見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2022年4-5月@東京:展覧会拾遺

2022-06-03 22:07:16 | 行ったもの(美術館・見仏)

 レポートを書けていない展覧会が増えてきたので、まとめて。

三井記念美術館 リニューアルオープンI『絵のある陶磁器:仁清・乾山・永楽と東洋陶磁』(2022年4月29日~6月26日)

 昨年8月末からリニューアル工事のため休館していた同館が再開館した。最初の展覧会のテーマが「陶磁器」なのは、同館のコレクションの強みをよく表している。100件を超す展示品(絵画や屏風を含む)のリストには、全て「北三井家」「室町三井家」などの旧蔵者が付記されていた。同館には何度も来ているが、今回、意外と初めて見るものが多かったように思う。気に入ったもののひとつは『絵高麗茶碗』。「絵高麗」と言いつつ、実は磁州窯(明代)で、素朴なウサギの絵は、オオカミみたいなシルエットだった。永楽和全の『乾山写色絵草花文小皿』12口セットや、永楽保全の『安南写福寿草植木鉢』(おもちゃみたい)など、かわいい…とつぶやきたくなるものが多い。

 なお、館内の雰囲気はあまり大きく変わっていないが、ミュージアムショップが広くなった。そのかわり、カフェがなくなってしまったのは大変残念。休館前、来年も冷やし胡麻だれうどんが食べられることを願っていたのに、あれが最後だったか。

松岡美術館 『松岡コレクション めぐりあうものたち Vol.1』(2022年4月26日~7月24日)

 3期連続の館蔵コレクション展の第1回。「二色(ふたいろ)の美」をテーマにした中国磁器、「故(ふる)きを温(たず)ねて」をテーマにした日本画、そして「中国青銅器 形と用途」を紹介する。やはり中国磁器コレクションが素晴らしく、磁州窯系の黒と白のうつわをたくさん見ることができた。よくある唐草文や牡丹文だけでなく、魚文(餡のつまった鯛焼みたい)や人物図(李白みたいな、ゆるいおじさん)もあるのだな。日本画は、真野満の『後白河院と遊女乙前』が印象に残った。安田靫彦に学び、歴史や神話に取材した作品が多い画家らしい。

泉屋博古館東京 リニューアルオープン記念展II『光陰礼讃:モネからはじまる住友洋画コレクション』(2022年5月21日~7月31日)

 住友吉左衞門友純(春翠)が、パリでモネの油彩画2点を入手したことに始まる住友洋画コレクションを紹介する。19世紀末のフランス絵画は、印象派の台頭とともに古典的写実派が衰退していくが、住友コレクションは、印象派と古典派の作品が揃って収集されているところに特徴があるという。なるほど。モネの『モンソー公園』やルノワールの『果物(プラム)』は、自然光の下で複雑な変化を見せる色彩をキャンバスに留めた、印象派らしい作品である。一方、ヒロイックでドラマチックな歴史的瞬間を描いた、ジャン=ポール・ローランスの『マルソー将軍の遺体の前のオーストリアの参謀たち』は、古典的写実派に入るのだろう。

 むしろ私が惹かれたのは、日本人の洋画作品である。『加茂の競馬』を描いた鹿子木孟郎は明治生まれの洋画家なのだな。岡田三郎助の『五葉蔦』は、さすが、普通の女性を魅力的に描く。梅原龍三郎の『北京長安街』も好き。岡鹿之助や熊谷守一もあって、嬉しかった。

太田記念美術館 『北斎とライバルたち』(2022年4月22日~6月26日)

 葛飾北斎の作品と、同時代・次世代に活躍した絵師たちの作品を並べ、北斎とライバルたちがどのような関係にあったのかを紹介する。「風景」「美人画」「役者絵」「武者絵」など、さまざまなジャンルで比較が試みられているが、一番おもしろいのは「富士」をめぐる、北斎と広重の比較。広重は基本的に自然に忠実で、大胆な構図も「現実にあり得る風景」の範疇だが、北斎は人目を驚かすためなら、けっこう平気でウソをつく(それが悪いとは言っていない)。また、北斎の弟子に昇亭北寿という絵師がいて、北斎の洋風風景画を継承し、変な(褒めている)風景画を描いていることを覚えた。

国立新美術館 『メトロポリタン美術館展:西洋絵画の500年』(2022年2月9日~5月30日)

 米国ニューヨークには、1回だけ行ったことがあるが、仕事で自由時間があまりなかったので、メトロポリタン美術館には行かず仕舞いだった。本展には、ルネサンス期(15世紀)から19世紀まで、選りすぐった名画65点が展示されている。はじめに15-16世紀の絵画(宗教的な主題が多い)が17点もあって圧倒された。作者の名前はあまり気にせずに見ていたが、クラーナハ(父)の『パリスの審判』とエル・グレコの『羊飼いの礼拝』はすぐに分かった。本展のメインビジュアルになっているのは、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの『女占い師』。モデルを理想化しない、冷めた視線がおもしろい。Wikiによれば、一度忘却されて20世紀初頭に「再発見」された画家だという。

 ゴヤの『ホセ・コスタ・イ・ボネルス(通称ペピート)』を見ることができたのも嬉しかった。この画家の描く少年少女はつねに可愛い。ドガの踊り子、ルノワールの少女、セザンヌのリンゴと洋ナシ、モネの睡蓮など、画家を代表するテーマの作品が来ていて、西洋絵画史の教科書みたいだと思った。

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