■大津歴史博物館 大津京遷都1350年記念 企画展『大津の都と白鳳寺院』(2017年10月7日~11月19日)
三連休関西旅行は大津から。本展は、667年に天智天皇が飛鳥から大津に遷都し、近江大津宮、いわゆる「大津京」が置かれて1350年になることを記念する企画展。平安遷都や平城遷都に比べると盛り上がりに欠けるけれど、私はこの時期の文化が大好きなので、とても嬉しい。そして、近江大津宮だけにフォーカスするのではなく、時間的にも空間的にも少し幅広く、飛鳥宮や難波宮、藤原鎌足に関連する多武峰や高槻の阿武山古墳、さらに大友皇子と壬申の乱の関連など、さまざまな遺跡を出土品や写真パネルで紹介している。
前半で目立つのは瓦だ。南滋賀廃寺から出土する「蓮華文方形軒瓦」は、横から見た蓮の花を表現したもので、サソリの姿に見えることから「サソリ瓦」とも呼ばれる(※参考:学芸員のノートから)。方形の瓦というのも珍しい。気になって調べていたら、「さそり文瓦煎餅」という煎餅を見つけてしまった。これ、今でも手に入るなら欲しい…。
後半は白鳳の金銅仏が30体以上並んでいて圧巻だった。東博や東京芸大からおいでの仏もあれば、初めて見るものも。野洲・報恩寺のばっちり二重まぶたの観音菩薩立像は初めて。トボけた顔をした四臂菩薩立像(統一新羅時代)は東博・小倉コレクションというけど見覚えがなかった。塼仏や塑像の破片も、こんなに大量にまとめて見ることはめったにないので興味深かった。
■龍谷ミュージアム 秋季特別展『地獄絵ワンダーランド』(2017年9月23日~11月12日)
この夏、三井記念美術館の東京展を見たのだが、京都展も見たくて来てしまった。滋賀・新知恩院の『六道絵』(南宋~元)6幅は、人物に動きが少なく、冷ややかで幻想的。いま図録をチェックしたら東京展にも出ているのだが、展示替えの関係で見ていないのかもしれない。畜生道に描かれた灰色の象が妙にリアル。京都・誓願寺の『地蔵十王図』(南宋)は、何度見ても、地獄の「文書行政」に微笑んでしまう。兵庫・薬仙寺の『施餓鬼図』は、ほぼ四角形の画面の中央に山盛りのご飯などが飾られ、その前で頭頂部の禿げた焔口餓鬼が、僧侶から施物を受け取っている。桃色と緑が基調の、変わった色彩感覚。朝鮮時代・万暦17年(1589)銘を有する最古の施餓鬼図だそうだ。
三重・両聖寺の『閻魔王図』(江戸時代)は図録で見て、ぜひ本物を見たいと思っていたもの。暗闇に浮き上がる真っ赤な閻魔の顔。人物のバランスも鮮やかな色彩も、妙に現代的である。縦2メートルを超える巨大な絵でびっくりした。神奈川・東明寺の『閻魔府之図』も見られてよかった。目を剥き、口を開けた閻魔は、なぜか笑顔で「Oh!Yeah!」と言っていそう。画面の下のほうで、水子になつかれている美形の地蔵菩薩とか、血の池に浮かぶ女性たちをアンニュイに見つめる如意輪観音とか、全くやる気のない修羅道のサムライたちとか、どこを見てもツッコミどころだらけである。
日本民藝館の『十王図』(特にゆるい方)を見ることができたのもラッキーだった。私は第4扇の、鬼に煮えた銅?を口から注ぎ込まれている亡者の図が好き。第5扇の地獄の化鳥も笑うしかない。第7扇の野犬?に喰われる女もおかしい。「おたわむれみたい」と隣りで見ていた若い女性たちも盛り上がっていた。亡者たちを見つめる十王の表情も個性的である。
東京展に比べると、ポップで遊び心の多い展示に感じた。甚目寺の木造の十王像(3躯)の後ろには、光度が変化するオレンジ色の照明が設置されていて、地獄の炎のゆらめきを演出していた。耳鳥斎の描く鬼や亡者をキャラクター化して、「よろしくな!」「もう逃げられないぜ!」などのセリフをつけて展示室やエレベーターの内扉に登場させたり。それから、ミュージアムシアターで上映されている「ようこそ、地獄ツアー」が予想以上によかった。女性講談師の五代目旭堂小南陵さんの語りが小気味よい。
2つの展覧会を見終わったのが午後3時過ぎ。このあとの京都国立博物館の『国宝展』は別稿とする。夜は、やはり東京から出てきた友人と落ち合って、京都駅八条口の居酒屋「みなみ」で飲み&夕食。よいお店だったので、機会があれば、また使いたい。
