今年の冬はいつになく寒いと思ったら、あっという間に桜散る暑さ。どこに花見に行こうかと悩む暇もありませんでした。
そこで今季は比較的近場にしようと考えた結果、埼玉県北本市の「石戸蒲ザクラ(いしどかばざくら)」を訪ねることにしました。日本に数ある桜の名所のなかでは残念ながらあまり知られていないかもしれませんが、この石戸蒲ザクラは日本五大桜の1つなのです。
と、偉そうに言いつつ、五大桜の1つというのは、実は行ってみて初めて知りました。私が今年の花見にここを選んだのは、1つはこの桜が自然交配による「石戸蒲ザクラ」という固有種で、自生しているものはこの1本のみというところにあります。具体的にはエドヒガンザクラとヤマザクラの交配種で樹齢はおよそ800年、国の天然記念物に指定されています。
私自身は桜にさほど詳しいわけでもないので、実際に桜の花を見たからといって「うむ。これは他にない独自の桜だ。」などとは分かりません。が、小ぶりながらツンとした形の、白に近い淡い花びらが印象的な桜でした。
もう1つの理由は交通の便です。石戸蒲ザクラは、圏央道桶川北本ICから5分と走らずに到着する東光寺の境内にあります。麓には無料の大型駐車場も完備されていて、よほど下手な時間でなければ並んだり待ったりということはありません。
駐車場にも桜並木
さらに圏央道というところがミソで、東名や関越、東北、中央自動車道など外行きの高速道路は、ただでさえ週末は渋滞必至。ところが圏央道はなぜか渋滞にまで至ることがほとんどありません。私は下道を少し長めに走れば圏央道にダイレクトに乗れるところに住んでいるので、このおかげで車の混雑や駐車場待ちに遭うことなく、快適に素晴らしい桜を拝むことができたわけです。
さて、石戸蒲ザクラの少し先には城ヶ谷堤という江戸時代に造られた堤防があり、その上もまた桜の名所として知られています。さらに両者の間には埼玉県自然学習センターという無料の自然公園があり、谷戸の湿原の爽やかな木立のなかを散策できます。
城ヶ谷堤の桜
自然学習センターの散策路
都心からもアクセス抜群のうえに、固有種で天然記念物で五大桜とさまざまなタイトルを保有していながら、知名度は意外と高いとはいえない石戸蒲ザクラ。ソメイヨシノの千本桜に囲まれての宴も良いですが、たまには貴重な一本桜を愛でる花見もいかがでしょうか。