今年のゴールデンウィークは、だらだら生活を満喫していたので、書いていない記事が溜まっている。とりあえず、ひとことコメントだけでも書いておこう。
■国立近代美術館 企画展『生誕150年 横山大観展』(2018年4月13日~5月27日)
横山大観(1868-1958)の生誕150年、没後60年を記念する回顧展。「代表作を網羅」という触れ込みの一方、知名度のわりに「つまらない」「巧くない」という残酷な評判も目にしていたので、どんなものかな、と思いながら見に行った。確かに巧いとは思う作品が少ないのだが、素人を驚かせ、楽しませる才能には長けた人だと思う。やっぱり『群青富士』とか、ちらっと見えるだけで視線が吸い寄せられてしまう。『秋色』の油絵具をにじませたような蔦紅葉、金色の空に金色の富士が浮かび上がる『朝陽霊峰』など、あざといんだけれど面白い。
個人的には、線を抑えたやわらかな色彩で中国の歴史人物を描いた作品が好き。『游刃有余地』は東博で時々見るもの。『焚火』(熊本県立美術館)は、女子高生みたいな寒山拾得がかわいい。『生々流転』は堪能した。作品を見たあと、下絵を見て、さらにもう一度、作品を見て、差異を楽しむのがおすすめである。それと、この作品が上野(竹之台陳列館)で初公開された日に関東大震災が起き、展覧会が中止になった、という危機一髪のエピソードは初めて知った。
■東京藝術大学大学美術館 『東西美人画の名作《序の舞》への系譜』(2018年3月31日~5月6日)
上村松園筆『序の舞』(重要文化財)の修理完成を記念し、江戸時代の風俗画や浮世絵から近代まで美人画の系譜をたどる。サントリー美術館の『舞踊図』6面(17世紀)、京都近代美術館所蔵の鏑木清方筆『たけくらべの美登利』など、他館のめずらしい作品を見ることもできた。『序の舞』は「近代美人画の最高傑作」と呼ばれているが、私はあまり好きではない。松園は『草紙洗小町』が好き。松岡映丘の『伊香保の沼』が出ていたのも嬉しかった。「西の美人」のセクションには、梶原緋佐子、北野恒富、松本華羊などあまり見る機会のない画家の作品が出ていて興味深かった。
■出光美術館 『宋磁-神秘のやきもの』(2018年4月21日~6月10日)
美しさの頂点に達したと評される宋(960-1279)とその前後の時代の中国磁器を紹介する。眼福のひとこと。出光美術館の中国磁器コレクションが素晴らしいのは承知の上だが、さらに大阪市立東洋陶磁美術館の名品がいくつか来ていて、興奮した。青磁、白磁、黒釉、緑釉、柿釉(珍しい)などバラエティに富むラインナップで、やっぱり磁州窯が充実しているのが嬉しい。磁州窯(系)のやきものは「北宋時代」と「金時代」が分別されている。「白磁黒掻落」の技法を用いているものは北宋時代が多く、より素朴な「白磁鉄絵」は金時代のものが多いようだ。鉄絵でも『緑釉白磁鉄絵牡丹文』とか『白磁鉄絵刻花魚藻文深鉢』とか、精彩があって大好き。遼磁は、素朴でバランスのいい姿が好き。鈞窯の澱青釉は、昔ちっともいいと思わなかったが、最近好きになってきたのが不思議。
■サントリー美術館 『ガレも愛した-清朝皇帝のガラス』(2018年4月25日~7月1日)
清朝皇帝のガラスの美を、フランスのガラス工芸家ガレ(1846–1904)の作品とも比較しながら紹介する。と思っていたら、冒頭に「中国ガラスの始原」のパートが設けられており、戦国~漢代(紀元前5~後2世紀)のトンボ玉や装身具が数十点出ている。主にMIHOミュージアムのコレクション。展覧会のタイトルにだまされて、古代美術好きも見逃さないでほしい。
清朝ガラスは、サントリー美術館のコレクションに加え、東博、町田市立博物館、それに英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館からも名品が集結している。清朝皇帝がつくらせた中国磁器の精華は言わずもがなだが、ガラス器の品質と芸術性も磁器に劣らないということがよく分かった。ひとつひとつも素晴らしいが、数の力はさらに大きい。そしてこの展覧会、「エミール・ガレの名前を使って、お客を呼ぼうとしている」と思って冷たい目で見ていたのだが、実際にガレが清朝のガラスに強い関心を持ち、影響を受けていたことが、作品の対比からよく分かった。
■江戸東京博物館 企画展『NHKスペシャル関連企画「大江戸」展』(2018年4月1日〜5月13日)
昨年9月から改修工事のため全館休館していた同館が再オープンして最初の展覧会である。ついでに常設展も見たいな、どうしよう?と迷っていたら、常設展エリア内の展示だった。武蔵野台地の東端に位置する江戸が、徳川家康の入封によって華やかな巨大都市に成長し、時代が明治へ移り変わっていくまでを紹介する。「江戸」という文字の見える、かなり早い時期の史料『平長重去状』(複製、13世紀)』は初めて見た。『長禄之江戸図』『慶長江戸絵図』など古地図も豊富で面白かった。
