このカテゴリの話題は久しぶりなうえに、ドイツの話でなくてすみません。まぁ、同じドイツ語圏ということで勘弁してください^^;今夏以来ずっと書きたいと思っていたテーマなのですが、なんやかんやでとうとう年の瀬目前になってしまいました。
ウィーンは古くからさまざまな分野でヨーロッパの一大中心地を張ってきましたが、芸術の都としてみると、まず第一に思い浮かぶのは音楽だと思います。ですが、今回はちょっと目を近代建築に移して、ウィーンっ子が誇る建築家フンデルトヴァッサー(フンダートヴァッサーとも)をご紹介します。
フンデルトヴァッサー(1928~2000)は、ウィーン生まれのウィーン育ちで、当初は画家としてデビューしました。彼の理念は自然への回帰であり、戦後復興の建築ラッシュのなかで無機質なビルディングが乱立するようすに違和感を覚えた彼は、建築デザインを手掛けるようになります。
そんな彼の作品は、どれも幾何的な直線を嫌った自由奔放なものばかり。当初は「ウィーンの大きな名所はほとんど回ったから、ガイドブックにも載ってるし金もかからないし行ってみるか~」程度だったのですが、一目見てすっかり魅入ってしまいました。自由闊達なフォルムでありながら実用性はしっかり担保されてあり、どれもしっかり現役。たとえば、
こちらのその名もフンデルトヴァッサーハウスは、現役の市営住宅!かつての同潤会アパートのように今も人が住んでいるので中を歩き回ることはできません。
別角度から見ても、周囲と見事に調和しているうえに機能も損なっていません。
お次はなんとごみ焼却施設!
こんなメルヘンな焼却炉なら、地元の抵抗もだいぶ和らぎそうですね。
最後にウィーン芸術会館(Kunst Haus Wien)
館内のカフェはこんな有様です。
ちなみに床も波打っていて平らではないのですが、これも「自然への回帰」を唱えるフンデルトヴァッサーのこだわりだそうです。
館内には、彼が手がけた建築物の資料と並んで、画家としての彼の作品も多く展示されています。ところが、私はどうも彼の「絵画」についてはさっぱり興味が湧きませんでした…。有象無象のよくある前衛芸術の類にしか見えなくて…。どうやら、デザインと実用の絶妙な噛み合いという点が、私には重要だったようです。
他にも、このような調子で学校や温浴施設、教会などさまざまな用途の公共施設を手掛けているようです。機会があれば行けるだけ行ってみたいと思っています。
で、今少し彼について調べてみると、実は日本にも彼のデザインした建築物がいくつかあることが分かりました。フンデルトヴァッサーを直訳した「百水」という和号も使用していたということで、日本とのかかわりも薄くはないようです。ところが、残念(?)なことに日本での作品の多くはなぜか大阪にあるということで、首都圏住まいの私としてはひょいひょいとは訪ねることはできないようです。ですが、近いうちにぜひ…とは思ってます。
フンデルトヴァッサーの作品を見ていると、乃木坂の国立新美術館とか、表参道ヒルズとか、京都三条木屋町のタイムズとか、日本の同時代の高名な建築家たちは日本の有機的な建築風景をすっかり殺して、ずいぶんと無機質なものを作ってきたものだと思わされます。
というわけで、ウィーンというと古いものにばかり目が行きがちですが、新しいものを受け入れ育てることもできるすばらしい都市であるというところを再確認した次第です。ちなみに、フンデルトヴァッサーハウスは路面電車で、ごみ焼却施設は地下鉄でそれぞれ旧市街中心からすぐに行くことができます。