塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

奥尻島ウニ剥き生活記④

2018年08月25日 | 旅行
 
滞在中1日だけ、霧で漁が中止になったことがありました。ここぞとばかりに観光、ということで神威脇(かむいわき)という集落へ出かけました。青苗のひとつ隣の集落なのですが、隣といってもその距離なんと13km!自転車で1時間かかりました。

神威脇は、奥尻島の西岸で唯一の集落です。とはいえ、人家は民宿やゲストハウスも含めて20軒あるかどうか。ただ、ここには奥尻島の貴重な観光資源のうち3つが集まっています。

そのうちの1つが、港に臨んで建つ神威脇温泉。宿泊施設も食事処もない、純粋な共同浴場です。なんともレトロな佇まいで、建物も実に私好みです。



とはいえ奥尻島は火山島というわけではないので、温泉といってもかなり深く掘ってようやく出てくるような、ぬるいアルカリ性のお湯だろうと思っていました。ところが入ってみてびっくり!源泉かけ流しのお湯はアツアツで、塩と鉄の濃厚な味がたまりません!そのままのダダ流しだと熱くて入れないので、湧湯口の隣では水道水も合わせて出しっぱなしになっています。このタイプの温泉に入ると、私はとっても幸せな気分になります(笑)。

かつてはもっと大々的に運営していたのか、小ぢんまりとした内湯のほかに、2階には展望大浴場もあります。お湯の質は1階の内湯の方が良いですが、2階はもちろん眺望がウリです。私のときは濃霧でしたから視界はほぼゼロでしたが、西向きなので晴れた暮れ時にはさぞ美しい夕陽が見られることと思います。


神威脇の集落と神威脇温泉


昔は公営だったのが今は個人経営になってるとかで、社長兼管理人の御老と湯上りにいろいろとお話させていただいた後、また自転車にまたがります。

集落の外れの丘の上には、残る観光資源の2つがほぼ隣り合わせに建っています。1つは奥尻島唯一の「ホテル」で、島を走る観光バスはなべてここに出入りします。神威脇温泉と同質のお湯が引いてあるそうなので、海の幸に温泉にと、かなりお得に楽しめるホテルなんだろうな~っと拝察します。

私の目的はそのひとつ奥にある、奥尻ワイナリーです。奥尻では島内でブドウを栽培していて、それでもってさまざまなワインを醸造しています。無料で数種類の試飲もできるので、飲める人はホテルに泊まるか、バスかタクシーで訪ねると良いでしょう。私の感想としては、北の大地で海風を受けて育っているせいか、赤も白も果実味が濃く出ているように思いました。

酒好きの私が、というより酒好きだからか、ワインをひと通り購入&発送して満足してしまったのか、ワイナリーの写真を撮るのを忘れておりました。代わりに、ブドウ畑の写真を載せます。この畑は、島の幹線道路から奥尻空港へ入る交差点の脇にあります。面白いことにワイナリーは神威脇にあるものの、ブドウ畑自体はほとんどが青苗周辺に広がっているようです。





さて、青苗と神威脇の間は海岸沿いの道が続きます。途中には



滝や



巨岩がちょいちょい現れます。

なかでも面白かったのがコレ。



モッ立岩というのですが、その由来がなんとも、、、とある未亡人がこの岩を見つけ、その形が死んだ亭主の「からだの一部」に似ていたので懐かしくなり、名前を付けたのだとか^^;

この、余計なオブラートに包まない感じが、なんとも島らしいなぁと一人感じ入ってしまいましたw

というわけで、ぜひもう一度じっくりご観賞くださいw


 



奥尻島ウニ剥き生活記③

2018年08月23日 | 旅行
 
今回は、青苗地区のようすについてもう少し触れてみたいともいます。昨年の記事とかぶるところもありますが、ご容赦ください。

青苗は奥尻島の南端に突き出た指のように細長い半島にあります。西側は高台と崖で、東側には崖下の平地があります。かつてはこの崖下と岬の先端部の平地に人家が集まっていましたが、1993年の北海道南西沖地震による津波と火事で壊滅してしまいました。岬の先端部は津波館(資料館)と記念公園として整備され、住宅の建設は認められていません。また東側の崖下は全体が6mかさ上げされ、避難時の渋滞を防ぐために道路は集落の規模に不釣り合いなほどに広くなっています。


