先月の下旬に1週間ほど、また北海道の奥尻島に行ってきました。きっかけは、去年この島を訪ねたときに宿泊先の集落で唯一のお寿司屋さんで飲んでいたところ、隣になった漁師さんと盛り上がり、「どうせ来るならウニの時期に来い、いつでも泊めてやる」と連絡先をもらったことでした。酔った勢いの話と本気にしてはいなかったのですが、せっかくだからと年賀状を送ったところトントン拍子に話が進み、ウニ剥きのお手伝いがてらお世話になることになったのです。
いまひとたびの奥尻島へ
私のいた集落は青苗といって、1993年の北海道南西沖地震による津波で壊滅的な被害を受けたところですが、その辺のお話は昨年の記事をご参照ください。
2017年の奥尻旅行記:<前編><後編>
奥尻島で獲っているのはムラサキウニで、北海道でもとくに美味といわれているそうです。その代わり漁期はとても短く、海の日前後からお盆前あたりの23日間しかありません。ウニ獲りの船は2人乗るのがやっとの磯船で、量も1隻1日あたり2カゴと決まっています。なので、できるだけ身の詰まったウニを探すのが勝負どころです。正午までに身だけに剥いた状態で漁協に卸さなくてはならないので、のんびりもしていられません。
出港も朝4:30と決められています。大型の船外機を積んだ磯船が一斉にスタートする様子はまさにオートレース!船首側が半分持ちあがった状態で水しぶきをあげ、めいめいのポイントへと繰り出していきます。
船には別の機会に乗せてもらったのですが、さすがに生活とかいろいろ懸かってるウニ漁の邪魔はできません。岸壁で見送るだけで、私はいったん引き上げて朝食です。高台から東側を見ると、ちょうど朝焼けが綺麗な時分です。
6時を回るとぼちぼちと船が帰ってくるので、私もいよいよウニ処理部屋へ出勤です。ウニ処理場は港の脇に長屋団地のように並んでいます。長屋の中は昔の冷蔵庫の製氷器のように仕切られていて、それぞれ漁師さんごとのブースになっています。
と、いよいよウニのご到着です。
作業は大きく分けて3つ、①殻を割って②中身をくり抜いて③食べる部分以外のハラワタを取り除きます。ちなみに我々が食べているのは卵ではなく、あくまで生殖器です。オスもメスも生殖器が1個につき5粒入っていて、外見からは雌雄の区別はつきません。
ウニは片側に口、そして反対側に肛門があり、どちらかに金べらを差し込み殻を割ります。次に大きな耳かきのようなスプーンを差し入れ、中身をクリッとほじくり出します。もちろんこのときに身をできるだけ傷つけてはいけません。ウニの中身は見事に生殖器と消化器だけで、肉と呼べるものはありません(笑)。最後にピンセットで腸や胃を除去するのですが、これが大変!ベテランでも1発できれいにとはいかないので、時間と手間と神経を要する作業です。これだけ手がかかってるのだから、ウニが高級食材なのも当然です。むしろどうやったら100円寿司として回せるのか、薬剤でハラワタを溶かしでもしないと無理なんじゃないかと思いました。
申し訳ないことに作業風景の写真はありません。なにしろ午前中に仕上げなければならず、ギリギリというわけではないのですが、皆さんおしゃべりはすれども手は動き続けているので、一人だけサボって写真など撮ってる余裕はありませんでした^^;
ちなみに、仕上がったウニはこんな感じです。
だいたい7kgほど、いい時で8kg越えくらいだそうです。これを1週間見続けたので、価値観がおかしくなってしまいました…。ちなみに帰りはお土産に生ウニと塩ウニにしてもらったのを合わせて2kgほどいただきました^^
ところで、ウニは割ってみるまで身の状態は分かりません。なので、色が悪かったり、斑(ふ)が入っていたりするものがちょいちょいあって、商品にはならない欠品となります。とはいえ食べられないわけではないので、欠品ウニは作業場のみんなのおかずになります。毎回ウニ丼2~3杯分ぐらいの欠品ウニはどうしても出てしまうので、リアルに連日三食ウニ飯が食べられる生活を送っておりました(笑)
さてもさても最初の2日間ほどは、慣れの期間でとにかくなるべく迷惑をかけないよう体で覚えるので一杯一杯でした。その後は、自分で言うのもなんですが手先の器用さにはわりと自信があるので徐々に楽しくなり、最後は嘘か真か帰るのが惜しまれるくらいの腕前に(笑)。観光客がやりたいといっても出来ない仕事なので私自身も楽しく、また来年もやりたいなぁと思った次第です。
ちなみですが、私はもともとウニはずっと嫌いでした。保存と発色、そして型崩れを防ぐために投入されるミョウバンの臭いが苦手だったのですが、初めて行った北海道でさすがにウニを食わないわけにはいかないとダメ元で試したところ、あまりの味の違いに驚愕。ウニが美味しいという感覚を知りました。ですが、奥尻のウニは函館や札幌、小樽などのものとも別格です。港で剥いたウニはもちろん添加物ゼロ!この味に慣れてしまったら、もう都会のウニは食べられません^^;
おいでよ!奥尻^^
でも年金生活の当方さそわれてもウニのために、奥尻までは行けません
ちょうど夏休みに入ったころだったのでお孫さんらしき子供が来ているお宅もありました。小さい時にこういう風景に慣れ親しめるというのは羨ましいと思いましたよ。