■興福寺 国宝館
午前中を京都で過ごし、奈良に着いたのは午後2時頃だった。今回、中金堂落慶記念のお弁当(販売期間:2018年3月3日~10月28日、土日祝日限定)をGETしようと目論んでいたのだが、予定外の龍谷ミュージアムに寄ってきたため、もう「完売」になっていた。仕方がない、秋までにまだ何度か奈良に来る機会があるだろう。
興福寺では、久しぶりに国宝館に寄った。2017年の1年間に渡る耐震補強工事を終え、今年1月1日にリニューアルオープンして初めての訪問である。全体がきれいになったのは間違いないが、古い国宝館を知る身としては、2010年のリニューアルが衝撃だったのに比べると、今回はプチリニューアルという感じだった。まあしかし、昨年は仮金堂で特別公開されていた阿修羅像も、『運慶展』で見た天燈鬼と龍燈鬼も、やっぱりこの空間で見るのが、一番しっくり来る。
■春日大社 国宝殿 春日大社御創建1250年記念展II『聖域 御本殿を飾る美術』(2018年4月1日~8月26日)
奈良博の裏を素通りして春日大社へ向かう。国宝殿に併設されたカフェ「鹿音(かのん)」で遅い昼食。外国のお客さんの姿が多かった。現在の展示は、春日大社が平成30年(2018)に創建1250年を迎えたことを記念し、平成27年(2015)から28年(2016)に行われた第60次式年造替に伴って、修復・復元されて見ることができるようになった文化財の一部などを展示する。本殿を飾る『御間塀(おあいべい)障壁画』4点「神馬牽引図(第一殿東)」「神馬牽引図(第一・二殿間)」「獅子牡丹図(第二・三殿間)」「神馬牽引図(第三・四殿間)」は、式年造替の特別参拝の際に見た覚えがあるもの。造替で不要になった古い壁画を剥ぎ取り、保存しているのだそうだ。江戸時代につくられた四脚机や、現代の技術で復元された御翠簾(青いすだれ)も面白かった。
■奈良国立博物館 創建1250年記念特別展『国宝 春日大社のすべて』(2018年4月14日~6月10日)
奈良博に入ったのは夕方4時頃。しかし土曜日の特別展は午後7時まで開館しているので余裕である。第1室(東新館)は古神宝類。武具、楽器、鏡、木笏など。藤原頼長が寄進したとされる『金地螺鈿毛抜形太刀』(鞘に雀を捕まえようとするぶち猫の姿)や雅楽で使われる巨大な鼉太鼓も出ていた。私は、2017年に東博で行われた『春日大社 千年の至宝』展も見ているので、このへんまでは予想どおりである。この展覧会は、東博の二番煎じじゃないかと疑っていたが、京博で会った知り合いが「奈良博は、東京でできなかった空間づくりをしようと頑張っている」と言っていたので、少し期待を持つことにした。
東新館の最後に大鎧2領と胴丸2領が出ていたのには息を呑んだ。特に『赤糸威大鎧(竹虎雀飾)』は美麗。しかしまだ、「東京でできなかった空間づくり」は実感しないまま、西新館に移動する。西新館の冒頭では、春日大社の創建伝説を取り上げ、鹿島神宮、香取神宮とのつながりを紹介する。東国人としてちょっとうれしい。鹿島神宮の『直刀・黒漆平文大刀拵』(国宝)、香取神宮の『海獣葡萄鏡』(国宝)が来ていて驚く。ちなみに、春日神社にも『禽獣葡萄鏡』が伝わっていることを初めて知った。『春日明神影向図』(鎌倉時代)は、車(牛はつながれていない)に乗った明神(黒い束帯姿)が御簾から身を乗り出しているところ。ただし雲で顔は隠れている。鷹司冬平が夢に見た明神の姿だという。藤田美術館の所蔵品だというが、初めて見た。
続いて、20点近く並んだ春日宮曼荼羅。有名な南市町自治会のものをはじめ、個性的な、各地の名品が大集結しており、ここが一番テンションが上がった。むかしから好きなのだが、実際の春日大社に何度も詣で、まわりの地理を把握することで、ますます好きになってきた。静嘉堂文庫の春日宮曼荼羅(南北朝時代、後期出品)は、画面の上部に神々と本地仏の姿を大きく描く。画面の上半分に補陀落山を描く「春日補陀山落曼荼羅」や、興福寺南円堂本尊を描く「春日南円堂曼荼羅」、講堂諸尊を描く「興福寺講堂曼荼羅」(ちゃんと文殊と維摩居士もいる!)というのもあるそうだ。「鹿曼荼羅」もいろいろ並ぶと可愛い。しかし図録を見ていると、見逃した中にも不思議な作品が多いなあ。
『春日権現験記絵』は第1巻と第6巻を展示。混雑していないので、飽きるまで眺めていられる。仏画の名品はまだまだ続き、仏像は、いつも東博にいる『文殊菩薩及び侍者像』5躯がいらしていた。工芸は『春日龍珠箱』、さまざま舎利厨子など。東博の展示で見たものも多かったが、真剣な観客(数寄者である)が多くて、館内の雰囲気が気持ちよかった。やっぱり来てよかった。
奈良博大好きなので、プレミアムカード(一般5,000円)を購入してしまった。1年間有効で、同じ特別展に2回まで入ることができる。今回、夏、秋(正倉院展)、来春の特別展に1回ずつ来れば元は取れるし、展覧会によっては2回来ることもありそうな気がして。
