見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2023年8-12月展覧会拾遺

2023-12-22 15:09:50 | 行ったもの(美術館・見仏)

書き洩らし展覧会レポートの振り返り。

泉屋博古館東京 特別企画展『日本画の棲み家-「床の間芸術」を考える』(2023年11月2日~12月17日)

 明治時代以降、西洋に倣った展覧会制度の導入は、床の間や座敷を「棲み家」とした日本絵画を展覧会場へと住み替えさせた。一方、同館の日本画コレクションは、むしろ邸宅を飾るために描かれたもので、来客を迎えるための屏風や床映えする掛軸など、展覧会を舞台とする「展覧会芸術」とは逆行する「柔和な」性質と「吉祥的」内容を備えている。本展は、かつて住友の邸宅を飾った日本画を紹介しながら「床の間芸術」を再考する。この言葉、時代によって、あるいは画家によって、否定的にも肯定的にも使われているのが興味深かった。木島桜谷の金屏風着色『雪中梅花』の美しさ!これは毎年でも見たい。

町田市立国際版画美術館 企画展『楊洲周延 明治を描き尽くした浮世絵師』(2023年10月7日〜12月10日)

 浮世絵師・楊洲周延(ちかのぶ、1838-1912)の作品、錦絵、版本、肉筆画など約300点(展示替えあり)の展示を通して、その全体像に迫る。以前から気になる存在ではあったのだが、一気に大量の作品を見ることができて大満足。私が周延の名前を覚えたのは、洋装の貴顕・貴婦人や女学生など明治の開化風俗を描いた作品からだが、実は生涯にわたってテーマや画風を模索し、変化と成長を続けていたことが分かった。

 印象に残ったのは、明治20年代後半以降、江戸懐古の機運を受けて制作された『千代田の大奥』の連作。四季折々の行事や風物を楽しむ大奥の女性たち、男の目のない女子校みたいで、和気藹々と楽しそうに見えた。金屏風『流鏑馬之図』(上越市立歴史博物館)は、70代の作品とは思えない、力強さと描写の的確さに惚れ惚れした。

永青文庫 夏季展『細川護立の愛した画家たち-ポール・セザンヌ、梅原龍三郎、安井曾太郎-』(2023年7月29日~9月24日)

 永青文庫の設立者・細川護立と、武者小路実篤、梅原龍三郎、安井曾太郎など芸術家との交流によって細川家に集った洋画を中心に、永青文庫の近代絵画コレクションの一面を紹介する。展覧会の見ものは、久しぶりに公開するポール・セザンヌの水彩画『登り道』(日本にもたらされた最初期のセザンヌ)で、これはたぶん初めて見た。私は梅原の『紫禁城』、安井の『承徳の喇嘛廟』『承徳風景』『清晏舫』(頤和園の中の風景)など、日本人が描いた中国の風景を興味深く眺めた。古径の『北京写生』(街並みなどスケッチ4枚)もよかった。なお、安井には『承徳の喇嘛廟』『承徳喇嘛廟』2作品がある。展示は前者。後者は愛知県美術館所蔵、どこで見た記憶がある。

日本民藝館 特別展・村田コレクション受贈記念『西洋工芸の美』(2023年9月14日~11月23日)

 故・村田新蔵氏と洋子氏が蒐集した西洋を中心とする工芸品コレクション800点以上の受贈を記念し、両氏が生涯をかけて蒐めた西洋工芸の精華を紹介する。同館は、実は日本だけでなく西洋やその他の地域の工芸品も数多く所蔵・展示しているが、「西洋工芸」をはっきりうたう特別展は、2017年の『ウィンザーチェア』以来かと思う。木製椅子は今回もたくさんあったが、金物製品が珍しくて、面白かった。 暖炉の薪入れトング等を置く鉄製の台座をファイヤードッグと呼ぶことを初めて知った。

日本民藝館 特別展『聖像・仏像・彫像 柳宗悦が見た「彫刻」』(2023年6月29日~9月3日)

 民間仏や奉納面などの当館コレクションを「彫刻」という観点から焦点をあてる試み。朝鮮半島の仏像や中国の明器など東アジアの彫像のほか、各国の聖像や祖霊像、仮面など素朴な魅力に溢れる民間の彫刻を展示する。楽しかった。柳宗悦が愛した木喰仏はもちろん、瀟洒な唐の加彩舞楽女子俑あり、特徴の核心を捉えたアフリカの鳥の木像あり、『みちのくいとしい仏たち』に通じる造形の(東北の制作か、よく分からないが)恵比須座像などもあった。


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