見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

陶磁器あれこれ/青磁(出光美術館)、古伊賀(五島美術館)他

2023-12-19 22:32:34 | 行ったもの(美術館・見仏)

レポートを書きそびれた展覧会が溜まっているので、思い出せるものから書いてみる。

出光美術館 『青磁-世界を魅了したやきもの』(2023年11月3日~2024年1月28日)

 青磁の誕生前夜の灰釉陶器から、漢時代に成熟し始める越州窯、日本人が愛してやまない龍泉窯青磁など、中国における青磁の展開を中心に取り上げながら、高麗や日本、さらには東南アジアなどの青磁も紹介し、世界の人々を魅了した青磁の魅力に迫る。展示件数116件、ほとんどが同館のコレクションだが、徳川美術館や根津美術館からの出陳もあり。東博の青磁輪花茶碗『馬蝗絆』も来ていた。

 青磁は、もと南方で誕生したが、南北朝の時代に南北の文化交流が進むと、華北でも生産が始まった可能性がある、という解説を読んで、こんなところにも南北の多元性が!と興味深かった。あらためて認識したのは、西晋・東晋時代の越州窯のユニークな造形。越国(江蘇省・浙江省)だから、もちろん南方である。たくさんの鳥や獣、蟹やイモリ(?)も貼りついた『青磁神亭壺』が楽しい。一方、宋元の青磁はシンプルで揺るぎない色とかたちが魅力。その古典的な美意識は、明清にも引き継がれる。

 中国で創出された青磁は、朝鮮半島、日本、東南アジア、さらに西アジアへも流通し、各地で青磁づくりが行われた。鍋島藩窯の『青磁牡丹文皿』は、欲目ではなく、中国の官窯と比べても遜色がないように思われた。さすが日本というより、さすが鍋島というべきだろう。

五島美術館 特別展『古伊賀 破格のやきもの』(2023年10月21日~12月3日)

 古伊賀は、桃山時代から江戸時代にかけて今の三重県伊賀市で焼かれたやきもので、歪んだ形と、碧緑色の「ビードロ釉」、赤く焼きあがった「火色」、灰色のゴツゴツした器肌の「焦げ」が魅力の焼き締め陶器である。五島美術館は古伊賀の水指の名品『破袋』を所蔵することで有名だが、本展は、全国の美術館・博物館の所蔵品に加えて、個人蔵の名品も多数集めて、約90点を展観する。

 いや面白かった!古伊賀には以前から惹かれていたが、こんなに面白い焼きものだとは思わなかった。伊賀耳付花生『聖』(個人蔵)には「あたかもラジオ体操をせる人体のようである」という解説が付いていて笑ってしまった。確かに耳付花生は人の姿を思わせる形態で、「業平」「老僧」「福の神」などの銘に納得したり首をひねったりするのも楽しい。私が気に入ったのは「林和靖」なのだが、個人蔵だし、次はいつお目にかかれるだろうか。耳庵旧蔵の「羅生門」(現在も個人蔵)は、茶室「松寿庵」の床の間模型の中に置かれていて、雰囲気に合っていた。

 水指では伊賀耳付水指「鬼の首」が印象に残った。三重県津市にある石水博物館所蔵。川喜田家の当主が代々蒐集してきたコレクションと川喜田半泥子の名品の数々を所蔵しているという。いつか行ってみたい。茶碗は少なかったが、伊賀茶碗「后の名月(后名月)」は、光悦の楽茶碗を思わせる立ち上がりが好みだった。これは伊賀信楽古陶館にあるらしい。

静嘉堂文庫美術館 静嘉堂@丸の内 開館1周年記念特別展『二つの頂-宋磁と清朝官窯』(2023年10月7日~12月17日)

 8000年を超える中国陶磁の歴史上、二つの頂点といえる宋代(960-1279)の陶磁器と清朝(1616-1912)の官窯磁器を静嘉堂コレクションから紹介する。宋代の陶磁器は、磁州窯系の焼きものが多く、しかも陶枕が圧倒的に多くて楽しかった。磁州窯については、以前、世田谷岡本の静嘉堂文庫で、守屋雅史氏の講演会を聞いたことを思い出した。清朝官窯も素晴らしかった。私は雍正年間の豆彩(清雅で繊細なグリーン)が好きなのだが、乾隆年間の粉彩もよい。『粉彩錦荔枝蝶文碗』の愛らしさには言葉を失う。巨大でマニエリスティックなものへの志向がある一方で、よく分からない文明だなあ、と思う。

 なお、常設展示化している曜変天目については、稲葉家当主・子爵稲葉正凱からの譲状など、伝来の証であるさまざまな付属品が一緒に出ていて、興味深かった。


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