今月11日、瀬田川水系大戸川ダムの建設計画について流域4府県(滋賀・三重・京都・大阪)の知事が、建設凍結を求める共同見解を発表しました。何といっても地元滋賀県が反対しているという点が最も重要だと思われますが、マスコミは最も関係が薄いと思われる橋下大阪府知事のコメントばかりを流しています。
「いつも問題発言ばかりしている僕から見ても問題発言」とコメントした兵庫県知事の失言問題あたりまでならまだ関連性もあるといえますが、どうして滋賀県のダム問題で流域4府県のうち最も遠い大阪府知事にクローズアップする必要があるのでしょうか。問題の本質を無視して話題性にばかり走る現代のマスコミの姿勢がここにも現れているように感じます。
さて、今回の共同見解発表ですが、最初に挙げたとおり地元県が反対に回ったことがやはり一番大きいと思われます。いまやダム建設は治水効果というよりも、「国のお金で大口の工事がもらえる、ついでに周辺の道路なんかも整備できる」、という土建屋の利害で動いているものがほとんどでしょう。ですから、治水利水の緊急性さえなければ、下流受益地として水源地域対策特別措置法による費用負担が生じるとはいえ、下流他県に大した損も得もなく、まして河口の大阪府にとっては淀川上流のさらに一支流にダムができようとできまいとほとんど関心事ではないはずです。マスコミも橋下知事もお互いにパフォーマンスということは明らかでしょう。
逆に、本当に現代のダム建設を考えるということなら、当選から一貫してダム建設には慎重な姿勢を示している嘉田由紀子滋賀県知事にこそ注目すべきだと思います。嘉田知事は、県内に誘致を進めていた新幹線新駅の建設凍結を訴えて2006年に当選し、県内に6つあるダム計画についても凍結または見直しを公約としていました。
マスコミの間では、これを完全な「脱ダム宣言」ではないとして態度があいまいであると批判する風潮があるようです。しかし、近年の日本の亜熱帯化による豪雨でダムの必要性は再度議論される必要があります。ダムだけに頼らない治水計画を訴え、「ダムの必要性、効果、影響も含めて議論する過程の中にある」とする嘉田知事の姿勢は、むしろ妥当であると思います。
今回は、ダム建設の受益がある全ての府県が共同で反対に回ったことで大きなニュースとなりましたが、これを機に新幹線新駅凍結やダム見直しに堅実に取り組んできた嘉田知事にもっと焦点をあて、周知させるべきだと思います。少なくとも十把一からげの「脱ダム宣言」の田中前長野県知事や、暴言大言を吐き散らすだけの橋下知事のようなパフォーマンス知事よりは大いに参考になるはずです。