岬先端の津波館と記念公園。
かつてはここも集落内でした。



慰霊碑「時空翔」



時空翔から岬の高台先端の灯台を望む



土地がかさ上げされている平野部住宅地





青苗で唯一信号のあるメイン交差点




いっぽう高台の上には、もともと家屋はほとんどありませんでした。震災を受けて丘の上にも住宅地が開かれ、一応「山の手」と呼ばれています(笑)。


青苗の「山の手」の風景



山の手から見た麓の中心街


青苗の半島の付け根には中学校がありましたが、残念ながら昨年休校になりました。



さらにその向こうには川があり、緩やかな谷戸がかなり奥まで続いています。ここにはきれいに整地された谷戸田が広がっていて、意外と収穫高もありそうです。奥尻には島産のコメを使った日本酒、そのなも「奥尻」もあります。


青苗川



青苗川の隣のワサビ谷地



谷戸田の風景



個人的になんとなく気に入っている青苗郊外の一枚


最後は山の手から見る青苗沖の夜景を載せます。水平線に並んでいるのはイカ釣り船の灯りです。


烏賊船や 夜空と海の 切り取り線

  



奥尻島ウニ剥き生活記②

2018年08月20日 | 旅行

午前中はひたすらウニ剥きですが、午後は日によって「副業」でモズク採りに出かけるので、その時は船に乗せてもらえました。私は舳先側に乗るので凪の日はルンルンですが、少しでも波があると船首がバンバン跳ね上がり、着地のたびに強かに打ち付けられてお尻が痛くなってしまいます(笑)。

それどころか私はドカナヅチなので、投げ出されたらアウト!波がある日はへいつくばって必死に船の縁にしがみついてました。もちろんカメラを持つ余裕もないので、以下の写真はすべて麗らかな凪の日のものです。





ウニもモズクも漁場は磯です。穏やかな岩陰で、漁師さんは手製の潜望筒を覗きながらモズクを掻き採っていきます。その間、私は手伝おうにもすることもないので、景色を眺めたり水と戯れたりするばかり。夏の北海道の強い日差しを浴びながら、あれやこれやと眺めています。







3枚目の写真奥の山の上に見えるのは航空自衛隊のレーダーサイトです。奥尻島の若者の大半はこの基地に駐屯する自衛隊員といわれていて、町役場のある奥尻地区に住んでいるそうです。件の寿司屋で若き自衛隊員と隣り合わせたことがありましたが、どうしても出会いの絶対数が少ないのが嘆かわしい様子でした^^;





北海道の海も、凪いでいればなかなか透き通っていて綺麗です。ちなみに、一般に出回っている沖縄産のモズクと違って、こちらのものは細くてザリザリとした食感です。東京で能登や山陰産の「岩もずく」として出回っているものと同じものだと思うのですが、私は個人的にこちらの方が好みです。




他にも採ってる方がいました

船に乗せてもらったという話を島ですると、たいていの人に「船酔いしなかったか」と訊かれます。いわく、島へ渡るフェリーでも酔う人は多いのだとか。私は半時化のときでも先述のように尻が痛いのには悩まされましたが、船酔いはまったくありませんでした。とはいえからきし泳げないので、船に向いているのかいないのかは分からないままです。釣りをやる人には珍しくもない話題かもしれませんが、私にはなかなか貴重な経験でした。

かご一杯に採れたモズクは、5kgか10kg単位で島の旅館や食堂に卸します。新鮮そのもの、もちろん無添加!私も数kgお土産にいただいてしまいました。塩にして冷やしておけばなんぼでももつので、おかずの無いときに手軽に土佐酢で食べてます。おかげでモズクも市販のものには手がのびないカラダになってしまいました^^;
  



奥尻島ウニ剥き生活記①

2018年08月13日 | 旅行
  
先月の下旬に1週間ほど、また北海道の奥尻島に行ってきました。きっかけは、去年この島を訪ねたときに宿泊先の集落で唯一のお寿司屋さんで飲んでいたところ、隣になった漁師さんと盛り上がり、「どうせ来るならウニの時期に来い、いつでも泊めてやる」と連絡先をもらったことでした。酔った勢いの話と本気にしてはいなかったのですが、せっかくだからと年賀状を送ったところトントン拍子に話が進み、ウニ剥きのお手伝いがてらお世話になることになったのです。


