じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

久遠恵「ボディ・ダブル」

2021-04-30 20:52:24 | Weblog
★ 「小説推理新人賞受賞作アンソロジー Ⅰ」(双葉文庫)も最後の作品。第17回(1995年)受賞作、久遠恵さんの「ボディ・ダブル」を読んだ。

★ 舞台は大阪、捜査第4課に籍を置く刑事が主人公。男の妻は数年前に失踪した。その背後にはあるヤクザが絡んでいるようだ。男は執拗に彼を追い回し、遂には精神病院に監禁して秘密を暴こうとする。この暴走は当然問題となり、男は停職。しかし、それでも追及の手を緩めない。

★ 大沢在昌さんの「新宿鮫」や柚月裕子さんの「孤狼の血」を思い起こす。停職中とはいえ、あるところから手に入れた銃。その記述から「ダーティー・ハリー」が浮かんできた。

★ 曽根崎警察や梅田など大阪の地名も飛び出すが、登場人物のセリフがどれも標準語。広島弁が凄味を見せる「孤狼の血」のように、大阪弁で描けば、また違った味わいになったかもしれない。

★ 細かさと荒さが混在した作品だが、面白く読めた。久遠さんの作品はその後見当たらないが、どうされているのかな。

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本多孝好「眠りの海」

2021-04-29 16:36:54 | Weblog
★ 男は目を開けた。最初に見たものは焚火の炎だった。どうやら男は死にきれなかったらしい。次に男は少年の声を聞く。少年だが妙に大人びた瞳をしている。少年は砕けた関西弁で男に語りかける。

★ 本多孝好さんの「眠りの海」(「小説推理新人賞受賞作アンソロジー Ⅰ」双葉文庫所収)を読んだ。第16回(1994年)受賞作。

★ 男は元高校教師だった。熱血とは程遠い。ただ知識を再生するだけの教師。生徒から「オートリバース(永遠と再生を繰り返すだけ)」とあだ名されるようになったが、自分自身でも妙に納得していた。

★ 生徒とも深く関わろうとはしなかった。ところが、ある女子生徒と親しくなってしまうのだ。そして・・・。

★ 単純な恋愛小説でもなければ、犯人当てやトリックを楽しむだけのミステリーでもない。人が人を愛するということはどういうことなのか。難しく考えれば、実存主義にも通じるかな(ちょっと大げさか)。ところで、不思議な少年の正体は。

★ あっさり読めばファンタジックでちょっぴりコミカルな物語。しかし深く読めば、どこまでも深そうな作品だった。


★ ところで、オリンピック。前首相は完全な形でなどと言っていたが、それは全く不可能な状況だ。無観客でも実施できるか怪しい。5者協議だったかな、その記者会見を聞いていたが橋本会長には荷が重すぎるようだ。大会本部、政府、そして東京都の責任のなすり合いの中で身動きが取れないのでは。開会式とかやるのかな。行進はバーチャルか。イベントは事前録画か。ボランティアや医療スタッフも人材難の様子。それでも断行するのかな。
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村雨貞郎「砂上の記録」

2021-04-28 19:25:40 | Weblog
★ ミュージシャンの和泉宏隆さんが亡くなったという。和泉さんと言えば。T-SQUARE時代の「TWILIGHT IN UPPER WEST」や「FORGOTTEN SAGA」が印象に残っている。私はエレクトーンで演奏したことがある。いい曲だ。1958年生まれって、私と同い年か、還暦は越えたとはいえ、まだ若いのになぁ。

★ さて、今日は村雨貞郎さんの「砂上の記録」(「小説推理新人賞受賞作アンソロジー Ⅰ」双葉文庫所収)を読んだ。

★ こじんまりとしたバー。マスターは元記者だが、ある事故がもとでこの商売を始めたようだ。ある夜、閉店間際に一人の女性がやってくる。阪神がどうの、ピッチャーがどうのというが、マスターは野球にあまり興味がない。女性はなおも語り続ける。プロ3年目にして20勝投手になった天才と呼ばれるピッチャーが八百長をしているというのだ。

★ 彼女がもっている資料によると、確かに甲子園での戦績が異様に悪い。兵庫県出身ながら、惜しくも甲子園を逃し、ドラフトで阪神から指名されながらもそれを拒否し、翌年プロ入りと言う経歴。マスターは後輩記者にその女性の話をするが、彼はジンクスではないのかと言う。マスターはかつての記者気質のせいか、詳しく調べると、そこにある発見があった。

★ 後半はどうも強引だけれど(ミステリー小説だからこう持っていかざるを得ないが)、それはさておき、バーの雰囲気が良かった。
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浅黄斑「雨中の客」

2021-04-27 17:43:03 | Weblog
★ 「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」が小学生の話題になっているとかで、原作第1話を読み、アニメ第1話を観た。

