見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2016年11月@関西:高麗仏画(泉屋博古館)など

2016-11-28 23:25:58 | 行ったもの(美術館・見仏)
東寺(教王護国寺) 2016年秋期特別公開・灌頂院(2016年10月28日~12月4日)

 週末、駆け足で見てきたもの。東寺は宝物館の『東寺の明王像』展が見たかったのだが、行ってみたら前日の金曜で会期が終わっていた。がーん。しかし、五重塔・小子房・灌頂院が特別公開されており、灌頂院には、あの夜叉神像一対がお出ましになっていると知って、拝観することにした。

 灌頂院に入るのは、2015年秋の『十二神将のすべて』以来。なるほど、ここは儀式のための道場で、ふだんは空っぽの建物なので、こういう出開帳に積極的に使っていくのは面白いかもしれない。目が慣れるまで人影も定かでない薄暗い空間、スポットライトに浮かび上がるのは、右に阿形(俗にいう雄夜叉、髪が逆立っているほう)、左に吽形(雌夜叉、巻き髪)の夜叉神像。十二神将展で使われていた八角形(?)の木桶のような展示台に乗っている。そして、まわりには可憐な盛り花が山のように飾られ、お花畑の中の夜叉神という、めまいのするような光景である。なんだこれは…(笑)。しかし、夜叉神の側面を見ることができたのは貴重な機会だった。

泉屋博古館 特別展『高麗仏画-香りたつ装飾美』(2016年11月3日~12月4日)

 高麗王朝後期(13-14世紀)に生み出された類いまれな仏教絵画「世にも美しきみほとけたち」を特集。確認されている現存作品は世界にわずか160点あまりだという。来春、東京の根津美術館に巡回する展覧会だが、東西で出品作品が異なると聞いて、見に行ってしまった。図録に掲載の出品目録は57件(絵画以外の参考作品も含む)である。あまり広くない展示室が、華麗な仏画で満たされていて、至福のひととき。高麗仏画って、実は日本国内にこんなにあるんだなあ、ということを初めて実感した。

 根津美術館の『地蔵菩薩像』(被帽地蔵菩薩)は、私が高麗仏画というジャンルを初めて意識した作品。なんと徳川美術館に同図があるのか。大徳寺の『水月観音像』は宝物曝涼のときにお会いしている。繊細優美な作品が目立つ中で、太い腕をにゅっと伸ばした『阿弥陀如来像』(団体所有とあり)は面白かった。鮮やかな色を長持ちさせる裏彩色の技法とか、さまざまな地域・時代の美意識を取り入れたふところの深さも興味深いと思った。

白鶴美術館 2016年秋季展『大唐王朝展』(2016年9月17日~12月11日)

 同館が所蔵する唐王朝の美術品を大公開。確かに『鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗』(フィンガーボール?)や『唐三彩鳳凰首瓶』『白銅海獣葡萄鏡』など、他所ではなかなか見られない優品が公開されている。ただ、個人的にいうと(美術館の所蔵品としては「しょぼい」と言いたくなるような)小さな鏡とか壺、杯、装飾品などがごちゃごちゃ並んでいるのが、かえって唐王朝を身近に感じられて面白かった。所蔵品の正確な由来はよく分かっていないようであった。

 いちばん気に入ったのは『白大理石台座』(北斉・武平元年/570)というもので、八角形の植木鉢のような形をしており、以前は上部に仏像がはめ込まれていたのではないかと考えられている。鉢(台座)の周囲には獅子や従者や獣面人身の神?などが座っている。その座り方がまたいろいろでかわいい。白い大理石に主に赤とわずかな黒で顔などを描いているのが飴細工みたいだった。

大阪市立美術館 開館80周年記念展・特別陳列『壺中之展(こちゅうのてん)-美術館的小宇宙』(2016年11月8日~12月4日)

 昭和11年(1936)5月1日の開館から80周年を記念し、約300件の館蔵・寄託作品を展示する。同館のコレクションの素晴らしさはよく知ってるが、バラエティに富んでいて、あらためて見ても飽きない。工芸品、中国の石仏、日本の仏像、中国絵画、桃山絵画、琳派、浮世絵など…。多くは関西に縁のある実業家のコレクションを譲り受けたもの。むかしの富豪は文化の保護者だった。ポスターになっている橋本関雪の『唐犬(からいぬ)』は同館の第1号収蔵品。「かたちをたのしむ 8(は)・0(まる)・壺(ツボ)」は、いろんなジャンルの作品を持っているからできる試みで面白かった。

国立民族学博物館(みんぱく) 特別展『見世物大博覧会』(2016年9月8日~11月29日)

 細工物・軽業・曲芸・動物見世物など、江戸から明治・大正・昭和を経て現代に至る多種多様な見世物の姿を紹介する。というと聞こえがいいが、かなりアブナイ世界に片足を突っ込んだ展覧会である。ポリティカル・コレクトネスに弱い私は、「シベリアから来た熊女」(うろ覚え)などと聞くと、大丈夫か?とドキドキしてしまう。しかし、その後ろめたさがあるからこそ、見世物は甘美なのである。

 でも先入観でものを見るのは危険で、「女相撲」なんて際物だと思っていたが、女力士たちの明るい表情の写真を見て、意外と健康的な娯楽だったのかもしれないと考え直した。日本各地の祭礼に取材した「軽業」の映像も面白かった。うまく継承していけるだろうか。あと、西洋のサーカスが入ってくる以前も、日本に「曲馬」ってあったのだな。時代劇では再現しにくいから、意識したことがなかった。
コメント
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