いまひとたびの奥尻島へ


私のいた集落は青苗といって、1993年の北海道南西沖地震による津波で壊滅的な被害を受けたところですが、その辺のお話は昨年の記事をご参照ください。

2017年の奥尻旅行記:<前編><後編

奥尻島で獲っているのはムラサキウニで、北海道でもとくに美味といわれているそうです。その代わり漁期はとても短く、海の日前後からお盆前あたりの23日間しかありません。ウニ獲りの船は2人乗るのがやっとの磯船で、量も1隻1日あたり2カゴと決まっています。なので、できるだけ身の詰まったウニを探すのが勝負どころです。正午までに身だけに剥いた状態で漁協に卸さなくてはならないので、のんびりもしていられません。

出港も朝4:30と決められています。大型の船外機を積んだ磯船が一斉にスタートする様子はまさにオートレース!船首側が半分持ちあがった状態で水しぶきをあげ、めいめいのポイントへと繰り出していきます。









船には別の機会に乗せてもらったのですが、さすがに生活とかいろいろ懸かってるウニ漁の邪魔はできません。岸壁で見送るだけで、私はいったん引き上げて朝食です。高台から東側を見ると、ちょうど朝焼けが綺麗な時分です。



6時を回るとぼちぼちと船が帰ってくるので、私もいよいよウニ処理部屋へ出勤です。ウニ処理場は港の脇に長屋団地のように並んでいます。長屋の中は昔の冷蔵庫の製氷器のように仕切られていて、それぞれ漁師さんごとのブースになっています。







と、いよいよウニのご到着です。







作業は大きく分けて3つ、①殻を割って②中身をくり抜いて③食べる部分以外のハラワタを取り除きます。ちなみに我々が食べているのは卵ではなく、あくまで生殖器です。オスもメスも生殖器が1個につき5粒入っていて、外見からは雌雄の区別はつきません。

ウニは片側に口、そして反対側に肛門があり、どちらかに金べらを差し込み殻を割ります。次に大きな耳かきのようなスプーンを差し入れ、中身をクリッとほじくり出します。もちろんこのときに身をできるだけ傷つけてはいけません。ウニの中身は見事に生殖器と消化器だけで、肉と呼べるものはありません(笑)。最後にピンセットで腸や胃を除去するのですが、これが大変!ベテランでも1発できれいにとはいかないので、時間と手間と神経を要する作業です。これだけ手がかかってるのだから、ウニが高級食材なのも当然です。むしろどうやったら100円寿司として回せるのか、薬剤でハラワタを溶かしでもしないと無理なんじゃないかと思いました。

申し訳ないことに作業風景の写真はありません。なにしろ午前中に仕上げなければならず、ギリギリというわけではないのですが、皆さんおしゃべりはすれども手は動き続けているので、一人だけサボって写真など撮ってる余裕はありませんでした^^;

ちなみに、仕上がったウニはこんな感じです。



だいたい7kgほど、いい時で8kg越えくらいだそうです。これを1週間見続けたので、価値観がおかしくなってしまいました…。ちなみに帰りはお土産に生ウニと塩ウニにしてもらったのを合わせて2kgほどいただきました^^

ところで、ウニは割ってみるまで身の状態は分かりません。なので、色が悪かったり、斑(ふ)が入っていたりするものがちょいちょいあって、商品にはならない欠品となります。とはいえ食べられないわけではないので、欠品ウニは作業場のみんなのおかずになります。毎回ウニ丼2~3杯分ぐらいの欠品ウニはどうしても出てしまうので、リアルに連日三食ウニ飯が食べられる生活を送っておりました(笑)

さてもさても最初の2日間ほどは、慣れの期間でとにかくなるべく迷惑をかけないよう体で覚えるので一杯一杯でした。その後は、自分で言うのもなんですが手先の器用さにはわりと自信があるので徐々に楽しくなり、最後は嘘か真か帰るのが惜しまれるくらいの腕前に(笑)。観光客がやりたいといっても出来ない仕事なので私自身も楽しく、また来年もやりたいなぁと思った次第です。

ちなみですが、私はもともとウニはずっと嫌いでした。保存と発色、そして型崩れを防ぐために投入されるミョウバンの臭いが苦手だったのですが、初めて行った北海道でさすがにウニを食わないわけにはいかないとダメ元で試したところ、あまりの味の違いに驚愕。ウニが美味しいという感覚を知りました。ですが、奥尻のウニは函館や札幌、小樽などのものとも別格です。港で剥いたウニはもちろん添加物ゼロ!この味に慣れてしまったら、もう都会のウニは食べられません^^;




おいでよ!奥尻^^