見もの・読みもの日記

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「花だけ」と「人と花」/花・flower・華 2024(山種美術館)

2024-04-12 21:42:32 | 行ったもの(美術館・見仏)

山種美術館 特別展『花・flower・華 2024-奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら-』(2024年3月9日~5月6日)

 この時期恒例となっている、花の名品を一堂に集めた展覧会。見慣れた作品が多いので、今年はこの作品がこの位置か、という会場構成の違いが、ひとつの楽しみになっている。今年はぱっと目に飛び込んできたのが小茂田青樹の『春庭』。振り返ると奥村土牛の『木蓮』(深い紫色が上品で美しい)があった。視界の端に土牛の『醍醐』が見えて、おや今年は会場の前半に展示なんだ、めずらしいな、と思った。

 ゆっくり見ていくうちに、今年は、春→夏→秋→冬という季節のめぐりに従って作品が配置されていることにやっと気づいた。夏のセクションには福田平八郎の『牡丹』(屏風)。大坂中之島美術館で見てきた中にも類似の作品があったが、初期の作風だなと思った。1924年(32歳)という注記を見て納得。長谷川雅也『唯』は、ターコイズブルーの画面に繊細な線描でアジサイの株を描く。初めて知ったお名前だが、1974年生まれの現代日本画家だという。川端龍子の『八ツ橋』も出ていた。光琳の『燕子花図』のバリエーションって、どのくらいあるのだろう。本歌を踏まえて増殖していく日本の芸術のおもしろさである。それを言ったら、小林古径『蓮』にも、さまざまな『蓮池図』(古いものなら法隆寺の)の記憶が重なっている。

 中川一政『薔薇』や梅原龍三郎『薔薇と蜜柑』『向日葵』など、油彩画がさりげなく混ざっているのも面白かった。森田沙伊(このひとも初めて知った名前)の『薔薇』は、油彩だと思ったら「紙本金地・彩色」とあった。背景は隙間なく塗りつぶされているのだが、紙本金地を用いているらしい。絵具の下から金が照り輝くような効果をねらったのだろうか。奥村土牛の『薔薇』は金地の背景を残して、堂々とした大輪のピンク色のバラを描いている。81歳の作。妖艶な上に格調高く、素晴らしくて声も出ない。

 第1展示室の出口近くの大きな展示ケースには、荒木十畝の『四季花鳥』4幅と、松岡映丘『春光春衣』が掛けてあった。荒木作品で「四季の花々」のセクションが終わり、松岡作品の前に「人と花」というテーマが掲げられていた。そこで初めて気づいたのだが、今年の第1展示室は、最後の松岡作品(桜吹雪の下の王朝女房たち)を除き、「人」を描いたものがなく、純粋に「花」だけを描いた作品が並んでいる。もう1回、会場をまわって確かめたが、少し視点を引いた風景画でも、「人」の姿は全くなかった。

 小さな第2展示室には、5作品「人と花」の名品が並んでいた。守屋多々志『聴花(式子内親王)』や伊東深水『吉野太夫』など。そういえば、愛子内親王は卒論で式子内親王の和歌を扱われたそうだが、この絵画、見ていらっしゃるかしら。ぜひ見てほしい。


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