塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

小田急訴訟

2005年12月07日 | 社会考
 只今図書館の地下から更新しています。
 この時間でも本棚の隙間に結構人がいるものです。もしここで一人一丁銃を与えられてバトルロワイヤルみたいなことをさせられたら、かなり緊迫した銃撃戦になるんじゃないかとふと考えてしまいました。

 さて本日、小田急訴訟の原告適格を認定するかの最高裁判決が下されました。
 小田急訴訟といってもご存じない方も多いのではないかと思いますが、小田急線の末端に住む僕のような人たちにとってはかなり大きな問題です。
 
 小田急線は旧来過密路線として、また踏切での渋滞を以って知られている。この旅客輸送の快適化と周辺道路の円滑化を目指して1990年代から下北沢~登戸間で高架複々線化事業が進められてきた。2005年現在この複々線化とそれに伴う高架化(一部地下化)事業は多摩川架橋と下北沢の地下化を除いて9割がた完成している。この工事に伴い騒音被害を受けているとして沿線住民40人が行政の認可取り消しを求めて現在最高裁で争われているのがいわゆる小田急訴訟である。

 あらかじめ言っておくと、僕はこの訴訟の裁判上の争点については分からないので、どなたか詳しい事情を知っている方には是非教えていただきたい(特に僕の周囲の法曹関係の方々)。僕が知る限りでは原告側の主張は「騒音対策の側道工事が完了していない状態での電車走行は違法だ」とするものである。

 ここに「もぐれ小田急線」というサイトがある。原告側の公式ページと見て間違いないと思うが、リンクで意見書と称する特別上申書が掲載されている。これを原告側の意見の集約と解して、勝手ながら箇条書きに要約すると以下のようになる。

問題の所在を
・東京を大地震が襲った際に大勢の人が死ぬ(おそれがある)  
・複々線化は都心の更なる人口集中化を招く
・その結果複々々線が必要になる
・人口集中化はテロやヒートアイランドの危険性を高める
・そもそもの根源は東京の都市計画にある
といった点に求め、

代替案として
・2線2層の地下化
・それによって生じる鉄道跡の土地を緑地に
・都心ビルの移転または低層化の強制
などが挙げられている。

 ここで個々の項目に突っ込むまでもなく、ある疑問が湧いてくる。沿線の「騒音被害」という提訴内容とまったく別次元の議論を持ち出していることだ。平たく言えば彼らの意見は「都市計画が悪い」ということである。彼らの提言内容はどこぞの環境団体がビラとして配っている分には面白いものだろう。しかし、自分の隣が騒がしくなったから都市を計画しなおせとは、シムシティのやりすぎではないかとも思える論理的飛躍である。

 ふと某幹事長が「悪者探しをすると景気全体が悪くなる」と言ったのを思い出してしまった。多摩川以西に住む沿線住民は、自分も含めて複々線化を待ちに待ちわびてきた。それを完成したものまで白紙に戻して都市計画からやり直せ、というのでは彼らこそ沿線住民の利益不利益を無視しているといえよう。仮に全区域地下化するとして、その工事費は誰が負担するのだろうか。運賃の値上げ以外あるはずもなく、数十人のために百万単位の沿線住民が更なる負担と通勤地獄を味わわなければならない。それも生きているうちに完成するかも怪しい事業に対してである。

 もちろんこのような場違いのユートピア計画を持ち出すということは、裏にまったく異なった思惑が隠れているか、単にある種の正義感に囚われてしまったかのどちらかであろうとは思う。とりあえずは今日の動きに対して今後の経緯を見守りたい。
 その上でひとまず僕がこの場で申し上げたいのは、自分のインタレストがみんなのインタレストであるかのように書きたてる稚拙な論法に惑わされることなく、公正な天秤の上で当訴訟が進むことを切に願っている、ということである。