるの」と。「分かりません。実を言うと、死んだことがないので」と祖母。でも、やさしく魂の話をしてくれる。「おばあちゃんが死んだら、まいに知らせてあげますよ・・・まいを怖がらせない方法を選んで・・・」

☆ ある日、まいはあることで祖母と言い争った。再びパパやママと一緒に暮らすため、祖母の家を去る直前に。だから素直にサヨナラを言えなかった。

☆ それから2年。祖母が倒れた。ママとまいはかけつけたが遅かった。しかしそこには西の魔女からのメッセージが残されていた。

☆ このメッセージを見た瞬間、まいと一緒に読者も涙の堰が切れる。

☆ ちょっとお茶目に微笑んで「アイ ノウ」と言う「魔女」の姿が目に浮かぶ。
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浅田次郎「再会」

2018-04-29 07:49:48 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの短編集「姫椿」(文春文庫)から「再会」を読んだ。

☆ 30数年ぶりに偶然再会した友人。時流に乗って富を得た友人だが、折り入って話したいことがあるという。ある日、かつての不倫相手を1日に2度も見たというのだ。一人目は裕福な身なりで幸せそうな姿で、二人目は指名手配犯として護送される姿として。

☆ 昔、「トワイライトゾーン(ミステリーゾーン)」というテレビ番組があったけれど、そんな感じ。この世界には何人も自分がいてそれぞれが独立して生きている。環境が変われば姿も変わるのでたとえすれ違ったとしてもわからない。成功者もいれば、敗者もいる。

☆ テレビドラマの構成になっているように感じた。
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宮本輝「星々の悲しみ」

2018-04-28 18:38:42 | Weblog
☆ 宮本輝さんの短編集「星々の悲しみ」(文春文庫)から表題作を読んだ。

☆ 1965年、主人公は大学受験に失敗し浪人生活を送ることになった。予備校には在籍していたが図書館で出会った女子大生にあこがれて図書館に入り浸り、受験勉強そっちのけで162篇の小説を読んだという。

☆ かといってチャラチャラした恋愛小説ではない。ふと出会った予備校仲間とのかけがえのない時間が描かれている。

☆ 舞台が大阪ということで私も何度か利用した中之島図書館の情景が目に浮かぶ。大阪弁が心地よい。

☆ 「星々の悲しみ」とは行きつけのカフェに飾られていた絵画の名前。20歳で亡くなった画家が描いたものだという。

☆ この作品、最後の4行を何度も反芻してしまう。主人公は何を垣間見たのだろうか。
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