塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

新党きづな結成:カエルの子はカエル

2012年01月04日 | 政治
    
 正月三が日が終わりました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さて、新年の記事始めがいきなりネガティヴな内容で申し訳ないのですが、昨年末に民主党を集団離党した議員9名による「新党きづな」が、4日正式に結党されました。明らかに流行語に乗っかっただけの党名といい、「ず」か「づ」かというどうでも良い議論に時間を割いているズレっぷりといい、所詮民主党の子は民主党なのかな、といった程度の感想です。しかも、そのような頭の軽い政党の結成に、宮城県選出の議員が参加していると知って驚きました。宮城生まれの筆者としては、お恥ずかしい限りです…。

 年末年始のお茶の間を微妙ににぎわせた(?)新党きづなですが、主義主張は脇に置いても、結党の過程で大きく2点ほど問題があるように思います。

 第一に、民主党を離党して新党きづなの結成に携わった議員9人のうち、実に7人が比例選出議員であるということです。比例代表制では、投票の際に有権者は議員名ではなく政党名を記入します。すなわち、比例議員は自身の支持以上に政党の支持によって選出されるものといえます。もちろん、なかには「比例名簿にこの人の名前があるから民主党に入れよう」という動機による票もあるかもしれません。しかし、それがどの程度の割合であるかは測りようがなく、第一義的に党の信任により党を背負って選ばれるのが比例議員のはずです。それを、自分の意見が通らないからといってポンと党を飛び出し、あまつさえ新党をこしらえてしまうなどというのは、己の立場をわきまえぬ越権行為といえます。今では民主党の支持は落ちに落ちたとはいえ、民主党の看板で当選した以上、最後まで党を支えるのが比例議員の務めでしょう。それでもどうしてもこれ以上民主党に留まるのは我慢ならないというのであれば、議員辞職をして、民主党の次点候補に席を譲るのが筋というものでしょう。あるいは、今回離党した9人は全員衆院議員なので、党内で解散を訴え、選挙時に新党または無所属で立候補すればよかったと思われます。いずれにせよ、比例選出議員7人の離党および新党結成がまったく理にかなっていないことは明らかといえます。

 第二に、離党の理由にも問題があると考えています。今回の離党は、野田政権の消費税増税路線や八ツ場ダム建設中止の撤回に対する批判が主な理由だそうですが、要するにマニフェストを守らない政権にうんざりということなのでしょう。ですが、そもそも民主党のマニフェストなどとっくに倒れた張りぼてであることなど、国民の誰もが認識していると思います。ムダづかい根絶による財源捻出や議員定数削減、1票の格差是正、日本の国連常任安保理入り、年金制度一元化、高速道路無料化、etc. …。今さらっと当時のマニフェストを読み返しただけでも、すでに破られていたり実現されそうにもない公約が目白押しです。マニフェスト違反が理由というなら、とうの昔に離党してなければならず、いまさらという感が拭えません。ちなみに、消費税増税については、閣議決定時期の延期により「4年間は上げない」という公約に抵触しないことになったため、少なくともマニフェスト違反ではなくなっているようです。

 そもそも、現在の民主党マニフェストは2010年の参院選挙に際して作成されたものであり、東日本大震災という人類史上最大級の災害に見舞われた今日とは前提となる状況が異なります。新たに莫大な復興財源が求められるなか、平時(災害が起きていないという意味で)に作成されたマニフェストに拘泥し続けるというのは、狭視野的といわざるを得ません。もちろん、財源の捻出にはまず支出の削減が必要であることは言うまでもありませんが、増税という選択肢も議論の俎上には乗せないわけにはいきません。その上で、世界大の不況に見舞われている現状において、増税が復興財源として適切かどうかは大いに疑問の余地があります。ただし、「マニフェストにあるから」というだけの理由で、増税反対を唱えるべきではないと考えます。当時とは状況が違うわけですから、消費税増税はマニフェストから離れて議論されるべき問題であり、「マニフェスト違反」と繰り返すだけの議員には、とても復興計画など託せるものではありません。民主党マニフェストは、だいぶ前から自らの手で穴だらけにされているだけでなく、部分的には何が何でも守らなければならないものではなくなっており、離党にまで至る「理由」にはなり得なくなっていると思われます。

 とまぁ、真面目に批判してみたものの、新党きづなも鈴木宗男元衆院議員を中心とする新党「大地・真民主党」も、小沢派が次期選挙の様子をみて民主党を出る際に、スムーズに活動を開始できるようあらかじめ政党助成金の受給資格をもった政党を2つ用意したに過ぎないように思えてなりません。いずれにせよ、衆院第4勢力とはいえ、新党きづなが当面影響力をもつとは思えず、そこまで注視する必要がある問題ではないのかもしれません。選挙になれば、新党議員のどれほどが生き残れるのか分かったものではありません。そのことは比例選出の議員当人たちも承知しているでしょうから、やはり今回の新党結成には下心があるとみるのが妥当でしょう。震災からまもなく1年が経とうとしているというのに、手前の都合で政党を玩具にされたのでは、たまったものではありません。