〇アーティゾン美術館 『空間と作品』(2024年7月27日~10月14日)
おもしろい展覧会だという噂は聞いていたが、これほどとは思わなかった。「美術品が在ったその時々の場を想像し、体感してみること」をテーマに、和洋(+中華?)の絵画・立体作品140点余りのさまざまな鑑賞方法を提案する。
はじめに「祈りの対象」では広々とした展示室に置かれた2体の円空仏。「依頼主と」はピサロの『四季』連作4点。何の変哲もない農村の四季風景なんだけど、とてもよかった。ある銀行家がダイニングルームに飾るために発注したそうだが、毎日見るならこういう穏やかな絵がよいね。「持ち主の存在」は、同館のコレクションの中でも有名なピカソの『腕を組んですわるサルタンバンク』で、かつてピアニストのホロヴィッツが所蔵していたという。本展は、このあとも旧蔵者をクイズふうに書き添えたセクションがあって、ほうとかへえとか唸りながら、興味深く眺めた。川端康成旧蔵の古賀春江作品が複数出ていたが、Wikiを読んで、二人に深い交友関係があったことを初めて知った。
「建物の一部」では、大和郡山の柳沢家伝来とされる応挙の『竹に狗子・波に鴨図襖』を展示。展示室の一角に畳の床がしつらえてあり、畳に上がって、ガラスなしで襖と向き合うことができる(ただし近づきすぎると警告アナウンスが流れ、監視員さんに止められる)。現在は「竹に狗」面の展示(-9/8まで)。この仔犬がめちゃくちゃ可愛い。私は応挙の仔犬はあまり好きでなかったのだが、この子たちは元気があって私好み。
展示品は洋画が圧倒的に多いのだが、どうしても私の関心は日本・東洋美術に向いてしまう。驚いたのは『平治物語絵巻 六波羅合戦巻断簡』が出ていたこと。安井曾太郎旧蔵だそうだ。写真まで自由に撮らせてくれるなんて、なんちゅう太っ腹!
伝・宗達の『伊勢物語図色紙・彦星』は前田青邨旧蔵。2023年の久保惣美術館『宗達』展の図録を引っ張り出して「益田家本」の1枚であることを確認した。
因陀羅筆『禅機図断簡・丹霞焼仏図』はあまり見た記憶がないので、初見かと思ったら、2017年に京博『国宝』展で1回だけ見ていた。いや眼福。筑前藩主・黒田家に伝わったものだという。
ほかにも雪舟筆『四季山水図』4幅(重文、東博所蔵の同名作品とは異なる)や『鳥獣戯画断簡』など、あっと驚く「古美術」作品がところどころに潜んでいた。
一方で西洋絵画を「旧蔵者」や「額」(表装!)に注目して鑑賞するのは、東洋古美術の鑑賞法を応用するようで面白かった。西洋絵画の額装にも様式の流行り廃りがあり、今では当たり前の「白一色」「黒一色」のシンプルな額が登場したときのインパクトを想像すると楽しい。コレクターが古い額装を変えることがあるのは、東洋絵画の表装と変わらないように思った。青木繁『海の幸』の額(木製、四隅に2匹の魚の装飾)について、会場内のネットからは興味深い解説が読めたのだが、一般には公開されていないのかな? 残念。