見もの・読みもの日記

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古代の難波を想像する/重ね地図で愉しむ大阪「高低差」の秘密(梅林秀行)

2019-01-02 22:16:55 | 読んだもの(書籍)
〇梅林秀行監修『重ね地図で愉しむ大阪「高低差」の秘密』(宝島社新書) 宝島社 2018.12

 昨年末に読み終えて感想を書いていなかったもの。「ブラタモリ」でおなじみの梅林さんが監修した(執筆者は別のよう)大阪地形歩きの本。地図・写真などカラー図版が豊富で、特に要所要所で現在と過去の「重ね地図」を用いて、街のあり様の変遷を感じさせてくれる作りになっている。

 私が初めて大阪の地形に関心を持ったのは、2012年刊行の中沢新一『大阪アースダイバー』だった。そのときはまだ大阪の地形に疎くて、たとえば「上町台地」と聞いてもどの部分を指すのか、全く分からなかった。その後、定期的に大阪の文楽公演を見に行くようになったり、『真田丸』関連史跡を歩いてみたり、この5、6年で大阪に関する知識はずいぶん増えたと思う。

 しかし本書では、あらためて2万年前の旧石器時代から説き起こす。旧石器時代には瀬戸内海や大阪湾は干上がっており、生駒山地から淡路島の麓まで古大阪平野が広がっていた。気温が徐々に暖かくなると海面が上昇し、およそ6千年前の縄文時代前期中頃には大阪の平野部はほぼ海底に沈み、上町台地は細長い半島だった。想像の中に浮かぶこの風景、すごく好きだ。5千年前頃から海面が後退を始め、河内湾が徐々に淡水化して河内湖となる。6世紀末に四天王寺が建立され、7世紀に難波宮が置かれた当時の難波(大阪)の姿を、あらためて思い描いてみる。

 本書は「キタ」「ミナミ」「上町台地周辺」「天王寺周辺」の4つの章から成る。「キタ」「ミナミ」は、江戸時代のインフラ整備から明治・大正のさらなる発展が主な主題。「上町台地周辺」では難攻不落とたたえられた大阪城とその惣構、そして真田丸の遺構が詳しく紹介されていて、それぞれ興味深い。

 だが、やはり私の興味を引いたのは、ひとつは上町台地の急崖を実感させるという「天王寺七坂」。崖の上から海に沈んでいく夕陽が美しいので「夕陽丘」と呼ばれるようになったという。今度、ぜひ歩いてみたい。そして、同じエリアに重なるのだが、四天王寺周辺には、難波大道に由来する「大道」の地名(近年名づけられた)があったり、大阪市立美術館の北側の池は和気清麻呂が取り組んだ「河内川」開削の跡ではないかと推定されているそうだ。四天王寺は、伽藍が南北一直線に並ぶ配置だが、これは西側の大阪湾からの眺めを意識したのではないかというのも面白かった。

 また、道修町(どしょうまち)通には薬種問屋が軒を連ね、日本の薬祖神・少彦名と中国の医薬の神・神農を祀った少彦名神社があるとか、伏見町通には唐物問屋が多く、砂糖を扱う株問屋は堺筋に店を構えたとかは知らないことばかり。いや、最近少し大阪の通りの名前を覚えたからこそ、こうした歴史を面白く感じることができるのだ。あと、江戸時代、盂蘭盆会に大阪の市街地にあった墓地を巡拝する「七墓巡り」という習慣があったというのも面白いなあ。先祖供養に肝試しを兼ねていたという。東京(江戸)には同種の習慣はあったのかしら。あまり聞いたことがない。

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