見もの・読みもの日記

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この人この作品/奇才 江戸絵画の冒険者たち(江戸東京博物館)

2020-06-06 23:30:17 | 行ったもの(美術館・見仏)

江戸東京博物館 特別展『奇才-江戸絵画の冒険者たち-』(2020年6月2日〜6月21日)

 ほぼ3か月ぶり、自粛明け初の展覧会を見て来た。北は北海道から南は九州まで、全国から奇才絵師を集め、その個性溢れる作品を紹介する。登場する絵師は、「京」俵屋宗達、尾形光琳、狩野山雪、伊藤若冲、円山応挙、長澤蘆雪、曽我蕭白、池大雅、与謝蕪村、祇園井特、狩野永岳。「大坂」中村芳中、耳鳥斎、林閬苑、墨江武禅。「江戸」葛飾北斎、加藤信清、谷文晁、鈴木其一、狩野(逸見)一信、歌川国芳。「諸国」蠣崎波響、菅井海関、林十江、河鍋暁斎、佐竹蓬平、高井鴻山、白隠、田中訥言、岩佐又兵衛、浦上玉堂、絵金、仙厓、片山楊谷、神田等謙。だいたい知っている顔ぶれである。

 ただし会期が短縮された影響で、浦上玉堂と神田等謙の作品の展示はなし。1作品か2作品だけという絵師も多かったので、このひとはこれで来たか!?という選択に賛同したり首を傾げたりするのも楽しかった。曽我蕭白の1点が『楼閣山水図屏風』(近江神宮)の左隻(金山寺)だったのは嬉しかったなあ。琵琶湖文化館の、人の少ない冷え冷えした展示室で向き合ったことが忘れられない。祇園井特は3点とも知らない作品だった。『公卿と官女図屏風』は千葉市美術館所蔵。まだデロリの雰囲気は控えめ。そして本居宣長の肖像画『鈴屋大人像』『本居宣長七十二歳像』2点があるのを初めて知った。撫で肩、細面の柔和な学者顔だが、高い鼻が意志の強さを表しているように思える。

 中村芳中についての解説「一見ヘタウマの愛嬌ある画風は、ようやく近年になって受け入れられ、コアなファンが多い」には笑ってしまった。そうか?私、コアなファンなのか。墨江武禅の『月下山水図』は、すぐに記憶がよみがえった。2009年と2012年に府中市美術館で見ているようだ。「中景から近景に到る神経を逆なでするような描写」という解説は、この作品のことだろうか。やはりモノクロの『雪中図』、西洋の淡彩写生画のような『花鳥図』もよかった。

 葛飾北斎は西新井大師總持寺の『弘法大師修法図』でテンションがダダ上がりする。黒い背景に浮かぶ赤鬼の異様な迫力。小布施の祭屋台の天井絵『女浪』と『鳳凰図』が来ていたのも嬉しかった。小布施の北斎館に行ったのは、もう何年前になるだろうか。

 ボスやブリューゲルを思わせる、独特の妖怪画を墨画や著色で描く高井鴻山は信州・小布施の生まれ。北斎を小布施に招いた人物であることを初めて知った。彼の作品は、2016年に江戸博の『大妖怪展』で見ていた。田中訥言は抽象化をきわめた金地面屏風『日月図屏風』(名古屋市博物館)1点だけだが、見る価値があった。ほっこりした大和絵の絵師だと思っていたのでイメージを裏切られた。水戸の林十江も好きな画家なので、取り上げていただき、ありがとうございます。そして絵金の屏風が4点!土佐の絵金が東京で見られるなんて(しかも図録の表紙になっている!)なんと夢のような幸せ。

 ところで、本来なら展示を予定されていた作品は約230件。図録を見ると、うお、こんな作品もあんな作品も展示予定だったのか!と唸る。監修者の安村敏信先生、さぞ残念なことだろう。このラインナップなら全作品見るために、たぶん3回は通っていたところだ。同じように多数の絵師を紹介した展覧会に、2018年、千葉市美術館の『百花繚乱列島-江戸諸国絵師(うまいもん)めぐり-』があったことは、時々思い出していた。重なる絵師も、重ならない絵師もいるのが興味深い。

 しかし新型コロナ騒ぎがなければ、もっとお客が殺到して、ゆっくり見られなかったのではないかと思う。入館時は検温、会場内はマスク着用必須だった。会話が制限されているので、会場内が静かなのもよかった。しばらくこのままでもよいな。


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