塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

ロスキレ : コペンハーゲン近郊の穏やかな街

2019年02月28日 | 旅行

コペンハーゲンの西に、ロスキレ(Roskilde)という人口5万人ほどの静かな街があります。鉄道で30分足らずですから、都心から郊外の自宅に帰るというくらいの距離でしょうか。



ロスキレ駅。とくに何の変哲もありません。


ここはコペンハーゲンよりも歴史が古く、ヴァイキングの港町だったといわれています。地図を見ると、コペンハーゲンのあるシェラン島に細く深く入り込んでいるフィヨルドの最奥部に位置していて、ヴァイキング船などの中小型船にとって天然の良港だったのでしょう。現在はヨットハーバーはあるものの、商業船などは入ってこれないようです。ロスキレの旧市街は、この旧港から緩やかな坂を登った丘の上にあります。


ロスキレとコペンハーゲンの位置関係


駅が旧市街に隣接しているのも観光の利点で、中心のステンダー広場までは歩いて10分とかかりません。


中央広場にあたるステンダー広場
まだ朝なので人影はまばら


この写真の右手奥に見えるのが、ロスキレ最大の観光スポットにして世界遺産の大聖堂です。コペンハーゲンが発展するまではロスキレにも王宮があり、ロスキレ大聖堂は今日まで続くシェラン島唯一の大聖堂だそうです。






もう1つの観光の目玉が、波止場にあるヴァイキング博物館。ロスキレの湾からはヴァイキング船が5隻見つかっているそうで、こちらに展示されているそうです。建物の前にはレプリカと思われる船が浮かべられています。






と、紹介したはいいものの、実はどちらも中には入っていません…。というのも、入館料が日本円にすると3000円近くにもなります!デンマーク(というか北欧)はとにかく物価が高い!><それでいてスーパーでビールを買うと1本100円台とかなので、高いのはやはり税金ということなのでしょうか。たとえ世界遺産とはいえ、たとえ次また来る機会があるか分からないとはいえ、さすがに3000円は費用対効果に見合わないと断念した次第です。


博物館前の公園は爽やかなれど…。


このままでは良き観光客とはいいがたいので、ひとまず中央広場の観光案内所を訪ね、ほかに見るところはないかと尋ねてみることに。このときまだお昼も回っていなかったのですが、もう博物館も大聖堂も行ったのかと驚かれてしまいました。スミマセン…行きましたが、入ってはいないのです; ;

…とは言えず、いろいろ聞いてみた結果、旧市街のメインストリートを西に抜けて「工芸博物館(Håndværksmuseet)」というところへ行ってみることにしました。ところが今度は場所が分からず苦労することに。地図にある場所を歩いてみてもそれらしいものが見つかりませんし、何よりデンマーク語が読めません。裏路地のような小道にまで踏み入ってみたら、小学校の勝手口のようなところに出てしまいました。

ここで誰かに見つかったら怪しい人だよなぁ…と思っていたら、本当に地元の人とバッタリ!当然ながら「こんなところにアジア人!?」という感じの表情をされていたので、地図を示して説明したところ、「それならついておいで!」と手招きしてくれました。この出会いがなかったら、さしもの私でも辿りつけなかったかもしれません。

その人はまた別の敷地の勝手口のような扉を開けて中庭に通すと、その脇の建物を指して、それだと言って去っていきました。その建物も博物館らしくは見えず、表通り側の出入口もガレージのようで、分からないのも無理はないなと思いました。



こちらが工芸博物館


ちょっと入るのに躊躇しましたが、ここまで来たら行かないわけにはいきません。いざ入ってみると、誰かが常駐しているわけではなく、見学したい人はボタンで呼ぶシステムになっていました。まもなく年配の女性が現れて、ハイハイハイと展示室の電気を付けてくれます(笑)。で、見終わったらまた呼んでくれと戻ってしまいました。

こんな経緯なので内容についてはあまり期待していなかったのですが、どっこいこれが私にはなかなか面白いものでした。主に木工に関する資料で、いろんな種類の鋸やノミのような道具が並べられています。




一見すると無造作かつ乱雑なのですが、よく見てみると、



木靴の製作工程が見られたり、



北欧にもカンナってあるんだ!


