見もの・読みもの日記

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なつかしい風景/日本の古人形(日本民藝館)

2011-01-11 23:43:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
日本民藝館 特別展『日本の古人形-三春・鴻巣・堤など-』(2011年1月9日~3月21日)

 白壁が美しい、蔵造りふうの日本民芸館は、新春が似つかわしい美術館だ。重たい引き戸をがらがらと開けると、年始客になったような気がする。玄関ホールの壁には、城郭を描いた幟旗(のぼりばた)。展示ケースには華やかな色絵磁器。まずはめでたい。

 2階の大展示室では、郷土色豊かな古人形を紹介する展覧会を開催中。これも初春にふさわしい企画だと思った。製作されたのは江戸後期から江戸末期、と貰ったパンフレットにいうが、「明治時代」というキャプションのついたものもいくつか見た。大きさは15~20センチそこそこ。30センチを超えるような大きなものはほとんどなかったと思う。題材は、童子、官女、恵比寿や大黒、天神などの福神、和藤内や錦祥女、弁慶牛若など歌舞伎や謡曲を題材にしたもの、等。

 そう言えば、むかし、祖母の茶箪笥(なつかしい言葉だ)の上の人形ケースにも、こんな郷土人形がたくさん並んでいたような気がする。私の育った家だけではなくて、叔父叔母の家にも、もちろんもっと商業ベースでつくられた戦後の郷土玩具ではあったが、似たような人形がいくつかは必ず飾ってあった。今回の企画は、美術館の展示というよりも、そんな私的な記憶を刺激される展示である。展示ケースのいちばん下の段は、たぶん小さな人形を飾ると見にくいという配慮だろう、化けそうな朱の盆、螺鈿の飯櫃(!)などが並んでいる。そうした雑器と人形の共存ぶりが、いっそう、家庭の匂いを感じさせる。

 ひとまわりした後、中央のテーブルに置かれた『民藝』のバックナンバーで、古人形についての解説を探して読む。昭和58年4月号の「俵有作氏に聞く」が面白かった。伏見人形のような「上手」の人形は別として、「日本の土俗的な人形のトップクラスは東北である」という。三春人形(福島県)、堤人形(宮城県仙台)、相良人形(山形県米沢)など。鴻巣人形(埼玉県)も東北のうちかな。その穏やかで晴れ晴れした美しさは、住んでいる人々の心の反映ではないか。九州の郷土人形は、ずっと荒っぽい、など。

 鴻巣人形が、布や紙を貼った、雛人形に近いつくりであることはすぐ分かったが、三春人形が張り子だというのは、解説を読むまで気づかなかった。確かに張り子人形は、土人形に比べて躍動感ある造型が可能である。その最たるものは、大展示室の外、2階の階段裏にあった白拍子人形だろう。片膝を高く上げ、微かに小首を傾げた愛らしさには、思わず恋に落ちそうである。ただ、どちらかといえば、私の好みはモコモコした土人形(相良人形など)。「熊抱き」「狆抱き」「亀抱き」など、小さな人形にさらに小さなものを抱かせた造型が好きだ。

 江戸時代の羽子板7点も面白かった。奈良絵を思わせる稚拙な筆なのに、背景に金の箔押しを使っていたり、多数の人物を複雑な構図で描こうとしていたり、色数も多く、ムダに(?)豪華なのである。

 なお、いつの間にか、ホームページがリニューアルして、特別展以外(併設展)に何が出ているかもあらかじめチェックできるようになった。今期のおすすめは「旗指物と諸将旌旗図」、および「日本の彫刻」の部屋に展示の『十王図』。怖いんだか怖くないんだか…の地獄図が愉快である。ミュージアムショップも、スッキリして買い物がしやすくなって、うれしい。
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