塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

東日本大震災:観光業と風評

2011年05月09日 | 東日本大震災
  
 先月までは東京でも1日に必ず1回は余震があったのですが、だいぶ落ち着いてきたように思います。震災後1か月半というなかのGWでしたが、東北では当然観光客数が減りましたが、西日本では逆に客足が伸びたところもかなりあったようです。

 被災地域周辺の観光業や旅館業に関して、直接の被害が少ないことをアピールして観光客を呼び込もうと必死なようすが、日々メディアなどを通じて伝えられてきました。こうした方々は、津波や原発の被害がない地域であるにもかかわらず客数が減っていることについて、口々に「風評被害」という言葉を使っています。しかし、本当に「風評被害」なのか、少し立ち止まって考えてみる必要があるように思います。

 風評被害とは、本来は噂や風聞に煽られて問題がない部分にまで被害が及ぶことを指します。つまり、実際には安全なのに安全でないように思われてしまう状態です。では、被災地周辺の観光地は本当に安全といえるのでしょうか。

 今でこそ大分おさまったとはいえ、先月は震災から1か月ほど続くといわれた余震期間のほとんど最後の日に震度6の大きな余震が起こりました。それから今日まで断続的に余震は続いています。福島第一原発も、この先どうなるのかさっぱり分からない状況です。そのような中で、被災地周辺の観光地は「単なる風評被害だから、大丈夫だから来てけさいん」と、そんなに胸を張って言っていいものなのでしょうか。

 東北各地の観光客が減少しているのも、風評というよりは行った先でうっかり被災してはかなわないというリアルな心配に基づくものだと思います。自然のことですから、いつ何が起きるか分かりません。それを「風評だから、大丈夫だから」といわれても、根拠がありませんし、下手をすれば東電の「大丈夫」と同じに聞こえてしまいます。そもそも、旅館業の立場に立って、多くのお客の命を預かっているところに再び大地震が起こったらどう責任を取るつもりなのでしょうか。観光業・旅館業の方々には申し訳ないですが、送った農産物が向こうの人に食べてもらえないというのと、向こうの人がこちらに来てくれないというのは、事の重みが違うように思います。

 そこで、観光業・旅館業の方々には事態に則して頭をひねっていただく必要があるでしょう。私見ですが、被災地周辺の旅館はしばらくボランティアや派遣された人たち向けに限定して営業してはいかがでしょうか。GW中は、休みを利用してボランティアに来たいという人に対して受け入れ体制が間に合わず、受付を中止した自治体も少なからずありました。直接の被害を受けていない諸旅館がこうしたボランティアを積極的に受け入れ、普段よりサービス低め、値段も安めに設定すれば、さらに多くの人々に支援の場を提供できることになります。待ってても呼び込んでも観光客は伸び悩むわけですから、旅館業にとっても悪い話ではないはずです。

 実際に、一部の旅館で同様の試みは始まっているようで、旅館のマイクロバスでの送迎も行われていると聞きます。風評被害だなんだとただ待っているのではなく、旅館業の方でも復興に向けて活動に乗り出すべきではないのかな、と思っています。