とか、新鮮な感慨がありました。で、見終わった後にちゃんと部屋の電気を落としておばさんを呼びます。せっかくなので、自分が日本人で日本は木の文化なのでとても興味深かった旨を伝えてみたのですが、残念ながらおばさん自身が逆にあまり関心がないような反応でした^^;

ということで、これで一応ロスキレを観光した(?)と、いったん中央広場に戻ります。人が増えた昼下がりの広場でビール休憩して、ぶらぶらと駅へ向かいました。





コペンハーゲンのドミトリーで3泊した私は、ヴァイキング博物館の入館料とほぼ同じ値段のLCC航空券でイギリスへ。ということで、次回はイギリスからライという街を取り上げたいと思います。
  


旅行記:ヘルシンボリとヘルシンゲル

2019年02月17日 | 旅行
 
スウェーデンとデンマークの間のエーレ海峡の北端、海峡の幅が最も狭くなる地点に、ヘルシンボリとヘルシンゲルという両国の都市が向かい合っています。両都市は4kmしか離れておらず、橋こそ架かっていないものの、フェリーが15分おきに出ているほど往来がさかんです。

スウェーデン側のヘルシンボリで一番の観光スポットは、市街中心部背後の丘に建つシェールナンという城跡です。今は方形の主塔だけが残っていますが、てっぺんからの眺めは絶佳です。お城ですので、詳しい説明はこちらをご参照ください^^


シェールナン


塔の上からの眺め


同じく。海の向こうはデンマークです。


ほかには、ヘルシンボリで最も古い建物の1つとされる「ヤコブ・ハンセンの家」や、19世紀後半の築という市庁舎、完成まで数百年かかったという聖マリア教会あたりが観光の見どころです。


ヤコブ・ハンセンの家


市庁舎


聖マリア教会


小生はヘルシンボリの市街南部のドミトリーに1泊したのですが、周辺はどうやら中東系の移民が多いエリアのようでした。近くのスーパーへビールを買いに行ったら、アルコール類が見当たらず、ノンアルの麦芽飲料しかありません。店員に聞いたらオーナーがイスラムの人で、置いていけないというわけではないけど、置いても売れないからということでした。

次の日は対岸のヘルシンゲルに渡りました。こちらの観光名所は、なんといっても『ハムレット』の舞台とされるクロンボー城。前出のシェールナンからも海の向こうに望むことができます。

フェリーターミナルは駅に直結していてとっても便利。船は4隻あって、それぞれ北欧っぽい名前が脈絡なく付けられている感じでしたが、せっかくなので「ハムレット号」を選んで乗ることにしました(笑)





乗船時間はわずか20~30分です。このときは運悪く中国人の団体と一緒になってしまい、デッキが非常に騒々しいことになってしまいました。ところが不思議なことに、彼らはひとしきり写真を撮りまくると、クロンボー城が目の前に近づいているというのに船内に引っ込んでしまいました。どうやら彼らにとっては、海外で写真を撮るという行為そのものが大事なようです。


フェリーから眺めるクロンボー城


クロンボー城についても、お城なので詳細はこちらで。。ハムレットの舞台ということで、国を問わずたくさんの観光客がいました。なかには日本人のツアーもいたのですが、ガイドが門の真ん中を塞いで解説を始めて邪魔なことこの上なく、こちらが恥ずかしく感じてしまいました。


クロンボー城の中庭


夏場の観光シーズンには、城の中庭でハムレットの名シーンの寸劇が行われています。


待機中の役者のみなさま


ヘルシンゲルの面白いところは、城下の町中にやたらと酒類の小売店が多いことです。これは、デンマークの酒税が北欧諸国のなかでダントツで低いことから、スウェーデンの人が車でフェリーに乗り、アルコールをまとめて購入していくのだそうです。




ヘルシンゲルにはこんな感じの酒屋がいっぱい


ヘルシンゲルはクロンボー城のほかに取り立てて観光名所はなく、何か博物館を建設していましたが、日本人が訪ねて楽しいかは怪しいところです。ちなみに、城へ向かう途中で桟橋の先端付近に折れると、人魚姫ならぬ謎の人魚男の像があります。その銀色に輝く裸の青年は、グーグルマップで見ると人魚姫のブラザーと書かれていますが、いったい何者なのかは不明です^^;道から少し逸れるので気が付きにくいかもしれませんが、せっかくですからクロンボー城を訪れることがあれば、ぜひ立ち寄ってみてください。