三連休関西旅行は大津から。本展は、667年に天智天皇が飛鳥から大津に遷都し、近江大津宮、いわゆる「大津京」が置かれて1350年になることを記念する企画展。平安遷都や平城遷都に比べると盛り上がりに欠けるけれど、私はこの時期の文化が大好きなので、とても嬉しい。そして、近江大津宮だけにフォーカスするのではなく、時間的にも空間的にも少し幅広く、飛鳥宮や難波宮、藤原鎌足に関連する多武峰や高槻の阿武山古墳、さらに大友皇子と壬申の乱の関連など、さまざまな遺跡を出土品や写真パネルで紹介している。
前半で目立つのは瓦だ。南滋賀廃寺から出土する「蓮華文方形軒瓦」は、横から見た蓮の花を表現したもので、サソリの姿に見えることから「サソリ瓦」とも呼ばれる(※参考:学芸員のノートから)。方形の瓦というのも珍しい。気になって調べていたら、「さそり文瓦煎餅」という煎餅を見つけてしまった。これ、今でも手に入るなら欲しい…。
後半は白鳳の金銅仏が30体以上並んでいて圧巻だった。東博や東京芸大からおいでの仏もあれば、初めて見るものも。野洲・報恩寺のばっちり二重まぶたの観音菩薩立像は初めて。トボけた顔をした四臂菩薩立像(統一新羅時代)は東博・小倉コレクションというけど見覚えがなかった。塼仏や塑像の破片も、こんなに大量にまとめて見ることはめったにないので興味深かった。
■龍谷ミュージアム 秋季特別展『地獄絵ワンダーランド』(2017年9月23日~11月12日)
この夏、三井記念美術館の東京展を見たのだが、京都展も見たくて来てしまった。滋賀・新知恩院の『六道絵』(南宋~元)6幅は、人物に動きが少なく、冷ややかで幻想的。いま図録をチェックしたら東京展にも出ているのだが、展示替えの関係で見ていないのかもしれない。畜生道に描かれた灰色の象が妙にリアル。京都・誓願寺の『地蔵十王図』(南宋)は、何度見ても、地獄の「文書行政」に微笑んでしまう。兵庫・薬仙寺の『施餓鬼図』は、ほぼ四角形の画面の中央に山盛りのご飯などが飾られ、その前で頭頂部の禿げた焔口餓鬼が、僧侶から施物を受け取っている。桃色と緑が基調の、変わった色彩感覚。朝鮮時代・万暦17年(1589)銘を有する最古の施餓鬼図だそうだ。
三重・両聖寺の『閻魔王図』(江戸時代)は図録で見て、ぜひ本物を見たいと思っていたもの。暗闇に浮き上がる真っ赤な閻魔の顔。人物のバランスも鮮やかな色彩も、妙に現代的である。縦2メートルを超える巨大な絵でびっくりした。神奈川・東明寺の『閻魔府之図』も見られてよかった。目を剥き、口を開けた閻魔は、なぜか笑顔で「Oh!Yeah!」と言っていそう。画面の下のほうで、水子になつかれている美形の地蔵菩薩とか、血の池に浮かぶ女性たちをアンニュイに見つめる如意輪観音とか、全くやる気のない修羅道のサムライたちとか、どこを見てもツッコミどころだらけである。
日本民藝館の『十王図』(特にゆるい方)を見ることができたのもラッキーだった。私は第4扇の、鬼に煮えた銅?を口から注ぎ込まれている亡者の図が好き。第5扇の地獄の化鳥も笑うしかない。第7扇の野犬?に喰われる女もおかしい。「おたわむれみたい」と隣りで見ていた若い女性たちも盛り上がっていた。亡者たちを見つめる十王の表情も個性的である。
東京展に比べると、ポップで遊び心の多い展示に感じた。甚目寺の木造の十王像(3躯)の後ろには、光度が変化するオレンジ色の照明が設置されていて、地獄の炎のゆらめきを演出していた。耳鳥斎の描く鬼や亡者をキャラクター化して、「よろしくな!」「もう逃げられないぜ!」などのセリフをつけて展示室やエレベーターの内扉に登場させたり。それから、ミュージアムシアターで上映されている「ようこそ、地獄ツアー」が予想以上によかった。女性講談師の五代目旭堂小南陵さんの語りが小気味よい。
2つの展覧会を見終わったのが午後3時過ぎ。このあとの京都国立博物館の『国宝展』は別稿とする。夜は、やはり東京から出てきた友人と落ち合って、京都駅八条口の居酒屋「みなみ」で飲み&夕食。よいお店だったので、機会があれば、また使いたい。