見もの・読みもの日記

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はじける禅画/仙厓ワールド(永青文庫)

2022-06-20 12:04:24 | 行ったもの(美術館・見仏)

永青文庫 初夏展『仙厓ワールド-また来て笑って!仙厓さんのZen Zen 禅画-』(2022年5月21日~7月18日)

 同文庫は、設立者・細川護立が集めた仙厓義梵(1750-1837)の作品100 点以上を所蔵する。2016年の秋冬展に続く第2弾となる本展では、兄弟子にあたる誠拙周樗(せいせつしゅうちょ、1745-1820)など、仙厓周辺の禅僧による書画をあわせて展示し、知られざる禅画コレクションの一端を紹介する。

 2016年の『仙厓ワールド-来て見て笑って!仙厓さんのゆるカワ絵画-』は、もちろん見に行ったが、104点を完全入替の4期に分けての公開だったので、コレクションの4分の1しか見ることができなかった。今季も前後期でかなり入れ替えがある。

 4階の展示室は、はじめに神仏や道釈人物画が並んでいて楽しかった。『出山釈迦図』はなかなかのイケメン。『観音図』は母性を感じさせる。しかし『文殊菩薩図』は、長髪にヘアバンドというインディアンみたいなスタイルで、衣服を完全に省略して手足を描いているので裸に見える。ふさふさの尻尾を高く上げた獅子も、ウナギイヌみたい。『鍾馗図』は小鬼をつまみあげた髭もじゃの鍾馗さまがニッコリ、つまみ上げられた小鬼もバンザイスタイルでニッコリしていて、お父さんと子供の記念写真みたい。

 『竜虎図』双福は、2016年にも見て一目惚れしたもの。虎の目が、丸二つの中に半眼を現すような短い横線を入れるところ、龍の目が、右と左、バラバラの方向に黒目が寄っているところ、どちらも昭和のギャグマンガにある表現だと思った。あと、どの絵もサラッと興にまかせて早描きしているようで(実際そうなのだろうけど)、墨の濃淡の使い分けは絶妙だと思う。たとえば『七福図』の毘沙門天の顔。顔の輪郭線、鼻、目玉の輪郭線などは薄墨で、目玉とへの字の口だけ墨が濃い。これは筆の速度で調節するのか?墨を付け直すのだろうか? 『猪頭和尚図』の背景の松の木は、薄墨の枝と濃墨の枝を重ねて描いている。

 4階では、仙厓の兄弟子にあたる誠拙周樗の書画もあわせて展示。3階は「禅画ワールド」の括りで、白隠もけっこう出ていた。私は、永青文庫の禅画といえば白隠とその周辺の印象が強くて、仙厓作品をこんなに持っていることは、最近まで知らなかった。解説によれば、細川護立は白隠から蒐集を始め、渋谷・祥雲寺(広尾にあるのかあ)の鈴木子順の勧めで仙厓を集め始めたという。晩年の護立は、毎晩、白隠と仙厓を1幅ずつ選んで部屋に掛けて楽しんだとのこと。うらやましい。

 私が仙厓作品を知ったのは、出光美術館の影響が大きいが、出光コレクションが「ゆるい」「かわいい」「ほっこり」系であるのに比べると、永青文庫の仙厓さんのほうがはじけていて、ちょっと毒が強い感じがする。

 また「禅画」というのが戦後に広まった用語で、ドイツ人美術研究家クルト・ブラッシュ(1907-1974)の著書『白隠と禅画』(1957年)『禅画』(1962年)等による、ということも初めて知った。私は、2000年に松涛美術館で開催された『ZENGA』展でこの言葉を覚えたように思う。この言葉、主に江戸時代の絵画作品を指し、中国絵画には使わないのだな。なるほど。

 「禅画ワールド」には、山水図や風俗図も含まれる。仙厓が『都府楼図』(手前の建物は観世音寺か)や『宝満山竈門神社図』などの風景や、花見や祭りに興ずる博多の人々をたくさん描いているのは楽しかった。また『臨済図』は、70代前半の作品だというが、拳を振り上げた臨済和尚も周りの坊主たちも、まだ表情が硬いのが、珍しく感じられた。

 誠拙周樗は、あまり印象に残らなかったが、『鰯の頭図』には笑ってしまった。イワシの表情が生き生きしていて、紙を破って顔をのぞかせているようにも見える。白隠は小品のみだが『連弁観音図』が色っぽかった。

 最後に「あなたが選ぶ禅画キャラBest10」の人気投票も開催中。結果は展覧会終了後にホームページで発表とのこと。

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