その表情は恍惚か憂悶か。


この後はコペンハーゲンに向かったのですが、大都市なのでここで取り上げるまでもないかなと思います。次回は、コペンハーゲンの西のロスキレという街をご紹介します。
 



ランツクルーナ:要塞跡の2つあるスウェーデンの小さな都市

2019年02月07日 | 旅行
朝にマルメーの旧市街をもう一回りした後、中央駅から鉄道に乗りました。発券を担当した人が、ヒジャブをかぶったイスラム教の女性だったのが印象に残っています。

そして向かったのが、マルメーから海沿いに北上したランツクルーナという大きくも小さくもない街です。なぜここに立ち寄ろうと思ったかというと、Googleマップで付近を見ていたところ、市街に地図上でもそれとわかる要塞跡が2つあるのが目にとまったから。そんなどうしようもない私の趣味については、こちらのページに譲ることにします^^;


地図上でもはっきりくっきり!

日本語では「ランズクルーナ」という表記も見かけますが、私が現地で耳にした限りでは「ランツクルーナ」と聞こえました。とはいえスウェーデン語は分からないので、間違っていたらすみませんm(_ _)m マルメーからランツクルーナ駅までは快速列車で40分ほど。市街中心部へはそこからバスに乗ります。


市庁舎と中央広場


ランツクルーナ要塞


要塞を眺めながら地元のビール!

このとおり、要塞も良く残っていて街並みもきれいなのですが、ランツクルーナはどうも観光業にはあまり関心があるようには感じられませんでした。たとえば市庁舎の隣に町の歴史博物館兼観光案内所があるのですが、オープンがなんとお昼の12時というおおらかさ!荷物を預けたかったのですが、ロッカーなども見当たらず、仕方なくバックパックを背負ったまましばらく観光することにしました。

要塞の脇に砂浜が伸びていたので、堤防の上をあてどなく歩いていると、浜辺から私を呼び止めるおじさんがいました。因縁でも付けられるのではないかと身構えていたのですが、おじさんが言うには今から丸太を海に投げて、それを飼い犬が泳いでくわえて自分のところに戻ってくるので、その様子をスマホで動画に撮ってほしいというのです。むしろ見知らぬ旅のアジア人にスマホを渡して大丈夫なの?と心配になりましたが、せっかく信用いただいたことだしと、引き受けることにしました。

ところがこの即席カメラマンは腕が悪かったらしく、都合2回も撮り直すことになり、おじさんもワンちゃんもずぶ濡れになってしまいました。最後にはOKをいただけたので、まぁ良しとします^^;


ランツクルーナのビーチ

で、ようやく開いた案内所で観光パンフをもらったのですが、やはり要塞と市庁舎を除けば目玉スポットはもうないようでした。とはいえパンフにはおすすめ観光コースが記載されていたので、ひとまずそれに従って歩いてみることに。道中には、



こ~~んなカッコイイ給水塔や、



こ~~んな素敵な波止場&レトロな建物がありますよ!(注:いずれもパンフに載っている見どころです)

で、そのコース上に1つ気になるスポットが。その名も「ジャパニーズ・ハウス」。市庁舎のすぐ近くの路地にあるというので行ってみたのですが、どうにもそれらしき和チックな建物は見当たりません。困ったことにパンフには写真も掲載されていません。

市庁舎に近いということは、案内所にも近いので一旦戻って聞いてみると…、



お分かりになりますでしょうか?この中にあります。まさか!と思った人はおそらく正解です(笑)

そう、この白い四角い建物がジャパニーズ・ハウスだそうです。要は、日本人の建築家に依頼して建てた個人事務所なのだそうです。再び案内所に戻って話をすると、「えっ?日本人はああいう家に住んでるんじゃないの?」と素で言われました。残念なことに、スウェーデンのこの小さな都市には確実に日本に対する誤ったイメージが根付いています^^;

さて、そんなこんなで要塞を2つ堪能した上にいろいろと面白いことに出会った私は、ランツクルーナの街を後にして、この日の宿泊地のヘルシンボリに向かいました。次回は、ヘルシンボリとその対岸のヘルシンゲルに進みたいと思います。