午前中を京都で過ごし、奈良に着いたのは午後2時頃だった。今回、中金堂落慶記念のお弁当(販売期間:2018年3月3日~10月28日、土日祝日限定)をGETしようと目論んでいたのだが、予定外の龍谷ミュージアムに寄ってきたため、もう「完売」になっていた。仕方がない、秋までにまだ何度か奈良に来る機会があるだろう。
興福寺では、久しぶりに国宝館に寄った。2017年の1年間に渡る耐震補強工事を終え、今年1月1日にリニューアルオープンして初めての訪問である。全体がきれいになったのは間違いないが、古い国宝館を知る身としては、2010年のリニューアルが衝撃だったのに比べると、今回はプチリニューアルという感じだった。まあしかし、昨年は仮金堂で特別公開されていた阿修羅像も、『運慶展』で見た天燈鬼と龍燈鬼も、やっぱりこの空間で見るのが、一番しっくり来る。
■春日大社 国宝殿 春日大社御創建1250年記念展II『聖域 御本殿を飾る美術』(2018年4月1日~8月26日)
奈良博の裏を素通りして春日大社へ向かう。国宝殿に併設されたカフェ「鹿音(かのん)」で遅い昼食。外国のお客さんの姿が多かった。現在の展示は、春日大社が平成30年(2018)に創建1250年を迎えたことを記念し、平成27年(2015)から28年(2016)に行われた第60次式年造替に伴って、修復・復元されて見ることができるようになった文化財の一部などを展示する。本殿を飾る『御間塀(おあいべい)障壁画』4点「神馬牽引図(第一殿東)」「神馬牽引図(第一・二殿間)」「獅子牡丹図(第二・三殿間)」「神馬牽引図(第三・四殿間)」は、式年造替の特別参拝の際に見た覚えがあるもの。造替で不要になった古い壁画を剥ぎ取り、保存しているのだそうだ。江戸時代につくられた四脚机や、現代の技術で復元された御翠簾(青いすだれ)も面白かった。
■奈良国立博物館 創建1250年記念特別展『国宝 春日大社のすべて』(2018年4月14日~6月10日)
奈良博に入ったのは夕方4時頃。しかし土曜日の特別展は午後7時まで開館しているので余裕である。第1室(東新館)は古神宝類。武具、楽器、鏡、木笏など。藤原頼長が寄進したとされる『金地螺鈿毛抜形太刀』(鞘に雀を捕まえようとするぶち猫の姿)や雅楽で使われる巨大な鼉太鼓も出ていた。私は、2017年に東博で行われた『春日大社 千年の至宝』展も見ているので、このへんまでは予想どおりである。この展覧会は、東博の二番煎じじゃないかと疑っていたが、京博で会った知り合いが「奈良博は、東京でできなかった空間づくりをしようと頑張っている」と言っていたので、少し期待を持つことにした。
東新館の最後に大鎧2領と胴丸2領が出ていたのには息を呑んだ。特に『赤糸威大鎧(竹虎雀飾)』は美麗。しかしまだ、「東京でできなかった空間づくり」は実感しないまま、西新館に移動する。西新館の冒頭では、春日大社の創建伝説を取り上げ、鹿島神宮、香取神宮とのつながりを紹介する。東国人としてちょっとうれしい。鹿島神宮の『直刀・黒漆平文大刀拵』(国宝)、香取神宮の『海獣葡萄鏡』(国宝)が来ていて驚く。ちなみに、春日神社にも『禽獣葡萄鏡』が伝わっていることを初めて知った。『春日明神影向図』(鎌倉時代)は、車(牛はつながれていない)に乗った明神(黒い束帯姿)が御簾から身を乗り出しているところ。ただし雲で顔は隠れている。鷹司冬平が夢に見た明神の姿だという。藤田美術館の所蔵品だというが、初めて見た。
続いて、20点近く並んだ春日宮曼荼羅。有名な南市町自治会のものをはじめ、個性的な、各地の名品が大集結しており、ここが一番テンションが上がった。むかしから好きなのだが、実際の春日大社に何度も詣で、まわりの地理を把握することで、ますます好きになってきた。静嘉堂文庫の春日宮曼荼羅(南北朝時代、後期出品)は、画面の上部に神々と本地仏の姿を大きく描く。画面の上半分に補陀落山を描く「春日補陀山落曼荼羅」や、興福寺南円堂本尊を描く「春日南円堂曼荼羅」、講堂諸尊を描く「興福寺講堂曼荼羅」(ちゃんと文殊と維摩居士もいる!)というのもあるそうだ。「鹿曼荼羅」もいろいろ並ぶと可愛い。しかし図録を見ていると、見逃した中にも不思議な作品が多いなあ。
『春日権現験記絵』は第1巻と第6巻を展示。混雑していないので、飽きるまで眺めていられる。仏画の名品はまだまだ続き、仏像は、いつも東博にいる『文殊菩薩及び侍者像』5躯がいらしていた。工芸は『春日龍珠箱』、さまざま舎利厨子など。東博の展示で見たものも多かったが、真剣な観客(数寄者である)が多くて、館内の雰囲気が気持ちよかった。やっぱり来てよかった。
奈良博大好きなので、プレミアムカード(一般5,000円)を購入してしまった。1年間有効で、同じ特別展に2回まで入ることができる。今回、夏、秋(正倉院展)、来春の特別展に1回ずつ来れば元は取れるし、展覧会によっては2回来ることもありそうな気がして。