★ 第1話は水泳が苦手な小学5年生の女の子の話。幸運な人だけが見つけられる「駄菓子屋 銭天堂」。女の子は人魚の型抜きグミを売ってもらう。そしてそれを食べたら、まるで人魚のように水泳が得意になった、とそこまでは良かったのだが・・・。

★ 原作は廣嶋玲子さん。偕成社から小説が現在まで15巻出ているという。アニメは紙芝居のようなレトロ感がある。大人が見てもなんか懐かしい。配色が美しい。物語は、小学生版「笑ぅせぇるすまん」と言う感じかな。

★ さて、本題に入りまして、浅黄斑さんの「雨中の客」(「小説推理新人賞アンソロジー Ⅰ」双葉文庫所収)を読んだ。第14回(1992年)受賞作。

★ 主人公はちょっと名の通った小説家。古書の蒐集を趣味としていた。彼はある講演会に招かれ、丁重なもてなしを受ける。スポンサーはまだ若いが成功した実業家だという。後日、その男が主人公の家を訪れる。雨の中、高価な日本酒と豪華な重箱を下げて。主人公の作家にとってそこまではありがたかったのだが、どうも来訪も用件がわからない。ちょっと立ち寄ったにしては手が凝っている。

★ しばらくの歓談の後、古書が話題となる。主人公にとって同好の人との語らいは嫌いではないが、同好と言うわけでもないらしい。主人公の秘蔵本に話が及ぶと、急に雲行きが変わってきた。どうやらその本には曰くがあるらしい。

★ 本好きの読者は作品に引き入れられる。「或る『小倉日記』伝」や「理外の理」のような松本清張作品と雰囲気が似ている気がした。
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中島たい子「漢方小説」

2021-04-25 15:29:18 | Weblog
★ 第3回緊急事態宣言初日。スーパーは意外と空いていた。マクドナルドがイートインを止めたので、ドライブスルーを待つ車が車道にあふれていた。それが原因で、交差点はひどい交通渋滞。

★ 中島たい子さんの「漢方小説」(集英社)を読んだ。第28回(2004年)すばる文学賞受賞作。

★ 映画の脚本などを書いている主人公。冒頭で七転八倒の状態で救急車を待っている。胃のあたりのドキドキが原因で、全身の震えが止まらない。さぞや重病かと検査を重ねるものの、結局原因は不明。4人の医師の診断を受けたが、最後はみんな暗に心療内科の受診を勧めるだけ。そしてたどり着いたのが幼いころから見てもらっていた医院。ここの医師は漢方医だ。

★ 疑心暗鬼で受診するも、病名ははっきりせず、ただ、「水がどうの」「火がどうの」と訳が分からない説明だけ。ともかくもらった薬を飲んでいると、どうも効き目があったようで、発作的な症状は治まってきた。

★ 病は気からと言うが、主人公にはちょっとばかり心当たりがあった。元カレの結婚のニュースがそれだ。無意識とは言え、心に秘め、強がったことが体の変調を引き起こしたのか。

★ 「漢方小説」というタイトル通り、この作品を読むと漢方の概略を知ることができる。そしてその面白さ、不思議さにはまる。西洋医学は病を治すが、東洋医学は対処療法と同時に、病の根本を治す。治すと言っても、それは時々刻々変化しその中で不調となった体のリズム(気の流れ)を整えること。そう言えば、病気と言い、元気と言い、東洋医学の思想は日常語として生きている。

★ 「私の人生を駄作に終わらせたくない」。結局はこの気づきが再生へのきっかけになったようだ。
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栗田有起「ハミザベス」

2021-04-25 01:06:04 | Weblog
★ 緊急事態宣言前日。少々多めに保存食を買い込んで、17日間の籠城戦が始まる。といって、どうやらバッハ会長の来日ありきの日程、2週間余りで感染爆発が収束するとも思えないが。

★ 栗田有起さんの「ハミザベス」(集英社文庫)から表題作を読んだ。第26回(2002年)すばる文学賞受賞作。

★ 中村文則さんや村上龍さん、更には大江健三郎さんの作品のように読んでも読んでもなかなかページが進まない作品もあれば、この作品のようにサッと読み切れるものもある。とにかく短い会話文が多いから、読むのは楽だ。

★ 同時に読んでいる群ようこさんの「パンとスープとネコ日和」(角川春樹事務所)と母娘のシチュエーションが似ているので、少々混乱しながら、こちらの方が先に読み終えた。

★ 死んだと思っていた父親(1歳の時、母と別れていた)が実は生きていて、ところが本当に死んだらしくて、母娘に遺産を残したと連絡があった。20歳の娘には超豪華な高層マンションの部屋と1匹のハムスターを遺したくれた。

