見もの・読みもの日記

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2020年11月関西旅行:聖徳太子(中之島香雪美術館)

2020-11-24 22:06:55 | 行ったもの(美術館・見仏)

中之島香雪美術館 聖徳太子像・聖徳太子絵伝 修理完成記念特別展『聖徳太子-時空をつなぐものがたり-』(2020年10月31日~12月13日)

 今月二度目の週末関西旅行。最大の目的は、後述のとおり和歌山にあったのだが、時間があれば見ておきたい展覧会が大阪にも2つあった。まず初日、早めの新幹線に乗れたので、大阪文楽劇場に行く前に、中之島香雪美術館に寄り道できた。

 本展は、同館所蔵の『聖徳太子像』『聖徳太子絵伝』の修理完成を記念する特別展。鎌倉時代の『聖徳太子像』は角髪を結い、赤い有職文様の衣に袈裟をまとい、柄香炉を捧げた孝養像。残念ながら複製展示の期間にあたってしまったが、言われなければ気づかないくらいよくできた複製だった。大阪・弘川寺(南北朝時代)、岐阜・西方寺(室町~桃山時代)など類似作品が並んでいたのも面白かった。特に弘川寺の作品は背景や小道具までそっくりなのだが、赤外線で見ると、背後の屏風に描かれた水墨山水画に違いがある。香雪美術館の作品には、小さなサルが描かれていたり、水牛がいたりして(弘川寺の作品にもいる)動物好きの絵師だったのかと想像した。

 また『聖徳太子絵伝』3幅は火災に遭ったと見られ、損傷の激しい作品だったが、2015年春から3年かけて解体修理が行われた。愛知・本證寺には類似の絵伝9幅が伝わる(ところどころ図様に小さな違いあり)。香雪美術館の3幅は、この第3、第7、第9幅にあたると考えられ、残り5幅のうち4幅はボストン美術館にあることが分かっている。

 このほか、さまざまな聖徳太子絵伝が来ていて楽しかった。私がいちばん気に行ったのは、茨城・上宮寺(那珂市か)が所蔵する絵伝(鎌倉時代、14世紀)。素朴なタッチのずんぐりした登場人物たちが、血を流し、肉体を傷つけ合いながら、激しい戦さを繰り広げる。中世の東国武士の世界そのものだ。ああ、でも聖徳太子って、今日では知識人や文化英雄のイメージが強いけれど、武器をもって戦う皇子だったわけで、東国武士には親しみやすかったかもしれない。

 聖徳太子絵伝は、出産に立ち会う女性たちなど、リアルな生活風俗を描いているシーンもあれば、前世に修行した南岳衡山(湖南省)から法華経を持ち帰らせるという空想的なシーンもあり、振幅の大きさが面白い作品である。

 絵画の修理について丁寧に解説したコーナーもあって、勉強になった。絵具で描かれた状態を修復するのは作業のほんの一部。重要なのはむしろ素材で、なるべく原素材に近い布で補強するため、肉眼ではほとんど差の分からない布を三種類も織ってみて使用している。その熱意、頭が下がる。


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