■国立近代美術館 企画展『生誕150年 横山大観展』(2018年4月13日~5月27日)
横山大観(1868-1958)の生誕150年、没後60年を記念する回顧展。「代表作を網羅」という触れ込みの一方、知名度のわりに「つまらない」「巧くない」という残酷な評判も目にしていたので、どんなものかな、と思いながら見に行った。確かに巧いとは思う作品が少ないのだが、素人を驚かせ、楽しませる才能には長けた人だと思う。やっぱり『群青富士』とか、ちらっと見えるだけで視線が吸い寄せられてしまう。『秋色』の油絵具をにじませたような蔦紅葉、金色の空に金色の富士が浮かび上がる『朝陽霊峰』など、あざといんだけれど面白い。
個人的には、線を抑えたやわらかな色彩で中国の歴史人物を描いた作品が好き。『游刃有余地』は東博で時々見るもの。『焚火』(熊本県立美術館)は、女子高生みたいな寒山拾得がかわいい。『生々流転』は堪能した。作品を見たあと、下絵を見て、さらにもう一度、作品を見て、差異を楽しむのがおすすめである。それと、この作品が上野(竹之台陳列館)で初公開された日に関東大震災が起き、展覧会が中止になった、という危機一髪のエピソードは初めて知った。
■東京藝術大学大学美術館 『東西美人画の名作《序の舞》への系譜』(2018年3月31日~5月6日)
上村松園筆『序の舞』(重要文化財)の修理完成を記念し、江戸時代の風俗画や浮世絵から近代まで美人画の系譜をたどる。サントリー美術館の『舞踊図』6面(17世紀)、京都近代美術館所蔵の鏑木清方筆『たけくらべの美登利』など、他館のめずらしい作品を見ることもできた。『序の舞』は「近代美人画の最高傑作」と呼ばれているが、私はあまり好きではない。松園は『草紙洗小町』が好き。松岡映丘の『伊香保の沼』が出ていたのも嬉しかった。「西の美人」のセクションには、梶原緋佐子、北野恒富、松本華羊などあまり見る機会のない画家の作品が出ていて興味深かった。
■出光美術館 『宋磁-神秘のやきもの』(2018年4月21日~6月10日)
美しさの頂点に達したと評される宋(960-1279)とその前後の時代の中国磁器を紹介する。眼福のひとこと。出光美術館の中国磁器コレクションが素晴らしいのは承知の上だが、さらに大阪市立東洋陶磁美術館の名品がいくつか来ていて、興奮した。青磁、白磁、黒釉、緑釉、柿釉(珍しい)などバラエティに富むラインナップで、やっぱり磁州窯が充実しているのが嬉しい。磁州窯(系)のやきものは「北宋時代」と「金時代」が分別されている。「白磁黒掻落」の技法を用いているものは北宋時代が多く、より素朴な「白磁鉄絵」は金時代のものが多いようだ。鉄絵でも『緑釉白磁鉄絵牡丹文』とか『白磁鉄絵刻花魚藻文深鉢』とか、精彩があって大好き。遼磁は、素朴でバランスのいい姿が好き。鈞窯の澱青釉は、昔ちっともいいと思わなかったが、最近好きになってきたのが不思議。
■サントリー美術館 『ガレも愛した-清朝皇帝のガラス』(2018年4月25日~7月1日)
清朝皇帝のガラスの美を、フランスのガラス工芸家ガレ(1846–1904)の作品とも比較しながら紹介する。と思っていたら、冒頭に「中国ガラスの始原」のパートが設けられており、戦国~漢代(紀元前5~後2世紀)のトンボ玉や装身具が数十点出ている。主にMIHOミュージアムのコレクション。展覧会のタイトルにだまされて、古代美術好きも見逃さないでほしい。
清朝ガラスは、サントリー美術館のコレクションに加え、東博、町田市立博物館、それに英国ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館からも名品が集結している。清朝皇帝がつくらせた中国磁器の精華は言わずもがなだが、ガラス器の品質と芸術性も磁器に劣らないということがよく分かった。ひとつひとつも素晴らしいが、数の力はさらに大きい。そしてこの展覧会、「エミール・ガレの名前を使って、お客を呼ぼうとしている」と思って冷たい目で見ていたのだが、実際にガレが清朝のガラスに強い関心を持ち、影響を受けていたことが、作品の対比からよく分かった。
■江戸東京博物館 企画展『NHKスペシャル関連企画「大江戸」展』(2018年4月1日〜5月13日)
昨年9月から改修工事のため全館休館していた同館が再オープンして最初の展覧会である。ついでに常設展も見たいな、どうしよう?と迷っていたら、常設展エリア内の展示だった。武蔵野台地の東端に位置する江戸が、徳川家康の入封によって華やかな巨大都市に成長し、時代が明治へ移り変わっていくまでを紹介する。「江戸」という文字の見える、かなり早い時期の史料『平長重去状』(複製、13世紀)』は初めて見た。『長禄之江戸図』『慶長江戸絵図』など古地図も豊富で面白かった。