★ 名前のなかったハムスター。娘は「ハミザベス」と名付けた。

★ 更年期に苦しむ母と娘の微妙な距離感が描かれていたが、どうも娘の出生には秘密があるようだ。そんな日常が淡々と短い会話で綴られていく。川上未映子さんの「乳と卵」にも通じるものがあるのかな。
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室積光「史上最強の内閣」

2021-04-24 01:45:29 | Weblog
★ 表の内閣は、「地盤、看板、鞄」を譲り受けた二世、三世の世襲議員ばかり。お坊ちゃま達は、国家の危機に直面しても右往左往で物事を決めることができない。与党に限らず、野党も似たようなものだというから悲劇的だ。でも、心配はご無用。日本には京都の御所で密かに出番を待つ裏の内閣(シャドウ・キャビネット)、「史上最強の内閣」が控えているのだ。

★ 室積光さんの「史上最強の内閣」(小学館文庫)を読んだ。こういうのは風刺小説と言うのだろうか、現実の政治をパロディ化し、面白く読ませてくれる。

★ 浅尾内閣は危機に直面していた。経済の行き詰まり、与党内の分裂、それに「北」は核兵器で脅してくる。まさに内憂外患。浅尾総理は鷹山釘男代表、大沢一郎幹事長率いる野党に政権を渡すくらいならと、遂に伝家の宝刀を抜いた。国民の前に、現政権は二軍であり、短期間の間、「史上最強の内閣」に政権を委ねると発表したのだ。

★ 藤原北家の流れをくむ二条友麿総理をはじめ、総務大臣には高杉松五郎、外務大臣には坂本万次郎、防衛大臣には山本軍治、国家公安委員長には西郷利明などどこかで聞いたことのあるような錚々たる面々が紹介された。

★ 二条総理の京ことば、新門辰郎文科大臣のべらんめぇー調、長州に薩摩に土佐の方言が飛び交い、広島出身の山本防衛大臣は「仁義なき戦い」の菅原文太さんのようだ。

★ 「北」はいよいよミサイルを発射すると、名物のおばさんアナウンサーの名調子。そんな折、「北」の将軍の御曹司が不法入国で拘束される。政権は「北」との交渉に彼を利用しようとするが、どこでどうなったのか、御曹司のキャラが受け、テレビなどで引っ張りだこに。長寿番組「鉄子の居間」にも出演する。

★ さて、クリキントン、プッシュ、オハマと歴代のアメリカ大統領ともつながりのある「史上最強の内閣」は日本の危機を解決できるのか。

★ ドラマならば、「この物語はフィクションであり、登場人物等はすべて架空のものです」とテロップが流れそうだ。浅尾総理と言うのは麻生総理で、野党・民権等の鷹山代表は鳩山代表、大沢幹事長は小沢幹事長、何かと言えば憲法9条を持ち出す社倫党の宮城美津穂は、あの人だ。

★ 風刺の中には真実がある。三度も伝家の宝刀を抜いた現政権(抜けば抜くほどに価値が下がる)。「史上最強の内閣」ならどんな手を打つだろうね。

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映画「ミッドナイト・スカイ」

2021-04-22 09:43:12 | Weblog
★ 朝令暮改が常となりつつある昨今、3度目の緊急事態宣言で私たちの生活の何が変わるのか、政府も自治体も早く方針を示してほしいものだ。政府と自治体(とりわけ大阪)は休業要請の線引きでもめているようだ。結局は補償、お金の問題だね。

★ 結果的に見れば、ギュッと締めて、徐々に緩和していくのがリバウンドも少なくて効果的だと思うのだが。細菌による感染症では抗生剤(抗生物質)が用いられるが、一番良くないのは中途半端に使うこと。耐性菌ができやすくなるし、ぶり返すと前よりも悪化する。(Go Toキャンペーンやまん延防止等重点措置など、政府の打つ手打つ手がことごとく裏目に出ているような気がするなぁ)

★ 蛇足ながら、先日広告に出ていた「大阪マスク」、高いなぁ。知事の顔が使われていたが、あれって公職選挙法に触れないんだよね。うちわ配って大臣辞めた人もいたけれど。それに大阪市長、市立学校を休校にするのかしないのかどっちなんだろうね。給食だけに登校するなんて超愚案が新聞に載っていたけれど、本当かなぁ。給食が一番感染リスクが高いように思うのだが。どこもかしこも迷走気味だ。庶民はそれに振り回されっぱなし。

★ 余談はさておき、映画「ミッドナイト・スカイ」(2020年)を観た。何らかの原因で地球に人類が住めない状況に陥った。北極の測候所に独りの科学者を残して。一方、第二の地球を求めて、木星の衛星探査から一機の宇宙船が地球に帰還しようとしていた。

