塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

脇町の「うだつの町並み」(徳島県美馬市脇町)

2018年01月20日 | 旅行
  
徳島県を西から東へまっすぐ流れる吉野川は、県内でほぼ唯一の平野を形成しています。そのちょうど真ん中に、「うだつの町並み」で知られる脇町があります。正確には脇町南町と呼ばれる500m弱ほどの通りを中心に、重厚なうだつの上がった白壁の家々が連なっています。

 

 

うだつ(卯建)とは、重層家屋の両サイドの壁を庇の上に張り出させたもので、もともとは隣家からの延焼や、風で屋根が飛ぶのを防ぐ目的で作られていました。それが江戸時代に入るとただのお飾りとなり、とくに商家の財力を示す基準のように捉えられるようになりました。そのため、いつまで経ってもパッとしないという意味の慣用句「うだつが上がらない」の語源ともいわれています。

 
分かりやすいうだつの例(信州海野宿より)
2階両脇から塀のように張り出しているのがうだつ


そんな金持ちのステータスともいえるうだつが、脇町では当たり前のように見られます。吉野川の水運を使って容易に東西へ行き来できるほか、北に向かえば讃岐国にも出られる脇は交通の要衝でした。江戸時代初期は、徳島藩筆頭家老の稲田氏が預かる脇城の城下町でしたが、一国一城令でお城が廃止に。以後は商人町となり、阿波特産の藍の集積地として栄えたのです。ちなみに、脇城とそのすぐ西の岩倉城は、戦国時代に天下を動かすほどの大名に成長した三好氏の興隆の地とされています。

城跡めぐりが趣味の私は、武家屋敷を目にすることはしばしばあります。侍町を見慣れた私から見ると、この脇の町並みはかなり趣を異にしています。一言でいってしまえば「ゴージャス!」という感じ。現代のコンクリートジャングルと比べればなんてことありませんし、むしろ小ぢんまりとして見えるかもしれません。ですが、基本的に貧乏でなにかと質素倹約を求められる武家町ばかり見てきた身からすると、分厚い漆喰の白壁や、うだつに鬼瓦などの華美な装飾がとても目を引くのです。そう思って歩いていると、往時いったいどれだけリッチな街だったんだろうと、素直な驚きが得られます。

 

当然ながら豪華な商人屋敷といっても差があり、もっとも繁栄していた商家は、玄関が2つも3つもあったりします。客のランクによって使う玄関を分けていたそうで、ちょっと露骨なようにも思いました^^;あるいは余裕のある家は鬼瓦をいくつも乗せて、そのうち1つだけ笑った表情(だったかな)にするなど、見栄の張り合いのなかにも遊び心をしのばせていたようです。

 
大事な人用玄関


 
そこまででもない人用玄関


と、ここでちょうどお昼になったので、旧家を利用した食事処に入りました。このあたりの郷土料理という「そば米雑炊」を一も二もなくチョイス。蕎麦の実をそのまま挽かずにお米に混ぜた雑炊で、それだけでは現代の食事メニューとしては物足りないので、焼き餅を加えているとのことでした。そのため、どちらかというと蕎麦の実入りお雑煮という感じでしたが、蕎麦の実のパツンパツンという食感がとても面白い料理でした。味ももちろん、関西風の上品なダシ味でグッド!ただ、吉野川流域の谷戸は、おそらく阿波国では貴重な稲作好適地だったと思われるので、おそらく雑炊に蕎麦を使うのは、木屋平や一宇といった祖谷渓ばりの奥深い山村地域だっただろうと拝察します。

 
船着場跡


脇へは、高速バスか自家用車で直接行くのがおすすめです。商家を改築した道の駅に駐車して、そのまま町内を観光できます。駐車場はかつての船着場で、ここで荷の上げ下ろしをしていたそうです。

  



カーフェリーで行く、四国・九州の旅。

2018年01月11日 | 旅行

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたしますm(_ _)m

といいつつ、1年近く前の話題です。昨春、車ごとフェリーに乗って四国へ行き、1週間ほどかけてまわりました。もちろん、船は飛行機やバスや電車よりだいぶ遅いですが、一番の利点は自分の車で疲れることなく現地まで移動できることです。なので、車では渡れない北海道へは、今なおカーフェリーの需要が高いというわけですね。

私が利用した東九フェリーは、名前の通り東京と九州を結んでいて、お台場の有明埠頭と北九州の新門司港、そして徳島に停泊します。東京からは有明を夜に出発して、翌日の午後に徳島港に寄港、さらにもうひと晩かけて翌朝に北九州に到着します。九州までは正味で1日半ほどかかるので、これを長いとみるか妥当とみるかは人によりけりでしょう。

船体は当然ながらとても大きく、宿泊することになる訳ですから快適性にはこだわっている感があります。実は数年前にも九州まで利用したことがあり、今回は2度目の乗船だったのですが、その間に船がリニューアルされたらしくかなりグレードアップしていました。とくに寝床は1つ1つのスペースが広く、隔離性も高いボックスタイプになっていました。写真を撮っていればよかったのですが、忘れてしまいました^^;

1泊するわけですから、重要なのは食事ですね。船内にはカップ麺やサンドイッチ・おにぎりなどのほかに、チンする冷凍食品の自販機が充実しています。



こんな感じで、スパゲッティにカレー、ドリア、各種丼ものなどいろいろあります。個人的には、この自販機フードがフェリーの醍醐味の1つのように思っています(笑)

船というと、酔いが心配な人もいることと思います。海が穏やかなら、大きな船なのでまったく揺れることはありませんが、やはり長時間の航海なので船酔いしやすい人にはおすすめできません。いちど時化に当たったことがあったのですが、私は酔いはしなかったものの、寝付くのはちょっとたいへんで、周りには苦しそうな人もいました。一応船内でも酔い止めを販売していますが、おそらく気休め程度でしょう。ちょっと面白かったのが大浴場で、悪天候で閉鎖するというのでその前に入ったら、船が向こうへ傾くとお湯が全部そっちへ行ってしまい、逆にこちらへ傾くとすべてのお湯が自分の顔面目がけて襲ってくるというスリリングなアトラクション状態でした。


凪いでいればとってもおだやか


さて、有明埠頭を出発すると、まもなく東京ゲートブリッジをくぐります。そのあとは羽田空港や川崎の工場夜景を横目に見つつ南下。浦賀水道を抜けるころには就寝となります。



そして夜が明けるころには熊野灘を進み、9時ぐらいに本州最南端の潮岬を通過するので、「おはようございます」を兼ねてアナウンスが入ります。そのあたりでちょうど逆方向のフェリーとすれ違いに。このあたりはいちばん旅情を感じるところなので写真を撮っておけばよかったのですが、なぜか2度とも撮らずじまいでした…。

そんな船旅も今回は徳島で下船。今後しばらくは、趣味の城跡巡り以外の部分の四国旅行ネタをアップしていこうかなと思っています。