塵埃日記

つれづれなるままに、日々のよしなしごとなど。

ホッキ貝の同居人

2014年02月04日 | 徒然
  
 本日のネタは生物画像注意です。苦手な方はスルーして下さい^^;

 先日、活ホッキ貝を見つけて買ってきました。正式にはウバガイというそうですが、貝のなかでもとくに私が好きなものの1つです。そのうえ、さばくのもそれほど難しくなく、単体で買ってもボリュームがあるので、見つけるとちょいちょい手を伸ばしてしまいます。

 このテの貝をさばくときは、まず洋食ナイフを突っ込んで貝柱を切断します。包丁やナイフを使うと、貝殻の締め付けで刃こぼれしてしまうので注意です。食材のホッキ貝といって思い起こされる先端の青黒い(火を通してあれば赤い)ベロのような貝肉は斧足と呼ばれる、人間でいう手足に相当する部位です。殻を開けると、これがベロンチョと姿を現すわけですが、その上に何やら小さくて細いものがくっついていました。

 よもや…と思って突っついてみると、わずかながらにうねって動きます。ナイフで拾ってみると、簡単に剥がれます。まな板の脇によけてみると、やはり弱々しくうねります。もうお分かりと思いますが、寄生虫でした。後で調べてみると、ヒモビルという名前だそうです。ホッキ貝にはかなり高確率で寄生しているのだそうですが、私は今回初めて見ました。しかも、なぜか1つの貝に1個体しか寄生しないのだとか。たしかに、私の場合も広い斧足の平面上に1匹だけ悠々と寝そべっている感じでした。

 さばき終わった後に、せっかくだから写真を撮りました。さすがに追記にしますので、ご覧になりたい方だけどうぞ^^;

  

  
 

 消化管と思われる心電図のようなウネウネ器官が印象的ですね。消化器があるということは、直接養分を頂戴するわけではなく、消化しなければならない何かを摂取して生きているということなのでしょうが、貝の足の上に座ってるだけで一体どんな食料にありつけるのか疑問です。また、1つの貝に1匹しかいないというのも不思議です。このテの生物が生殖で1つしか卵を産まないということは考えにくいですし、貝のなかで最強の1匹が生き残るまでバトルロワイヤルが繰り広げられている…というのもちょっと想像しにくいような。そもそもどうやって生殖するのだろう。などと、疑問が尽きません(笑)。

 ちなみに、これをご覧になって「明日から怖くて活ホッキなんか食えないよ!」と思われる方もいるかもしれませんが、ご安心下さい。このヒモビルをうっかり生きたまま飲み込んでしまったとしても、人体には無害です。そもそも、寄生虫は決まった宿主のなかでしか、成長も生殖もできません。宿主以外の生物に食べられてしまったら、何もできずに消化されてしまうだけです。

魚食による寄生虫症としてよく知られるアニサキス症は、胃で死にきれなかったアニサキスが、苦し紛れに胃壁や腸壁に噛みついて激痛をもたらすものです。とはいえ、胃に穴が開くまでに至るのは稀で、たとえ穿孔されて体内に居座られたとしても、生殖することはできないので結局アニサキスにとっては死を待つのみです。

 どうしても心配だという方は、24時間以上冷凍すれば、刺身でも寄生虫は死滅するとされています。もちろん、一番安心なのはすっかり火を通すことですが。ただ、基本的に押さえておくべきは、人間が終宿主になりうる獣食よりは、魚食の方が寄生虫症に関しては安全だということです。生レバーと比べれば、刺身の方がずっと危険性が少ないといえます。

≪追記の追記≫
 後日、ホッキ貝よりも格段に高値のアワビでも、同様に1個体に1匹だけの寄生虫がついていることに気付きました。こちらの方で同じく記事にしましたので、関心のある方はご参照ください。