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2023年5月関西旅行:絵金(あべのハルカス美術館)

2023-05-09 23:04:55 | 行ったもの(美術館・見仏)

あべのハルカス美術館 『恐ろしいほど美しい 幕末土佐の天才絵師 絵金』(2023年4月22日~ 6月18日)

 幕末から明治初期にかけて数多くの芝居絵屏風などを残した「絵金」こと土佐の絵師・金蔵の魅力を代表作の数々で紹介する。私は「土佐の絵金」の名前を、いつ、誰から教わったのだろう? 実は15年近く前にも同じことをつぶやいているのだが、全く記憶がない。まだネットもなかった学生時代に、何かの縁でこの絵師の存在を知って、ずっと憧れていた。2007年には赤岡の「絵金まつり」を見に行って、絵金の作品を浴びるほど見た。その後、2010年に板橋区立美術館の『諸国畸人伝』、2020年に江戸博とあべのハルカスの『奇才 江戸絵画の冒険者たち』にほんの数点だけ出ていたが、全然物足りなかった。そうしたら「絵金」を冠したこの展覧会(巡回なし)! あべのハルカスさんありがとう!!

 なお、図録冒頭の「ごあいさつ」によれば、1966年には雑誌『太陽』で特集されたのを契機に「絵金」は小説・舞台・映画になるなど一時ブームとなり、「1970年前後には東京、大阪の百貨店などで絵金展が開催されました」とある。えええ、こんな「血みどろ絵」を百貨店で展示していたのか。まあ1970年前後って、まだ大都市にも「猥雑」や「混沌」の残る時代だったかもしれない。

 会場の第1室に並んだ芝居絵屏風は、いずれも香南市赤岡町の所蔵で、よく紹介されるので、見覚えのあるものだった。第2室は「高知の夏祭り」と題して、絵金の芝居絵屏風を飾る習俗を再現。これは高知市朝倉の朝倉神社の夏祭りの屏風台である。提灯の照明が明るくなったり暗くなったりすると、絵の雰囲気が変わるのもおもしろい。

 これは香美市の八王子宮の夏の大祭。異国の妖怪・手長足長を飾りとする拝殿風の屏風台に5枚の芝居絵屏風を並べる。

 このほかにも『忠臣蔵』や『釜淵双級巴(かまがふちふたつどもえ)』(石川五右衛門が主人公)の絵馬提灯、『土佐震災図絵』『土佐年中風俗絵巻』など、私の知らなかった絵金作品をたくさん見ることができて興奮した。

 10年~15年前に私が絵金の芝居絵屏風を見たときは、視覚的なカッコよさに一目惚れしたのだが、細々と歌舞伎や文楽を見続けてきたおかげで、あの狂言のあの場面、この人物をこう描くのね、という理解が、むかしより進んだように思う。やはり芝居の筋を知っていると、どんなに陰惨で残酷な場面でも、そこに至るまでの物語が喚起されて、味わいが加わる。絵金の芝居絵、幼い子供が悲惨な目にあっているものが多いように思うのだが、これは絵金の嗜好というより、日本の(近世の)芝居に子供の悲劇が多いのかもしれない。

 本展には、絵金ふうの芝居絵や武者絵を残した絵師たちも紹介されており、河田小龍の作品もあった。図録には「土佐における江戸末まら明治初期の地芝居の状況について」(藤村忠範)という興味深い論考もあり(これから読む)、資料として「明治初期高知歌舞伎興行年表」も付いている。会場で貰った『高知 絵金に出会えるガイドブック2023』(創造広場「アクトランド」他)には、芝居絵屏風を見ることのできる施設・祭礼の情報がまとまっていて便利。高知、近いうちに行かなくちゃ。


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