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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

祈りに応える仏さま/阿弥陀如来(根津美術館)

2022-06-12 23:59:37 | 行ったもの(美術館・見仏)

〇根津美術館 企画展『阿弥陀如来 浄土への憧れ』(2022年5月28日~7月3日)

 館蔵の仏画を中心として、日本における阿弥陀信仰の歴史とその広がりを概観するとともに、高麗における作例もあわせて紹介する。今年は、なぜか春から仏画の展覧会が続いていて嬉しい。特に中之島香雪美術館で見た『来迎』展 のことは、何度も思い出しながら本展を鑑賞した。

 冒頭には鎌倉時代の典型的な『阿弥陀三尊来迎図』。全身金色の立像形式の三尊が雲に乗って左から右方向に向かってくる。『金剛界八十一尊曼荼羅』は何度も見ている華やかな曼荼羅図だが、中央の大日如来の上方にいるのが阿弥陀如来だとは思っていなかった。

 絵画と同じ展示室に仏像が混じっているのは本展の特色(同館ではあまりない)。かなり大きな阿弥陀如来立像(鎌倉時代)は修理を終えて初公開だという。ところどころ金箔が残る。衣の打合せのたっぷりした表現が優雅。小さい銅製の光背(飛鳥時代)は、一番外側が水滴型(宝珠光?)、次が放射光、一番内側がマーガレットの花のようなかたちの、3つのパーツを組み合わせたもの。一番外側の裏面に戌午年=斉明天皇4年(658)の銘があり、阿弥陀の名と浄土思想を明記した現存最古の資料と見られている。観心寺の観音菩薩の光背だったという説明があり、調べたら、以下に詳しかった。→観仏日々帖:こぼれ話~光背の話③ 根津美術館の観心寺伝来・戊午年銘光背の話 (2020/5/15)

 菩薩立像(平安時代)は、ほぼ裸の上半身に細い天衣をまとう。定朝の作風に近いという解説がついていたが、眠たげではなく、理知的で麗しかった。体をわずかにひねり、足を開き気味に立つ。初見かなあと思ったが、2019年の同館『優しいほとけ・怖いほとけ』に出ていたようだ。

 『融通念仏縁起絵巻』巻下(南北朝時代)も記憶になかったが、2013年に一度見ていた。入滅する良忍を迎えに来る雲に乗った仏たち、スケボーしているような身のこなしでかわいい。『当麻曼荼羅』(南北朝時代)は大作だが、これでも原本の四分の一サイズだという。浄土の楼閣の複雑なこと、描き込まれた仏と浄土の住人たちの数の多さ。一方、『兜率天曼荼羅』(南北朝時代)は青と緑の色彩が美しいが、住人の姿が小さく少ないので、どこか寂しい。

 『山越阿弥陀図』(南北朝時代)は栃木・現聲寺所蔵。時宗のお寺のようだ。山越阿弥陀図の作例は、ほぼ近畿地方に限られ、東国では珍しいそうだ。目と眉のくっきりしたお顔である。『熊野権現影向図』(南北朝時代、神奈川・正念寺)は、巨大な雲の塊の中から、熊野権現の本地仏である阿弥陀如来が姿を現したところ。熊野詣にきた奥州名取の老女が浜の宮で阿弥陀如来を拝したという説話による。ぽっちゃり福々しい阿弥陀如来の足元では、人々(男女)数名が両手を合わせて拝んでいる。『善光寺如来縁起絵』3幅(南北朝時代)は、中幅が三尊の下に善光寺の伽藍を描いていることは分かった。右幅は外国らしく、左幅は日本(京都)の貴族たちの様子だろうか。赤鬼のようなものも見える。

 よく似た小型の銅仏2躯、同館所蔵の勢至菩薩立像と、神奈川県立歴史博物館所蔵の観音菩薩立像は、もとは一対であったらしい。よく見ると胸の前で合わせた両手の重ね方が異なる。2躯とも筒型の宝冠を被っているのだが、宝冠は頭部の周りを飾るだけで、頭頂部は髷が見えているのが面白かった。

 第2室は高麗仏教美術のミニ特集で、古経・青磁のほか、仏画が6件。元都に滞在していた忠烈王の速やかな帰還を祈って制作されたという『阿弥陀如来像』がやはり格別に手の込んだ優品。阿弥陀如来は威厳のある王者の風格で、胸に卍のマーク。『阿弥陀三尊像』は観音・勢至のヴェールの表現が優美。少し時代が下って表現が固定化したものも、それはそれで面白かった。

 展示室5は「注文された舶来物」をテーマにした陶磁器の展示。でも南蛮芋頭水指とかは、現地で別の用途に使われていたやきものだから「注文生産」じゃないだろう、と思ったが、広く外国で調達し招来されたやきものを、このタイトルの下に集めている。「阿蘭陀色絵」の名で呼ばれる、青とオレンジが目立つ唐草文の容器は、大小多様なものが伝来しており、5件まとめて見ることができて、興味深かった。また、東京大学本郷地区(加賀屋敷跡)などから出土した陶片の解説に、同館は1987年に『茶陶のおらんだ』、1993年に『南蛮・島物』という展覧会を開催したが、当時はこのような資料はなく、その後、東京の再開発の進展によって、さまざまな陶片が発見されたことが記されていた。

 展示室6は「雨中の茶会」。雨や水、舟などにちなんだ茶道具が多く出ていた。

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