突然ですが、「三大がっかり名所」というものを耳にされたことはあるでしょうか。その名の通り、有名だけど訪れてみるとつまらなくてがっかりする名所ベスト3ということですが、「世界三大がっかり」とそれに倣った「日本三大がっかり」があるそうです。
面白いのは、どちらもトップ2は不動ながら、最後の3つ目についてはいくつか候補があって決まっていないようです。「世界三大がっかり名所」の場合は、シンガポールのマーライオンとコペンハーゲンの人魚姫像が固定で、あとはブリュッセルの小便小僧やシドニーのオペラハウス、ドイツ・ライン渓谷のローレライの岩などが入るそうです。「日本三大」の場合は、札幌の時計台と高知のはりまや橋が不動のツートップで、3つ目には沖縄の守礼門、長崎のオランダ坂に京都タワーなどの説があるそうです。
先月の道南旅行で札幌に行き、高知も人生で2度訪れたことがあるので、3つ目を自分が見たなかから勝手に選定させてもらえるならば、これで日本三大がっかり名所を制覇したことになるようです。で、達成したうえでの感想なのですが、札幌時計台をがっかり名所の筆頭に入れることには、個人的に違和感を覚えました。どれくらいがっかりするのだろうと期待して行ったのに、思ったよりがっかりしなくてがっかり、といった感じでした^^;
札幌時計台は札幌市街の中心部にあり、周囲は高層ビルに囲まれているため、確かに今現在の風景のなかにあってはかなりこじんまりとして見えるかもしれません。前評判でも、あまりの小ささにびっくりするよ!と散々教え込まれていたので、身長170cm未満の私が天井に頭をぶつけてしまうくらいなのかとすら思っていたのですが、全然そんなことはありませんでした。
時計台というくらいですから、二階家の上に突き出ている時計塔がシンボルなわけですが、今も時を刻み続けている時計そのものが、何といっても個人的に興味深く感じました。この時計は振り子式の自動打刻なのですが、動力は150㎏ものおもりをぶら下げて引っ張る力のみです。4日に1度おもりを上まで巻き上げなければならないそうですが、それ以外は全自動です。毎時、付属の鐘が時刻の数だけ鳴るですが、これもおもりの動力のみで自動で撞かれます。時計が針を進める仕組みは館内に展示されているミニチュア版模型で理解できたのですが、連動して鐘が時刻の分だけ撞かれるという方の仕組みは、館内のビデオを2、3度見直しても複雑すぎて分かりませんでした。
時計台が建設されたのは明治十一年(1878)、当初は札幌農学校の演武場でした。当然ながら、当時北海道はまだ開拓の始まったばかりで、幕末時代にすでに和人が入植しはじめていた札幌は、その拠点となりました。館内には明治年間と思われる札幌のようすを写した写真が展示されていましたが、拠点とはいっても、荒野に人家が身を寄せ合って何とか生活しているといった感じに見受けられました。とても、暮らしに何の不自由もない今の大都会札幌とは似ても似つきません。もちろん、家屋のほとんどが粗末な平屋建てですが、そのなかに1つだけ突出した建物として目立っていたのが、今の札幌時計台である札幌農学校演舞場でした。つまり、今でこそ高層ビル群のなかに取り残されたみすぼらしい木造建築かもしれませんが、開拓時代の札幌においては唯一の高層建築だったのだろうと拝察されます。
したがって、札幌時計台はいわば北海道開拓の生き証人であり、現在の札幌の繁栄の礎であり、日本の近代発展の語り部であると言えると、私は思うのです。これをちっこくてがっかりだなどと嗤う人は、今からでも北海道の未開拓地で『北の国から』のような生活をしてみれば良いと思います。また、これががっかり名所の筆頭だというのであれば、次席に富岡製糸場を新たに加えなければならないでしょう。
他方で、高知のはりまや橋ががっかり名所のトップに来るというのは、まったくもって妥当だと思っています。はりまや橋と札幌時計台で決定的に違うのは、後者はモノが残っているのに対し、前者は残っていないという点です。私が初めて高知を訪れたのは20年前の家族旅行でした。当時の私はよさこい節の唄の意味もろくに分からない小学生でしたが、「はりまや橋」というのに橋もなければ下を流れているはずの川すらなく、大通りの車道脇になぜか赤い欄干だけがある様を目にして、「なんじゃこりゃ」と思ったのはしっかり覚えています。
5年ほど前、再度高知旅行に出かけましたが、その時には新たにはりまや橋が「建造」されていました。わざわざ埋めた川の跡に人工水路を通し、車道の脇にそれっぽい朱塗りの小橋を架け、「がっかり名所」の名をほしいままにしていた車道脇の欄干は、地下歓楽街(おそらく人工水路と一緒に建設された?)にひっそりと遷されていました。
まぁ、「日本三大がっかり名所」とはいっても、アンケートをとったわけでもなければ、どこかの団体が認定した訳でもありません。私のなかのランキングとは大いに異なっていたとしても、どちらも感想の1つにすぎません。個人的には、同じ札幌でも、時計台よりはむしろ羊ヶ丘展望台のクラーク像の方が、お金と時間をかけて行ったわりには「ふ~ん…」といった感じでした^^;
おまけのクラーク像