旅行記:コペンハーゲン空港からスウェーデンのマルメーへ

2019年02月01日 | 旅行

突然ですが、今回からしばらく1年半前の欧州旅行の記録を載せていこうかなと思います。ずっと書こうか書くまいか逡巡してこんなに経ってしまったのですが、みんなが知ってる大都市ならともかく、マイナーなところの話ならまだ需要があるだろうと思い立った次第です。

時は2017年夏。成田からSAS(スカンジナビア航空)の直行便で、まずはデンマークのコペンハーゲン空港に降り立ちました。SASはデンマークとスウェーデン、そしてノルウェーがそれぞれ出資して共同運営しているのですが、私は個人的にこの航空会社が気に入っています。

というのも、SASは3国のフラッグキャリア(日本でいうところのJALとANA)でありながら、いわゆるLCC(格安航空会社)と変わらないくらいの低価格でヨーロッパへ直行できるのです。今のところ日本との間には成田-コペンハーゲン便しか就航していないので、その周辺に用がない限りは結局乗り継ぎが必要になりますが、やはりEU圏へ直行できるのは大きな利点だと思います。またフラッグキャリアなので、サービスも充実しています。お酒も飲めるし、映画もガンガン観られます。


コペンハーゲン空港には人魚姫もいます(笑)

で、空港を出てさっそくコペンハーゲン…ではなく、反対方面への鉄道に乗り込みます。コペンハーゲンはデンマークの東端にあり、エーレ海峡を越えるとそこはもうスウェーデンです。海峡にはエーレスンド・リンクという橋が架かっていて、快速列車なら10分ほどで渡り切ってしまいます。瀬戸大橋と同じく車道の下を鉄道が走るので、橋に入るとあまり景色は見られません。ですが、途中の人工島の区間では海がはっきり見えます。


高速なので写真はキレイに撮れませんが…。

海峡を越えた先は、スウェーデンのマルメーという都市です。デンマークとスウェーデンはシェンゲン協定に加盟しているので、越境に検問はありません。ただ、マルメーに入って最初の駅で警察官の簡単な巡検がありました。とりあえずパスポートを見せて旅行客であることを告げれば大丈夫なはずです。

マルメーはスウェーデン第3の人口を擁する都市で、中心部には濠で囲まれた旧市街と要塞があります。ただ、経済と産業の中心として発展しているためか観光には今ひとつ力を入れている様子がうかがえず、とくに旧市街の雰囲気にはもう少し気を遣ってもいいんじゃないかなぁと感じました。要塞については私の趣味のページを参照いただくとして、以下旧市街の写真を掲載します。


旧市街中心の大広場。かなり逆光ですが^^;


同じく大広場。中央左の側面が見えている建物は、1571年創業の老舗薬局だそうです。


こちらは小広場。飲食店はこっちの方が多いようです。


旧市街を囲む濠


旧市街西部には、比較的古そうな家々が並んでいます。


お濠めぐりの船もありました。なんか、船というより船外機を付けた桟敷みたいな外見が気になりますが^^;

さて、この日は市内のドミトリーに泊まりました。雑魚寝の木賃宿ですから、もちろん食事は付きません。朝食は駅で何か買えばいいかと翌朝旧市街を散歩していると、大広場にテーブルを広げたワンボックスカーの姿がありました。行ってみると、なんと無料で朝食を振る舞っているというのです。



パンとチーズとキュウリにトマト、それに牛乳とヨーグルト。これにハムやソーセージがあれば、朝食付きのホテルのメニューと変わりません。なんでまたと聞いてみると、要は乳製品会社の販促ということでした。確かに牛乳とチーズとヨーグルトですから、無料朝食は宣伝にはもってこいかもしれません。


盛り付けるとこんな感じ。牛乳がないのは、なんと小パックまるまる1本もらえたので、旅のお供に持って帰ったからです。


地元の人たちとも思わぬ交流ができました。


「Arla(アルラ?)」という企業のようです。スウェーデンにお越しの際はぜひご贔屓に!(笑)

ちなみに、前日にスーパーへビールとおかずを買いにいったときに、牛乳売り場がやたら大きいのに驚いてたまたま写真に撮っていました。



これ全部ミルク製品です。スウェーデンが酪農大国なのかは存じませんが、そうだったとしても、さもありなんという感じですね。

次回はマルメーから少し北上して、ランツクルーナという街をご紹介します。