★ 映画はこの2つの舞台が交互に進む。さまざまな困難を乗り越え、地球の科学者と宇宙船は交信を始めるのだが、宇宙船のクルーが耳にしたのは地球の悲劇的な状況だった。再び木星の衛星に戻り、あらたな創世記を始めるのか、それとも地球に帰還し瀕死の地球と運命を共にするのか。

★ 「ゼロ・グラビティ」(2013年)の発展編とも言えようか、無重力の描き方がリアルだ。老いた科学者を演じたのは監督も務めるジョージ・クルーニー。吹き替え版では小山力也さんが担当され、「ER」のダグ・ロス先生を思い出す。

★ 「アイリス」という少女が意味不明だったが、その秘密は終盤で描かれている。地球がなぜ壊滅状態になったのか、詳しくは描かれていない。大気が汚染されたというが、その原因は何だろう。放射能っぽいけれど。



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香納諒一「ハミングは二番まで」

2021-04-21 10:22:34 | Weblog
★ 高校は時差通学が始まった。コロナ変異株は若年層にも広がりつつある。何もしないよりはマシだ。

★ 宇治の縣(あがた)祭りは今年も中止。数々の行事が中止になる中で、東京オリンピックの計画だけは進んでいる。昨日の「天声人語」で「コンコルドの誤り」が紹介されていた。採算が取れないことがわかっても、「もはや後には引けない」と事業は継続。結局、商業的に失敗に終わったという。小学生の頃だったか道徳の時間に「やめる勇気」を学んだ(確か南極点到達競争だったかな)が、現実は難しそうだ。

★ さて、今日は香納諒一さんの「ハミングは二番まで」(「小説推理新人賞受賞作アンソロジーⅠ」双葉文庫所収)を読んだ。第13回(1991年)小説推理新人賞受賞作だという。

★ 主人公の1人称で物語が進む。ハードボイルドタッチで描かれている。中学生時代からの3人の友人。いわゆる不良少年たちで、高校もそろって退学になった。その後はそれぞれ別々の道に進むのだが、3人には自分たちだけの秘密があった。表にできないカネを横取りするだけだったのに、人が死ぬ羽目に。

★ それから20年。1人はアメリカに渡り音信不通。1人は工場経営に行き詰まり、どうやら病で余命わずかなようだ。主人公の男はと言えば、風俗関係の仕事で成功をおさめ、妻には先立たれたものの娘と二人で暮らしている。外には愛人もいるようだ。

★ ところが因果応報と言おうか、彼の歯車が狂い出す。

★ 強気で強引に事業を成功に導いてきたが、結局は独りよがり。「あなたは、自分のことしか見えない人」(45頁)と愛人も去っていった。

★ 男には感情移入できなかったが、この手の男は多いように思う。生きることに不器用だったのかも知れない。
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ドラマ「BLOODY MONDAY」

2021-04-19 16:29:04 | Weblog
★ ドラマ「BLODDY MONDAY」(2008年)を10年ぶりに観ている。

★ 狂信的なテロ集団とその大量殺戮を阻止しようとする治安組織。高校生の天才ハッカー「ファルコン」が活躍する。治安組織の中にもスパイがいるのか、この緊張感はドラマ「24」のようだ。電話の呼び出し音まで似てたりして。

★ あえて「24JAPAN」じゃなくても、日本でもよいドラマがつくれるね。今にして思えば豪華な布陣だ。「ファルコン」役に三浦春馬さん。その父親役は田中哲司さん。警察庁の秘密組織「THIRD-i」では、松重豊さんや芦名星さんの顔が見える。テロ集団の方では、吉瀬美智子さんのお色たっぷりの演技。成宮寛貴さんの姿も。

★ 龍門諒さん、恵広史さんの原作も面白かった。コミックの方がより過激だったように思う。

★ さて、コロナ変異株の猛威、大阪、東京への緊急事態宣言が発出の方向だ。大阪が対象地域になれば兵庫や京都にも適用されるだろう。前回のような「ぬるい」緊急事態宣言にはもはや慣れちゃって、効果があまり見られず、「まん延防止等重点措置」に至っては変異株の前にほとんど無力だともいえる。(昨日の昼頃、マクドナルドの前は大混乱だった。)

★ 今回は、ロックダウンに準じたかなり強硬な措置がとられるのではなかろうか。ゴールデンウィークを含めて、もしかすると学校の休校措置があるかも。塾としても準備をしておかないと。昨年のマニュアルを引き出して、準備だけはしておこう。

★ こんな生活、いつまで続くんだろうか。ウイルスが突然変異して、もし強毒化すれば、「BLOODY MONDAY」どころの騒ぎでは収まらないね。インドの現状を見ると危機感を感じる。
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