先日、吉野ヶ里遺跡を整備した吉野ヶ里歴史公園の「古代の森」ゾーンが開園したというニュースを目にしました。吉野ヶ里遺跡といえば、日本の先史遺跡のなかではもっとも有名なもののひとつですが、公園整備が始められてから四半世紀が経っているのだそうです。今回の「古代の森」ゾーンの完成により、全体の整備計画の75%ほどが完了したのだとか。
小生は、偶然にもこの記事の少し前に吉野ヶ里を訪れました。いつごろのことかは、ひとつ前の記事を見ていただければだいたい察しがつくことと思います。訪ねてみての私の感想は、「お役所と学者さまがタッグを組むとここまで非効率なテーマパークができるのか!」という一言に尽きます。そもそも、計画から四半世紀が過ぎて75%しか完成していないという時点で、民間では考えられない牛歩事業といえます。なぜメディアが誰もツッコまないのか不思議でなりません。
さて、どこから指摘したらいいか考えどころですが、まぁ順当に入口からまいりましょう。といっても入口の手前の駐車場から話ははじまります(笑)。吉野ヶ里歴史公園には、それはそれは立派な駐車場があります。吉野ヶ里は街中からはだいぶ離れたところにあり、駐車場に車を止めてまで行く所など他にないのですが、駐車料金を取られます。そこに行く客しか止めないのに駐車料金を別に取ることを「二重徴収」と勝手に呼んでいるのですが、私はこれをやられるとものすごく損をした気になってしまい、入る前からテンションが下がります。
立派な駐車場もご覧の有様
この「二重徴収」自体は残念ながら珍しいものではありませんが、吉野ヶ里はさらに一味違いました。料金徴収にわざわざ人間を使っているのです。私が行ったときは1人だけでしたが、ゲートには3つのブースがあり、最大で3人を充てる予定があるようです。はっきりいって人件費の無駄です。言い切るのには理由があります。この先ずっと付いて回る一番の問題点なのですが、とにかく客がいない!快晴の午後というのに駐車場はガラッガラ。明らかに駐車料金よりゲート員の給料の方が高くついています。
さて、それでは入場口に向かいましょう。大手遊園地のような立派なゲートの建物が目の前に現れ、入場券は自販機で購入します。そして、その脇には説明係の女性が多数待ち構えています。ただでさえ客が少ないものですから、自販機の前に立った途端に数人に取り囲まれます。言われなくても分かる券の購入の仕方をレクチャーされ、自分で探せるパンフ一式をねじ渡され、もうすでに二重徴収の件で機嫌を損ねている私はそそくさと追撃をかわして入場してしまいました。明らかに必要ない、もしくは過剰なサービスと思います。
とても立派な入場口。でも人はいない。
ようやく、いよいよ遺跡内に入ります。遺跡自体は、多少やり過ぎなところも見受けられますが、さすがに学者先生のお気の済むようにやっているだけあって、ハイレヴェルな復元が実現できているようでした。しかし、いくら再現度がすばらしかろうと、入場料を取っている以上お客あってのテーマパーク。あまりの人の少なさにだんだん怖くなっていきました。たまに人がいると思うと、エリアごとに配置された説明係の職員さんでした。私が行った時でも公園の敷地は90ヘクタール弱というかなりの広さでしたが、風景写真を撮れば人を入れる方が難しく、客より職員の方が多いのではないかとすら感じました。
人気のない園内
まるでゴーストタウン…
メインポイントの1つでもこんな感じです。。
園内はこのように広すぎるので、無料のバスも走らせています。時刻表に従って運行しているようで、歩いているうちに何度かすれ違ったのですが、恐ろしいことに1人たりとも乗客を見ませんでした。
ここまでは運営、ひいては行政サイドの話が続きましたが、学者先生サイドの非効率についても触れておきましょう。そもそも四半世紀も費やして全体の75%しかできていないというのが、すでに学者先生の自己満足に付き合わされた結果のような気がしてならないのですが、それを是認できるのもお役所仕事のなせる業なのかな、と感じます。
学者先生の自己満足はところどころで感じます。とくに気になるのが、復元した古代住居の全部にいちいち説明板と内部説明と人形を置いてくどくどと解説したがる点です。園内には何十という住居や建物が復元されていますが、それらをいちいち全部見て回る客などいると思っているのでしょうか。あなた方は飽きもせず日がな一日中楽しめるかもしれませんが、一般の人はせいぜい5、6か所見ればお腹いっぱいです。まぁ、説明版などは設置しすぎたからといって困るものではありませんが、解説員を置くのはこれまた人件費がかかります。
このように書いてくると、とにかく人を減らせといっているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。とにかく私が指弾したいのは、地方の官営テーマパークですから雇用対策に人を雇おうというのは結構ですが、使い方があまりに無駄で非効率だといいたいのです。
たとえば、先に挙げた駐車場要員や自販機要員の方々には園内で茶店でもやっていただいて、木の実ソフトクリームだの古代米おむすびだの販売すれば、より収益や園内活性化に寄与できるはずです。あるいは無人のバスを行ったり来たりさせるよりも、馬車や牛車にしてタクシーのようにフレキシブルに園内を回らせた方が効率も集客性も高まると思われます。おそらくは、学者先生たちが当時の景観に近づけたいとか雰囲気を壊したくないとかいって反対しているのでしょうが、だったら最初からテーマパーク化などしてはいけないのです。
このように、私が子供の時から教科書やなんやで慣れ親しんできた吉野ヶ里遺跡は、お役所と学者先生のタッグによってかくもつまらなく非効率なテーマパークに仕立てられてしまっています。観光バスすらいないのですから、おそらくは主な収入源は周辺の学校の社会科見学くらいなのではないかと推測されます。それでもとても黒字経営ができているとは思えないので、多分各所からの補助金で放漫運営をしているのでしょう。もともとの遺跡自体がたいへんに価値の高いものだけに、現状を訪れてみてとにかく残念としかいいようがありません。一度破産して、民間の手が入ることを期待するばかりです。