■NHK BS時代劇『テンペスト』(2011年7月17日~)
昨日まで11日間、恒例の夏休み中国旅行に行ってきた。気になっていたのは、BS時代劇『テンペスト』第5回と第6回を見逃してしまったこと。でも、今夜「NHKオンデマンド」で視聴して、追いつくことができた。うーん。相変わらず、面白いな。序盤だけかと思ったら、中盤も好調のようだ。原作の自由奔放な面白さに、ドラマオリジナルの改変が、時にはピリリと、時には抒情的に、いい味わいを加えていると思う。
第5回では、ヤマトと清国に両属する琉球の立場を、男のフリをする女・真鶴=寧温に喩え、さらにジュリ(遊女)に喩えてあてこするセリフがあって、おお、これ、けっこう際どくないか?と思った。沖縄県民からクレームが出てもおかしくないような。でも、敢えて水面に石を投げて、常識に波風を立てるくらいの覚悟がなかったら、面白いドラマは作れないと思う。そして、Gackt徐丁垓(熱演。謙信よりいいかも)の下品なあてこすりに対し、「私はひとりの人間です」という真鶴=寧温の必死の切り返しには、琉球(沖縄)の地政学な運命が重なるように感じられた。
第6回は、八重山に流刑にされていた大勢頭部が真鶴を助け、王宮への復帰を手助けするというドラマオリジナルの展開が、登場人物の使い回しと同時に、人間模様に深みを与えていて、巧い。というわけで、掲示板だのtwitterだのでは、いろいろと蘊蓄雑談も盛り上がっている(ように感じる)。とりわけ面白いのが↓こちら。
■目からウロコの琉球・沖縄史:歴史家・上里隆史氏のブログ
『テンペスト』時代考証担当である同氏が、ドラマの進行に合わせて書いている「ネタバレ解説」が、むちゃくちゃ面白い。第4回「阿片疑惑」で、寧温と朝薫を糾明奉行に任ずる尚育王の署名には「実際の花押を採用しています」とか、第5回「宦官の野望」で、徐丁垓が尚泰王から賜った国相就任の辞令書は「当時出すとすれば必ずこうしただろうという様式」で作られているとか、マニアックなこだわりが、いちいち嬉しくてしかたない。
こういう細部の「事実らしさ」があればこそ、荒唐無稽のファンタジー時代劇も「見られる」映像作品になるのだと思う。『JIN-仁-』の山田順子さんも、すばらしい仕事をなさっていると思っていたけれど。それにしても、馬天ノロの勾玉が「実は戦前まで実際に残っていました」には、びっくりした。ちゃんと参考文献も挙げてくれている。
上里先生、まるで一視聴者みたいに、第5回の解説に「今回はありえない超展開の『神回』で最後のシーンは僕も大爆笑させてもらいました(笑)」と書いちゃう素直さが大好きだ。今度、ぜひ著作を読んでみたいと思う。
昨年、高橋哲哉氏が徐京植氏との対談で、2009年は琉球処分130周年、薩摩侵攻400年の節目に当たり、沖縄県内ではさまざまなイベントが行われたが、県外では全く盛り上がらなかった、という趣旨のことを述べておられた。私自身、2009年も2010年も、沖縄のことなど全く考えずに過ごしてきたのに、このドラマのおかげで、俄然、沖縄(琉球)史に興味が湧いてきた。私のような人間は多いに違いない。エンターテイメントの力って、捨てたものじゃないな、と思う。
昨日まで11日間、恒例の夏休み中国旅行に行ってきた。気になっていたのは、BS時代劇『テンペスト』第5回と第6回を見逃してしまったこと。でも、今夜「NHKオンデマンド」で視聴して、追いつくことができた。うーん。相変わらず、面白いな。序盤だけかと思ったら、中盤も好調のようだ。原作の自由奔放な面白さに、ドラマオリジナルの改変が、時にはピリリと、時には抒情的に、いい味わいを加えていると思う。
第5回では、ヤマトと清国に両属する琉球の立場を、男のフリをする女・真鶴=寧温に喩え、さらにジュリ(遊女)に喩えてあてこするセリフがあって、おお、これ、けっこう際どくないか?と思った。沖縄県民からクレームが出てもおかしくないような。でも、敢えて水面に石を投げて、常識に波風を立てるくらいの覚悟がなかったら、面白いドラマは作れないと思う。そして、Gackt徐丁垓(熱演。謙信よりいいかも)の下品なあてこすりに対し、「私はひとりの人間です」という真鶴=寧温の必死の切り返しには、琉球(沖縄)の地政学な運命が重なるように感じられた。
第6回は、八重山に流刑にされていた大勢頭部が真鶴を助け、王宮への復帰を手助けするというドラマオリジナルの展開が、登場人物の使い回しと同時に、人間模様に深みを与えていて、巧い。というわけで、掲示板だのtwitterだのでは、いろいろと蘊蓄雑談も盛り上がっている(ように感じる)。とりわけ面白いのが↓こちら。
■目からウロコの琉球・沖縄史:歴史家・上里隆史氏のブログ
『テンペスト』時代考証担当である同氏が、ドラマの進行に合わせて書いている「ネタバレ解説」が、むちゃくちゃ面白い。第4回「阿片疑惑」で、寧温と朝薫を糾明奉行に任ずる尚育王の署名には「実際の花押を採用しています」とか、第5回「宦官の野望」で、徐丁垓が尚泰王から賜った国相就任の辞令書は「当時出すとすれば必ずこうしただろうという様式」で作られているとか、マニアックなこだわりが、いちいち嬉しくてしかたない。
こういう細部の「事実らしさ」があればこそ、荒唐無稽のファンタジー時代劇も「見られる」映像作品になるのだと思う。『JIN-仁-』の山田順子さんも、すばらしい仕事をなさっていると思っていたけれど。それにしても、馬天ノロの勾玉が「実は戦前まで実際に残っていました」には、びっくりした。ちゃんと参考文献も挙げてくれている。
上里先生、まるで一視聴者みたいに、第5回の解説に「今回はありえない超展開の『神回』で最後のシーンは僕も大爆笑させてもらいました(笑)」と書いちゃう素直さが大好きだ。今度、ぜひ著作を読んでみたいと思う。
昨年、高橋哲哉氏が徐京植氏との対談で、2009年は琉球処分130周年、薩摩侵攻400年の節目に当たり、沖縄県内ではさまざまなイベントが行われたが、県外では全く盛り上がらなかった、という趣旨のことを述べておられた。私自身、2009年も2010年も、沖縄のことなど全く考えずに過ごしてきたのに、このドラマのおかげで、俄然、沖縄(琉球)史に興味が湧いてきた。私のような人間は多いに違いない。エンターテイメントの力って、捨てたものじゃないな、と思う。